11月の公共政策セミナー

2024/11/08

2024年10月の公共政策セミナーは、以下の通り、行われます。

 

◆日時: 2024年11月13日(水)13:30~16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:河田 純一(公共政策研究分野 特任研究員)

タイトル:双方向バイオバンクプロジェクトにおけるPPI活動の報告

要旨:バイオバンク・ジャパン(BBJ)は、研究参加者とBBJの間で、相互に情報をやりとりするオンライン上のプラットフォームを構築し、運用する「バイオバンク・ジャパン登録者を対象とした双方向バイオバンクプロジェクト」を開始した。本計画では、ICプロセスにおいても医療機関でのタブレットを用いたICなど、電磁的な仕組みを取り入れている。しかし、対象者の年齢層が高いこと、BBJに登録してから本研究へのリクルートまでの期間が長いことが課題となった。このため、ICプロセスやそこで用いる資材の作成過程に、患者・市民の視点を取り入れ、よりよいICとすることを主な目的とした患者・市民参画(PPI)の取り組みを導入した。本報告では、BBJでの新たなIC取得&ICFに関するPPI活動の実施プロセスについて、その成果と課題を検討し報告する。

⇨指定発言:胡 錦程(学際情報学府 修士課程)

 

◆報告2

報告者:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)

タイトル:患者・市民参画(PPI)によるELSIの検討〜①難病の全ゲノム解析へのPPI・②医療・福祉アーカイブズとPAB〜

要旨:本報告では、研究への患者・市民参画(PPI)の実践を通じて得られたELSIの示唆について、2つの事例について共有したい。

①厚生労働省が推進する「全ゲノム解析等実行計画」では、これまでにない規模で難病とがんの患者・家族の全ゲノム解析を実施し、データベースを構築し、創薬や診断技術等の研究開発に活用することを目指している。また、事業の推進に際して生じるELSI(倫理的法的社会的課題)への対応と患者・市民参画(PPI)の実装を事業計画に明文化し、2025年度の事業実施組織の設立に向けて様々な取り組みが行われてきた。報告者らは難病の全ゲノム解析とゲノム医療の推進に際して、ICF(説明同意文書)と倫理的課題の検討のプロセスで、2022年より難病の患者・家族協力を得てPPIの実践を行なってきた。これまでのPPI活動を通じて明らかになった難病の全ゲノム解析の倫理的配慮の課題を報告する。
②過去のヘルスケア施策に関する倫理的課題の検証において、医療・福祉に関する資料の保管と利活用をめぐる課題はその進展の大きな障壁となってきた。過去に医療機関や福祉施設等が作成した資料や記録の保管と利活用については、公文書管理の枠組みを除いては日本では明確なルールの体系が存在せず、法令や指針が定める保管期限を過ぎた資料や記録は破棄されたり散逸していく現状がある。患者・市民にとって家族や祖先の情報が含まれる可能性があるアーカイブズをどのように公共的に利活用していくべきかについて、患者・市民アドバイザリーボード(PAB)を通じて患者・家族・当事者の視点を取り入れながら倫理的課題を焦点化していく試みを試行的に行っており、本報告ではこれまでの取り組みの背景と経過について報告する。
⇨指定発言:武藤 香織(公共政策研究分野 教授)

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10月の公共政策セミナー

2024/10/09

2024年10月の公共政策セミナーは、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2024年10月9日(水)13:30~16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:松山 涼子(新領域創成科学研究科 博士後期課程)
タイトル:(仮)子どもを対象とした患者・市民参画についての文献調査

要旨:患者・市民参画(Patient and Public Involvement: PPI)は、研究参加者の権利保護と適切な研究の推進において、研究倫理の観点から重要な役割を果たす。これまでは主に成人を対象に実施されてきたが、国連の「子どもの権利条約」に基づき、子どもを対象としたPPIの実践を推進する動きも進展している。また、PPIは主に臨床研究で行われることが多いが、本研究では観察研究および出生コホート研究に焦点を当てて調査を実施した。本報告では、博士論文に向けた文献調査の暫定結果を紹介する。

指定発言:李 怡然(公共政策研究分野 准教授)

 

◆報告2

報告者:武藤 香織(公共政策研究分野 教授)

タイトル:最近の取り組みから頭を冷やして考える

要旨:当研究室で進めている取り組みや個人として関わっている研究活動について、少し頭を整理して共有する時間としたい。

(後日、更新予定)

⇨指定発言:河田 純一(公共政策研究分野 特任研究員)

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9月の公共政策セミナー

2024/09/11

2024年9月の公共政策セミナーが、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2024年9月11日(水)13:30~16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:楠瀬 まゆみ(新領域創成科学研究科 博士後期課程)
タイトル:医学研究での利益共有に関する倫理的・法的・社会的課題―データ集約型研究を手掛かりに

要旨:人を対象とする医学系研究においては、研究参加者や研究参加コミュニティへの利益の共有や提供は、研究への不当な誘引や被験者保護の観点から控えられる傾向にある。他方、国際的に実施される医学系研究で、特に開発途上国において実施される研究では、利益共有の問題は中心的な議論の一つであった。

