永井です。Journal of Human Genetics誌にがん遺伝子パネル検査に対する態度に関する論文が掲載されました。
Akiko Nagai, Izen Ri & Kaori Muto
Attitudes toward genomic tumor profiling tests in Japan: patients, family members, and the public
Journal of Human Genetics (2019)
https://www.nature.com/articles/s10038-018-0555-3
がんに関連する遺伝子を網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査は、医療への応用が急速に進んでいます。日本では、2018年にがんゲノム医療の中核を担うがんゲノム医療中核拠点病院が指定されるなど、がんゲノム医療の推進に向けた体制整備が進められています。海外におけるがん患者を対象とした研究では、がん細胞のプロファイリングへの関心が高く、二次的所見の開示を希望する人が多いけれども、心理的負担や健康保険への影響などの懸念も示されたと報告されています。しかし、日本では、がん遺伝子パネル検査の認知度や同検査に対する態度に関する調査はほとんど行われておらず、がん患者やがん患者の家族が、がん遺伝子パネル検査に対してどのような期待や懸念を持っているかは明らかではありませんでした。そこで、がん患者やがん患者の家族、一般市民を対象として、2018年3月と5~6月にがん遺伝子パネル検査の認知度および同検査に対する態度について調査を行いました。
調査の結果から、がん遺伝子パネル検査の認知度は、がん患者・がん患者の家族・一般市民のいずれのグループでも低いけれども、がん患者とがん患者の家族は一般市民よりも同検査のベネフィットを高く認識していることが明らかになりました。がん患者の家族は、がん患者よりもがん遺伝子パネル検査の生殖細胞系列の結果を共有したいと考えている人が多いことがわかりました。がん遺伝子パネル検査の主な検査対象となる進行がんの患者は、心理的な負担から治療選択や生殖細胞系列の結果の共有について意見を述べることが難しい可能性があることから、がん遺伝子パネル検査はアドバンスド・ケア・プランニングと一緒に提示されるべきと考えます。
2019年度よりがん遺伝子パネル検査は保険適用されることとなり、同検査への関心や態度に影響を与える可能性があります。今後もがん遺伝子パネル検査に対する態度について調査を行い、がんゲノム医療の普及に向けた課題について検討していく必要があると考えています。
■プレスリリース文は下記をご覧ください■
がん遺伝子パネル検査に寄せる期待と懸念とは?
-がん患者・一般市民を対象としたインターネット調査の結果より-
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/files/190212jhg.pdf
本日、2018年度、第7回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2019年1月9日(水)13時30分~16時00分
発表者1: | 内山正登(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | ヒト生殖細胞系列へのゲノム編集に関する啓発プログラムの開発に関する研究 -これまでの研究のまとめと今後の課題- |
要約:
博士課程の3年間、受精卵を中心としたヒト生殖細胞系列へのゲノム編集に関する啓発プログラムの開発に向けて取り組んできた。本研究では、一般市民を対象とした意識調査、フォーカス・グループ・インタビュー、日本科学未来館との啓発プログラムの試行版の作成などを取り組みを行った。
今回は3年間の研究活動の総括として、これまでの一連の研究内容を整理するとともに、現在取り組んでいる2018年に実施した意識調査に関する論文の進捗状況について報告する。また、博士課程予備審査会で今後の課題として指摘された”ヒト受精胚”の取扱に関する議論の整理に関する進捗状況を報告する。
また、今後ヒト受精胚への一般市民の認識を明らかにするため、フォーカス・グループ・インタビューを再び実施する予定である。このフォーカス・グループ・インタビューの計画について紹介するとともに、今後の研究の進め方について報告する。
発表者2: | 李怡然(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士後期課程) |
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タイトル: | 遺伝性疾患の患者の「リスクの医学」をめぐる経験と認識 |
要約:
網羅的なゲノム解析技術を利用したゲノム学が発展し、ゲノム情報をもとに診断や治療選択を目指すゲノム医療が国際的に推進されている。ゲノム医学/医療は、リスクの管理と疾病予防を重視する「リスクの医学」の一形態と考えられる。特に有効な治療・予防法の存在する(「対処可能な」)遺伝性疾患のリスクを、患者・家族が早期に知ることを推奨する動きが強まっている。このような背景の中で、国内の遺伝性疾患の患者は、どのような経緯で遺伝学的検査を受検し、発病リスクに向き合うかについては、十分明らかにされていない。そこで、本研究では、対処可能な遺伝性疾患の代表例とされる遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の患者へインタビュー調査を実施した。本報告では、患者の受診経験や、遺伝学的検査を受検する過程に焦点を当てて、報告を行う。
