本日、2014年度、第5回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2014年11月5日(水)10時~12時
発表者: | 中田はる佳(新領域創成科学研究科・博士課程3年) |
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タイトル: | 当事者の視点から見た臨床試験・治験における倫理的課題の探索(博士予備審査会予行) |
概要:
臨床試験(治験含む)は新薬や医療機器等の開発に欠かせない。よりよい実施体制の構築には、被験者の考えを反映する必要がある。これまで、臨床試験に関して患者・一般市民の理解促進や情報ニーズ等に関する研究は行われてきているものの、いずれも小規模であった。本研究では、患者の意識・経験を明らかにした上でそこからみえる倫理的課題について検討し、臨床試験に関する政策や規制へのフィードバックを行う。
研究参加者に対して、どのような結果を返却するべきかという問題に関して、研究領域毎に様々な議論がなされています。そこで、2014年3月5日に、CITI Japanプロジェクトの協力により、結果の返却に関して主要な論者の一人であるEllen Clayton氏をお迎えし、日本の若手ELSI研究者との対話型集会を開催いたしました。
この機会に、研究領域毎に閉じた議論をしてきた研究結果の返却をめぐる議論を、一度、「横串」にしてみるというのが、今回のコンセプトでした。Clayton氏の講演の後に、脳科学、ヒトゲノム解析研究、幹細胞治療研究という3つの異なる研究領域における論点を、日本の若手ELSI研究者から提示してもらい、フロアからのディスカッションも大変盛り上がりました。本記録集は、この集会のエッセンスをまとめたものです。
この記録集冊子の入手をご希望の方は、 までお申し込みください。
PDF版はこちらからダウンロードできます。
※この記録集作成にあたり、科学技術振興機構科学技術振興機構「再生医療の実現化ハイウェイ」における、「再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究」(課題D)より財政的支援を得ております。ここに御礼申し上げます。
東京大学にはたくさんの「特任」の職員がいます。
国からの委託事業等、研究プロジェクトごとに採用される「特任」には基本的に任期があります。
いわゆる「ポスドク問題」とも密接に関係しているといえばしているのですが、、、かくいう私も特任研究員です。この教室のスタッフはほとんどが「特任」で、様々な研究プロジェクトをおこなっています。
今回、東大新聞で「特任ポスト」について特集が組まれることになり、なぜか弊室の武藤(特任を雇う側)と吉田(特任として雇われる側)に取材依頼が舞い込んできました。
任期のある「特任」は確かに先行きが不安な部分もあります。しかしながら「教職員の終身雇用資格(テニュア)を得れば、それでゴールという考え方は古い」という武藤の意見には大いに共感します。
興味のある方は是非ご覧下さい。
pdfはこちらから。
(文責・吉田)
第52回(2014年10月17日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
岩本:
Newspaper coverage of biobanks
Ubaka Ogbogu, Maeghan Toews, Adam Ollenberger, Pascal Borry, Helene Nobile, Manuela Bergmann, Timothy Caulfield
PeerJ. 2:e500. 2014
江:
“Don't know” Answers, Guessing Effect and Knowledge Levels: The Evidence from Genetics Knowledge Scale
杜素豪 廖培珊
『調査研究―方法與應用』19:67-99 2006
李:
「我が国の母子コホートにおける近年の状況,および母子保健研究から今後への展望」
吉田穂波 加藤則子 横山徹爾
『保健医療科学』63(1):32-38 2014
藤澤:
「第7章 仏語圏の生命倫理」
小出泰士
『シリーズ生命倫理学 第1巻 生命倫理学の基本構図』、今井道夫 森下直貴 責任編集、2012