 博士課程では、先行して議論の蓄積がある「先進国による開発途上国における研究」や「国際的なヒトゲノム研究」等での「利益共有(benefit sharing)」の概念を参考にし、非侵襲・非介入の低リスクのデータ集約型研究を手掛かりに、「先進国で実施される先進国の人々を対象とする医学系研究」における研究参加者や研究参加コミュニティとの利益共有の実践に向け、以下の問題を明らかにすることに取り組んだ。

 1) 先進国で実施される医学系研究における利益共有とは何か。共有されるべき利益とは何か。
 2) 市民は、研究機関や企業が、研究開発のためにデータを提供した研究参加者と、何らかの利益の共有を行うべきであると考えているのか。また、どのような利益の共有を期待しているのか。
 3)日本の人を対象とする医学系研究において、研究参加者や研究参加コミュニティとの研究利益の共有を始めるには、どのようにすれば良いか。
 本発表では、博士論文の概要について報告を行いたい。

指定発言:松山 涼子(新領域創成科学研究科 博士後期課程)

 

◆報告2

報告者:島﨑 美空(新領域創成科学研究科 博士後期課程)

タイトル:出生前検査である胎児超音波検査に関する経験:経産婦へのFGIより

要旨:日本では、妊婦健診において定期的に提供される通常超音波検査とは別に、出生前検査として提供される胎児超音波検査がある。日本産科婦人科学会•日本産科婦人科学会医会が2023年に改訂した「産婦人科診療ガイドライン産科編」では、胎児超音波検査は特定の先天性遺伝性疾患の非確定検査であるとともに、形態異常の確定検査でもあると記載されている。これまで、同じく先天性遺伝性疾患の非確定検査であるNIPTを中心に、検査の倫理的課題が議論され、その課題に配慮した情報提供やIC、意思決定支援のあり方が示されてきた。これを参考にしながらも、胎児超音波検査については、確定検査の側面や、治療につながると言った性質があり、その特性を考慮した検査のあり方を検討する必要がある。そのためには、まず胎児超音波検査前から診断後の一連の流れの中で、どのような経験がされ、課題があるのかを妊婦、医療従事者の双方の視点から理解することが必要である。本発表では、昨年度末に行った経産婦へのFGIの結果と、発表者の博士論文の構想を共有する。

⇨指定発言:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)

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7月の公共政策セミナー

2024/07/10

2024年7月の公共政策セミナーが、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2024年7月10日(水)13:30~

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

  

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:佐藤 桃子(公共政策研究分野 学際情報学府博士後期課程)
タイトル:日本における先住民族を対象とした科学研究の倫理的課題 :研究をめぐる言説に着目して

要旨:2019年12月、北海道アイヌ協会と日本人類学会、日本文化人類学会、日本考古学協会は「アイヌ民族に関する研究倫理指針(案)」を公表した。この指針案はまだ完成していないものの、日本で最初のエスニックマイノリティを対象とした研究の倫理ガイドラインになると考えられる。本発表では、この指針案の成立につながる議論の分析結果を報告する。その際、アイヌ民族の遺骨を対象とした研究を肯定する言説、否定する言説、当事者の中の意見の多様性に特に焦点を当てる。

指定発言:楠瀬 まゆみ(新領域創成科学研究科 博士後期課程)

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6月の公共政策セミナー

2024/06/12

2024年6月の公共政策セミナーが以下の通りに行われました。

◆日時: 2024年6月12日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:木矢 幸孝(公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル:認知症の超早期予測・予防の倫理的課題:FGIの結果からみえてきたこと
要旨:認知症研究に関する新たな展開として、症状があらわれるよりも前に超早期に疾患の発症を予測し、予防することが可能な医療技術・治療薬の開発が目指されている。認知症高齢者やその前段階にあたる軽度認知障害(MCI)の人びとだけでなく、無症状の市民をも対象に、発症前予測や予防が追求される。このような医療技術等が社会実装される際には実際に享受しうる市民がその予測法や予防的介入をどのように評価しているかを把握することが肝要である。しかし、この点はいまだ十分に明らかにされていない。そこで本報告では、症状があらわれるよりも前に認知症を超早期に予測・予防する医療技術を日本の市民はどのように捉えているかについて、2023年10月に実施したフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)の結果を発表する。調査の背景や先行研究の状況を踏まえ、FGIからみえてきたことは何であったのか、社会実装に向けた倫理的課題を考えたい。
指定発言:佐藤 桃子(学際情報学府 博士後期課程)

◆報告2
報告者:北尾 仁宏(公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル:新興感染症の蔓延時等におけるCHIM研究とその法的諸課題の概観
要旨:COVID-19パンデミックを受けて、先進国を中心に100日ミッションと呼ばれる国際プロジェクトが進行中である。次のパンデミックでは感染症の発生からワクチン等の実地投入までを100日以内で完遂しようというこの極めて野心的な計画を達成するために、有力な方策として、健常者に人為的な感染を惹起させることを伴うControlled Human Infection Model(CHIM)の利用が日本でも模索されている。しかし、一般に現在の日本ではCHIMを利用した研究に対する認知度自体が低調で、その社会的正当性を担保する論拠をめぐる議論も全く足りていない。
 本報告では、CHIM及びCHIM研究自体の意義を確認した後、英蘭豪その他の各国の経験も踏まえたCHIM研究の課題を法的観点から広覧する。各論点に対する報告者自身の暫定的な見解も一応提示するが、むしろ論点提示を通じた議論の叩き台を準備することが本報告の主たる目的である。
指定発言:武藤 香織(公共政策研究分野 教授)

