先日、武藤研毎年恒例の遠足に行ってきました!
今年度の行き先は横須賀の軍港めぐりと猿島クルーズ、のはずだったのですが、濃霧のため船が欠航になってしまい、お天気にも関わらず行くことかなわず…。
そこで、横須賀では海軍カレーを頂き、雨天案の横浜に移動することとしました。
行き先は「Orbi」というミュージアムです。
ここはBBC earthとセガが共同で「地球を体感する」をテーマに作っているミュージアムで、様々なエキシビションやシアター上映を楽しむことができます。
特に、マウンテンゴリラの生態を捉えた4Dシアターは、3Dのリアルさと座席が揺れるなどの臨場感でとても引き込まれました!
研究室で忙しい日々を送っているメンバーがリフレッシュする良い機会になったことと思います。
来年はどこに行けるのか、今から楽しみです。
(M1・佐藤)
第76回(2016年3月4日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
楠瀬:
Assent in paediatric research: theoretical and practical considerations
Wendler, D. S
Journal of medical ethics.32(4):229-234.2006.
高嶋:
France investigates drug trial diserster
Barbara Casassus
Lancet.387:326.2016
李:
Genetic testing in asymptomatic minors: Background considerations towards ESHG Recommendations
Pascal Borry, Gerry Evers-Kiebooms, Martina C Cornel, Angus Clarke and Kris Dierickx on behalf of the Public and Professional Policy Committee (PPPC) of the European Society of Human Genetics (ESHG)
European Journal of Human Genetics.17:711-719.2009.
佐藤:
How Much Control Do Children and Adolescents Have over Genomic Testing, Parental Access to Their Results, and Parental Communication of Those Results to Others?
Clayton, Ellen W
Journal of Law, Medicine & Ethics.43(3):538–544.2015.
本日、2015年度、第13回目の公共政策セミナー(ゲスト特別編)が開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2016年3月3日(木) 10時00分~12時30分
発表者: | 野々村菜穂(東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻(SPH)) |
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タイトル: | 臨床研究に関する認知症患者家族の意識調査 |
本日、2015年度、第12回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2016年3月2日(水) 10時00分~12時30分
発表者1: | 高嶋佳代(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任研究員) |
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タイトル: | 眼科疾患における幹細胞臨床研究の倫理的問題 |
要旨:
新規治療法開発の実施には、その新規性に特有の問題に着目される傾向がある。例えば、iPS細胞の臨床研究においては、細胞の特性から造腫瘍性が一番の検討事項となっている。それゆえ、はじめてヒトに実施した眼科疾患の研究が、iPS細胞臨床研究全体の安全性の検証のステップとしても、大きな役割を担うこととなった。確かに、眼科領域は観察やアプローチが容易であり、致死的疾患ではないことなどの理由で、細胞治療における新規治療法開発での安全性の検証としては妥当な選択かも知れない。しかしながら、その新規性に注目が大きく集まったが故に、眼科疾患への新規治療法開発を行う上で、着目すべき倫理的課題が影を潜めた可能性がある。
そこで今回、文献検索、眼科疾患の患者会での議事録などを元に分析を行い、眼科疾患における幹細胞臨床研究の倫理的問題を検討する。
発表者2: | 佐藤桃子(学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程) |