2018年度第5回「ヒトゲノム研究倫理を考える会」
– 新しいゲノム医療の中で何が必要か –
日時: | 2019年1月16日(水)14:00-17:00 (開場13:30) |
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会場: | 東京大学医学研究所1号館講堂(東京都港区白金台4-6-1) |
対象: | 大学・研究機関の倫理審査関係者、研究者など |
定員: | 100名 |
参加費: | 無料 |
主催: | 文部科学省科学研究費新学術領域「先進ゲノム支援」ゲノム科学と社会ユニット(GSユニット) |
協力: | 東京大学ゲノム医科学研究機構 |
◆事前申し込みが必要です
https://www.genomics-society.jp/news/event/post-20190116.php/
プログラム
14:00-14:10 | 「開会の挨拶」 東京大学医科学研究所 武藤 香織 |
14:10-14:30 | 「保険診療として行われるがん遺伝子パネル検査」 国立がん研究センター 河野 隆志 |
14:30-14:50 | 「がん遺伝子パネル検査:研究から診療への移行・混在に伴う倫理的課題」 東京大学医科学研究所 武藤 香織 |
14:50-15:10 | 「患者からみる今後の課題と対策」 (一社)ゲノム医療当事者団体連合会 太宰 牧子 |
15:10-15:30 | 「生命保険とゲノム医療」 (一社)生命保険協会 契約サービス委員会 浦中 麻由良 |
15:30-15:50 | 「総合的な政策のあり方」 参議院議員 薬師寺 みちよ |
(休憩 10分) | |
16:00-16:10 | 指定発言 大阪大学大学院医学系研究科 加藤 和人 |
質疑・総合討論 |
◆問合せ:
本日、2018年度、第6回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2018年11月21日(水)13時30分~16時00分
発表者1: | 飯田 寛(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程) |
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タイトル: | 発症前検査の影響―生命保険 |
要約:
修士論文で取り組んでいる研究(発症前検査の影響‐生命保険)の背景・目的・方法・調査内容・中間報告について発表する。発症前検査の進展・普及が生命保険に影響することとしてアットリスクの状態の方及び血縁者が保険に入れないという遺伝差別の問題、アットリスクの加入者が将来のリスクを告知しないで加入する逆選択の問題が挙げられる。各国が発症前検査の生命保険の利用について規制をつくっているが、日本では規制が存在せず、保険業界の議論も進んでいない。そこで、遅れてしまった日本で議論を進めるためには、海外の参考になる事例を明らかにすることとステークホルダーたる日本の生命保険業界・会社員の発症前検査に関する知識・考えなどの現状を明らかにするこが必要と考える。このことを研究の目的とする。海外の事例として英国のモラトリアム協定制定までの経緯について文献調査を実施、日本の現状把握については生保研修会参加者に対する事前アンケート調査を実施した。前回の公共政策セミナーの発表後に英国保険協会のヒアリングと日本の生命保険社員へのヒアリングを実施したので、その結果も加えて報告する。
発表者2: | 永井 亜貴子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任助教) |
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タイトル: | がん遺伝子パネル検査に対する患者・市民の態度 |
要約:
がん組織の遺伝子を一括して網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査は、がんの治療方針の決定において有用とされ、医療への応用が急速に進んでいる。日本では、2018年2月に「がんゲノム医療中核拠点病院」が指定され、4月にがん遺伝子パネル検査が先進医療として承認されるなど、がんゲノム医療の推進に向けた体制整備が進められている。海外では、がん患者を対象とした調査がいくつか報告されているが、日本のがん患者や市民のがん遺伝子パネル検査に対する態度は明らかではない。
こうした背景の下、がん患者およびがん患者の家族と市民を対象として、がん遺伝子パネル検査に関するインターネット調査を実施した。本報告では、特に、がん遺伝子パネル検査の認知度や同検査に関する期待や懸念などに関する結果について紹介します。
第4回研究倫理を語る会のサイトがオープンしました。
次回は名古屋です。お早めにお申込下さい!