 

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5月の公共政策セミナー

2024/05/12

2024年5月の公共政策セミナーは以下の通りに行われました。

 ◆日時: 2024年5月8日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者
:三村 恭子(公共政策研究分野 学術専門職員)
タイトル:
胎児をみる超音波検査のELSI検討~FGIデータからみえてきたこと
要旨:
妊娠中に実施される超音波検査には、妊婦健診で全ての妊婦に実施される通常の超音波検査と、出生前検査のひとつとして、ハイリスクと判断される妊婦や受検を希望する妊婦に実施される胎児超音波検査がある。いずれの検査においても、得られる画像から胎児の形態異常が発覚したり、染色体異常の可能性が指摘される場合があるが、検査実施における妊婦や家族への情報提供や配慮のありかたなどに関する統一見解はまだない。そこで、胎児をみる超音波検査を受けた経験をもつ女性たちへフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)を実施し、その経験(検査情報の取得、同意の手続き、検査環境、検査をどう理解しているか・どのような思いを抱いているかなど)について聞いてみた。本報告では調査結果からみえてきた超音波検査受検経験の特徴と示唆されるELSIについて報告する。
指定発言:木矢 幸孝(公共政策研究分野 特任研究員)

 

◆報告2
報告者
:村上 文子(学際情報学府 修士課程)
タイトル:
認知症高齢者の意思決定支援における現状と課題
要旨:
社会福祉における動向のなかで、近年目立つ傾向の一つとして「Supported Decision Making」という言葉が頻繁に使われるようになったことが挙げられる。定訳ではないが主に「意思決定支援」とされているこの言葉の定義に疑問をもち、国内の先行研究および国が策定したガイドラインに示されている意思決定支援の定義を整理したところ、明確に示されているものはなかった。このことから、意思決定支援の遂行にあたっては、実際に支援を行う個人や団体の解釈によるところが大きく、実践現場間での意思決定支援の実態に差が生じてしまっているのではないかという問題意識にあたった。そこで認知症高齢者の意思決定支援に関する先行研究を調べたところ、実際のケア内容について、介護従事者を研究対象として行われたものはこれまでにないことがわかった。これらの課題を踏まえ、研究計画を考案した。
 以上の調査や計画は、発表者の修士課程入学試験における研究計画に基づくものである。修士課程においては身寄りのない高齢者の意思決定支援に着目したいと考えており、その足がかりとなる「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(厚生労働省,2019年)を最後に紹介する。
指定発言:北尾 仁宏(公共政策研究分野 特任研究員)

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3月の公共政策セミナー

2024/03/13

3月の公共政策セミナーは以下の通りに行われました。

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◆日時: 2024年3月13日(水)13:30~16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

報告1

報告者:楠瀬まゆみ(新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 後期博士課程)

タイトル:人を対象とする医学系研究における利益共有(Benefit Sharing
要旨:人を対象とする医学系研究においては、研究参加者や研究参加コミュニティへの利益の共有や提供は、研究への不当な誘引や被験者保護の観点から控えられる傾向にある。他方、国際的に実施される医学系研究で、特に開発途上国において実施される研究では、利益共有の問題は中心的な議論の一つであった。本発表では、利益共有に関して先行して行われてきた国際研究の議論を整理し、日本を含む先進国内における研究参加者や研究参加コミュニティへの利益の共有の議論を行うための課題についてまとめたい。
指定発言:北尾 仁宏(公共政策研究分野 特任研究員)

報告2

特別報告:井上 悠輔(公共政策研究分野 准教授)

タイトル:医科研・公共政策での日々と次のことなど
要旨:医科研・公共政策では、助教の頃から14年間、大変お世話になりました。1日1日がとても尊いものだったと思います。懐かしい写真を見ながら、学部時代のことから次の異動先のことまで話す時間にします。 

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2月の公共政策セミナー

2024/02/14

2月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

◆日時: 2024年2月14日(水)13:30~16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナ室/Zoom併用開催 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:李 怡然(公共政策研究分野 助教)
タイトル:欧州における健康医療データ利活用の動向と権利保護の議論
要旨:近年、健康医療データを本人の診療・ケアのために一次利用するとともに、医学研究や創薬のために二次利用することが国際的に推進されるようになった。たとえばEU(欧州連合)では、加盟国間でデータを統合することで利活用を促進し、同時に患者・市民のデータ管理権を向上させるためのインフラ構築と法整備が進められている。日本でも、二次利用を含むデータ利活用が目指されているものの環境整備は十分に進んでいない中で、先行する欧州での取組みや目下直面する課題から、手掛かりとなる点も多いと考えられる。
本報告では、2023年下半期にかけてスイス連邦工科大学チューリッヒ校( ETH Zürich  )にて訪問研究員として滞在した経験を報告し、スイスおよびEUにおけるバイオバンクやゲノム研究、国境を超えたデータの共有をめぐる動向、患者・市民の権利保護とデータ倫理に関する論点を紹介したい。
指定発言:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)

