2021年度第9回公共政策セミナー

2022/02/09

本日第9回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2月9日13時半~16時20分頃

発表者1: 楠瀬 まゆみ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: クラウド・コンピューティングを用いたゲノム研究に関する一般市民の意識調査

要旨:

近年、オープンサイエンスの推進のため、データの収集、保存、解析、共有/公開というサイクルを円滑に回すことができるデータ・エコシステムの構築が求められている。ヒトゲノム研究においては、技術の向上によりゲノム解析に要する時間やコストが減少、そこで生み出されるデータは膨大で年々増加傾向にある。ある試算によると2025年までに1億から20億のヒトゲノムデータが解析される可能性があり、その保存のためだけで2~40エクサバイトのストレージ容量が必要と言われる。また国際共同研究においては、HDD、SSD、SSHD等の大容量記憶装置を用いて物理的にデータを移動させることには限界がある。そのため国際共同研究においてはクラウド・コンピューティング(以下、クラウド)を用いる場面が多くなっている。しかしゲノム研究におけるクラウド利用には、プライバシー保護の問題、国際間での異なるデータ保護法令への対応、データ・ガバナンスの問題が指摘され、ゲノム研究におけるクラウドの活用にあたっては研究参加者や一般市民の理解の重要性も指摘されている。他方日本においては、研究におけるクラウドの利活用について言及した規制した指針や法令は無く、またゲノム研究における研究参加者や一般市民のクラウドの理解や受容についての調査も見られない。そのため、2021年3月に一般市民を対象に医学研究におけるクラウドの利活用に関する意識調査を試行した。本発表では、その意識調査の結果について発表する。

発表者2: 船橋 亜希子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: ディオバン最高裁決定を読む

要旨:

2021年6月28日に出されたディオバン最高裁決定について報告する。裁判例においては一貫して、被告人がデータを改ざんし虚偽の図表等のデータを作成していた等の事実が認められている。それにもかかわらず、製薬企業及びその社員(当時)について一貫して無罪とされたのはなぜか。本事案における刑事責任とその判断構造について検討してこれを明らかにし、刑事責任追求の意義と限界を考える。検討にあたって必要な刑法の基礎的な部分についてもご紹介しながら、刑法的観点からでは検討し尽くせないように見える本事案について話題提供をする。

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第5回患者・市民参画(PPI)研究会「みんなのラジオPPI」を開催します(2/14)

2022/02/01

第5回目の「患者・市民参画(PPI)研究会・みんなのラジオPPI」のご案内です。

昨年度より、「患者・市民参画(PPI)研究会・みんなのラジオPPI」を企画してまいりました。
PPI研究会の特徴は、情報共有や意見交換を行ったりする場であり、また気楽に聞いていただくため、画面はなく音声のみでお届けしていることです。

第5回目は、2022年2月14日(月) 18:30~20:00にオンラインで開催します。
テーマは、「製薬企業における、創薬初期段階からのPPI/E」がテーマです。
詳細・申込については、以下のURLをご参照ください。皆様のご参加、お待ちしております(申込〆切:2/14(月) 0:00)。
http://ptix.at/kdih7p

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2021年第8回公共政策セミナー

2022/01/12

本日第8回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:1月12日13時半~16時

発表者1: 北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: 患者・市民の視点を踏まえた医薬品情報の提供を実現するための課題の検討

要旨:

医薬品には副作用等のリスクがあり、製造販売後も引き続き情報収集することが、医薬品の安全かつ適正な使用のために重要である。収集する情報源として、これまで主であった製薬企業や医療従事者からの情報に加え、患者から寄せられる情報の利点が注目され始め、医薬品の安全な使用のために当該情報を規制当局の意思決定に活用する取組みが世界的にも進んでいる。
しかし、我が国ではこうした取組みが諸外国に比べて大きく後れているため、その原因を探り、状況の改善策の提案に繋げるべく、本研究では、①患者・市民からの情報収集、及び②患者・市民への情報発信の2つの要素について、文献研究及び調査研究(アンケート調査)により現状を調査していく予定である。本報告においては、計画中の医療従事者を対象としたアンケート調査に先立ち実施した関係者2名へのヒアリング結果を提示すると共に、それを踏まえた今後の調査計画(案)を共有する。

