5月の公共政策セミナーは以下のように行われました。
◆日時: 2023年5月10日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催
◆Web参加方法: 学内の方は、共有カレンダーのURLからご参加下さい。
****************
〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:北尾 仁広(公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル:
要旨:治験・臨床試験(以下、「臨床試験等」)には、
⇨指定発言:井上 悠輔(公共政策研究分野 准教授)
◆報告2
報告者:島﨑 美空(
タイトル:
要旨:我が国において、性的マイノリティの家族形成、
⇨指定発言:胡 錦程(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程)
3月の公共政策セミナーは以下のように行われました。
◆日時: 2023年3月8日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催
◆Web参加方法: 学内の方は、共有カレンダーのURLからご参加下さい。
****************
〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:河田 純一(公共政策研究分野 学術専門職員)
タイトル:
要旨:AYA世代とは、Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の頭文字をとったもので、主に、
⇨指定発言:佐藤 桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程)
◆報告2
報告者:鈴木 将平(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 臨床研究センター 特任研究員)
タイトル:常染色体潜性(劣性)遺伝病の〈保因者検査〉
要旨:常染色体潜性(劣性)遺伝病(Autosomal Recessive Disease: ARD)は、
⇨指定発言:李 怡然(公共政策研究分野 助教)
2月の公共政策セミナーは以下の通りでした。
日時: 2022年2月8日(水)13:30~16:00ごろ
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催
****************
〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:飯田 寛(新領域創成科学研究科博士課程)
タイトル:遺伝情報に基づく差別禁止とは何か-生命保険と労働分
要旨:ヒトゲノム解析計画によって遺伝情報が明らかになることで
2023年1月の公共政策セミナーは以下のように行われました。
◆日時: 2023年1月11日(水)13:30~16:00ごろ
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催
****************
〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル:幹細胞研究における患者・市民参画とベネフィット・
◆報告2
報告者:松山 涼子(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 修士課程)
タイトル:バイオバンクと提供者の関係性における文献調査
要旨:未定
⇨指定発言:原田 香菜(公共政策研究分野 特任研究員)
12月の公共政策セミナーは以下のように行われました。
日時:2022年12月14日(水)
〈報告概要(敬称略・順不同)〉
報告1
報告者: | 木矢 幸孝(公共政策研究分野 特任研究員) |
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タイトル: | 14日ルールの再検討:一般市民と不妊治療経験者へのFGI調査から |
要旨:
2021年、国際幹細胞学会(ISSCR)は「幹細胞研究・臨床応用に関するガイドライン」を改訂し、ヒト胚の受精後14日以降もしくは原始線条の形成以降の体外培養を禁止する、14日ルールを禁止項目から外した。ルールの再検討にあたっては一般市民や不妊治療経験者を含めた社会的な議論の必要性が指摘されるが(Hyun et al., 2021; McCully, 2021など)、本邦において上記の人々がヒト胚の14日を超える体外培養をどのように評価しているのか、そしてその理由は何であるのかは十分に明らかにされていない。
そこで、2022年9月~10月に一般市民と不妊治療経験者を対象にフォーカスグループインタビューを実施し、ヒト受精胚の体外培養の延長に関する評価とその理由を探った。本報告では分析中の調査の結果を共有し、調査から得られうる倫理的課題を報告する。
⇨指定発言:松山 涼子(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 修士課程)
報告2
報告者: | 李 怡然(公共政策研究分野 助教) |
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タイトル: | 健康医療データの利活用における子どもの権利保護を考える |
要旨:
近年、未診断疾患の診断や治療法の開発、企業による創薬のために利活用できるよう、患者・市民の健康医療データを収集する大規模プロジェクトが国際的に進められている。このような医学研究では、プライバシー保護やデータの利活用ポリシー、解析結果の返却のあり方などが検討課題となるが、とりわけ子ども(小児・未成年者)が研究対象者になる場合は、成人一般と比べて追加的な保護も必要とされる。たとえば、子どもは親権者の代諾で研究に参加するため、成長後に意思確認を行うことなどが挙げられる。今日、ビッグデータやデジタルヘルスの活用も目指される中で、子どもの権利をどのように保護するかや、子どもの関与のあり方をあらためて問う時期にある。健康医療データの収集や利活用が進む時代において、子どもの権利保護をめぐってどのような論点が浮上しているかを紹介し、この問題を考える手がかりとしたい。
⇨指定発言:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)
2022年11月の公共政策セミナーは以下のように行われました。
日時: | 2022年11月9日(水)13:30~16:00 |
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場所: | 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階 公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催 |
〈報告概要(敬称略・順不同)〉
報告1
報告者: | 永井 亜貴子(公共政策研究分野 特任助教) |
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タイトル: | 遺伝情報の取り扱いに対する態度と法規制のニーズ(仮) |
要旨:
2019年のがん遺伝子パネル検査の保険適用など、近年、日本国内においてもゲノム医療が普及し始めている。諸外国では、個人の遺伝的な特徴に基づく不適切な取り扱いを法律で規制する国も多いが、日本ではそのような取り扱いを禁止する法律は存在しない。また、国内においては、社会における遺伝的な特徴に基づく差別の実態や、遺伝情報の利用に関する市民の懸念についての調査が少なく、その実態は明らかではない。そのような背景のもと、市民を対象として、2017年および2022年に、遺伝情報の利活用に関するインターネット調査を実施した。
本報告では、遺伝的な特徴に基づく不適切な取り扱いの経験や、遺伝情報の利用に関する懸念等の態度、遺伝情報の取り扱いに関する法規制のニーズについて、5年間の変化も含め報告する。
⇨指定発言:李 怡然(公共政策研究分野 助教)
報告2
報告者: | 井上 悠輔(公共政策研究分野 准教授) |
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タイトル: | データ研究の倫理と「グループハーム」の検討(仮) |
要旨:
米国の連邦規則45CFR36は、当国の議論のみならず、我が国を含む他国の研究倫理の規範形成において大きな影響を及ぼしてきた。この規則における、許容される研究のあり方をめぐる規定については以前から議論がある。特に、研究の事前審査において「研究から得られる知識の応用による長期的影響の可能性を,その責任の範囲内の研究上の危険の要素として,考慮に入れるべきではない。」(「研究に関する倫理承認の基準」)とされる点である。研究の事前審査の段階で、研究がもたらしうる影響をあまりに広げて検討すると、研究活動自体が大きな制約を受けかねないとの発想が背景にある。一方、この点は、研究結果の影響が参加者個人にとどまらない研究(例:コミュニティ対象研究)、最近では、機械学習を用いたデータ解析の文脈から、批判されている。報告者は、この議論は日本のデータ研究を取り巻く、いくつかのトピックにも通じる点があると考える。本発表は、「グループハーム」をめぐる議論を手がかりに、この問題を振り返り、今後の検討のための論点を整理したい。
⇨指定発言:木矢 幸孝(公共政策研究分野 特任研究員)
2022年10月12日、以下のように公共政策セミナーが行われました。
〈報告概要(敬称略・順不同)〉
報告1
報告者: | 武藤 香織(公共政策研究分野 教授) |
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タイトル: | 研究への患者・市民参画(PPI/E)の現状と課題 |
要旨:
近年、日本でも研究への患者・市民参画(PPI/E)の必要性に関する認識が広がり、実施報告に関する学会発表や論文も見かけるようになった。日本は、研究者の自主性を重んじ、モダリティ別・疾患別での研究費や政策での記述に基づくインセンティブに頼った普及となっているが、好事例の報告等を通じて、導入の抵抗感を下げる効果も出ているといえるだろう。一方で、そろそろ研究倫理指針などにおいて、PPI/E導入に関する倫理的な根拠や研究者等の責務を明確化することも考える必要がある。また、より具体的な実務のあり方(倫理審査での取扱い、公募手続き、守秘義務、利益相反管理、費用・謝金、論文等での記載事項、評価等)の議論も深める時期であろう。本報告では、AMED『患者・市民参画(PPI)ガイドブック』(2019)発行以降の国内での概況を踏まえ、これらの課題に対して検討中の内容を報告する。
⇨指定発言:永井 亜貴子(公共政策研究分野 特任助教)
9月14日13時半から公共政策セミナーが開催されました。
報告1