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タイトル: | ターナー症候群と出生前診断 |
要旨:
2015年4月、NIPTコンソーシアムから、NIPT対象疾患の拡大の要望が日本産科婦人科学会に出された。現在はコンソーシアムが当面拡大はしないと述べているが、日本の出生前診断において対象疾患の拡大が議論されたのは初めてであり、この議論は日本の専門家が出生前診断をどう捉えているかを明らかにする契機だと考えられる。
拡大対象の候補には、臨床的症状は重篤でないものの、不妊の症状を呈することの多い性染色体異常が含まれていた。そこで本発表では、拡大対象の候補となった、女性に多い性染色体異常であるターナー症候群に焦点を当て、その病態と遺伝カウンセリングの現状を紹介し、修士論文に向けた問題意識を明らかにする。
2016年1月31日に公刊された『保健医療社会学論集』26巻2号に下記の論文が掲載されました。
「配偶子提供で生まれる子への真実告知とインフォームド・アセント―不妊カウンセラーへのインタビューより―」(李怡然・武藤香織)
精子提供や卵子提供などの配偶子提供で生まれる子どもの「出自を知る権利」の保障とともに、その出発点となる真実告知(truth telling=親から子に伝えること)が重要とされてきています。国内では、真実告知は当事者家族の問題として任されてきた傾向がありますが、医療従事者や他の専門職との協働によって、中長期的に支援が可能となるのではないか、という論点で執筆しました。
卒業論文で実施した不妊カウンセラーへのインタビューデータをもとに、子への真実告知についての意識や経験に焦点を当てて再分析した結果を考察しました。
一般的に不妊カウンセラーは親となる不妊当事者カップルの支援を中心に想定されていますが、子の出生後まで想定したカップルの共同意思決定を促し、出生後も真実告知に携わる役割として期待できることが示唆されました。
小児科医療・研究では「インフォームド・アセント」(informed assent)という概念があり、医療者や研究者に対し、子に医療行為を分かりやすく説明した上で了承を得る、という努力義務があります。そこで真実告知においてもこの概念を援用し、治療に関わった医療従事者の協力も得て、親と子のカウンセリングや支援の整備につなげられるのではないか、という提案を述べました。
もちろん、これは現段階での展望であって、実際にどのような支援の形が可能となるのかは、これからの探求課題だなと思っています。
そして、「親から子にどう伝えるか」という課題は、生殖補助医療に限らず、養子縁組、出生コホート研究、遺伝性疾患...など家族にまつわる多くのテーマに関わってきます。修士論文では、出生コホート研究における告知をテーマとし、その過程で、生殖補助医療と似ている点も異なる点もあることが分かり、インフォームド・アセントという本稿で核となる論点に気付くことができました。どの問題も、当事者や家族の思いもさまざまあるだけに、簡単に「伝える/伝えない」だけでは片付けられないと思います。今回の考察をもとに、これからも考えを深めていきたいと考えています。
最後になりますが、この場を借りてインタビューにご協力下さったカウンセラーの皆様に、改めまして厚く御礼申し上げます。
こんにちは。M2の藤澤空見子です。
先日の春一番は、天気が荒れて少し大変でしたね。
春一番の後は寒くなることが多いそうなので、服装管理に気をつけてくださいね。
さて、先週末、日本科学未来館の「みらいのかぞくプロジェクト」のイベント試行会へ参加させていただきました!
このプロジェクトは、科学技術がもたらす変化や可能性を切り口に「家族」の多様性を考えていく内容となっています。(日本科学未来館公式サイトより)
今回私が参加したのは、出生前検査を題材とした対話型イベント「2025年のこうのとり相談室」の試行会です。
試行会では、5~10人のグループの中で、出生前検査についての説明を聞いた上で、自分の出生前検査についての考えを皆さんと共有する、という流れで30分程度のワークショップを行いました。
説明の部分では説明動画を流してくださるのですが、「出生前検査」という漢字が並ぶ難解そうなイメージとは裏腹に、男性も女性も親しみを持って見ることができる内容になっていて、スタッフの皆様はさすがだなと思いながら動画を拝見しました!
考えを共有する部分では、参加者の皆さんがお互いに「こういう考えもあるのか」というような表情・コメントを交わしながら意見交換をされていました。
出生前検査を題材としていても、難しそうな印象や話しにくい印象はほとんどないワークショップで、終始感動しておりました。
また、意見交換の際にはやはり科学や遺伝カウンセリングの特徴をわかりやすく伝える必要がある場面もあり、科学コミュニケーションの重要性を感じました。
「2025年のこうのとり相談室」は今後未来館の常設展示会場において、定常的に実施する方向で検討中とのことです。
皆さんも日本科学未来館に行った際には、ぜひ参加してみてください!