 

◆報告2

報告者:河田 純一(公共政策分野 特任研究員)

タイトル:慢性骨髄性白血病の治療における共同意思決定(SDM)

要旨:慢性骨髄性白血病(CML)は、これまで分子標的薬の生涯にわたる服薬が基本的な治療方針であった。しかし、2023年7月に出された『造血器腫瘍診療ガイドラインガイドライン 2023年版 第3版』において、無治療緩解維持(TFR)が臨床における治療目標のひとつに加わった。CML患者にとって、これは、治療方針について情報提供を受け、治療目標の(再)設定が必要になることを意味する。本報告では、2023年6-7月にCML患者家族を対象に大塚製薬と患者会が共同で行った意識調査の結果をもとに、CML患者が診療においてからどのような情報提供を受け、また、自らどのような情報を得ているのか、そしてその上で自らの治療についてどの程度理解し、治療を受けているのかを明らかにする。その上で、ICに基づく共有意思決定(SDM)の重要性を指摘したい。

⇨指定発言:島﨑 美空(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)

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1月の公共政策セミナー

2024/01/10

1月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

◆日時: 2024年1月10日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:佐藤 桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース博士後期課程)
タイトル:カナダ滞在報告:ゲノム研究における多様性

要旨:2023年秋にカナダのMcGill大学Centre of Genomics and Policyに滞在した報告を行う。Centre of Genomics and Policyは法・医学・公共政策の観点から分野横断的に、ヒトの健康の促進や予防に関する社会倫理的・法的規範を分析している。ここでの授業の聴講および、実施したインタビュー調査と共同研究について紹介する。共同研究では、ゲノム研究における参加者の多様性に着目した。GA4GH (Global Alliance for Genomics and Health) などさまざまな機関がゲノム研究の多様性について提言を出しているが、日本のゲノム研究者にとっては直接当てはまらない・考慮しづらいケースもある。共同研究では、日本において考慮しうるゲノム研究参加者の多様性について検討したものである。
⇨指定発言:李 怡然(公共政策研究分野 助教)

◆報告2
報告者:亀山 純子(公共政策分野 特任研究員)
タイトル:ヘルスケアにおけるAI研究の倫理的、法的、社会的課題(ELSI)と報告ガイドライン

要旨:人工知能(AI)対応の医療機器の承認台数および開発台数は、増加を見せている。この傾向は、今後も続くことが予想される。一方で、医療は、人々の生命や健康に深く関わる活動である上、人々の生活の基盤でもある。AIの設計や活用を誤れば、個人や社会への倫理・人権に関する様々な問題を引き起こす可能性を有する。立法府がAIの規制を急ぐ現況の中で、医療AIの開発に関わる研究者の取り組み方針についても提案が示されてきた。しかしながら、このアプローチについてはコンセンサスがまだないのが現状である。
本報告では、医療AI研究者による成果公表についての具体的な指針を示す「報告ガイドライン」に注目する。このガイドラインは、研究開発時の工程やデータ管理についての透明性や評価可能性を高めることを通じて、AIの展開や実装の基盤となるものである。一方、近年では、こうしたAIの設計や使用方法がELSIと深く関わっている点も指摘されている。ELSIに関する研究者の役割が問われる中、報告ガイドラインの位置づけにも変化が求められている。今回、医療AI研究にかかる主要な報告ガイドラインについて、ELSIに関する記載を整理し検討したので報告したい。
⇨指定発言:河合 香織(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース博士後期課程)

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12月の公共政策セミナー

2023/12/13

12月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

◆日時: 2023年12月13日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:河合香織(大学院学際情報学府博士課程)
タイトル:遺伝性疾患における結婚出産に関する助言のあり方の検討-難病情報センターを手掛かりに

要旨:遺伝学的特徴による結婚や出産をめぐる悩みは、患者・家族にとって切実な問題であることが、当事者の声から明らかになっている。しかし、十分に横断的に議論が尽くされているとは言い難い。1980年代から1990年代にかけては、遺伝性疾患の難病患者に向けた助言が掲載される『患者と家族のためのしおり』において、結婚や出産について可否判断にまで踏み込んだ主観的な記述が見られた。2000年代以降、遺伝カウンセリングが制度化された後に、専門家から当事者に向けて提供されている公開情報としては、「難病情報センター」が存在する。この「難病情報センター」の情報提供のなかから、遺伝に関わる疾患を抽出し、結婚や出産についてどのような助言や情報提供がなされているか分析した。それにより、医療従事者が遺伝性疾患の当事者の結婚や出産について、どのような情報提供をしているのかの現状を明らかにし、 そのありようを検討する。
⇨指定発言:亀山 純子(公共政策研究分野 特任研究員)

◆報告2
報告者:永井 亜貴子(新領域創成科学研究科 特任研究員)