発表者2: 永井 亜貴子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任助教)
タイトル: がんゲノム医療の普及に向けた情報提供のあり方に関する研究

要旨:

2019年6月にがん組織の遺伝子を一括して網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査の保険適用が開始され、がんゲノム医療の体制整備が進められている。がん遺伝子パネル検査を受けた患者の検査データは、患者の同意に基づき、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録され、C-CAT調査結果の作成に用いられるほか、大学・企業などが研究・開発目的に利用(二次利用)するために提供される。本報告では、今後、がんゲノム医療を適切に推進していくために必要となるがんゲノム医療に関する情報提供のあり方について検討するために、がん患者を対象として実施したフォーカス・グループ・インタビュー調査の結果について報告する。

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第4回患者・市民参画研究会「みんなのラジオPPI」を開催します

2022/01/07

昨年度より、「患者・市民参画(PPI)研究会・みんなのラジオPPI」を企画してまいりました。
PPI研究会の特徴は、情報共有や意見交換を行ったりする場であり、また気楽に聞いていただくため、画面はなく音声のみでお届けしていることです。

今年度も、1~3月にかけて、3回、開催いたします。
次回(1/24 18:30~20:00@オンライン)は、国際的にも模索が続いている「PPIの評価」がテーマです。

詳細・申込については、以下のURLをご参照ください。
皆様のご参加、お待ちしております(申込〆切:1/24(月) 0:00)。
http://ptix.at/Fb6YVx

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2021年第7回公共政策セミナー

2021/12/08

本日第7回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:12月8日13時半~16時半

発表者1: 佐藤 桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程)
タイトル: 先住民族のゲノム研究における日本とカナダの比較

要旨:

歴史上、マイノリティや立場の弱い人々が科学研究や医学研究の名の下に搾取された事例は枚挙にいとまがないが、世界各地に居住する先住民族の人々も、同様にICの軽視やヒト資料・データの不適切な利用といった被害を被ってきた。特にゲノム研究は、バリアントをある程度共有するマイノリティのコミュニティである先住民族にとって、バイオパイラシーや結果解釈の影響など、研究参加によって不利益を被る可能性が低くない。一方近年、ゲノム研究者側からも、世界的に見てサンプルがヨーロッパ系に偏っていることから、多様な人々の研究参加を求める声が上がっている。本発表では、このような状況を踏まえ、関連した日本における状況・取り組みと、海外、特にカナダの動きを対置し、博論研究における問題意識とアプローチの足場を固めることを目指す。

発表者2: 武藤 香織(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授)
タイトル: 遺伝情報の取扱いと差別禁止について

要旨:

遺伝情報に基づく差別(genetic discrimination)とは、「実際の、もしくは推測された遺伝的特徴に基づいて、個人やその血縁者に対し不利な取り扱いを行うこと」と定義される。ゲノム医療が本格化されるなかでも、議論が進まない遺伝情報に基づく差別防止について、最近の模索を共有する。

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【院生室より】生命倫理学会に参加しました

2021/12/07

11月27日・28日に、第33回生命倫理学会年次大会に参加いたしました。

当初は慶應大学で開催予定だったのですがオンラインとなり、11月上旬に口頭発表のプレゼンテーション動画を提出する必要があったため、大変忙しかったのが今は良い思い出です。

口頭発表はオンデマンド配信なので、なかなか質問やフィードバックがいただけないところが寂しいですが、当日のシンポジウムやワークショップでは活発な質疑応答があり、非常に勉強になりました。

特に、私は議事録などの歴史的資料を参照することが多いので、「患者・市民が参画するアーカイブ構築と歴史的ELSI研究」と題されたワークショップでは、これまで扱ってこなかった史料のアーカイブの現状や、患者・市民の方にアーカイブに参画していただく取り組みなどについてご紹介があり、大変興味深かったです。

若手にフィーチャーしたセッションも複数あり、発表をお聞きして勇気づけられました。

一番自分の研究分野に近い学会と思っておりますので、来年度も良い報告ができるようがんばります!