下記にfacebookページもご紹介しております。
*「みらいのかぞくプロジェクト」のfacebookページはこちら*
(M2・藤澤空見子)
2016年1月に公刊された『哲学・科学史論叢』第18号に下記の論文が掲載されました。
「羊水検査に対する産婦人科医の倫理的見解:1969年9月から1978年3月の言説分析」(佐藤桃子)
この論文は昨年提出した卒業論文を下敷きに、「羊水検査が導入された1970年代、検査を実施していた産婦人科医たちは検査を倫理的にどのように捉えていたのか?」という問題意識で執筆したものです。
現在、出生前診断の受診や選択的中絶の倫理的問題は、検査の対象者であれば、遺伝カウンセリングなどで担保された両親の自己決定によって決められるとされています。ですが、その「自己決定」がどのような文脈で生まれたかについては、最初の出生前診断である羊水検査まで遡ってみる必要があります。
そこで、主要な産婦人科系ジャーナル3誌から羊水検査の倫理的側面を指摘した論文を抜き出し、言説分析の形で検討を試みました。
その結果、患者が権利運動で「自己決定」を求めてきたアメリカなどと異なり、日本では、羊水検査の実施に対して起きた批判に応答する形で医師たちが「自己決定」を提唱したことを述べました。
短い研究生活のほとんどを占める期間で追ってきたテーマです。今後は、未来の出生前診断に目を向けて研究を進めて行きたいと思っております。
第75回(2016年2月19日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
神里:
The Meaning of Translational Reserach and Why It Matters
Steven H. Woolf
The Journal of the American Medical Association.299(2):211-213.2008
中田:
Do-It-Yourself Medical Devices — Technology and Empowerment in American Health Care
Jeremy A.Greene
The New England Journal of Medicine.28;374(4):305-8.2016
高島:
Zika Outbreak Means It Is Now Time To Cancel Rio Olympics
L.Caplan and Lee H.Igel
Forbes.2016.Feb.3
Rio Faces A Zika Epidemic. Time To Cancel The Olympics
Joshua A. Krisch
Vocativ.2016.Feb.4
With Zika, Is There Really A Case Against Postponing The 2016 Olympic Games in Rio?
L.Caplan & Lee H.Igel
Forbes.2016.Feb.12
藤澤:
科学知の構成と社会-社会と科学の相互観察
圓岡偉男
東京情報大学研究論集.14(2):44-56.2011
佐藤:
Turner Syndrome: Updating the Paradigm of Clinical Care
Jordan E. Pinsker
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 97(6):994–1003.2012
本日、2015年度、第11回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2016年2月17日(水) 10時00分~12時30分
発表者1: | 永井亜貴子(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任研究員) |
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タイトル: | BBJの生存調査と本人通知制度 |
要旨:
近年、「住民票の写し等の第三者交付に係る本人通知制度」を導入・施行している市町村が見受けられる。本人通知制度は、個人情報の不正利用等の抑止や防止などを目的として地方自治体主導で開始された制度であるが、その普及状況や学術活動への適用の詳細は明らかではない。本発表では、本人通知制度に関する調査結果と、住民票の写しの第三者交付を利用する追跡調査への本人通知制度の影響について報告する。
発表者2: | 江念怡(新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 修士課程) |
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タイトル: | 薬局・ドラッグストアでのPGx検査提供に関する一般市民の意識 |
要旨:
近年、ファーマコゲノミクス(以下、PGx)が進展し、日本では2008年にイリノテカンに関する検査が保険収載されたほか、2010年と2012年にIL28BとCYP2C19に対する検査がそれぞれ先進医療(A)として認められるなど、医療用医薬品の処方前の検査として、PGx検査の医療への応用が進んできた。しかし、一般用医薬品に対するPGxは発展していない。2014年6月に一般用医薬品のネット販売が解禁され、一般用医薬品の99%がインターネット上で購入可能となったうえ、スイッチOTC薬を含む一般用医薬品でも重篤な副作用が発生する事例が少なくない。
そのため、今後、一般用医薬品に関連するPGx研究が進めば、薬局・ドラッグストアでPGx検査が実施される可能性もあり、将来、市民にとって身近な検査になりうる。先行研究では、一般市民がPGx検査をどのような期待を持っているのかを明らかにした調査はないことから、本研究では、日本の一般市民の遺伝学・ゲノム科学に関するリテラシーに着目し、PGx検査への期待や関心などの態度との関連を明らかにすることを目的とする。
研究方法は、2014年に㈱インテージに委託して実施した一般市民意識調査のデータセット(20-79歳までの男女7,540名分)を用いた分析である。回答者の遺伝学やゲノム科学に関するリテラシーを得点化し、PGx検査を含む遺伝学的検査への態度との関連、検査の説明を受けたい場所との関連、リスク・ベネフィット認知との関連等を検討した。統計解析には、SPSSVer.23用い、χ二乗検定やSpearmanの順位相関分析を行った。
その結果、PGx検査を受けたい人は37.5%であった。また、遺伝学・ゲノム科学リテラシーの高さ、個人遺伝情報活用のベネフィット認知との関連が有意に認められたほか、いずれの場所でも事前説明を求める人は、保険加入に関する遺伝情報差別禁止法を求める傾向も認められた。
以上の結果を踏まえて修士論文を執筆した。今回のセミナーでは、その内容について報告する。
こんにちは。M2の藤澤です。
最近は暖かい日と寒い日が交互にやってきて、服装調節が難しいですね。
今日は、福島県立磐城高校の皆さんが研究室へいらしてくださいました。
磐城高校の生徒の皆さんの一部は、カリキュラムの一環で研究や研修に取り組んでいるそうです。
今回は、生徒の皆さんに生命倫理について考える研修に参加してもらいました!
テーマは「遺伝子検査」ということで、Direct to Consumer検査(DTC検査)を取りあげました。
自分だったら受けたいか、日本のDTC検査の現状はどうなっているのか、今後社会の中でどのように扱っていくべきか、といったことについて、講義やディスカッションを通じて一緒に考えてみました。
生徒の皆さんは意見を積極的に発言してくださって、とても活発な議論となりました!
遺伝子検査の他にも様々な最先端技術が世に出回っている(出回ってくる)と思いますが、「私達は科学をどう利用していくべきなのか」という観点から科学を見つめていく...という姿勢もぜひ大事にしてほしいなと感じました。
高校生と一緒にディスカッションをする機会はなかなかないので、私としても新鮮な経験でした。
磐城高校の皆さん、遠くからお越しくださって本当にありがとうございました!
(M2・藤澤空見子)
こんにちは、M2の李怡然です。
雲一つない晴天に恵まれ多くの家族連れで賑わう2月11日(祝・木)に、お台場の日本科学未来館で開催された「みらいのかぞくプロジェクト」キックオフイベントに参加してきました。
インドなどでフィールドワークをされてきた国立民族博物館の松尾瑞穂先生のお話からは、世界を見渡せば「お母さんとお父さんが一人ずついて、子どもが一人か二人ぐらいいて」という家族の形態が当たり前ではないこと、公共政策研究分野の武藤先生のお話からは、科学が進展しても、そうした医療や技術を選ばない可能性も含め、ひとりひとりの生き方を尊重することの大切さに気付かされました。
続いて、AID(非配偶者間人工授精)やLGBT(セクシュアル・マイノリティ)の当事者の方々からのトークがあり、フロアの参加者も交えて質問や意見の交換が行われました。みなさん、ご自身の経験や身の回りで見聞きしたことから、子どもをもつ選択や真実告知に対する熱い思いを持っていることが伝わり、子どもの側、親の側という立場によっても考え方はさまざまあるのだなあと、刺激を受けました。
後半の希望者のみ対象のワークショップでは、班ごとに分かれてグループワークを行いました。たしかに、「家族」ってふだん何気なく使っている言葉だけれど、改めて考えてみると何だろう...とディスカッションしていく中で良い意味でもやもやさせられ、密度の濃い時間を過ごしました。
それにしても、すぐに答えが出る問いではないだけに、限られた時間でいろんな方のコメントをまとめファシリテーターをしていた科学コミュニケーターの樋江井哲郎さん、田中健さん、ボランティアのみなさんのトーク力には、運営側としても勉強になることが多かったです。
日本科学未来館では、これからも家族に関わる問題をテーマに、定期的にイベントを開催していくとのこと。今後も楽しみですね!