報告者: | 河合 香織(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程) |
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タイトル: | ゲノム医療時代における『遺伝学的責任(genetic responsibility)』の再考 |
要旨:
1970年代以降、遺伝子検査(GT)に関する議論を形成してきた道徳的概念が「遺伝的責任」(genetic responsibility,GR)で、LipkinとRowley(1974)によって作られた造語である。この概念に対するもう一つのアプローチは、社会学者であるニコラス・ローズらによって提唱され、GRが個人の生活スタイルに生政治的影響を反映していると理論化した(Lemke、2006;Rose、2007)。
本報告では、このような遺伝学的責任の議論を踏まえ、日本におけるゲノム医療時代における遺伝学的責任の射程について再考するという博士課程での研究計画について発表する。
⇨指定発言:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)
報告2
報告者: | 北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | 患者・市民の視点を医薬品の安全な使用のために活用する際の課題の検討 |
要旨:
医薬品には副作用等のリスクがあるため、製造販売後も引き続き副作用等の情報収集を行い、医薬品の安全かつ適正な使用のために活用することが重要である。
収集する情報源として、これまで主であった製薬企業や医療従事者からの情報に加え、患者から寄せられる情報の利点が注目され始め、医薬品の安全な使用のために当該情報を規制当局の意思決定に活用する取組みが世界的にも進んでいる。しかし、我が国でのこうした取組みは、他の先進国に比べて大きく後れている。
そこで、この打開策を検討するべく、本研究では、主として患者・市民からの情報収集の手段について、文献研究及び調査研究(アンケート調査)により国内外の現状を調査している。
本報告においては、これまでの検討を踏まえて今後実施予定の、患者・市民を対象とした調査計画(案)を共有したい。
⇨指定発言:武藤 香織(公共政策研究分野 教授)
以下のように公共政策セミナーが開催されました。
報告1
報告者: | 楠瀬 まゆみ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | 医学研究におけるPHRデータ共有の共有と利活用に関する一般市民に対する意識調査 |
要旨:
2020年7月の閣議決定により、「データヘルス改革」の実現に向けた取り組みが進められている。そこでは、健康・医療・介護分野データの有機的連結によるパーソナルヘルスレコード(PHR)データシェアリングによる効果的・効率的な医療・介護サービスの提供や、マイナポータルなどを用いて健康・医療等情報をスマホ等で自分のパーソナルヘルスレコード(PHR)データを閲覧したり、民間企業・研究者がPHRビッグデータを研究やイノベーション創出に活用できる仕組みの構築が目指されている。
そのための一環として、国民のマイナカードの取得、健康保険証としての利用、公金受け取り口座の登録のインセンティブとして、サービスや商品と交換可能なポイントの付与をおこなっている。他方、研究の文脈においては、研究参加者への謝礼等の提供関しては、不当な誘因などの倫理的議論が存在する。
今回の発表においては、2021年におこなった医学研究におけるヘルスケアデータの提供と利活用に関する一般市民の意識調査から、特にリテラシーや、インセンティブとしてのポイント付与、一般市民の研究へのデータ提供の選好などの関係に焦点を当てて発表を行う。
⇨指定発言:河合 香織(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程)
報告2
報告者: | 佐藤 桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程) |
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タイトル: | アイヌ遺骨の研究利用をめぐる政策形成過程の検討 |
要旨:
19世紀後半から戦後に至るまで、アイヌの人々の遺骨は人類学的関心を集め、研究者やその協力者による発掘にさらされてきた。日本は2008年に「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を可決し、遺骨問題は内閣官房のアイヌ総合政策室で議論されている。遺骨を保管していた大学等に対する返還訴訟はしばしば紹介されることがあるものの、遺骨問題対応の政策的な決定過程に関する分析は多くない。
本発表では、アイヌ政策推進会議および作業部会の議事録から、アイヌ遺骨問題の議論の過程を検討し、特に「慰霊施設に集約した遺骨について、研究利用の可能性を残す」という方針がどのような議論を元に形成されたのかを紹介する。
⇨指定発言:北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
6月の公共政策セミナーが以下のように行われました。
〈報告概要(敬称略・順不同)〉
報告1
報告者: | 高嶋 佳代(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | 患者対象のFirst in human(FIH)試験における倫理的課題の探索 |
