東京では2週連続の大雪でした。
みなさまのお住まいの地域はいかがでしたか?
わたしの自宅は玄関前に雪が大量に積もり、ドアが開かなくなりました。
はじめまして、特任研究員の吉田です。
この研究室でわたしは「臨床試験・治験の語りデータベースプロジェクト」のインタビューを担当しています。
このプロジェクトの詳細につきましてはこちらを御覧ください。
ある病いとともに生活している人から、その生活のなかで臨床試験・治験に参加したというたったひとつの事項について語っていただくのですが、これがなかなか難しいのです。
語り手となる参加者さんからは「病いの経験」は語ることができるものの、「臨床試験・治験に参加した経験」は何をどうやって語っていいものかわからない、といったご意見をよく聞きます。
「臨床試験・治験に参加した経験」は特に特別なものでなく、日常生活の延長線上にあるもので、それを他者に伝えることが何かに役に立つのだろうか、という疑問が起こるのです。
「そもそも何から話せばいいのか…」と悩む参加者さんが多くおられるようで、インタビュー協力者の募集にはなかなか苦戦しております。
わたしは「何を話せばいいのかわからない」という参加者さんの話にも興味を持っています。「なぜ、臨床試験・治験の経験の語りは語りにくいのか/語るに足らないと思ってしまうのか」。社会学出身のわたしとしては、この状態に大変関心をもち、「臨床試験・治験の語りの困難さ」に注目した報告を今年度2回させていただきました。
- 第13回CRCと臨床試験のあり方を考える会議in舞浜
「臨床試験参加者の語りデータベース構築の取り組み――なぜ臨床試験の語りは「困難」なのか」9月15日(土)、16日(日)@東京ベイ舞浜ホテルクラブリゾート(吉田、中田、別府、有田、武藤) - 第86回日本社会学会
「臨床試験の語りの「役割」と「困難」―「臨床試験参加者の語りデータベース構築」の取り組みから」10月12日(土)、13日(日)@慶應義塾大学(吉田、武藤)
このプロジェクトは、語りの分析を通じて、臨床試験・治験を取り巻く倫理的問題を明らかにし、被験者保護の質向上を目指すことを目的としていますが、お話を聞くなかでその人がどのように病いと向き合ってきたのかといった背景も見えてきます。インタビューを重ねるたびに、理屈では片付かない「どうしようもなさ」みたいなものをひしひしと感じます。その「どうしようもなさ」が垣間見える「臨床試験・治験の語り」は当初の目的以上の「臨床試験・治験周囲のリアル」が見えてくる、最先端な試みなのかも…と思っています。
まったくまとまりがなくなってしまいましたが、臨床試験・治験に参加したことがある患者さんをまだまだ募集しています(唐突!)。
是非、お話聞かせてください。進捗状況についてはまたこちらでご報告させていただきます。
[文責:吉田幸恵]
最近、満員電車に無理矢理乗り込む方法を覚えました。ドアの上の縁を持って身体をクルッと…。
こんにちは、特任研究員の吉田です。
「臨床試験・治験の語りデータベースプロジェクト」ですが、「協力する場合、自分が住んでいるところまで来てくれるんですか?それとも私が行かなければならないんですか?」と聞かれることがあります。
もちろんこちらから伺います、どこへだって!
これまで関東エリア、関西エリア、東北エリアでインタビューをおこないました。このインタビューでは協力者さんから同意を得られれば、ビデオカメラでの撮影をおこないますのでカメラや三脚等を持ってどこにだって行きます。
このインタビューはNPO法人ディペックス・ジャパンの全面協力のもとおこなわれており、様々な疾患・様々な年代・様々な居住地のかたからお話を伺いたいと思っています。
まだ北海道エリア、中・四国エリア、九州エリアの方には出会えておりません。
インドアだけど結構旅好き・乗り物好きなわたしがどこにでも行きますので、「東京からはだいぶ遠いから」と躊躇されている方も是非ご協力ください!
※写真は、治験のお話を伺うために行った盛岡にて。東北新幹線はやぶさと秋田新幹線スーパーこまちがドッキングする風景@盛岡駅、です。かっこいい!