(M2・李怡然)
こんばんは。M1の佐藤桃子です。
突然暖かい週末となりましたが、次はいつ寒くなるのかとつい身構えてしまいます。
先日、つくばにある産業総合研究所のインターンに行ってきました。
研究所、というと研究者だけが働いているイメージがあるかもしれませんが、今回私が参加したのは、研究を支えたり技術を社会に送り出したりする、総合職のインターンです。
グループワークでプレスリリース用の広報文を作ったり、企業との共同研究の交渉をシミュレーションしたりと、大学の中ではできない体験ができました。
特に広報文を作る作業は、複雑な科学技術を分かりやすく伝えるとても良いトレーニングになり、日頃から分かりやすい説明を心がけていても盲点になっていた部分に気付かされました。
科学技術の報道に注目する良い視点を得られたと思います。
インフルエンザが流行る季節になってきましたので、皆様お気を付けてお過ごしください。
(M1・佐藤桃子)
第74回(2016年2月5日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
中田:
Regulatory controversy on the pediatric ventricular assist device trial in Japan
Nakada H, Arakawa M, Tatsumi E
The Journal of Heart Lung Transplantation.35(1):148-50.2016.
李:
Disclosing Secondary Findings from Pediatric Sequencing to Families: Considering the ‘Benefit to Families’
Benjamin S. Wilfond, Conrad V. Fernandez, and Robert C. Green
Journal of Law, Medicine & Ethics.43(3): 552-8.2015.
佐藤:
Abortion Counselling and the Informed Consent Dilemma
Scott,Woodcock
Bioethics.25(9):495–504.2011
本日、2015年度、第10回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2016年2月3日(水) 10時00分~12時30分
発表者1: | 神里彩子(東京大学医科学研究所 研究倫理支援室/公共政策研究分野 特任准教授) |
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タイトル: | 「全員加盟制医師組織による専門職自律」に関する一考察 |
要旨:
2013年8月に日本学術会議・医師の専門職自律の在り方に関する検討委員会が『報告「全員加盟制医師組織による専門職自律の確立-国民に信頼される医療の実現のために-」(2013年8月30日)』を発表した。そこでは、法定の全員加盟制医師組織「日本医師機構(仮)」の設置が提言されている。日本医師会は、医師の組織として最大のものといえるが、医師法等の医療分野に特化した法律に基づいて設立された法定団体ではなく、戦後間もない1947年に民法34条に基づいて任意に設立された公益社団法人である(公益法人制度改革に伴い2013年に「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に則って公益認定)。また、日本医師会に加入するか否かは各医師の判断に委ねられている(加入数は全医師の6割程度)。このように日本医師会は「任意設立・任意加入の公益社団法人」という体制をとっている。医療の質を確保するためには、日本学術会議報告の言うように、法定の全員加盟制医師組織、換言すれば、強制設立・強制加入の医師組織が必要なのだろうか?医療の質を確保するための医師組織とはどのようなものであるべきだろうか?本報告では、このリサーチクエンチョンへの手がかりとして、「日本医師会」の設立・加入体制の経緯を概観し、そこから見えることを考察したい。
発表者2: | 小林智穂子(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士後期課程) |
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タイトル: | 勤労者による社会貢献活動への寄与の現状と課題 |
要旨:
近年、企業ボランティア活動が注目されている。企業ボランティアとは、企業により奨励・支援を受けている活動のことで、公共の福祉の実現に寄与しようとする活動にみうけられる。これらの活動は、福祉への寄与の観点から見て、職域福祉の強化や企業市民活動の実践という側面があると整理されている(武川 2011)が、実際に企業ボランティア活動に関与した経験をもつ人々が、企業が奨励・支援するボランティア活動について、どのような経験をし、どのような意識をもっているのか、その実情は明らかにされていない。本報告では、これらを明らかにするために行ってきた、CSRデータを用いた実態調査と、インタビュー調査の進捗報告を行う。
2015年2月1日より、
特任研究員として、中田はる佳さんをお迎えしました。
どうぞよろしくお願い申し上げます!