要旨:
治療法の臨床応用には、人を対象とした臨床試験が必要となる。とりわけ安全性検証を主目的として人で初めて実施される、いわゆるFirst in human試験(FIH試験)には不確実性や未知のリスクへの懸念が考えられ、そのリスクベネフィットの衡量はより複雑性を増すと考えられる。このような臨床試験の倫理的課題の検討は、理論研究や質的研究がなされてきているが、抗がん剤などの生命に関わる疾患を対象としたものが多く、生命の質に関わる疾患への検討はまだ十分であるとはいえない。そこで本研究では、新規性の高いFIH試験の倫理的課題を検討し、今後実施される同様の研究への一助とすることを目的として、2014年に世界で初めてiPS細胞を用いたFIH試験に焦点を当て、研究に関与した様々な立場の当事者にインタビュー調査を行なっている。
本報告では、インタビュー調査の進捗について報告する予定である。
⇨指定発言:楠瀬 まゆみ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
報告2
報告者: | 飯田 寛(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | 日本の生命保険と労働分野における遺伝差別とは何か(博士論文の構成と概要) |
要旨:
遺伝情報はその固有性、不変性、親族共有性、将来予見性などから特別な情報であるとする遺伝情報例外主義の観点から、特に生命保険と労働の分野は注目された分野であり、諸外国では生命保険や労働の分野で遺伝情報を使用することは差別であるとして法律等で禁止する動きがある。一方で、日本では個人情報保護法以外に遺伝情報について定められた規制はなく、生命保険業界ではガイドラインがいまだ公表されておらず、労働の分野も限られた厚生労働省の指針等があるだけで、遺伝情報の取扱いに関する倫理的問題に議論が進んでいない状態である。そこで、議論を進めるために日本の公的・民間保険の環境、日本の労働者の健康管理の責務・環境において、遺伝差別とはどういう形態/態様なのかを、海外との比較において具体的に示すことを本研究の目的とする。今回は本研究(博士論文)の構成・概要について報告する。
⇨指定発言:佐藤 桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程)
2022年度 第1回公共政策セミナー
本日第1回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時: 2022年5月11日(水)13:30~16:00
発表者1: | 原田 香菜(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員) |
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タイトル: | 英国の生殖補助医療・胚研究に関する制定法とヒト配偶子の位置づけの変遷~Yearworth判決を契機として |
要旨:
英国では、ヒトの配偶子および胚を用いた生殖補助医療の実施、研究におけるヒト配偶子・胚の取り扱いについて、Human Fertilisation and Embryology Act 2008 (HFEA 2008と略称)により定められる。わが国でも2020年12月、ようやく生殖補助医療特例法が制定されたが、配偶子・胚の提供等についての行為規範、そして実施情報の保存・管理・開示等に関する仕組みは未整備である。英国HFEA 2008と制度の成り立ち、およびヒト配偶子の法的性質・その保管契約について示した近時の判例をとおして、今後、わが国で生殖補助医療・ヒト胚研究について横断的かつ連続的な法規制を設けることの適否、そして規律のあり方について検討する端緒としたい。
発表者2: | 亀山 純子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員) |
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タイトル: | 医療AIの研究開発・実践に伴う倫理的・法的・社会的課題に関する研究 |
要旨:
医療におけるAIブームの中核ともいえるディープラーニングを含むニューラルネットワークの基礎は、人工知能という言葉が生まれる以前に存在していた。1943年には、Waren S. McCullochとWalter J. Pittsによって人工ニューロンが発表されたが、この応用として注目を集め、期待されたのが医療分野であった。第3次AIブームが画像認識分野を中心に始まったことは有名であるが、超高速高精度で自律的に情報処理を可能とするAIは、医師の診断の高速化と精度向上を支援するツールとして期待されている。今後は、これまでの診断のみならず、予防や治療といった側面でのAI活用を推し進める研究開発もさらに規模を拡大していくものと思われる。一方で、AIによる解析においては、患者の個人情報の二次利用にあたって、必要な匿名加工に関して定めた「次世代医療基盤法」への適応も留意した上で慎重に進める必要がある。AI活用が、国民の理解と社会の受け入れを得られるような、より安全で有益なものとして進展されることを望む声も高まっている。今回、日本人市民を対象とした調査研究によって得られた成果を報告する。
本日第10回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:3月9日13時半~16時00分頃