第51回(2014年10月03日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
神里:
Editorial. German research organizations need to help their workers to defend animal research
Nature 513: 459-460. 2014
中田:
Sham controls in medical device trials
Rita F. Redberg
New England Journal of Medicine. 4;371(10):892-3. 2014
岩本:
Assessing the impact of biobanks
Anne Cambon-Thomsen
Nature Genetics. 34(1):25-6. 2003
李:
「日本の小児医療におけるInformed Assent理念の課題―国連子どもの権利委員会『一般的意見No.7乳幼児の権利』の関係を中心に」
山本智子
『生命倫理』19(1):4-12 2009
藤澤:
「第5章 米国および英語圏のバイオエシックス」「第6章 独語圏の生命倫理」
香川知晶(第5章)、松田純(第6章)
『シリーズ生命倫理学 第1巻 生命倫理学の基本構図』、今井道夫 森下直貴 責任編集、2012
昨今、体質や病気、能力、容姿など、様々な「遺伝子検査」に関する宣伝に触れる機会が増えてきました。しかし、もし購入しようとするときには、いくつか考えて頂きたいことがあります。2012年に、経済産業省から、「こんな検査を受けようとしている貴方に」というパンフレットも出されていますので、ご参照ください。
私は、遺伝子検査による倫理的法的社会的な問題について研究をしてきましたが、このパンフレットとは別の表現で、ぜひ一度、考えて頂きたいと思うこと・10か条を書きます。「購入する」ボタンをクリックする前に、あるいは、医師やエステ等で勧められて「買います!」という前に、セルフチェックしてみてください。
※色々な方のご意見を聞いてバージョンアップしようと思っていますので、ぜひお聞かせ下さい!(10月6日追記)
※Ver.1.1=ご意見を頂き、小見出しをいれました。(10月7日追記)
- 診断ではありません
現在、あなたが直接購入できる遺伝子検査は、現在の体調に関する医師の「診断」とは全く違います。あくまでも将来に関する「確率の情報」であって、あなた自身がその病気に将来かかるか/かからないかは、わかりません。 - 会社によって答えはバラバラです
あなたの遺伝情報の並び順は、一生変わりません。しかし、その遺伝情報と、病気や体質との関わりを示す確率の計算式は、遺伝子検査を販売している企業によって大きく異なり、その計算式は企業秘密となっています。もし複数の会社の遺伝子検査を買ったら、異なる確率の結果が返ってくるでしょう。そのつもりでお付き合いを。 - 研究が進めば、確率は変わります
現在、販売されている遺伝学的検査は、まだまだ研究途上のものも含まれています。研究が進めば進むほど、病気や体質との関わりを示す確率や解釈は、大きく変わっていきます。そのつもりでお付き合いを。 - 予想外の気持ちになるかもしれません
検査結果を読んで、精神的なショックを受けたり、誤解したりしてしまう可能性があります。申し込む前に思っていたのとは違う、予想外の気持ちや感情がわいてくることもあります。 - 知らないでいる権利の存在を知りましょう
だから、遺伝医療の世界では、遺伝学的検査の結果を「知らないでいる権利」という考え方を大切にしてきました。もし仮に購入してしまった後であっても、あなたには、届いた情報を開封しない自由があります。 - 知った後は戻れません
何でもそうですが、知った後は、知らなかった状態には戻れません。でも、まあ、見なかったことにして、棄ててしまうのも自由です! - 自分で知ろうと決めたなら、医師に頼るのはやめましょう
検査結果を読んでも、よくわからなかったときに、安易に医師に頼ろうと思わないでください。あなたが購入した商品(検査)の提携先医療機関以外の、一般の診療所や病院は、この商品のアフターサービスを求める場所ではありません。 - 血縁者と共有している情報を大切に扱いましょう