[文責:吉田幸恵]
明日、2014年2月15日(土)開催予定の、シンポジウム「再生医療と研究倫理教育」につきましては、多数の事前登録のお申し込みを頂き、誠にありがとうございました。
関東地方は、あいにくの大雪に見舞われておりますが、本日未明には止む予定との予報を受けまして、明日は予定通り開催する予定です。ご参加を予定してくださっていた皆様におかれましては、交通機関の状況等につきご検討のうえ、どうぞご無理のないようにお越し下さい。
なお、本シンポジウムについては、今後、記録集を作成する予定です。事前登録された皆様には、ご登録のご住所にお送り致します。
また、事前登録されず、当日参加をご予定になっておられたものの、悪天候のために参加を断念された方々につきましては、ご希望に応じて、関連の記録・資料等をおわけいたします。
1)お名前、2)郵送先郵便番号、3)郵送先ご住所、4)メールアドレス、を明記の上、「再生医療と研究倫理教育事務局」
までお申込み下さい。お申し込みは、2013年3月15日までお受け致します。
(以下、行事詳細の再掲です)
シンポジウム「再生医療と研究倫理教育」
日時: | 2014年2月15日(土)午後2時~午後5時15分(予定) |
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開場: | 午後1時 |
場所: | 東京大学医科学研究所講堂(1号館1階)(東京都港区白金台4-6-1) *都営三田線・営団地下鉄南北線の白金台駅2番出口へ。エレベータ出入口の右どなりにある正門より入り、徒歩5分程度です。 |
話題提供: | 「再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究事業(課題D)の取り組みについて」 東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授 武藤香織 |
講演: | 「The Ethical, Legal and Social Issues associated with Regenerative Medicine Research in the US ~Using New York and California as Examples~」 ユニオン大学院‐アイカーン・マウント・サイナイ医科大学院 生命倫理プログラム・ディレクター ショーン・フィルポット氏 |
モデレーター: | 東京大学大学院医学系研究科 医療倫理学分野 助教 中澤栄輔 |
使用言語: | 英語・日本語(同時通訳あり) |
参加費: | 無料 |
平成23年度から受託して参りました国の事業につきまして、中間評価が実施されました。私どもが受託している2つの事業につき、中間評価の結果をご報告致します。
1.独立行政法人科学技術振興機構「再生医療の実現化ハイウェイ」課題D「再生医療の実現化に向けた研究開発における倫理上の問題に関する調査・検討・支援」
本学医学系研究科医療倫理学分野の赤林朗教授が、平成23年度の受託時より代表を務めてこられましたが、平成25年2月より私が代表代理を務めるようになり、同年8月に代表を交替致しました。本事業への関与を強め、立て直した一年でしたが、総評は「やや不十分」でした。
今後の取り組みについては、
- 「再生医療の実現化ハイウェイ」並びに「再生医療実現拠点ネットワークプログラム」傘下の各研究課題に対する倫理支援を最優先とし、インフォームド・コンセントと倫理審査に関する助言指導、およびそこから生ずる倫理的課題の研究に専念すること
- 当初の提案書に記載した、再生医療に関わる中長期的な倫理的法的社会的課題(いわゆるELSI)の研究を中止
- 「再生医療実現拠点ネットワークプログラム」PD・POとの連絡体制の強化
とのご指示がありました。
課題Dに対する詳しい評価結果は、こちらをご覧下さい。また、「再生医療実現化ハイウェイ」採択課題全体に対する中間評価の結果は、こちらをご覧下さい。
2.文部科学省科学技術試験研究委託事業「次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム」
私どもは平成23年度より、全体のマネジメント部門(HQ)の一部として研究倫理支援ユニットの活動を受託しております。野田哲生プログラムリーダーのご指導のもと、HQは「A:優れている」との評価を頂いたほか、倫理グループについては、以下のコメントを頂戴しました。
オ 倫理グループの検討状況、機能の適正さ、各研究者への活用条項・貢献度等知財支援同様に、倫理審査やインフォームドコンセントに重大な問題や疑念が生じないための多くの努力がなされている。研究倫理に関する相談の場所や教育訓練の実施などいくつもの側面において具体的な支援を相当数行われていることは高く評価できる。国民的な理解を得るためにも倫理的な事項に関するより適切なサポートや指導が求められる。今後は検体の共有や多目的利用などの環境構築などにも、一層の推進を期待する。
プログラム全体の評価結果はこちらをご覧下さい。
新しいくすりや医療機器の開発(いわゆる臨床試験や治験)に協力したことがある患者さんの体験談、まだまだ募集しております。
こうした研究に患者として協力した方や、協力を断った方、途中で中止になった方の体験談を集めて「語り」のデータベースをつくり、その一部をウェブサイトに公開するとともに、よりよい臨床試験・治験実施体制を考えるという趣旨のプロジェクトです。インタビュアーは、特任研究員の吉田幸恵さんと大学院生の中田はる佳さんが担当しています。
これまでに14名の患者さんのインタビューを終了しましたが、ネタバレしないように感想を述べますと、
(1)お一人お一人の尊い生活史の前には、研究倫理の世界の理屈では折り合いがつかないことが多いなあ
(2)日常診療の上に折り重なる臨床試験や治験の立ち位置は、本当に難しいなあ
という感じでしょうか?