タイトル:双方向バイオバンク構築に向けたインターネット調査の報告
要旨:バイオバンク・ジャパン(BBJ)の事業の効果的かつ戦略的な推進方策についての検討を行うために設置された「バイオバンク・ジャパンあり方検討委員会」がとりまとめた報告書において、BBJ第5期での双方向性デジタルバイオバンク構想が提案された。本報告では、双方向バイオバンクの構築に向けて、患者や市民を対象として実施した、バイオバンクへの関心・態度や、医学研究におけるICT活用に対する態度、ヘルスケアアプリの利用状況・利用ニーズ等に関するインターネット調査の結果について報告する
⇨指定発言:飯田 寛(公共政策研究分野 特任研究員)

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11月の公共政策セミナー

2023/11/08

11月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

◆日時: 2023年11月8日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆特別枠1
三村恭子(公共政策研究分野 学術専門職員)
*今回は特別に、先日着任された三村さんに自己紹介をして頂きます。
 
◆報告1
報告者:武藤 香織(公共政策研究分野 教授)
タイトル:近況報告➕戦傷医療の倫理を考える
要旨:20世紀における人を対象とした研究倫理の礎は、戦争犯罪や戦時期における医学の問い直しから始まった。その後、平時の臨床試験の倫理や医療の倫理に関する検討が深められ、国際的に調和するルール作りが進んだ。昨今、本邦においては南西諸島有事を想定した戦傷医療体制について、本格的に検討が始められている。現代における戦傷医療の倫理では、どのような倫理的ジレンマが検討されているのか。災害時における倫理も想定しながら、考えてみたい。
⇨指定発言:永井 亜貴子(公共政策研究分野 特任研究員)

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10月の公共政策セミナー

2023/10/11

10月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

◆日時: 2023年10月11日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
報告1
報告者:木矢 幸孝(公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル:認知症研究の超早期予測・予防に関する倫理的課題

要旨:日本では高齢化の進展にともない、認知症高齢者の数は増加の一途を辿っている。その数は2012年では462万人であったが、2025年には約675〜730万人(高齢者の約5人に1人)になると予測される。このような中、認知症・アルツハイマー病研究は新たな展開を迎えつつある。臨床症状が出現する前から潜在的に疾患が進行していると仮定したうえで、バイオマーカー等を利用して超早期に疾患を予測し、発症予防や症状遅延を目的とした予防法の確立が目指されている。このような超早期予測・予防は、自覚症状がない中で、長期的に人々に認知症の予測・予防を要請することになり、社会実装においては検討すべき倫理的課題が存在する。そこで本報告では、認知症・アルツハイマー病研究の超早期予測・予防が実装される社会における倫理的課題について、その背景や先行研究を整理したうえで報告する。
⇨指定発言:武藤 香織(公共政策研究分野 教授)

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9月の公共政策セミナー

2023/09/16

9月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

◆日時: 2023年9月13日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士後期課程
タイトル:患者・市民の視点を医薬品の安全な使用のために活用する際の課題の検討

要旨:近年、医薬品の開発・規制・安全な使用という一連のサイクルにおいて、医療を享受する受け身の存在であった患者が、より積極的なパートナーとして関与・参画する動きが世界的に活発化している。というのも、患者の参画によって、より患者のニーズに合った薬の開発、市販後の安全対策に繋がる等の利点が期待されるためである。しかし、我が国でのこうした取組みは比較的遅れており、特に、関係するステークホルダーの中でも規制当局への患者・市民からのインプットは極めて少ない。
この打開策を検討するべく、本研究では、主として患者・市民から規制当局への情報収集の手段について、文献研究及び調査研究(アンケート/インタビュー調査)により国内外の現状・課題を調査した。
本報告では、実施済みの調査結果の概略及び博士論文取りまとめに向けた論点(案)を共有したい。
⇨指定発言:木矢 幸孝(公共政策研究分野 特任研究員)

◆報告2
報告者:松山 涼子(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻修士課程)
タイトル:出生コホート研究参加時の成長に伴う倫理的課題の検討

要旨:出⽣コホート研究(birth cohort study)とは、観察研究の⼿法の⼀つであり、特定の時期に⽣まれた⼈⼝集団を胎⽣期や出⽣後から成⼈期まで追跡して、⽣活環境や化学物質への曝露、遺伝などがどう⼦どもの成⻑に関係していくかを明らかにする研究⼿法である。⻑い年⽉をかけてデータを収集することで、成⼈期の健康に関して有益な洞察を提供することができる。出⽣コホート研究が⻑期に維持されるほど、有益な科学的知⾒が創出される可能性もある⼀⽅、当該コホートの維持に莫⼤な投資が必要であることや、追跡率を維持できずに選択バイアスが起きる可能性もあり、出⽣コホート研究の成功には様々な困難が伴う。
出⽣コホート研究は、⼦どもから⼤⼈に成⻑するまで続く⽣涯の研究であるという⼤きな特徴を持ち、彼らのライフステージによって検討すべき倫理的課題は異なる。参加児の年齢が上がるにつれて、配慮すべき倫理的課題が増えるため、現場が接する状況はより困難になってきていると考えられる。各出⽣コホート研究は、⼦どもを対象とした研究や疫学研究に関する既存の倫理指針等を組み合わせ、それぞれの⼯夫を取り⼊れて倫理的配慮を⾏なっている。今回の発表では、⽂献調査を通じて、出⽣コホート研究の倫理的課題を暫定的ではあるが整理したい。
⇨指定発言:楠瀬 まゆみ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士後期課程