日時: | 平成31年(2019年)2月9日(土) |
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場所: | 名古屋大学医学部(名古屋市昭和区) |
参加費: | 5000円(事前4000円) |
本日、2018年度、第5回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2018年10月31日(水)13時30分~16時00分
発表者1: | 小林智穂子(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士後期課程) |
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タイトル: | 公共の福祉におけるプロボノ活用の領域 |
要旨:
最近関わっている事業事例と近況のご報告をいたします。
発表者2: | 船橋亜希子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員) |
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タイトル: | ドイツ遺伝子診断法について |
要旨:
現在検討中のドイツ遺伝子診断法について、その成立過程と現在の規制内容を中心にご報告させていただきます。
10月11日(木)から13日(土)にパシフィコ横浜で開催された「日本人類遺伝学会」に参加してきました。これが私の初の日本での学会参加です。
武藤先生はシンポジウムの座長を務めるとともに演者としても3度も登壇され八面六臂のご活躍でした。11日の口演では永井さん、内山さん、李さんが発表。前日の予演の効果もあって三人とも堂々とスムーズに発表されていました。素晴らしい☆
私は12日にポスター発表。会の指示通り朝の8時にポスターを貼りに行くも他の人は誰も貼っておらず・・・。前回のイギリスの学会では誰にも興味を持っていただけなかったので期待していなかったのですが、昼に覗きに行くと熱心に読んでくださっている方がいらっしゃいました!思い切って声をかけて説明させていただくと、次々と人が集まって活発な質疑応答になりました。本チャンの17時45分からの発表の際にも多くの人に集まっていただき活発な議論ができました。医療従事者の方々が患者さんとともに生命保険の不透明な取扱いに不安と不満を持っていらっしゃることがよく分かりました。また、自分の研究の価値について常々悩んでおりましたが、皆さんに関心を持っていただき評価いただきましたので、研究の世間への貢献の可能性を感じモチベーションが上がったしだいです。ポスターについては説明させていただくと理解していただけましたが、他のポスターと比較すると用語の解説もなく、内容も要点がまとまっておらず、分かり難いものでした。反省です。
今回の学会で多くの知識と知己を得たように思います。
(M2 飯田寛)
9月12日~14日にグラスゴー・カレドニアン大学で開催されたイギリス医療社会学会(BSA)に参加してきました。これが私の国内外含めて初めての学会参加です(初めての学会が海外なんて素敵過ぎます)。
緊張とワクワクが入り混じる中でこれも初めてのポスター発表を経験してきました。初日の口頭発表が終わった後の皆ワインも飲みながらのポスター発表セッションだったこともあるのか、ほとんどの人がポスターの前を素通り・・・。興味を持ってくれた人に説明して、名刺を10名の方には渡そうと意気込んでいたのに撃沈。思い切って一人の方に強引に話しかけて、簡単な説明をさせてもらうにとどまってしまいました。ほろ苦いポスター発表デビューです。次回からはもっとインパクトのあるポスター作りと積極的な話しかけを行わないといけない、と一人反省いたしました。
口頭発表には3日間で合計22のセッションを聴講いたしました。様々な研究の対象とその国の仕組み等からなる研究の背景、手法、そして結論の導き方から考察の内容、全体の発表の構成など大変に参考になり、新たな知見を得ることができました。ただ、ヒアリング出来ずに理解できなかった点もありましたし、ほとんど質問が出来ませんでしたので、英語能力の向上が課題であると強く認識いたしました。英語に磨きをかけて機会があれば次は英語での口頭発表に是非ともチャレンジしたいと思っています。