つまり、臨床試験・治験の性質を理解したうえで、参加を決意し、語りたいという意欲をお持ちの方と出会うのは、今のところ極めて難しいってことです。「経験者の声を聞こう!」と言い出した我々自身、なかなか出会いがなく結構な困難と向き合っていまして、そこに向き合うためにも、今年度は、以下の学会で報告して参りました。
■日本質的心理学会第10回大会
「「語り」の可能性―臨床試験・治験の語りデータベース構築の取り組み」8月30日(金)~9月1日(土)@立命館大学(吉田、中田、有田、武藤)
■第13回CRCと臨床試験のあり方を考える会議in舞浜
「臨床試験参加者の語りデータベース構築の取り組み――なぜ臨床試験の語りは「困難」なのか」9月15日(土)、16日(日)@東京ベイ舞浜ホテルクラブリゾート(吉田、中田、別府、有田、武藤)
■第86回日本社会学会
「臨床試験の語りの「役割」と「困難」―「臨床試験参加者の語りデータベース構築」の取り組みから」10月12日(土)、13日(日)@慶應義塾大学(吉田、武藤)
■第34回日本臨床薬理学会学術総会
「英国における臨床試験の参加動機とその課題――国際比較にむけて」12月3日(水)~5日(金)@東京国際フォーラム(中田、松井、會澤、吉田、武藤)
インタビューに協力して下さる方の目標は50名です。まだまだ募集中ですので、よろしければご参加、または周囲の方々にご紹介いただければありがたいです。詳しいご案内は、ディペックス・ジャパンのウェブサイトをご覧下さい。
この写真は、現在制作中の新しいパンフレットです。完成したら、こちらにも掲載します!
(文責:武藤香織)
*この研究は、文部科学省科学研究費助成事業基盤研究(B)「臨床試験・治験の語りデータベース構築と被験者保護の質向上に関する研究」(研究代表者・武藤香織)として実施しております。
*この研究は、特定非営利活動法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパンの全面的なご協力のもと、北里大学薬学部医療心理学部門の有田悦子さんたちのチームと一緒に進めています。
このたび、「ヒトゲノム解析研究にともなう倫理研修会」を開催することとなりました。
今回は、ヒトゲノムデータの公開に関わる課題と手続きを取り上げます。
年度末のご多忙な時期とは存じますが、ご都合合わせの上、ご参加いただければ大変ありがたく存じます。
【主催】
文部科学省科学技術試験研究委託事業「次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム」研究倫理支援ユニット
【対象者】
研究者、倫理審査委員会委員、研究機関における研究倫理支援職、倫理審査委員会事務局の方
【日時】
平成26年2月28日(金曜)10:00~12:00
10:00-10:10 | 挨拶 |
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10:10-10:50 | 講演1 箕輪 真理(JST バイオサイエンスデータベースセンター) 「公的データベースの目的、意義、運営方針」 |
10:50-11:30 | 講演2 丸 祐一(東京大学医科学研究所公共政策研究分野) 「データ利用をめぐるガイドラインの考え方」 |
11:30-12:00 | 質疑応答 |
【場所】
コンベンションルーム・AP品川 10階 会議室AおよびB
【申し込み方法】
メール:ご所属先、お名前、職名、連絡先電話番号、連絡先メールアドレスをご記入のうえ、
までご連絡下さい。
ファックス:申込用紙(PDFファイルが展開します)にご記入の上、FAXにてお送り下さい。
お差し支えなければ、お立場や本研修会に関連するご関心事項やご質問をお書きくだされば、運営上、大変ありがたく存じます。
【締切】
平成26年2月21日(金)
【お問い合わせ先】
文部科学省「次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム研究倫理支援ユニット」
〒108-8639 東京都港区白金台4-6-1
東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 公共政策研究分野
TEL 03-6409-2079 FAX 03-6409-2080
E-MAIL:
★悪天候による中止等の緊急のお知らせについては、公共政策研究分野ホームページをご覧下さい。
第43回(2014年02月07日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
礒部:
『環境問題の科学社会学』
第2章 環境問題の科学社会学の構想
立石裕二
世界思想社 2011年
中田:
Personal experiences of taking part in clinical trials – A quantitative study
Locock L, Smith L.