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7月の公共政策セミナー

2023/07/12

7月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

◆日時: 2023年7月12日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:高嶋 佳代(
大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士後期課程
タイトル:患者対象の革新的First in human試験における倫理的課題の探索
要旨:人を対象として臨床試験のなかでも、とりわけ既存の治療法とは大きく異なる革新的な技術を用いる治療法を初めて人に応用するFirst in Human (FIH)試験の場合、その治療法の侵襲性や性質などを考慮し、患者を対象とした試験が行われる。このような試験では、治療が必要な状態である患者に対して、試験に伴う不確実性や未知のリスクへの懸念も高い安全性試験を行うことになる。したがって研究対象者となる患者に対するリスク・ベネフィットと、社会的価値とのバランスをどのように検討すべきかについては、理論と経験をもとに慎重に考究する必要があると言えよう。本博士研究では、iPS細胞を世界で初めて人に応用した試験の審査に関する議事録分析と、試験に関連したメンバーや参加した患者を対象としたインタビュー調査をもとに、検討を行っている。本報告では、本研究の構成や分析手法、並びに進捗を報告する。
⇨指定発言:松山 涼子(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻修士課程)

◆報告2
報告者:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)

タイトル:希少疾患のELSI課題に関する各ステークホルダーを対象とした質的調査
要旨:希少疾患を対象とする研究開発においては、患者人口の希少性がもたらす研究実施の困難さや開発の経済的市場性の低さ、患者や家族の社会的脆弱性、遺伝性疾患等に対するスティグマ、プライバシーへの繊細な配慮の必要性など、他の疾患にはみられない複雑な倫理的な課題が生じうる。国際的な希少研究のコンソーシアムであるIRDiRCで組織されたワーキンググループでは、各国が公募研究で取り組むべき希少疾患領域のELSI課題を、5つのカテゴリに分類している(Hartman et al. 2020)。本研究ではIRDiRCの分類を基にしながら、日本での具体的な課題について患者や関係者がどのような認識や概念を有しているかを探索的に検証するため、患者・家族、研究者、医療者、医薬品開発企業等、各ステークホルダーに半構造化インタビュー調査を実施した。本報告では、特に医薬品開発企業の希少疾患開発担当者のインタビューを中心に分析の結果と得られた示唆について報告する。
⇨指定発言:北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士後期課程

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6月の公共政策セミナー

2023/06/14

6月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

 

◆日時: 2023年6月14日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催
◆Web参加方法: 学内の方は、共有カレンダーのURLからご参加下さい。

 
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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:胡 錦程(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程)
タイトル:ポストフェミニズムにおける中国の独身女性が構築する新しい母子関係
要旨:近年、中国では婚姻率の低下と、未婚女性の出産に対する意欲の高まりが注目されている。未婚女性たちは卵子凍結や生殖補助医療を通じて積極的に出産を検討しているものの、伝統的な価値観や法的な保障の不足により、これが容易ではない。本研究では、未婚のまま子供を持つことを選択した中国の女性を対象としている。具体的には、「未来家Family」という家族の多様性や女性の選択肢をサポートするネットコミュニティのメンバーの15人に、半構造化インタビューを行う予定である。これにより、未婚女性たちがどのように出産と育児に関する権利(リプロダクティブ・ライツ)を確保し、新しい母子関係を築いているかを探る。これにより、ポストフェミニズムにおける家族形態の多様性を明らかにし、先行研究で指摘される「構築される母性」による抑圧を超え、ケアの倫理に基づいた母性の積極的な価値を見出すことを目指す。この研究は中国社会における家族の在り方と女性の未婚出産の関連研究に新しい視点を提供し、女性のリプロダクティブ・ライツを支持し、家族の多様性を促進するための政策提言につながる可能性がある。
⇨指定発言:高嶋 佳代(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)

◆報告2
報告者:
井上 悠輔(公共政策研究分野 准教授)
タイトル:死後脳バンクをめぐる検討
要旨:精神・神経疾患の研究の一環として、疾患・健常の脳が使用される。脳は解剖によって摘出する必要があることから、その入手は研究者にとって必ずしも容易ではなく、国内外で「ブレインバンク」が設置されてきた。死後脳を対象とした研究は、その倫理的、社会的な課題のほか、死者への研究者のアクセスに関する法的な課題にも直面してきた。公的な研究倫理指針において、「死後の研究参加」に関する言及はほとんどなされておらず、古い法文の解釈や慣行、医療者・医療機関への信頼、遺族の理解によって活動は支えられていると言って良い。近年では、本人の(生前の)提供意思の登録制度に注目が集まっているが、その理論的な位置付けや社会発信のあり方には課題も残されている。これらの状況をJBBNプロジェクトを基に紹介しつつ、生前登録制度の参加者調査の進捗にも言及する。
⇨指定発言:佐藤 桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程)

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5月の公共政策セミナー

2023/05/10

5月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

 
◆日時: 2023年5月10日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催
◆Web参加方法: 学内の方は、共有カレンダーのURLからご参加下さい。


 
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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:北尾 仁広(公共政策研究分野 特任研究員)