(D2・佐藤)

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日本遺伝カウンセリング学会誌に論文が掲載されました。(佐藤、武藤)

2021/12/07

D2の佐藤です。

このたび、日本遺伝カウンセリング学会に以下の論文が掲載されました。

佐藤桃子、神里彩子、武藤香織「出生前遺伝学的検査における用語「マススクリーニング」使用に関する言説分析」『日本遺伝カウンセリング学会誌』42:307-317, 2021

日本の出生前遺伝学的検査のガバナンスにおいて、「マススクリーニング」は一貫してやってはいけないことであり、回避すべきあり方だとされてきました。
しかし、「マススクリーニング」が具体的にどのような実施のことを指しているのかは、必ずしもはっきり定義されているわけではありません。
本研究では、1990年代に導入された「母体血清マーカー検査」と、2010年代に導入された「NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)」それぞれの実施方針を決めた会議の議事録と、方針に対する団体の意見書から、「マススクリーニング」がどのような実態を指して使われているか調査しました。
その結果、大きく分けて「すべての妊婦さんに強制される状態」という解釈と、「希望する妊婦さんが全員受けることのできる状態」という解釈の2つがあり、単に「マススクリーニング」ではどちらを指しているか判別できないことが分かりました。
この状況では議論が曖昧になってしまうため、今後は「マススクリーニング」という用語は使わず、「検査が強制かどうか」「対象者は誰か」の2点を明らかにして具体的に言い換えていくことを提案しました。

修士論文の内容を元にした論文で、先日の生命倫理学会でも追加の分析を加えて発表することができました。
今年、NIPTの方針について見直しが決まり、情報提供のあり方が議論されていく中で、その一助になれば幸いです。

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遺伝性乳がん卵巣がん症候群に関する書籍にて、倫理的課題に関する章を執筆しました(李、武藤)

2021/11/19

助教の李です。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer: HBOC)について、日本の研究者・医療者から、最新の知見や臨床実践を発信する書籍が刊行されました。
本書にて、倫理的・法的・社会的課題(ELSI)を論じた章を執筆いたしました。

Izen Ri, Kaori Muto. (2021)
Ethical Issues: Overview in Genomic Analysis and Clinical Context.
In: Seigo Nakamura, Daisuke Aoki, Yoshio Miki. (eds.)
Hereditary Breast and Ovarian Cancer: Molecular Mechanism and Clinical Practice. Springer, Singapore. (ISBN:978-981-16-4520-4)
https://doi.org/10.1007/978-981-16-4521-1_17

ここ十数年の間に、がんゲノム診療や研究は大きく転換を迎えました。技術革新に伴い登場した新たな論点に加えて、時代を超えても通底する倫理的な原則や、患者さんや家族を支える意思決定支援のあり方について、国内外の研究蓄積を紹介しています。

前半では、遺伝学的検査、偶発的・二次的所見の取り扱い、ゲノムデータの共有に関する近年の議論、後半では、予防的切除の倫理、遺伝情報の守秘義務と結果返却、家族内におけるリスク告知といった、臨床における諸課題に関して、共同意思決定(SDM)のアプローチを紹介しつつ、まとめました。

大学院生時代から調査や検討を続けてきたテーマであり、個人的にも貴重な機会となりました。日本と海外の研究を結ぶ一助につながれば幸いです。

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2021年第6回公共政策セミナー

2021/11/10

本日第6回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:11月10日13時半~16時

発表者: 河合香織(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程)
タイトル: 遺伝性疾患における結婚出産の葛藤とは何かーハンチントン病を手がかりに

要旨:

遺伝性疾患の患者、家族にとって、遺伝的なリスクの家族内での共有のあり方や、本人の選択として委ねられている結婚や出産については大きな悩みであった。本研究ではハンチントン病(HD)を取り上げ、常染色体優生遺伝疾患に関して診療や看護・遺伝カウンセリングなどを行った経験のある医療従事者、さらに告知や結婚・出産の悩みを抱える患者、家族に半構造化インタビューを実施。遺伝的なリスクや結婚・出産についての情報提供や助言の現状、また患者・家族が抱える葛藤を明らかにし、今後のあり方を検討する。