Patient Education and Counseling. 84:303-309. 2011
本日、2013年度、第8回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2月5日(水)10時~12時
報告1:
「PGxを利用した医薬品に関する制度研究-日本・台湾の比較研究を中心に-」
報告者: | 江 念怡(新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻 公共政策研究分野 修士課程1年) |
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概要: | PGx検査は、新しい医療分野で、台湾においても、日本においても、まだ制度が確立されていないため、今後どのような制度を構築していくべきかは、重要な課題である。医療制度の異なる日本と台湾において、医薬品の市販に関する規制制度、とりわけ、PGxをめぐる規制の現状について、比較検討することで、両国における諸課題を明らかにし、PGx利用に関する規制のあり方について提言したいと考えている。 そこで修士論文で、この課題に取り組むつもりである。今日は先行研究や台湾の医療制度の背景を紹介しながら、修論の構想発表をおこないたい。 |
報告2:
「精神疾患ブレインバンク構築・運営に関する倫理的・社会的諸課題-脳提供の規定要因-」
報告者: | 岩本八束(新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻 公共政策研究分野 修士課程1年) |
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概要: | 精神医学の生物学的研究ではヒト脳組織を利用した研究(死後脳研究)が欠かせない。そのため、効率的にヒト脳組織を収集・配布することを目的とした組織・団体であるブレインバンクは非常に重要であるものの、国内のブレインバンクはその役割を十分に果たしているとはいえない。一部の国内研究者がブレインバンクの課題・問題を多数指摘しているものの、こと提供者募集に関しては十分な議論がなされているとは言いがたい。 そこで、修士課程においては、海外の事例・先行研究から脳提供の規定要因を推定し、さらに日本においてその要因が脳提供にどのような影響を与えるのか明らかにするために、一般市民に対する意識調査を行う。 今回の研究経過報告は、ブレインバンクの概要に触れながら、脳提供の規定要因を中心に行う。また、作成中の調査票についても報告を行う。 |
2014年2月15日(土)午後2時より、東京大学医科学研究所講堂にて、シンポジウム「再生医療と研究倫理教育」を開催することになりました。詳細は、下記またはチラシをご覧ください。同時通訳付き、参加料無料です。ご興味のある方は、是非ご参加ください。
シンポジウム「再生医療と研究倫理教育」
日時: | 2014年2月15日(土)午後2時~午後5時15分(予定) |
---|---|
開場: | 午後1時 |
場所: | 東京大学医科学研究所 講堂(1号館1階) (東京都港区白金台4-6-1) (*白金台駅2番出口へ。エレベータ出入口の右どなりにある正門より入り徒歩5分程度) |
話題提供:
「再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究事業(課題D)の取り組みについて」
東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授 武藤香織
講演:
「The Ethical, Legal and Social Issues associated with Regenerative Medicine Research in the US ~Using New York and California as Examples~」
ユニオン大学院‐アイカーン・マウント・サイナイ医科大学院 生命倫理プログラム・ディレクター ショーン・フィルポット氏
モデレーター:
東京大学大学院医学系研究科 医療倫理学分野 助教 中澤栄輔
使用言語:
英語・日本語(同時通訳あり)
参加費: | 無料 |
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定員: | 100名 (同時通訳設備の関係で、事前登録をお願いしております。ただし、定員に達しない場合は、当日でもご参加を受付致します。) |
事前登録先: | 参加ご希望の方は、1)お名前、2)ご住所、3)ご所属、4)緊急連絡先を明記の上、2月13日(木)までに「再生医療と研究倫理教育事務局」まで、お申込み下さい。 *悪天候の場合は、緊急連絡先にお知らせ致します。 |
主催: | (独)科学技術振興機構 再生医療実現拠点ネットワークプログラム 「再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究」(課題D) |
共催: | 日本生命倫理学会研究倫理部会 |
概要