タイトル:臨床試験等における重篤な有害事象等の法的正当化をめぐる課題
要旨:治験・臨床試験(以下、「臨床試験等」)には、望ましくない副次的結果(被害者の死亡その他の重篤な有害事象等)が生じるリスクが常に随伴する。このこと自体は自明なことではあるが、この自明なリスクが現実化した場合、実験者の行為を(刑)法的に正当化するにはいくつかの困難を克服しなければならない。具体的には未必の故意に基づく故意殺人罪や、リスクの存在を認識しながら敢行したことに伴う傷害致死罪などの成立を否定するだけの明白で確固とした論拠が求められる。最も頻繁に用いられる論拠として、「インフォームド・コンセント」や「患者の同意」といった、患者側の了解が挙げられる。しかし、刑法202条(嘱託・承諾殺人)や、危険運転において好意同乗者に死傷結果が生じた場合も運転者は刑法上免責されないという支配的見解を念頭に置くと、患者側の了解それ自体を直接の論拠と見てよいか疑わしさが残る。そこで本報告では、1)「患者の同意」の法的性格を簡単に整理したうえで、2)特にいわゆる「危険引受け」の観点から臨床試験等における患者の自己決定それ自体を「優越的利益」として具体化する必要性を示す。

⇨指定発言:井上 悠輔(公共政策研究分野 准教授)


◆報告2
報告者:島﨑 美空(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士後期課程

タイトル:日本のゲイの人々の子をもつ意識及び生殖補助医療に対する態度
要旨:我が国において、性的マイノリティの家族形成、特に子をもつことを保障する法律や体制は十分でなく、また性的マイノリティ当事者の見解が社会政策に反映されているかは不明である。さらに性的マイノリティの家族形成については欧米諸国や台湾で調査の実施例があるが、国内では特にゲイの人々を対象とした研究はない。そこで、未だ明らかでない日本のゲイの人々の子をもつ意識及び生殖補助医療技術 (ART: Assisted Reproductive Technology)利用に対する態度を調査した。そして当事者の意識を可視化し、どのような因子がゲイの人々の子をもつ意識に影響を及ぼしているのかを日本の社会的背景から検討することを目的とした。日本在住のゲイの人々10 名を対象として、調査参加者の子をもつ意識及び ART 利用に対する態度を明らかにするために半構造化インタビューを実施しその語りを、子をもつ願望、子をもつ意図、ART利用に対する態度の3つのトピックに分類し、それぞれについてMayringの質的内容分析を用いて分析した。なおこの研究は発表者の修士研究であり、今回のセミナーではこのインタビュー調査の結果を報告するとともに、博士研究への展望を発表する。

⇨指定発言:胡 錦程(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程)

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3月の公共政策セミナー

2023/03/08

3月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

◆日時: 2023年3月8日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催
◆Web参加方法: 学内の方は、共有カレンダーのURLからご参加下さい。

 
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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:河田 純一(公共政策研究分野 学術専門職員)

タイトル:新たな医療カテゴリーの成立によるメンバーシップの再構成:若年がん患者からAYA世代へ
要旨:AYA世代とは、Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の頭文字をとったもので、主に、15歳から30歳代までの世代を指す。このAYA世代のがん対策は、2017年に策定された「第3期がん対策推進基本計画」において初めて明記された。現在では、AYA世代に対して医療者からのサポートだけでなく、AYA世代のがん経験者自身によるピアサポートも活発に行われている。本報告では、AYA世代という新たな医療カテゴリーが、その当事者たちの自己アイデンティティに埋め込まれた過程をA.ギデンズの再帰的自己論の視座から検討する。そのために、まず、このAYA世代というカテゴリーが、がん医療、そしてわが国のがん政策においてどのように成立したのかを確認する。次に、新たにAYA世代とカテゴライズされたがん経験者たちの言説に焦点を当てる。具体的には、若年性がん患者会の会報誌において、いつ、どのように「AYA世代」が用いられるようになったのかを分析した結果を報告する。
⇨指定発言:佐藤 桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程)

◆報告2
報告者:鈴木 将平(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 臨床研究センター 特任研究員)

タイトル:常染色体潜性(劣性)遺伝病の〈保因者検査〉をめぐるELSI:近現代の人の移動とアイデンティティから
要旨:常染色体潜性(劣性)遺伝病(Autosomal Recessive Disease: ARD)は、同じ遺伝子変異を持っている非発症保因者同士が子どもをもうけた場合、4分の1の確率で重篤な疾患を発症する。ARDの非発症保因者を特定するために行われる遺伝学的検査は、海外ではキャリア・スクリーニング(Carrier Screening: CS)と呼ばれており、1970年代以降、地中海地域や北米などの多民族社会で、特定の民族に頻度の高い疾患を中心に実施されてきた。さらに近年では、一般人口の低リスク集団をも対象にした拡張キャリア・スクリーニング(Expanded Carrier Screening: ECS)の導入を検討している国もある。本報告では、こうした〈保因者検査〉の特質を、歴史的経緯や国際的な動向、先行研究のレビューをふまえて整理する。また、北米でCSの対象となった東欧系ユダヤ移民の背景、そして近年の遺伝学的検査に関する商業的言説をふまえ、中長期的な人の移動やアイデンティティの複数性という観点から、〈保因者検査〉および希少難治性疾患のELSIを論じる。
⇨指定発言:李 怡然(公共政策研究分野 助教)