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【院生室より】プレゼンテーション研修を受けました

2021/10/27

院生ゼミでは本年度より視野を広げる、ネットワークを拡げることを目標に、これまでの院生からの研究の進捗等の発表に加えて、ゲストをお呼びしたり研修を受講することなどに取り組んでいます。第一弾は、当武藤研究室の渡部特任研究員をゲストスピーカーに呼んで質的研究の分析方法について学びました。また、追加でMAXQDAソフトの使い方について講義いただきました。

今回は第二弾として、外部業者による当院生ゼミ用に準備していただいたプレゼンテーション研修を受講しました。今回の研修はアカデミア用の特別なものではなく、一般に向けたプレゼンテーションに関する研修でしたが、得られたことが多かったように思います。プレゼンテーションでは自分の研究を伝えたいので、つい自分目線になってしまいがちですが、相手に理解してもらうことが一義であるので、相手の目線になって資料を作成すること。そのために文字の大きさや色の使い方などに工夫が必要であること。スピーチも興味を持ってもらうために冒頭で自己紹介を活用する方法や、オンラインで一方的になる場合でも質問を投げかけて間を取る方法などのテクニックを教えていただきました。研修の中でも実際にお題に基づいたプレゼンテーションをおこない、各自が適切なアドバイスを受けることができたと思います。

今後のプレゼンテーションに今回の研修を活かして、相手に伝わる分かり易く興味をひくプレゼンテーションをおこなうことを心掛けていきたいと思います。

(D3・飯田)

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2021年第5回公共政策セミナー

2021/10/13

本日第5回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:10月13日13時半~16時

発表者1: 李 怡然(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 助教)
タイトル: 認知症関連疾患の超早期予測・予防の倫理的課題を考える

要旨:

認知症・アルツハイマー病をめぐる新たな展開として、症状があらわれる前の超早期に疾患の発症を予見し、予防的に介入することを目指す研究開発が推進されている。脳に限らず多臓器間の全身ネットワーク変容を包括的に解明し、次世代イメージング・センシング技術を利用する、AI・数理モデルを用いたシミュレーションを開発し臨床応用するなど、新規技術を複合的に活用することが計画されている。しかし、疾患の発症前予測・予防的介入は、従来の認知症対策や理念とは異なる方向性をもっており、人を対象に研究を行う上で配慮すべき事項、革新的技術を社会実装する上での諸課題も考えられる。そこで本研究では、関連する既存の文献を整理し、認知症の早期予測・予防の実現を目指す研究開発が人々や社会に与えるインパクトを考慮する上での基礎的な論点を抽出することを試みる。報告では、背景と先行研究を紹介し、この問題を考える端緒をつかみたい。

発表者2: 井上悠輔(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 准教授)
タイトル: パンデミック・ワクチンの展開を規定するもの:OECD諸国間の地域相関研究

要旨:

日本と同様、多くの先進国では、新型コロナウイルス感染症に関する予防接種が、国の主導のもとに展開されている。一時期の極端なワクチン不足の状況からは脱しつつあるものの、その進捗には国によって大きな開きがみられる。予防接種は臓器提供などと同様、個人の意思表明に限界の多い利他活動(Pywell, 2000)であるとされる。WHOは“voluntary”な予防接種の展開を推奨しているものの、ワクチンに関する「自由意思」は、自然発生的・内発的なものというより、各国・地域が置かれた状況によって規定される面も大きいことが考えられる。国の主導のもとに展開されるパンデミック・ワクチンの場合にはその傾向がより顕著になりうる。こうした各国の進捗の相違やその背景を検討する際、地域相関研究(Ecological Study)の手法は有効であると考える。OECD38か国における進捗(2021年5月~10月)に関して、説明変数の候補となり得る項目との相関関係分析/重回帰分析を行い、安定的に関連している項目の特定を試みた。

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2021年第4回公共政策セミナー

2021/09/09

本日第4回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:9月8日13時半~16時

発表者1: 高嶋 佳代(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: 患者対象のFirst in human(FIH)試験における倫理的課題の探索-リスクベネフィットの比較衡量に関する検討-

要旨:

あたらしい治療法の臨床応用には、人を対象とした臨床試験が必要となる。この臨床試験においては、研究対象者は研究の実施によるリスクを引き受けつつ、その研究自体は研究対象者の利益を目的としたものではないとされている。とりわけ患者を対象とした、人で最初に実施する安全性検証を主目的とした臨床試験(FIH試験)には不確実性や未知のリスクへの懸念が大きく、そのリスクベネフィットの衡量はより複雑性を増すと考えられる。しかしながらこのようなFIH試験のリスクべネフィットの検討に関して、研究に関与するさまざまな立場からの検討は、未だ十分になされてはいない。そこで本研究では、FIH試験の実施に際して、多面的で総合的なリスクベネフィット衡量の必要性を明らかにし、今後のFIH試験の計画立案や倫理審査の一助とすることを目的として、FIH試験に関与した様々な立場の当事者にインタビュー調査を行う。本報告では、主に理論調査の結果を示すとともに、インタビュー調査の進捗について報告する。

発表者2: 木矢幸孝(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: 遺伝学的リスクの告知/非告知という行為の体系的な説明に向けた試論

要旨:

遺伝性の病いをもつ人々は自己の病いの問題だけでなく、遺伝学的リスクの告知に問題を抱えうる。彼/彼女らは、子や血縁者に対して、いつ・どのように告知を行うべきかを思案し、場合によってはそれぞれの事情において告知を行わないこともある。遺伝学的リスクに関する告知研究は、主として告知を行う理由/行わない理由(非告知の理由)の分析、あるいは告知プロセス等を検討してきた。確かに告知/非告知の理由やそのプロセスの解明は重要であるが、先行研究では遺伝学的リスクの告知と非告知の理由の共通項にはあまり関心が払われていない。それにより、告知/非告知という行為を体系的に理解する手がかりを後景化させているのではないかと思われる。そこで本報告では、遺伝性の病いである球脊髄性筋萎縮症患者の語りを通して、告知/非告知、双方の理由の共通項に着目したうえで、告知/非告知という行為の体系的な説明に向けた試論の提示を試みる。

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【院生室より】職場体験の受け入れをしました

2021/07/21

「院生室より」、大変久しぶりの更新となってしまいました。

7月20日(月)、21日(火)に、田園調布雙葉中学高等学校から職場体験の受け入れを行いました。

10名の高校1年生の方に、がん遺伝子パネル検査(20日)とiPS細胞を用いた研究(21日)に関するパンフレットを、小児にも分かりやすく改訂する作業をお願いいたしました。

リモートでの開催となりましたが、積極的に取り組んでいただき、貴重な改善案がたくさん挙がったのは大きな収穫です。

いただいた案をもとに、パンフレット改訂に取り組んで参ります!

ご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

(D2-佐藤桃子)

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2021年第3回公共政策セミナー

2021/07/14

本日第3回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:7月14日13時半~16時

発表者1: 楠瀬 まゆみ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: 医学研究へのヘルスケアデータの提供と利活用に関する一般市民の意識調査

要旨:

近年パーソナルデータの利活用が活発となり、医学研究においてもビッグ・データや機械学習などを用いたデータ駆動型研究も活発に行われている。そのようななか、Personal Data や Personal Health Record を本人の判断のもとで利活用する試みが行われている。加えて、企業の中には情報銀行や、その他独自の活動を通して、データ主体に情報提供料や特典等 の対価を受領することができる情報銀行サービスの提供を予定している企業も存在する。他方、医学研究の分野においては、研究参加の利他性の重視や不当な誘因の議論から、身体的侵襲を中心に組み立てられた従来の研究倫理の枠組みでは、研究対象者との利益共有の議論はあまり進んでこなかった。
このような背景において、2021年3月に一般市民を対象にヘルスケアデータ等の医学研究への提供と利活用に関する意識調査を行った。本発表においては、意識調査の結果の一部について発表を行う。

発表者2: 北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: 患者・市民の視点を踏まえた医薬品情報の提供を実現するための課題の検討

要旨:

医薬品には副作用等のリスクがあり、製造販売後も引き続き情報収集することが、医薬品の安全かつ適正な使用のために重要である。収集する情報源として、これまで主であった製薬企業や医療従事者からの情報に加え、患者から寄せられる情報の利点が注目され始め、医薬品の安全な使用のために当該情報を規制当局の意思決定に活用する取組みが世界的にも進んでいる。しかし、我が国におけるこうした取組みは、諸外国に比べて大きく後れているのが現状である。そこで、我が国の現状の原因を探り、状況の改善策の提案に繋げるため、本研究では、①患者・市民からの情報収集、及び②患者・市民への情報発信の2つの要素について、文献研究及び調査研究(アンケート調査)により現状を調査していく予定である。本報告においては、調査研究に先立ち実施した関係者2名へのヒアリング結果を提示すると共に、それを踏まえた今後の調査計画(案)を共有したい。

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2021年第2回公共政策セミナー

2021/06/09

本日第2回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:6月9日13時半~16時

発表者1: 飯田 寛(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: 労働分野でのゲノム情報の取扱いをめぐる諸課題に関する研究-対象とするゲノム情報とは何か-

要旨:

諸外国では、遺伝的特徴に基づく差別を防止するという観点からゲノム情報を保険や労働で利用することは、米国での遺伝情報差別禁止法(GINA)(2008)のほか、近年ではカナダでの遺伝情報差別禁止法(2017)、中国での人類遺伝資源管理条例(2019)などのように原則として禁止している国がある。一方、日本では法規制は存在しない。今後、ゲノム医療が普及することにより、遺伝学的検査の結果などのゲノム情報が労働者自身や労働者の主治医等から産業医あるいは健康保険組合に提供される機会が増加する可能性があるが、事業者と産業医、健康組合がどのような問題意識を持っているか、ゲノム情報の利用実態などは明らかでない。今回の発表では、アドバイザーより指摘のあった当研究にあたってのゲノム情報は何を対象とするのかの問いに対し、ゲノム情報例外主義とその批判の先行文献から対象とするゲノム情報を紐解いてみたい。

発表者2: 佐藤桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程)
タイトル: 科学研究の成果発表における「人種」という用語の使用

要旨:

第二次世界大戦以降、優生思想への反省から、raceという概念は科学的基盤を持つヒトの区分ではなく、文化的・社会的構築物であるという考え方が広まった。一方、疫学や遺伝学は、集団ごとの特徴に着目することによって、遺伝的要因・環境的要因と疾患の関連性を明らかにしてきた。その集団を指す際も、1950年代頃から、populationやethnicityといった用語が使用されるようになっている。しかし、日本においてはraceという用語および、ヒト集団を指すpopulationが、いずれも「人種」という用語にまとめて翻訳される事例が現在においてもしばしば見受けられる。これは新聞記事などだけでなく、大学や研究機関のプレスリリースにおいても同様である。

本発表では、日本語の「人種」も科学的文脈では可能な限り使用せず、言い換えていくべきではないかという問題意識に基づき、国外および国内の経緯と現状に関する先行研究を紹介する。その上で、日本の遺伝関連学会における「人種」およびその代替と考えられる用語の使用についてサーベイを行う研究計画について発表を行いたい。

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「医療AI」に関する厚労省研究班の報告書が公表されました。

2021/06/08

「医療AI」のELSI(倫理、法、社会課題)について、厚生労働省の研究班が2019年から活動しています。AI(人工知能)と「医療におけるAI」との距離感、研究開発から臨床応用まで、また文献検討から意識調査、市民行事まで多様な取り組みを展開してきました。ここではこれまでの報告書を掲載します(全文を以下の厚生労働省のウェブサイトから見ることができます)。

医療におけるAI関連技術の利活用に伴う倫理的・法的・社会的課題(2019、2020)

厚生労働科学研究費補助金政策科学総合研究事業(倫理的法的社会的課題研究事業)
報告1(2019年5月)https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27001
報告2(2020年8月)https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27612

医療AIの研究開発・実践に伴う倫理的・法的・社会的課題に関する研究(2021)