本日、2015年度、第9回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2016年1月20日(水) 10時00分~12時30分
発表者1: | 須田英子 (国立環境研究所・子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)コアセンター・特別研究員) |
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タイトル: | 「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」概要と倫理的諸課題 |
概要:
環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」は、全国15か所の調査地域にて約10万人の参加児を追跡調査する出生コホート研究である。エコチル調査では、一般集団の子どもを調査対象とすること、胎児期に妊娠中の母親の代諾によって調査に参加いただくことなどを背景とした倫理的・法的・社会的課題が存在する。これらへの対応における配慮事項が、出生後13歳になるまでの追跡期間における参加児の心身の成長にともない変化していくことも大きな課題である。また、環境化学物質の健康影響を中心に据えた環境省による調査であることを背景として、従来国内で行われてきた医学研究やゲノム研究と異なる側面を持っていることも特徴であり、これに関連した倫理的課題も存在する。発表では、エコチル調査の概要と現状、これまでに経験した倫理的課題の一部を紹介する。また、昨年度より開始した参加者/参加児とのパートナーシップ構築へ向けた基礎調査について、進捗状況を報告する。
発表者2: | 李怡然 (大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程2年) |
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タイトル: | 出生コホート研究における親から子への「告知」―インフォームド・アセントを手がかりに |
概要:
近年、子を胎児期から成長後の長期にわたって追跡する出生コホート研究が世界的に実施されており、日本においても10万人を対象とする全国規模のプロジェクト「エコチル調査」が現在進行中である。未成年の研究参加者を保護するために、親の代諾だけでなく子本人の意思確認を行うべきだとされるようになり、研究者に対し、子から「インフォームド・アセント」(informed_assent)を得る努力義務が定められるようになってきている。出生コホート研究においても、成長後に子本人の意思確認を行うことが重要な検討事項とされているが、誰が、どのように子に伝えるかについては先行研究で十分に検討されていない状況にある。そこで、本研究ではインフォームド・アセントの出発点として、親が子に対し研究参加について伝える過程=「告知」(telling)があると想定し、エコチル調査に参加する親への質的調査を通して、子への告知に対する態度や希望を明らかにした。今回の発表内容は、1月下旬に予定されている学際情報学府修士論文口述審査のドラフトをもとにしている。
本日、国際医療福祉大学大学院 名誉大学院長の金澤一郎先生が亡くなられました。金澤先生は、東京大学医学部を退任された後、数々の要職を歴任され、そのお肩書きには枚挙に暇がありません。一般的によく知られているのは、宮内庁皇室医務主管を務められたことであろうと思います。
これから出るであろう、金澤先生を悼む報道では、金澤先生とハンチントン病との関わりに触れるものは少ないと思いますが、金澤先生は、日本で数少ないハンチントン病研究の第一人者であり、私は多くのことを教えて頂いた一人です。
金澤先生に初めてお会いしたのは、1996年、私が大学院博士課程に入学して2年目のことでした。私は、世界各国のハンチントン病の患者・家族会の国際団体(International Huntington Association)への視察から戻り、完全に感化された状態でした。