(M2 飯田寛)
シンポジウム「先端医療におけるイノベーションとレギュレーションの共進化」
新領域創成科学研究科の主催で開催されます。教授武藤香織と准教授井上悠輔が登壇します。
入場無料です。
期日: | 平成30年10月12日(金)13:00~17:30(開場12:30 |
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場所: | 東京大学医科学研究所 講堂(1号館1階) 東京都港区白金台4-6-1 |
URL: | http://www.bioip-lab.org/sympo/index.html |
参加申込み: | 要事前申込(定員100名) 参加ご希望の方はシンポジウム専用ページの「参加登録フォーム」からお申込みください。 定員に達し次第締め切らせていただきます。 |
お問い合わせ先: | 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 専攻連携室 TEL:03-6409-5406 |
本日、2018年度、第4回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2018年9月19日(水)13時30分~16時00分
発表者1: | 内山正登(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程) |
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タイトル: | ヒト受精卵へのゲノム編集に関する啓発プログラムの実施に向けて |
要旨:
ヒト受精卵へのゲノム編集の利用に関する議論は、専門家だけでなく一般市民も巻き込んだ幅広い議論の必要性が指摘されている。このような先端科学技術の利用の是非に関する議論への一般市民の参加には、科学技術の理解だけでなく、この技術が社会に与える影響まで考え、意思決定することのできる機会としての啓発プログラムを開発する必要性があると考えている。そこで、2018年5月に一般市民を対象として、ゲノム編集に関する認知度や理解度、さらに啓発プログラムの内容に関する意識調査を行った。さらに、一般市民のゲノム編集に関する態度を決定する要因を明らかにするため、この技術を享受する可能性がある若年層を対象としたフォーカス・グループ・インタビューを実施した。今回は、2年間の意識調査の比較の結果、および一般市民の啓発プログラムへの態度について報告する。
発表者2: | 李怡然(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士後期課程) |
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タイトル: | 遺伝性疾患のリスク告知のモデル化の試み |
要旨:
遺伝性疾患の患者・血縁者が、家族内で遺伝学的リスクに関する情報を共有することは、伝える相手にとっての遺伝学的検査の受検の選択、疾患の早期発見や予防行動、人生の様々な選択のためにも重要とされ、医療者から推奨される傾向が強まっている。この家族内での情報共有のフローを、本研究では「リスク告知」という概念で示す。
リスク告知に関して、主に海外を中心に調査が行われ、伝える側の意思決定や告知の方法、伝えられる血縁者側の受け止め方など、複数の局面に焦点が当てられてきたものの、体系的な研究枠組みが示されていない。そこで、本研究では、先行研究の知見を整理するとともに、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の患者・家族を対象とするインタビュー調査のデータをもとに、リスク告知のプロセスを俯瞰するモデル図を提示することを試みる。
本報告では、執筆中の論文の内容の一部について紹介する。
D3の李です。
保健医療社会学論集に以下の論文が掲載されました。
李 怡然・武藤 香織
ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」
『保健医療社会学論集』29(1): 72-82.