2013年は、再生医療の法整備元年とも言うべき年であった。例えば、「再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律(再生医療推進法)」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療新法)」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律(改正薬事法)」が相次いで可決され、再生医療をめぐる研究と診療の法的枠組みが大きく変わった。また、これに先立ち、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」も改正され、日赤で保管する輸血用の血液や、臍帯血バンクで長期保管された臍帯血なども、iPS細胞研究に転用できる道が拓かれた。
こうした大胆な規制緩和と研究環境の整備は、これまでのライフサイエンス・医学研究には例がない。近視眼的な視点で倫理的・法的・社会的問題に対応することだけでなく、中長期的な影響を鑑みた課題の抽出も喫緊の課題といえるだろう。
なかでも大きな課題は、研究倫理教育である。この領域には、これまでなじみのなかった研究者も多数参入し、研究に協力する試料提供者や被験者の数も増加している。このように、社会的な期待や注目度の高い研究における研究倫理教育は、研究者、倫理審査委員のみならず、再生医療研究に強い期待を抱く試料提供候補者や被験者候補者の保護にとっても、大変重要な役割を果たすことが予想される。
そこで、本講演会では、国の「再生医療実現拠点ネットワーク事業」において、倫理的な課題への対応を担う窓口となっている事業を紹介するとともに、その大きなテーマの一つである研究倫理教育について、アメリカ合衆国から有識者を招聘し、再生医療と研究倫理教育の在り方について議論する。
日本人類遺伝学会は日本疫学会と提携し、研究対象者にインフォームド・コンセントを担当する可能性のある者に対し、その業務の基本となる教育の機会を提供し、認定する制度として、ゲノムメディカルリサーチコーディネーター(GMRC)制度を運営しております。この委員会は、教授・武藤香織が委員長を、特任助教・洪賢秀が委員を務めております。
このたび、
第2回アドバンストセミナー(2014年2月22日(土))
第6回認定試験・講習会(2014年3月8日(土))
が開催されることになりました。
詳しいご案内は、日本人類遺伝学会GMRC制度委員会ウェブサイトをご覧下さい。
第42回(2014年01月17日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
中田:
Personal benefit, or benefiting other? Deciding whether to take part in clinical trials
Louise Locock, Lorraine Smith
Clinical Trials. 8(1):85-93. 2011
岩本:
Barriers to participation in mental health research: are there specific gender, ethnicity and age related barriers?
Anna Woodall, Craig Morgan, Claire Sloan, Louise Howard
BMC Psychiatry. 2010 Dec 2;10:103
江:
藥物基因體學之政策與法律議題分析(ゲノム薬理学の政策と法律の議題の分析)
何建志
法律與生命科學 第四期 Issue 4、January 2008
本日、2013年度、第7回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
日時: | 2014年1月8日(水)10時~12時 |
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報告者: | 中田はる佳 (新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻博士後期課程2年/国立循環器病研究センター研究員) |
タイトル: | 当事者から見た臨床試験の倫理的課題の探索に向けて(博士論文研究報告) |
概要:
近年、医科学研究への患者参画の重要性が唱えられており、様々な取組みが行われている。中でも、医科学研究の成果を臨床現場で広く患者に還元するにあたっては、臨床試験が欠かせない。従来患者は、弱者として保護される立場で臨床試験に関与してきたが、近年ではそれにとどまらず、患者が主体的に臨床試験に関与する動きも見られる。臨床試験と患者の関わりについては、参加動機や意思決定の要素などが主に研究されているが、当事者の立場から倫理的課題を探索したものは多くない。そこで、博士論文においては、臨床試験参加者へのインタビューの分析から、当事者が認識する倫理的課題を探索したい。また、2013年の活動のまとめも報告する。