そこで、私は、全く面識のなかった金澤先生との面談予約を取り、日本でも患者・家族会をつくりましょう!と、直球で思いを伝えました。金澤先生は、私に「日本で作るのは無理じゃないか」、「よくハンチントン病のご家族の意見を聞いてみたらどうか。でも僕は紹介しないよ」と躊躇なくおっしゃいました。こうしたご見解は、長年の臨床経験から先生がご覧になってきた、ハンチントン病の患者・家族の方々の苦しみを踏まえてのものでした。
そもそも、近視眼的な、見ず知らずの文系学生に、まずはよくぞお会い下さったと恥じ入る思いですが、ここで金澤先生が立ちはだかって下さったことは、とても有り難いことでした。おかげで、私の中では、「いやいや、絶対に仲間がほしいというニーズはあるはずだから、いつか保守的な金澤先生をギャフンといわせたい」という稚拙な対抗心と同時に、「私自身が何も日本の当事者の苦しみをわかっていないだけかもしれない」という謙虚な危機感も生まれました。
その後、様々な縁が結ばれ、2000年に、日本ハンチントン病ネットワーク(JHDN)という会が組織されました。金澤先生もお招きした「JHDNお茶会」で当事者が語り合っている姿を目の当たりにされたときには、本当に喜んで下さいました。その後も、金澤先生はいつも応援して下さり、様々な場でJHDNのことを話題にして下さったほか、ハンチントン病の発症前遺伝子検査のガイドラインを一緒に訳してくださいました。豪放磊落、でも繊細に多くの方面に気を配られ、最後はえいやっとナタを振るう、そんなイメージの先生でした。
2週間ほど前、金澤先生から久しぶりにお電話を頂きました。療養を第一とした暮らしをされていたことは存じていましたが、かつて金澤先生をお招きした、記念すべき「JHDNお茶会」から15周年となる今年の夏に、私は記念講演を依頼していました。しかし、残念ながら、お電話のご用件は、講演辞退のお申し入れでした。「声は元気そうでしょ。でも病室からは全く出られないし、夏にはヘロヘロになっているかもしれない」と。その後の会話は、ご体調のこと、東大のこと、医科研のこと・・・でも金澤先生が抱かれていた夢のお話や、私への過分な労いのお言葉に至ったとき、これはお別れのご挨拶だと確信しました。私の嗚咽が金澤先生にバレないように、「ぜひまたお会いしましょう」とお伝えするのが精一杯でした。
金澤先生は、基礎研究の論文のみならず、総説や様々なジャンルのエッセイもお書きになりましたが、いくつかの著作について、特に若手の方に接して頂きたく、ここにご紹介致します。これまで多くのご指導を頂いたことに心から感謝し、ご冥福をお祈り致します。
【ウェブサイト上から自由に読めるもの】
- 医学界新聞第2439号(2001年6月4日)「第42回日本神経学会が開催される 新しい世紀の神経学の出発」
- 金澤一郎「遺伝性神経難病の診療の現状」(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科 特設遺伝カウンセリングコース 設立記念シンポジウム「遺伝カウンセリングの未来」2004.12.11.)
- 金澤一郎「今後の難病対策への提言」,保健医療科学, 2011; 60(2):84-88.
- 金澤一郎「遺伝子診療とチーム医療」国際医療福祉大学学会誌 2012; 17(1): 10-13)
- 公益財団法人加藤記念バイオサイエンス振興財団ウェブサイト 若手研究者へのメッセージ 金澤一郎先生「いつも中心にハンチントン病があった」
(※掲載日不詳、2011年以降と推測) - NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン 応援メッセージ~「知らないことから来る不安」を解消するために(金澤一郎さん)
(※掲載日不詳)
【図書】
- 金澤一郎「ハンチントン病を追って: 臨床から遺伝子治療まで」,科学技術振興機構,2006.6.