厚生労働科学研究費補助金政策科学総合研究事業(倫理的法的社会的課題研究事業)
中間報告(2021年5月)未掲載

その他、ご関心がある方は以下の文献もご参照ください。

  • 井上悠輔, 菅原典夫
    医療への人工知能(AI)の導入と患者・医師関係
    -AIの「最適解」をどう考えるか
    病院 79(9) 698 - 703 2020年9月
  • 武藤香織, 井上悠輔
    医療AIと医療倫理-患者・市民とともに考える企画の試みから
    医学のあゆみ 274(9) 890 - 894 2020年8月
  • 井上悠輔
    医療AIの展開と倫理的・法的・社会的課題(ELSI)
    老年精神医学雑誌 31(1) 7 - 15 2020年1月
  • 参照:日本医師会第Ⅸ次学術推進会議報告書
    「人工知能(AI)と医療」
    医療AIの展開と倫理的・法的・社会的課題(ELSI)、2018年6月
    https://www.med.or.jp/nichiionline/article/006805.html

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活動報告会/教室説明会を開催しました

2021/06/07

6月5日(土)13:00-15:30 活動報告会/教室説明会が行われました。
当研究室のスタッフと、大学院生より、最近の研究や活動について報告を行いました。
多くの方々にご参加をいただき、ありがとうございました。
お陰様で盛況な会となりました。
当研究室が普段取り組んでいることや雰囲気がお伝え出来ていると嬉しいです。

今後も情報発信に取り組んで参りたいと考えていますので、どうぞ宜しくお願いいたします!

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【受付終了しました】(★5/19更新)活動報告会/教室説明会【6/5(土)】:お申込み受付の開始

2021/06/05

【5/19更新】
日時と当日の内容を更新し、参加登録の受付を開始しました。


恒例の公共政策研究分野主催の活動報告会/教室説明会を今年も実施します(ウェブ開催)。


公共政策研究分野の活動は多岐にわたっています。この間、どのようなテーマに取り組んできたか、メンバーより紹介させていただきます。また、この会は、入試・進学先として、この研究室にご関心がある方への研究室説明会を兼ねています。

※大学院への進学をご検討中の方は、こちらの記事もご覧ください。

開催日時: 2021年6月5日(土)13時~15時30分頃(予定)
参加方法: オンライン会議システム・Zoomを利用します。

当日の内容:

1. 当研究室の紹介・大学院の案内

2. 研究室メンバーによる最近の活動報告(※順不同。報告テーマは仮のものであり、後日変更になる可能性があります)

  • 「不適切な治療」で患者が死亡した場合の法的責任―過去の裁判例を参考に(船橋 亜希子)
  • 遺伝学的リスクの社会的機能(木矢 幸孝)
  • 全ゲノム解析に対する患者・市民の期待と懸念(李 怡然)
  • 患者・市民の視点を踏まえた医薬品情報の提供を実現するための課題の検討(北林 アキ)
  • 外国人患者の言語支援と機械翻訳:医師・通訳者間のズレ(井上 悠輔)
  • COVID-19対策の当事者研究:役割葛藤と研究実践(武藤 香織)

3. 質疑応答

お申し込み方法:

参加をご希望の方には事前登録をお願いしています。下記の「申込みをする」ボタンをクリックして、申し込みフォームより、ご登録ください。

※お申込み締め切り:6月4日(金)正午(12:00)

お申込みいただきました方には、6月4日(金)中に、zoom参加のためのURLをご連絡差し上げます。

※障害等を理由に、配慮をご希望の方は、「介助・特別な配慮が必要な方はご記入ください」欄にてご相談ください。
※当研究室への進学にご関心のある方は、「ご意見・ご要望」欄に、検討されている研究科名をお書き添えください。(大学院入試を受験される方は、事前に教員との面談が必要になります。別途、研究室窓口までご連絡ください。)

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医療通訳の役割、医療AIと通訳の接点に関する調査報告の公表

2021/05/27

2018年度から、厚生労働省の研究班として、医療AI(人工知能、拡張機能)をめぐる倫理、法、社会的な諸課題の検討を行っています。このたび、医療現場で「人」「機械」が果たす役割を考えるための一つの視点として、患者と医療者をつなぐ「言語」、特に外国人医療における通訳の方の役割と未来のあり方に注目して、調査を行いました。