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2月の公共政策セミナー

2023/02/08

2月の公共政策セミナーは以下の通りでした。

日時: 2022年2月8日(水)13:30~16:00ごろ
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:
飯田 寛(新領域創成科学研究科博士課程)
タイトル:
遺伝情報に基づく差別禁止とは何か-生命保険と労働分野における制度設計
要旨:ヒトゲノム解析計画によって遺伝情報が明らかになることでの差別が懸念され、ユネスコは世界宣言で差別禁止の考え方を示した。遺伝情報だけを特別視することは遺伝子例外主義といった批判的な議論もあったものの、諸外国では遺伝情報の利用に関する法規制をつくりあげてきた。しかし、日本では現在のところ規制は存在しない。日本の先行研究では、議論が必要であることが明らかになっているが、議論の前提となる制度設計の課題などを具体的に示した研究は見当たらない。
本研究の目的は日本の遺伝情報の取扱いをめぐる議論と制度的な課題を明らかにし、より具体的な制度設計が進んでいる海外での議論の事例を取り上げて検討することで、差別の防止に向けた制度設計の枠組を提示することである。本研究の方法は文献研究より、日本の文献研究を第一研究と設定し、国内での政策的な議論の経過を明らかにし、これまで制度設計に至らなかった要因を検討、また、遺伝情報が加わった場合の差別の論点を明らかにする。海外の文献研究を第二研究と設定し、海外の議論と差別禁止の制度設計をした国々の議論を明らかにし、それらを踏まえて日本の制度設計を考察する。今回のセミナーでは、論文の構成に沿って博士論文の内容を発表する。

 

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2023年1月の公共政策セミナー

2023/01/11

2023年1月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

◆日時: 2023年1月11日(水)13:30~16:00ごろ
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル:幹細胞研究における患者・市民参画とベネフィット・シェアリング

幹細胞研究(以下, SCR)の実用化に際して、患者・市民参画(PPI/E; Patient and Public Involvement/Engagement)への患者・家族の積極的な関与は、参加者のリスク軽減、細胞や情報の提供者の研究参加率の向上など、研究の円滑な実施に寄与する可能性がある。また、SCRの責任ある研究・イノベーション(RRI; Responsible Research and Innovation )達成のためには、細胞ドナーや介入対象である患者・家族・市民のガバナンスへの関与が、ゲノム研究等多領域で既に実施されている実践と同様に必要であると考えられる。
本報告では、SCRにおけるPPI/Eとベネフィット・シェアリングについて、患者を対象とした質問紙意識調査の分析結果からその課題について考察する。
⇨指定発言:亀山 純子(公共政策研究分野 特任研究員)

◆報告2
報告者:松山 涼子(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 修士課程)
タイトル:バイオバンクと提供者の関係性における文献調査
要旨:
未定
⇨指定発言:原田 香菜(公共政策研究分野 特任研究員)

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2022年度第7回公共政策セミナー

2022/12/14

12月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

日時:2022年12月14日(水)

〈報告概要(敬称略・順不同)〉

報告1

報告者: 木矢 幸孝(公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: 14日ルールの再検討:一般市民と不妊治療経験者へのFGI調査から

要旨:

2021年、国際幹細胞学会(ISSCR)は「幹細胞研究・臨床応用に関するガイドライン」を改訂し、ヒト胚の受精後14日以降もしくは原始線条の形成以降の体外培養を禁止する、14日ルールを禁止項目から外した。ルールの再検討にあたっては一般市民や不妊治療経験者を含めた社会的な議論の必要性が指摘されるが(Hyun et al., 2021; McCully, 2021など)、本邦において上記の人々がヒト胚の14日を超える体外培養をどのように評価しているのか、そしてその理由は何であるのかは十分に明らかにされていない。
そこで、2022年9月~10月に一般市民と不妊治療経験者を対象にフォーカスグループインタビューを実施し、ヒト受精胚の体外培養の延長に関する評価とその理由を探った。本報告では分析中の調査の結果を共有し、調査から得られうる倫理的課題を報告する。

⇨指定発言:松山 涼子(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 修士課程)

報告2

報告者: 李 怡然(公共政策研究分野 助教)
タイトル: 健康医療データの利活用における子どもの権利保護を考える

要旨:

近年、未診断疾患の診断や治療法の開発、企業による創薬のために利活用できるよう、患者・市民の健康医療データを収集する大規模プロジェクトが国際的に進められている。このような医学研究では、プライバシー保護やデータの利活用ポリシー、解析結果の返却のあり方などが検討課題となるが、とりわけ子ども(小児・未成年者)が研究対象者になる場合は、成人一般と比べて追加的な保護も必要とされる。たとえば、子どもは親権者の代諾で研究に参加するため、成長後に意思確認を行うことなどが挙げられる。今日、ビッグデータやデジタルヘルスの活用も目指される中で、子どもの権利をどのように保護するかや、子どもの関与のあり方をあらためて問う時期にある。健康医療データの収集や利活用が進む時代において、子どもの権利保護をめぐってどのような論点が浮上しているかを紹介し、この問題を考える手がかりとしたい。

⇨指定発言:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)

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