発表者1: | 高嶋 佳代(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | 患者対象のFirst in human(FIH)試験における倫理的課題の探索-リスクベネフィットの比較衡量に関する検討- |
要旨:
治療法の臨床応用には、人を対象とした臨床試験が必要となる。とりわけ、前臨床試験後に安全性検証を主目的として人で初めて実施される、いわゆるFirst in human試験(FIH試験)には不確実性や未知のリスクへの懸念が考えられ、そのリスクベネフィットの衡量はより複雑性を増すと考えられる。FIH試験のリスクべネフィットへの倫理的側面に関しては、主に抗がん剤等のFIH試験を対象に議論が行われてきたが、研究参加者や研究者等さまざまな立場からの意見をもとにした検討は、十分になされているとは言えない。そこで本研究では、FIH試験の実施に関する多面的で総合的なリスクベネフィット衡量のあり方を検討し、今後のFIH試験の計画立案や倫理審査への一助とすることを目的として、iPS細胞を世界で初めて用いたFIH試験に焦点を当て、研究に関与した様々な立場の当事者にインタビュー調査を実施している。本報告では、主に対象とする臨床試験の背景を示した上で、インタビュー調査の進捗について報告する。
発表者2: | 飯田 寛(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | オーストラリアでの生命保険における遺伝学的検査結果の取扱い-変更の背景・経緯と自主規制の内容- |
要旨:
遺伝情報はその固有性、不変性、親族共有性、将来予見性などから特別な情報であるとする遺伝情報例外主義から諸外国では遺伝情報の取扱いを制限する動きがみられる。特に生命保険は注目された分野であり、遺伝学的検査結果をもとに危険選択をすることで、生命保険の加入できない、もしくは保険料が高くなることは差別であるとしてその使用を法律等で禁止する動きがある。一方で、生命保険会社の視点では、情報を入手できなければ、逆選択として保険数理に影響があるとの反論がある。諸外国が生命保険会社での遺伝学的検査結果の使用を禁止する中で、オーストラリアはこれまで加入者に遺伝学的検査結果の告知を義務付け入手していた。しかし、2019年に期限付きで一定の保険金額については遺伝学的検査結果を入手しないとする業界の自主規制を制定した。このオーストラリアの生命保険会社の遺伝学的検査結果の取扱いの変更の背景と経緯および英国のモラトリアムと比較した自主規制の内容について報告する。
本日第9回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2月9日13時半~16時20分頃
発表者1: | 楠瀬 まゆみ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | クラウド・コンピューティングを用いたゲノム研究に関する一般市民の意識調査 |
要旨:
近年、オープンサイエンスの推進のため、データの収集、保存、解析、共有/公開というサイクルを円滑に回すことができるデータ・エコシステムの構築が求められている。ヒトゲノム研究においては、技術の向上によりゲノム解析に要する時間やコストが減少、そこで生み出されるデータは膨大で年々増加傾向にある。ある試算によると2025年までに1億から20億のヒトゲノムデータが解析される可能性があり、その保存のためだけで2~40エクサバイトのストレージ容量が必要と言われる。また国際共同研究においては、HDD、SSD、SSHD等の大容量記憶装置を用いて物理的にデータを移動させることには限界がある。そのため国際共同研究においてはクラウド・コンピューティング(以下、クラウド)を用いる場面が多くなっている。しかしゲノム研究におけるクラウド利用には、プライバシー保護の問題、国際間での異なるデータ保護法令への対応、データ・ガバナンスの問題が指摘され、ゲノム研究におけるクラウドの活用にあたっては研究参加者や一般市民の理解の重要性も指摘されている。他方日本においては、研究におけるクラウドの利活用について言及した規制した指針や法令は無く、またゲノム研究における研究参加者や一般市民のクラウドの理解や受容についての調査も見られない。そのため、2021年3月に一般市民を対象に医学研究におけるクラウドの利活用に関する意識調査を試行した。本発表では、その意識調査の結果について発表する。
発表者2: | 船橋 亜希子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員) |
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タイトル: | ディオバン最高裁決定を読む |
要旨:
2021年6月28日に出されたディオバン最高裁決定について報告する。裁判例においては一貫して、被告人がデータを改ざんし虚偽の図表等のデータを作成していた等の事実が認められている。それにもかかわらず、製薬企業及びその社員(当時)について一貫して無罪とされたのはなぜか。本事案における刑事責任とその判断構造について検討してこれを明らかにし、刑事責任追求の意義と限界を考える。検討にあたって必要な刑法の基礎的な部分についてもご紹介しながら、刑法的観点からでは検討し尽くせないように見える本事案について話題提供をする。
本日第8回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:1月12日13時半~16時