D2の中田はる佳です。あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨日から2014年の仕事が始まりました。今年は例年に比べて長めの冬休みとなり、それぞれよい充電ができたのではないでしょうか。院生室にもにぎやかさが戻ってきています。M2の皆さんは修論が大詰めです。私は、博論の執筆に向けてそろそろ本格的に分析等を始めなければと思っているところです。
2014年も「院生室より」をどうぞよろしくお願いいたします。
(D2・中田はる佳)
Journal of Medical Ethics誌に下記の論文が掲載されました。
この調査は、当事者の意思を確認することが困難な試料、いわゆる“legacy samples”の取扱いをテーマにしています。我々は、日本全国の法医学関係教室を対象として、法的な要件に基づく遺体試料の二次利用について質問紙調査を行いました。調査には約6割(48施設)が回答に協力して下さいました。調査の結果、回答施設の約4割が、保管試料についての遺族からの問い合わせを経験していることがわかりました。研究者の発意に基づく研究利用について、約2割の施設が遺族への情報提供を進めている一方、約7割がこうした情報提供について消極的であったり、方針について結論に達していないと回答しました。今日、公衆衛生事業や医療の文脈で採取された試料の転用をめぐる判例が海外で再び注目されていますが、日本を舞台とした本調査は、本人の意思を確認できない「遺留試料」を事例とした点に特徴があり、配慮すべき利益・懸念の認定と均衡のあり方を今後の課題として結んでいます。本調査の速報版はJME誌のウェブサイトからアクセスできます。またこの論文についてのコメントが、井上が在外研究で滞在しているウプサラ大学の研究室のサイトでも紹介されました。
本日、2013年度、第6回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
日時: | 12月25日(水)10時~12時 |
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報告者: | 丸 祐一(公共政策研究分野特任助教) |
タイトル: | 「人間の尊厳の生物学主義的解釈と個人の尊厳」 |
概要:
臨床研究に関する倫理指針が平成20年に改正された折、前文の一部が変更された。「被験者の個人の尊厳及び人権を守る」という文言が、「被験者の人間の尊厳及び人権を守る」という文言に変わったのである。臨床研究における被験者保護は、通常、研究に参加する具体的な被験者が可能な限り不利益を受けないようにすることを目的としているが、改正後の「人間の尊厳」をそのような意味として解釈することはただちには難しい。というのも、「人間の尊厳」という言葉は、「類」としての人間性の尊厳を指すものとしても解釈できるからである。人の生殖細胞系列に介入する遺伝子治療及びその研究や、ドイツにおける「胎児判決」において問題とされるのはこの意味での「人間の尊厳」であり、個人を超えた「類」としての人間の尊厳を根拠にして、国家や個人による科学技術の行使を制限しようとする際に使われている。ここにおいて、例えば憲法学では、個人の尊厳と人間の尊厳(生命の尊厳)との対立が論じられているところである。歴史的に見れば、人間の尊厳を人の生命の尊厳に結びつける考え方は比較的新しい考え方である。本シンポジウムでは、この新しい考え方を人間の尊厳の生物学主義的解釈と位置づけ、具体的な個人の尊厳を尊重することとといかなる関係を持ちうるのかを検討する。法学・法哲学の文脈でこれまで語られてきた法における尊厳の語られ方について振り返り、あまりに多義的になったことから「空虚」ともいわれつつある本概念について改めて整理する。
第41回(2013年12月20日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
武藤:
N・SAS試験 日本のがん医療を変えた臨床試験の記録
小崎丈太郎
日経メディカル開発 2013年
神里:
再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律
岩本:
Brain banking: Opportunities, challenges and meaning for the future
Hans Kretzschmar
Nature Reviews Neuroscience 10, 70-78 January 2009
D2の中田はる佳です。すっかり秋も深まり、寒い日も多くなってきました。食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋などといいますが、大学院生としてはやはり学問の秋でしょうか。
先日、本研究室研究員の礒部さんが中心となり大島研・佐倉研・武藤研三研究室合同のゼミを企画してくださいました。今回はゼミの概要と感想などをお伝えしたいと思います。これらの三研究室は、もともと各研究室で少しずつ交流があったところ、せっかくなら合同でゼミを行おうという流れになったようです。