(掲載から一年半を経過した時点でJ-STAGEにて公開される予定です)
ヒトゲノム研究や遺伝医療において、被検者は遺伝学的検査を受けて自らの遺伝情報を「知る」ことだけでなく、検査を受けずに「知らないでいる」選択をすることも、尊重されるべきだという規範があります。この「知らないでいる権利(the right not to know)」は、1990年代に米国の遺伝性疾患の患者・家族が主張したことが出発点となり、国際機関や各国のガイドラインに明文化されることで、確立されました。
しかし、2000年代半ば以降、次世代シーケンサーの登場によるゲノム医学の技術革新を経て、今日の患者や家族をとりまく環境は大きく変化を迎えています。そこで本稿では、技術革新や医療の変化に応じて、「知らないでいる権利」をめぐる議論にどのような変遷が生じたかを整理し、現代的な意義はあるのかを考察するため、文献調査を行いました。
2010年代を境に、“actionable”(「対処可能」である)、すなわち医学的に確立された予防法や治療法があるということを根拠に、患者や家族が発病リスクを「知る」ことを推奨する流れが強まっていることが分かりました。さらに今日、がん遺伝子パネル検査が臨床実装されることで、遺伝性疾患の家系員に限らず一般のがん患者やその家族も含め、遺伝性疾患の発病リスクを予想外に「知らされる」事態が生じうると予想されます。
ゲノム医療が日常の診療として普及していくなかで、医療者の規範だけでなく、実際に検査を受けられる患者さんやご家族がどのような態度をもっているかを、合わせて明らかにしていきたいと考えています。
こんにちは。8月に入り猛暑の日が続き、冷たいものが常に恋しいですね。
8月1日(水)に、宮崎第一中学高等学校の生徒の皆さんが、研究室訪問に来てくださいました!はじめに、特任研究員の高嶋さんから再生医療や幹細胞研究の歴史、私たち公共政策研究分野が取り組んでいる、倫理的課題について考えるプロジェクトの紹介がありました。皆さん、とても真剣にうなずき、メモをとりながら、集中して聞いてくれました。
続いて、ヒトiPS細胞で作成した「人工の配偶子」でヒトを作製することを認めてよいのか?というテーマで、2つのグループに分かれてグループディスカッションを体験してもらいました。学術支援職員の藤澤さん、私がそれぞれファシリテーターとして混ざりました。
一人ひとりがしっかりと自分の意見を述べ、鋭い点を突いたコメントもあり、私たちもびっくりしました。今回は短い時間で、なかなか難しいテーマだったと思いますが、「医療、医学研究の倫理的な課題に取り組む分野もあるんだ」「研究者、患者や一般市民がともに対話して考える場もあるのか」と知ってもらう機会になってもらえたらなと思います。(ファシリテーションをうまく進めていくのも、難しいなとあらためて実感した二人です。)
将来が楽しみな中学・高校生の皆さんと交流でき、私たちも楽しかったです。
宮崎第一中学高等学校の皆さん、はるばる暑い中、お越しいただき、ありがとうございました!