発表者1: | 北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | 患者・市民の視点を踏まえた医薬品情報の提供を実現するための課題の検討 |
要旨:
医薬品には副作用等のリスクがあり、製造販売後も引き続き情報収集することが、医薬品の安全かつ適正な使用のために重要である。収集する情報源として、これまで主であった製薬企業や医療従事者からの情報に加え、患者から寄せられる情報の利点が注目され始め、医薬品の安全な使用のために当該情報を規制当局の意思決定に活用する取組みが世界的にも進んでいる。
しかし、我が国ではこうした取組みが諸外国に比べて大きく後れているため、その原因を探り、状況の改善策の提案に繋げるべく、本研究では、①患者・市民からの情報収集、及び②患者・市民への情報発信の2つの要素について、文献研究及び調査研究(アンケート調査)により現状を調査していく予定である。本報告においては、計画中の医療従事者を対象としたアンケート調査に先立ち実施した関係者2名へのヒアリング結果を提示すると共に、それを踏まえた今後の調査計画(案)を共有する。
発表者2: | 永井 亜貴子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任助教) |
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タイトル: | がんゲノム医療の普及に向けた情報提供のあり方に関する研究 |
要旨:
2019年6月にがん組織の遺伝子を一括して網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査の保険適用が開始され、がんゲノム医療の体制整備が進められている。がん遺伝子パネル検査を受けた患者の検査データは、患者の同意に基づき、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録され、C-CAT調査結果の作成に用いられるほか、大学・企業などが研究・開発目的に利用(二次利用)するために提供される。本報告では、今後、がんゲノム医療を適切に推進していくために必要となるがんゲノム医療に関する情報提供のあり方について検討するために、がん患者を対象として実施したフォーカス・グループ・インタビュー調査の結果について報告する。
本日第7回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:12月8日13時半~16時半
発表者1: | 佐藤 桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程) |
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タイトル: | 先住民族のゲノム研究における日本とカナダの比較 |
要旨:
歴史上、マイノリティや立場の弱い人々が科学研究や医学研究の名の下に搾取された事例は枚挙にいとまがないが、世界各地に居住する先住民族の人々も、同様にICの軽視やヒト資料・データの不適切な利用といった被害を被ってきた。特にゲノム研究は、バリアントをある程度共有するマイノリティのコミュニティである先住民族にとって、バイオパイラシーや結果解釈の影響など、研究参加によって不利益を被る可能性が低くない。一方近年、ゲノム研究者側からも、世界的に見てサンプルがヨーロッパ系に偏っていることから、多様な人々の研究参加を求める声が上がっている。本発表では、このような状況を踏まえ、関連した日本における状況・取り組みと、海外、特にカナダの動きを対置し、博論研究における問題意識とアプローチの足場を固めることを目指す。
発表者2: | 武藤 香織(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授) |
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タイトル: | 遺伝情報の取扱いと差別禁止について |
要旨:
遺伝情報に基づく差別(genetic discrimination)とは、「実際の、もしくは推測された遺伝的特徴に基づいて、個人やその血縁者に対し不利な取り扱いを行うこと」と定義される。ゲノム医療が本格化されるなかでも、議論が進まない遺伝情報に基づく差別防止について、最近の模索を共有する。
本日第6回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:11月10日13時半~16時
発表者: | 河合香織(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程) |
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タイトル: | 遺伝性疾患における結婚出産の葛藤とは何かーハンチントン病を手がかりに |
要旨:
遺伝性疾患の患者、家族にとって、遺伝的なリスクの家族内での共有のあり方や、本人の選択として委ねられている結婚や出産については大きな悩みであった。本研究ではハンチントン病(HD)を取り上げ、常染色体優生遺伝疾患に関して診療や看護・遺伝カウンセリングなどを行った経験のある医療従事者、さらに告知や結婚・出産の悩みを抱える患者、家族に半構造化インタビューを実施。遺伝的なリスクや結婚・出産についての情報提供や助言の現状、また患者・家族が抱える葛藤を明らかにし、今後のあり方を検討する。