『医療通訳の役割・多言語音声翻訳ツールに関する意識調査:医師・医療通訳者を対象とした質問票調査を通じて』

この報告書には大きな特徴がいくつかありますが、特に次の二つを挙げます。

まず、この調査では、200名を超える全国の医療通訳の方々のご厚意により、医療現場における通訳者の役割や、言語処理の機械化・自動化の影響に関する回答を得ました。その際、全9言語(日本語、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、タガログ語、ベトナム語、インドネシア語)の設問を用意しました。日本語の設問に対応できない方、非英語に対応する通訳の方にも多く協力いただきました。これらの方々に記載いただいた自由回答もすべて日本語に訳して巻末に収載しています。

また、この調査では300名を超える医師からも回答をいただきました。医療現場での音声機械翻訳の主たるユーザーは医療者です。そこで医師の視点からも、通訳者の役割やAIツールへの期待や懸念について調査を行い、通訳者の回答と比較をしてみました。

回答内訳グラフ

検討をすすめるなか、調査をする我々は、医療通訳に従事する方々の活動がいかに多様で複雑なものであるか、知らなかったことを痛感しました。かなり断片的ではありますが、通訳者の方々が何を重視し、何を望んでおられるかについても、調査の柱として検討することとしました。

この報告書のほか、近日中に医師の回答に注目した論文も発表される予定です。またここで紹介させていただきます。

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2021年第1回公共政策セミナー

2021/05/13

本日第1回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:5月12日13時半~16時

発表者1: 渡部 沙織(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: 「希少・難治性疾患のELSIに関する質的研究」

要旨:

本報告では、今年度実施を予定している2つの質的調査について計画の概要を報告する。
(1)再生医療臨床研究への患者の協力における課題本研究の目的は、日本の患者支援団体が幹細胞を用いた再生医療の臨床研究に協力・参加する際に直面する課題や困難について、探索的な事例研究と質的分析を行うことである。日本では近年、iPS細胞を中心に幹細胞を用いた臨床研究・実用化研究が進められている(Tobita et al.2016; Lysaght 2017)。これらの臨床研究には主に希少疾患の患者が参加しており、希少疾患患者団体が被験者の募集や研究内容の啓発に協力するケースが増えている。本研究では、iPS細胞などの多能性幹細胞を用いた再生医療の臨床研究に協力している国内の複数の希少疾患患者団体を対象に、研究協力に際してどのような課題を認識しているのかに関して半構造化インタビューを行う。
(2)希少・難治性疾患のELSIに関する探索的研究本研究の目的は、希少・難治性疾患の患者を中心としたELSIに関して患者をとりまく多様なステークホルダーへのインタビュー調査を通じて、日本でのELSI課題や概念的探索を行うことである。国際的なRare Disease研究のコンソーシアムであるIRDiRCで組織されたワーキンググループでは、希少疾患領域のELSI課題を5つのカテゴリに分類している(Hartman et al. 2020). この分類を基にしながら、日本での具体的な課題について患者や関係者がどのような認識や概念を有しているかを探索的に検証するため、患者・家族、研究者、医療者、医薬品開発企業等、各ステークホルダーに半構造化インタビュー調査を実施する。

報告2: 河合 香織(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 修士課程)
タイトル: 「遺伝性疾患における結婚出産に関する助言のあり方の検討」

要旨:

遺伝学的特徴による結婚や出産をめぐる悩みは、患者・家族にとって切実な問題であることが、当事者の声から明らかになっている。しかし、十分に横断的に議論が尽くされているとは言い難い。1980年代から1990年代にかけては、遺伝性疾患の難病患者に向けた助言が掲載される『患者と家族のためのしおり』において、結婚や出産について可否判断にまで踏み込んだ主観的な記述が見られた。2000年代以降、遺伝カウンセリングが制度化された後に、専門家から当事者に向けて提供されている公開情報としては、「難病情報センター」が存在する。この「難病情報センター」の情報提供のなかから、遺伝に関わる疾患を抽出し、結婚や出産について可否判断をしているか、どのような助言がなされているかを分析した。それにより、医療従事者が遺伝性疾患の当事者の結婚や出産について、どのような情報提供をしているのかの現状を明らかにし、そのありようを検討する。

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