(D3・李怡然)
7月11日(水)に前期納会が白金台のBe Terraceで行われました。都会のど真ん中のビルの2階のオープンテラスでなんとバーベキュー。焼き担当は汗をかきかき火の前で格闘しながら、美味しいお肉に海の幸に野菜を皆でいただきました。また、スパークリングワインが飲み放題(何本空けたんでしょうか?)でアルコールも皆を陽気にさせたようです。心配された雨も降らず、宴会は楽しく幕を閉じました。
7月26日(木)に修士論文中間発表会が行われました。修士課程2年の院生が自分の研究の進捗を確認するステップとして指導教員、副指導教員、陪席の3名の教授と修士課程1年の学生の前で研究の中間発表をすることが義務づけられている会です。5分の準備、15分の発表、10分の質疑応答で構成されます。菅原さんと私飯田が緊張の30分を体験してきました。武藤先生をはじめ武藤研の皆様から色々とアドバイスを得て事前に準備を重ねましたので、何とか無事に発表を終えることが出来たと思います。皆様ありがとうございました。また、先生方からの質問から自分の研究の足りない点を確認でき、私にとって有意義な発表会でした。修士課程1年の学生は興味のあるテーマを選んで発表会に参加するので、もしかしたら聞いてくれる学生はゼロってことを心配しましたが、菅原さんの回も私の回も11~12名の学生が集まってくださりました。彼らに意義のある発表や質疑応答が出来たことを祈ります。
M2 飯田 寛
本日、2018年度、第3回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2018年7月11日(水)13時30分~16時00分
発表者1: | 飯田寛(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程) |
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タイトル: | 発症前検査の影響-生命保険 |
要旨:
修士論文中間発表会を控えて現在取り組んでいる研究(発症前検査の影響‐生命保険)の背景・目的・方法・調査内容・考察・研究の限界について報告する。発症前検査の進展・普及が生命保険に影響することとしてアットリスクの状態の方及び血縁者が保険に入れないという遺伝差別の問題、アットリスクの加入者が将来のリスクを告知しないで加入する逆選択の問題が挙げられる。各国が発症前検査の生命保険の利用について規制をつくっているが、日本では規制が存在せず、保険業界の議論も進んでいない。そこで、遅れてしまった日本で議論を進めるためには、海外の参考になる事例を明らかにすることとステークホルダーたる日本の生命保険業界・会社員の発症前検査に関する知識・考えなどの現状を明らかにするこが必要と考える。このことを研究の目的とする。海外の事例として英国のモラトリアム協定制定までの経緯について文献調査を実施。日本の現状把握については生保研修会参加者に対する事前アンケート調査を実施。調査結果とそこから得られる考察と今後の予定について報告する。
発表者2: | 菅原風我(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程) |
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タイトル: | iPS細胞研究をめぐる難病患者たちの「政治」 |
要旨:
本報告は、主に二つの内容について報告する。
まず、2000年代初頭から注目を集めた医療人類学・社会学の議論である「生物学的市民権」に関する文献調査の結果について報告する。報告の後半では、この概念を踏まえて、本邦におけるiPS細胞研究をめぐる難病の患者の積極的な参加や参画を捉えなおし、修士論文の今後の研究計画についてお話しする。
武藤です。客員研究員の高島響子さんが第一著者となって、家族丸ごとのデータ共有への倫理的配慮を検討した論文がBMC Medical Ethics誌に掲載されました!
Kyoko Takashima, Yuichi Maru, Seiichi Mori, Hiroyuki Mano, Tetsuo Noda, Kaori Muto
Ethical concerns on sharing genomic data including patients' family members
BMC Medical Ethics 2018;19:61
https://doi.org/10.1186/s12910-018-0310-5
近年、ヒトゲノム解析研究で得られたデータは、研究を加速させるため、できるだけデータ共有を進めることが国内外で強く推奨されています。特に難病やがんの研究では、疾患の原因や特性を探究するため、患者だけでなく、血縁者を中心とした家族の協力も得て解析したデータも一緒に公開することがあります。
研究者にとって、家族丸ごとのデータの科学的な価値は高い反面、幅広く共有されることにより、個人のみならず家族を識別されるリスクは高まります。また、データ共有は、研究を推進するうえで必要な営みではありますが、一般の人々には余り知られていないのではないでしょうか。
そこで、本論文では、一般の人々へのアンケート調査結果を手がかりに家族丸ごとのデータ共有に関して、どのような倫理的配慮が求められるかを検討しました。
なお、この論文の検討過程において、NBDCヒトデータベースには、家族丸ごとのデータ提供があった場合、その利用希望者に対して、「学術目的による利用以外での血縁関係の有無の探索や家系の同定及びそれらを試みる行為を禁止する」というルールの適用を開始して頂きました。
特任助教の永井亜貴子です。このたび、日本公衆衛生雑誌に下記の論文が掲載されました。
永井亜貴子、武藤香織、井上悠輔
「本人通知制度の実態と住民票を用いた予後調査への影響の検討」
日本公衆衛生雑誌 2018; 65(5): 223-232.