本日第5回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:10月13日13時半~16時
発表者1: | 李 怡然(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 助教) |
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タイトル: | 認知症関連疾患の超早期予測・予防の倫理的課題を考える |
要旨:
認知症・アルツハイマー病をめぐる新たな展開として、症状があらわれる前の超早期に疾患の発症を予見し、予防的に介入することを目指す研究開発が推進されている。脳に限らず多臓器間の全身ネットワーク変容を包括的に解明し、次世代イメージング・センシング技術を利用する、AI・数理モデルを用いたシミュレーションを開発し臨床応用するなど、新規技術を複合的に活用することが計画されている。しかし、疾患の発症前予測・予防的介入は、従来の認知症対策や理念とは異なる方向性をもっており、人を対象に研究を行う上で配慮すべき事項、革新的技術を社会実装する上での諸課題も考えられる。そこで本研究では、関連する既存の文献を整理し、認知症の早期予測・予防の実現を目指す研究開発が人々や社会に与えるインパクトを考慮する上での基礎的な論点を抽出することを試みる。報告では、背景と先行研究を紹介し、この問題を考える端緒をつかみたい。
発表者2: | 井上悠輔(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 准教授) |
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タイトル: | パンデミック・ワクチンの展開を規定するもの:OECD諸国間の地域相関研究 |
要旨:
日本と同様、多くの先進国では、新型コロナウイルス感染症に関する予防接種が、国の主導のもとに展開されている。一時期の極端なワクチン不足の状況からは脱しつつあるものの、その進捗には国によって大きな開きがみられる。予防接種は臓器提供などと同様、個人の意思表明に限界の多い利他活動(Pywell, 2000)であるとされる。WHOは“voluntary”な予防接種の展開を推奨しているものの、ワクチンに関する「自由意思」は、自然発生的・内発的なものというより、各国・地域が置かれた状況によって規定される面も大きいことが考えられる。国の主導のもとに展開されるパンデミック・ワクチンの場合にはその傾向がより顕著になりうる。こうした各国の進捗の相違やその背景を検討する際、地域相関研究(Ecological Study)の手法は有効であると考える。OECD38か国における進捗(2021年5月~10月)に関して、説明変数の候補となり得る項目との相関関係分析/重回帰分析を行い、安定的に関連している項目の特定を試みた。
本日第4回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:9月8日13時半~16時
発表者1: | 高嶋 佳代(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | 患者対象のFirst in human(FIH)試験における倫理的課題の探索-リスクベネフィットの比較衡量に関する検討- |
要旨:
あたらしい治療法の臨床応用には、人を対象とした臨床試験が必要となる。この臨床試験においては、研究対象者は研究の実施によるリスクを引き受けつつ、その研究自体は研究対象者の利益を目的としたものではないとされている。とりわけ患者を対象とした、人で最初に実施する安全性検証を主目的とした臨床試験(FIH試験)には不確実性や未知のリスクへの懸念が大きく、そのリスクベネフィットの衡量はより複雑性を増すと考えられる。しかしながらこのようなFIH試験のリスクべネフィットの検討に関して、研究に関与するさまざまな立場からの検討は、未だ十分になされてはいない。そこで本研究では、FIH試験の実施に際して、多面的で総合的なリスクベネフィット衡量の必要性を明らかにし、今後のFIH試験の計画立案や倫理審査の一助とすることを目的として、FIH試験に関与した様々な立場の当事者にインタビュー調査を行う。本報告では、主に理論調査の結果を示すとともに、インタビュー調査の進捗について報告する。
発表者2: | 木矢幸孝(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員) |
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タイトル: | 遺伝学的リスクの告知/非告知という行為の体系的な説明に向けた試論 |
要旨:
遺伝性の病いをもつ人々は自己の病いの問題だけでなく、遺伝学的リスクの告知に問題を抱えうる。彼/彼女らは、子や血縁者に対して、いつ・どのように告知を行うべきかを思案し、場合によってはそれぞれの事情において告知を行わないこともある。遺伝学的リスクに関する告知研究は、主として告知を行う理由/行わない理由(非告知の理由)の分析、あるいは告知プロセス等を検討してきた。確かに告知/非告知の理由やそのプロセスの解明は重要であるが、先行研究では遺伝学的リスクの告知と非告知の理由の共通項にはあまり関心が払われていない。それにより、告知/非告知という行為を体系的に理解する手がかりを後景化させているのではないかと思われる。そこで本報告では、遺伝性の病いである球脊髄性筋萎縮症患者の語りを通して、告知/非告知、双方の理由の共通項に着目したうえで、告知/非告知という行為の体系的な説明に向けた試論の提示を試みる。