当日は、まず佐倉先生から開催趣旨のご説明があり、全員自己紹介をした後で、佐倉研および武藤研から各2名の大学院生が研究発表を行うという流れで進みました。佐倉研からは下西さん(D2)、加瀬さん(D2)のお二人が、武藤研からは小林さん(M2)と中田(D2)が発表を担当しました。参加者は約20名、バックグラウンドや興味関心はいつにも増して多様でした。
学会や内部ゼミと異なり、共通知識の程度が多様で研究分野も異なる方々に自分の研究をお話しするのは初めての経験です。発表では①自分の興味関心をわかってもらい、②シンプルに研究内容を説明し、③内部のメンバーにも飽きずに聞いてもらえるように、注意してプレゼンテーションを作成しました。学会発表では使わないような写真やイラストを入れるなど視覚的な情報も重視しました。発表の際には、専門用語の使用を極力避けるなど話し方にも注意しました。発表後の質疑応答・議論の時間では、これまでと違った視点からの質疑やコメントをいただくことができました。
一方で、これまで接する機会がほとんどなかった分野の研究発表を聞き、その場で質問やコメントを出すということもあまりない経験でした。これは、限られた時間の中で発表を自分なりに咀嚼するということで、普段使わない脳の部分を使うような、大変知的刺激に溢れる経験でした。また、発表スタイルにも研究分野による違いがみられ、興味深かったです。
今回は幸運にも発表者と聴講者の二つの立場で合同ゼミに参加することができました。いずれの立場からも、とても得るものが多く充実した経験になりました。こうして多くの方々と議論をする機会は、視野を広げ、自分の研究内容を深める上で非常に有意義であると思いました。
(D2・中田はる佳)
2013年12月5日(木)9時~11時に、東京国際フォーラムにおきまして、第34回日本臨床薬理学会学術総会 一般公開シンポジウム「患者の視点から考える再生医療の臨床研究」が開催されます。
無料の公開シンポジウムですので、ご興味のおありの方は是非ご参加下さい。
<フライヤーPDF版はこちらです>
第34回日本臨床薬理学会学術総会 一般公開シンポジウム
「患者の視点から考える再生医療の臨床研究」
日時: | 2013年12月5日(木)9:00~11:00 |
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場所: | 東京国際フォーラム ホールC(第1会場) |
座長: | 武藤香織(東京大学医科学研究所) 田代志門(昭和大学研究推進室) |
演者: | 「患者からみた臨床試験――臨床試験への患者参画について」 別府宏圀(NPO法人健康と病いの語りディペックス・ジャパン) 「国内の患者団体による臨床試験への関与――日本せきずい基金の事例」 坂井めぐみ(立命館大学大学院先端総合学術研究科) 「患者の臨床試験参画に必要なこと」 有松靖温(日本網膜色素変性症協会) 「iPS細胞を用いた臨床研究と患者の理解」 高橋政代(理化学研究所発生・再生科学総合研究センター) |
主催: | (独)科学技術振興機構 再生医療実現拠点ネットワークプログラム「再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究」 日本臨床薬理学会 |
参加費: | 無料 |
事前申し込み: | 不要 |
問い合わせ先: | (独)科学技術振興機構 再生医療実現拠点ネットワークプログラム 「再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究」事務局 |
2013年10月12日に公刊された『医学のあゆみ』247巻2号に下記の論文が掲載されました。
「BMIについての倫理的・社会的問題の概要:脳神経倫理学における議論から」(礒部太一・佐倉統)
論文概要:
ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)に関わる倫理的・社会的問題について、脳神経倫理学の議論を中心に紹介する。最初に、脳神経倫理学とはどのようなものであるかの概要を説明した上で、脳神経倫理学において議論されている諸点を中心に、BMIに関わる具体的な倫理的・社会的問題を提起し、最後にそれらに対応していくことが脳神経科学研究のコミュニティにおいてどのような役割と意義があるのかを述べる。
ここ2~3ヶ月間の海外出張に関して報告します。
少し前のことになりますが、2013年8月上旬から9月初頭にかけて、カナダのモントリオールに滞在し調査を行ってきました。調査テーマは、「なぜカナダにおいて脳神経倫理が研究分野として成功をおさめつつあるのか」などです。調査の中心は、脳神経倫理や生命倫理の研究者や科学行政担当者へのインタビュー調査と、文献調査などでした。調査結果の一部については、現在、日本神経科学学会のニュースレターに投稿中です。
また、10月中旬には、アメリカ・サンディエゴで開催されたSociety for Social Studies of Science(4S)という科学技術社会論に関する国際学会に参加してきました。次回の4Sはアルゼンチン・ブエスノアイレスで開催される予定です。