DOI:10.11236/jph.65.5_223
https://www.jsph.jp/member/docs/magazine/2018/5/65-5_p223.pdf
日本には学術研究のための生存確認に使用できる死亡統計データベースがないため、コホート研究や疾患登録などで研究対象者の生存に関する情報を収集する場合、住民基本台帳法に基づき、住民票照会が行われています。第三者による住民票の写しの請求については、近年、一部の市町村において住民票の写しや戸籍謄本などを代理人や第三者に交付した場合に,交付の事実を本人に通知する制度(本人通知制度)が導入されていますが、同制度の導入状況は明らかではありませんでした。本稿では、全国の市町村を対象とした調査により本人通知制度の実態を明らかにし、バイオバンク・ジャパン(BBJ)で実施した予後調査の結果とともに分析することで、本人通知制度が学術研究を目的とした住民票の写しの利用に与える影響について検討しました。
本人通知制度に関する調査の結果から、約3割の市町村が本人通知制度を導入していること、学術研究目的の住民票の写しの交付について、ほとんどの市町村が一定の判断基準を持っておらず、担当者ごとに住民基本台帳事務処理要領をもとに交付可否の判断をしていることが分かりました。本人通知制度の導入とBBJの予後調査で行った住民票の写しの交付請求の可否の結果の間には有意な関連はありませんでしたが、交付不可とした市町村の理由の一部に、本人通知制度の開始に伴う判断基準の見直しが挙げられていました。
日本では、これまで多くのコホート研究や疾患登録が住民票照会により予後情報を取得し、有用な成果を得てきました。今後も疫学研究や行政情報の利用の意義や成果について、社会に向けて情報発信を行うとともに、学術研究目的の住民票の写しの交付判断に必要な基準を示すなどの市町村を支援する取り組みを行う必要があると考えられます。
本日、2018年度、第2回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2018年6月13日(水)13時30分~16時00分
発表者1: | 高嶋佳代(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員) |
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タイトル: | 臨床研究参加体験をsocial mediaに投稿する事の倫理的懸念 |
要旨:
臨床研究に関わるSocial mediaの活用は、研究対象者のリクルートや、日々進歩する研究分野におけるpublic engagementやアウトリーチ活動等に有用と考えられている。他方、研究参加者が参加経験をsocial mediaに投稿する事により、臨床研究の結果に影響を及ぼすようなバイアスがかかる可能性への懸念も指摘されている。そこで本発表では、研究参加者が参加経験をsocial mediaに投稿する事による問題点を提示し、その対応について考察する。
発表者2: | 神里彩子(東京大学医科学研究所 生命倫理研究分野 准教授) |
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タイトル: | 動物性集合胚研究をめぐる指針改正の動向 |
要旨:
現在、「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律施行規則」及び「特定胚の取扱いに関する指針」の改正案がパブリックコメントに付されています(6月28日まで)。
これは、動物性集合胚研究の取扱いに関する文部科学省内での議論を受けたもので、これまでの動物性集合胚研究の政策から大きな方針転換を示す内容となっています。
セミナーでは、この議論に関わってきた身として考えてきたこと、又、考えていただきたいことについてお話ししたいと思います。
本日、2018年度、第1回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2018年5月9日(水)13時30分~16時00分
発表者1: | 楠瀬まゆみ(理化学研究所 科技ハブ産連本部 医科学イノベーションハブ推進プログラム 上級技師) |
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タイトル: | 医科学イノベーションハブ推進プロジェクト紹介 |
要旨:
医科学イノベーションハブ推進プロジェクトは、各共同研究機関からヒト疾患に関する様々なデータを取得し、人工知能を用いた解析によって疾患についての理解を進め、患者さんの状態を細く分類することによって個別化医療の実現を目指すというものである。報告者は、昨年12月より同プロジェクトに参加する機会を得た。本報告では、同プロジェクトの概要を紹介するとともに、そこから見えてきた倫理的課題について報告する。
発表者2: | 井上悠輔(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 准教授) |
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タイトル: | 先住民族の人類学標本とrepatriationをめぐる議論 |
要旨:
日本では議論されることが少なかったが(とはいえ、一部の関係者にとっては長い議論の経過があるが)、先住民族からの人類学標本をめぐる議論は、科学の世界では国際的に一つのトピックであり続けてきた。これらは、人体の研究の対象・手段として最も古典的なものである一方、各国の医学関連の法規や倫理規程での位置づけは定まらないままであった。とはいえ、研究対象のフロンティアとして人体が注目される今日、また新たな解析手法が発展する中において、これらの標本は改めて注目される話題となっている。本発表では、イギリスをはじめとする、いくつかの国際的な議論の展開を踏まえつつ、日本国内の近年の議論への論点を提示する。
当分野では、下記の大学院・専攻からの平成31年度新規入学希望者を募集します。共に修士・博士の学位取得を希望する方が対象になります。
1.新領域創成科学研究科
メディカル情報生命専攻 医療イノベーションコース
担当教員:武藤、井上
https://www.cbms.k.u-tokyo.ac.jp/lab/muto.html(ラボ情報)
https://www.cbms.k.u-tokyo.ac.jp/admission/schedule.html(入試)
2.情報学環・学際情報学府
文化・人間情報学コース
担当教員:武藤
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/faculty/muto_kaori(ラボ情報)
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/admissions(入試)
★研究室説明会の日時・場所は以下のとおりです。
日時: | 2018年5月12日(土)11時開始(14時ごろ終了予定) |
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場所: | 公共政策研究分野研究室(白金台キャンパス) 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター・3階 |
※参加をご希望の方には事前登録をお願いしています。参加をご希望・予定の方はお名前とご所属、当日の緊急連絡先について下記までご連絡ください。
(事前登録)
★当日のスケジュールが決まりました(5月7日更新)。
- 研究室・入試制度の紹介
武藤、井上 - 院生生活/研究関心の紹介
・内山(新領域・博士後期課程)
生殖細胞へのゲノム編集の利用に関する一般市民の意識調査
・李(学際情報学府・博士後期課程)
ゲノム医療時代における遺伝性疾患のリスク告知
・飯田(学際情報学府・修士課程
英国の遺伝学的検査と生命保険のモラトリアム - 質疑、進路個別相談(※希望制)
※当日に面談を希望する方は事前にお知らせください。後日改めての面談も受け付けています。
2018年3月19日に武藤研の送別会が開かれました。旅立たれる方は洪さん、吉田さん、高島響子さんのお三方。
想い出の写真や飾りつけが壁に施された素敵な恵比寿の会場にOB・OGの方々含め総勢23名が集まり大盛況。
飲み放題のアルコールと食事を楽しむ中でちょっとした余興で笑いに包まれた後に、武藤研に多大に貢献された三人の方々に感謝を込めた表彰状と花束、プレゼントが授与され、三人の方々からそれぞれスピーチをいただきました。武藤研に来るまでの歴史と武藤研に来てからの様々な研究・プロジェクトへの取組、人の繋がり、武藤先生をはじめとした人々への感謝・・・今更ながらそれぞれの方の人となりとバックグラウンド、研究が良く分かり、またその想いに感動いたしました(私も見習って頑張らなきゃ・・・)。武藤先生からもそれぞれの方々への想い出と感謝の言葉(もっと涙すると思ったのに・・・)。その後想い出の写真がプロジェクターで流され会は笑いと感動に包まれて終了しました。
洪さん、吉田さん、高島響子さんの新しい場でのご活躍をお聴きするのが今から楽しみです。(一方で重要な役割を担っていらっしゃた三人が4月から研究室にいなくなるのは寂しい限りですが・・・)
(M1 飯田寛)