本日第3回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:7月14日13時半~16時
発表者1: | 楠瀬 まゆみ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | 医学研究へのヘルスケアデータの提供と利活用に関する一般市民の意識調査 |
要旨:
近年パーソナルデータの利活用が活発となり、医学研究においてもビッグ・データや機械学習などを用いたデータ駆動型研究も活発に行われている。そのようななか、Personal Data や Personal Health Record を本人の判断のもとで利活用する試みが行われている。加えて、企業の中には情報銀行や、その他独自の活動を通して、データ主体に情報提供料や特典等 の対価を受領することができる情報銀行サービスの提供を予定している企業も存在する。他方、医学研究の分野においては、研究参加の利他性の重視や不当な誘因の議論から、身体的侵襲を中心に組み立てられた従来の研究倫理の枠組みでは、研究対象者との利益共有の議論はあまり進んでこなかった。
このような背景において、2021年3月に一般市民を対象にヘルスケアデータ等の医学研究への提供と利活用に関する意識調査を行った。本発表においては、意識調査の結果の一部について発表を行う。
発表者2: | 北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | 患者・市民の視点を踏まえた医薬品情報の提供を実現するための課題の検討 |
要旨:
医薬品には副作用等のリスクがあり、製造販売後も引き続き情報収集することが、医薬品の安全かつ適正な使用のために重要である。収集する情報源として、これまで主であった製薬企業や医療従事者からの情報に加え、患者から寄せられる情報の利点が注目され始め、医薬品の安全な使用のために当該情報を規制当局の意思決定に活用する取組みが世界的にも進んでいる。しかし、我が国におけるこうした取組みは、諸外国に比べて大きく後れているのが現状である。そこで、我が国の現状の原因を探り、状況の改善策の提案に繋げるため、本研究では、①患者・市民からの情報収集、及び②患者・市民への情報発信の2つの要素について、文献研究及び調査研究(アンケート調査)により現状を調査していく予定である。本報告においては、調査研究に先立ち実施した関係者2名へのヒアリング結果を提示すると共に、それを踏まえた今後の調査計画(案)を共有したい。
本日第2回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:6月9日13時半~16時
発表者1: | 飯田 寛(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | 労働分野でのゲノム情報の取扱いをめぐる諸課題に関する研究-対象とするゲノム情報とは何か- |
要旨:
諸外国では、遺伝的特徴に基づく差別を防止するという観点からゲノム情報を保険や労働で利用することは、米国での遺伝情報差別禁止法(GINA)(2008)のほか、近年ではカナダでの遺伝情報差別禁止法(2017)、中国での人類遺伝資源管理条例(2019)などのように原則として禁止している国がある。一方、日本では法規制は存在しない。今後、ゲノム医療が普及することにより、遺伝学的検査の結果などのゲノム情報が労働者自身や労働者の主治医等から産業医あるいは健康保険組合に提供される機会が増加する可能性があるが、事業者と産業医、健康組合がどのような問題意識を持っているか、ゲノム情報の利用実態などは明らかでない。今回の発表では、アドバイザーより指摘のあった当研究にあたってのゲノム情報は何を対象とするのかの問いに対し、ゲノム情報例外主義とその批判の先行文献から対象とするゲノム情報を紐解いてみたい。
発表者2: | 佐藤桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程) |
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タイトル: | 科学研究の成果発表における「人種」という用語の使用 |
要旨:
第二次世界大戦以降、優生思想への反省から、raceという概念は科学的基盤を持つヒトの区分ではなく、文化的・社会的構築物であるという考え方が広まった。一方、疫学や遺伝学は、集団ごとの特徴に着目することによって、遺伝的要因・環境的要因と疾患の関連性を明らかにしてきた。その集団を指す際も、1950年代頃から、populationやethnicityといった用語が使用されるようになっている。しかし、日本においてはraceという用語および、ヒト集団を指すpopulationが、いずれも「人種」という用語にまとめて翻訳される事例が現在においてもしばしば見受けられる。これは新聞記事などだけでなく、大学や研究機関のプレスリリースにおいても同様である。
本発表では、日本語の「人種」も科学的文脈では可能な限り使用せず、言い換えていくべきではないかという問題意識に基づき、国外および国内の経緯と現状に関する先行研究を紹介する。その上で、日本の遺伝関連学会における「人種」およびその代替と考えられる用語の使用についてサーベイを行う研究計画について発表を行いたい。