(東京大学ご退職を契機に編まれた書籍です)
このたび、日本科学未来館で始まる、「みらいのかぞくプロジェクト」の監修をお引き受けすることになりました。
日本科学未来館の理念は、「科学技術を文化として捉え、私たちの社会に対する役割と未来の可能性について考え、語り合うための、すべての人々にひらかれた場」だそうです。でも、最初にお話を頂いたときには、「果たして日本科学未来館は、異性愛中心主義、ジェンダー、婚姻、生殖性といった規範から解き放たれ、性自認、性的志向、家族観、住まい方の多様性を認め、さらに必ずしも科学技術の利用を推奨しないプロジェクトなど、実施できるのでしょうか!?」と思いました。
もしも、「26歳までに産むのが“みらいのかぞく”っしょ、ウェーイ」とか、「生殖補助医療技術でバンバン少子化対策していくっしょ、ウェーイ」とか、「やっぱ血縁が大事っしょ、ウェーイ」みたいな展開だったらどうしようと思い、最大限の厳戒態勢を敷いて打合せに臨みました。が、どうやら問題意識は共有できるのかも・・・と、恐る恐る信じるに至り、日本科学未来館で、敢えて「家族」を語り合うという挑戦に一緒に挑もうと決めました。
そのキックオフイベントが、2月11日(祝・木)に行われることになり、国立民族博物館の松尾瑞穂さんと登壇します。日本科学未来館で、自然科学者ではない二人が登壇というのも画期的かと思っております。
タイトル: | 「“みらいのかぞく”を考える~人の心・制度・科学技術~」 |
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開催日時: | 2016年2月11日(木・祝) 13:00~15:00 |
開催場所: | 日本科学未来館7階 イノベーションホール |
定員: | 80名 |
参加費: | 無料 |
主催: | 日本科学未来館 |
申込方法: | 要事前申込(詳細・お申込はこちらへ) |
そして、ファシリテーターは、科学コミュニケーターの樋江井哲郎さん、田中健さんです。
■樋江井哲郎さんブログ 「夫婦の姓、違う人がいたら嫌ですか?」
■田中健さんブログ「「みらいのかぞく」プロジェクト、始動!」
なにしろ初回ですから、そして、家族問題に長けているとは言い難い日本科学未来館ですから、家族について一言申し上げたいという方々が集うものの、たぶん不完全燃焼かもしれません。そして、このご時世、炎上も覚悟かなー。せめて「来場された、あなたを排除しない」ということだけは、精一杯の努力をしたいと思います。よろしかったらお運びくださいね。
第73回(2016年1月15日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
神里:
抗がん剤の存在論―がん看護における告知と治療
村上靖彦
『摘便とお花見』187-216.2013.
藤澤:
Knowledge and Attitudes toward Non-invasive Prenatal Testing among Pregnant Japanese Women
Mikamo Shoko and Mikiya Nakatsuka
Acta Media Okayama.69(3): 155-163.2013.
佐藤:
Introduction: Preimplantation genetic testing screening is alive and very well
David R Meldrum
Fertality and Sterlity.100(3):593–594.2013.
Preimplantation genetic testing screening is alive and very well: Really?
Norbert Gleicher,Vitaly A. Kushnir and David H. Barad
Fertality and Sterlity.100(5):e36.2013
こんばんは。M1の佐藤桃子です。
新年明けましておめでとうございます!
先日は東京でも初雪が降るなど、暖かかった年始に比べて急に寒くなってきました。
12日、元NHKアナウンサーの稲垣文子先生をお招きして、院生対象のスピーチゼミが開催されました。
稲垣先生が院生一人一人のスピーチを見てアドバイスを下さる形だったため、自分では気付いていなかったクセなどを指摘して頂き、話し方の改善につなげることができました。
特に私は、「唇の動きが小さい」とのことで、毎日「あ え い う え お あ お」の発声練習をすることを勧めて頂きました。早速家で発声しています!
研究者にとっては研究だけではなく、その内容をいかに分かりやすく伝えるかという面も重要であることを再認識したゼミとなりました。
改めて、稲垣先生、本当にありがとうございました。
新年早々、有意義な経験ができたため、今年もがんばっていこうと思います。
どうぞ今年もよろしくお願いいたします。
(M1・佐藤桃子)