あなたの遺伝情報はあなたのものでもあるけれども、あなたと生物学的につながりのある人たちとも共有している大切な情報です。だから、遺伝子検査は、血縁者(あなたが思っている人とは違う人かもしれません)にも影響を与える結果を示します。SNSに晒したりするのは、絶対にやめましょう! - 強制検査・無断検査はダメ、プレゼントにも不向きです
気になるからといって、家族、交際相手、友達、上司・部下など、あなた以外の人のDNA(を含む身体物質)を無断で入手したり、他者に遺伝学的検査を受けるよう強制したりしてはいけません。結果を見せるように要求するのもNG。本人が望んでいるかわからないのに、サプライズとしてプレゼントしないほうがよいでしょう。 - 子どもには、大人になって自分で選べる権利を残しましょう
特に未成年者の遺伝情報は、しっかり保護してあげることが成人の務めです。子ども向けの遺伝子検査や、子どもとの血縁関係を調べる鑑定も、日本では販売されています。しかし、そうした検査や鑑定を受けることが、本当にそのお子さんのためになるのかどうか、単に親の興味や都合が理由ではないのか、よーくよーく考えてください。
いわゆる「遺伝子検査ビジネス」の一つである、「DTC遺伝子検査」(消費者に直接販売する遺伝学的検査,Direct-to-consumer genetic testing)を通じたヘルスビッグデータの創出をテーマに、東京大学医科学研究所とDeNAライフサイエンス社との間で共同研究が実施されています。この内容は、クオンタムバイオシステムズ社との新しいシークエンサー開発とともに、革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)のサテライト拠点としての事業とも位置付けられてきました。
私自身は、これまで「遺伝子検査ビジネス」に関する倫理的法的社会的諸問題に関心をもって研究して参りましたが、
- 私自身は、「遺伝子検査ビジネス」を推奨する立場にはありません。
- DeNAライフサイエンス社との間には、一切の「経済的な利益関係」はありません。
- DeNAライフサイエンス社を含め、DTC遺伝子検査企業の倫理委員会の委員は、務めておりません。
しかし、発足当初から、NPO法人個人遺伝情報取扱協議会(CPIGI)の評価委員を務めており、現在、同協議会の「個人遺伝情報を取扱う企業が遵守すべき自主基準」の制定・改正、また現在進めている認定制度の構築も可能な支援をしております。それはいわゆる「遺伝子検査ビジネス」に関して、日本国内で特段の規制がなされる様子がなかったため、まずは業界団体の健全化が急がれると考えたからです。
「DTC遺伝子検査」に対する主な批判の一つに、医師ではない者が「医業」を行い、「診断」に近い検査項目を提供しているではないかという指摘が挙げられます。私自身は、「DTC遺伝子検査」が「医業」に該当するかどうかは、しかるべきステークホルダーが集い、議論されるべきであり、結果として「医業」に該当するとの結論に至ることもあるだろうと考えます。
しかしながら、現在、急速に進展するゲノム医学に関して、専門的な知識やそれらを消費者・患者に現時点で最適な解釈を添えて説明する力を持ち合わせていない医師は、まだまだ多いと考えます。また、「DTC遺伝子検査」を利用して消費者の不安を煽り、高価な診療や精密検査、サプリメントに誘導するような医療機関もあります。そのため、もし「医業」に限定することになったとしても、医療専門職としての自主規制は徹底して行っていただきたいと考えます。単に企業を締め出すだけでは意味がありません。
それ以前の問題として、日本では、「DTC遺伝子検査」のみならず、医療機関が実施する遺伝学的検査についても、その質(正確さ、適切さ、個人情報保護や倫理面への配慮等)を保証する義務を課すような仕組みは存在していません。学術団体や業界団体による自主的な取り組みによって、「あるべき姿を示す」という手法が中心でした(そもそも臨床検査に対して、その質を管理する法律が存在しませんでした)。以下、その一例を紹介します。
これまで様々な団体が、遺伝学的検査の質を担保する努力をしてきたことも事実です。しかし、医療機関・企業を含め、遺伝学的検査を実施する全ての機関において、検査の質の正確さや検査施設の適切さを客観的に評価し、公開する制度の構築が必要だと考えています。
- 日本人類遺伝学会(2010)「一般市民を対象とした遺伝子検査に関する見解」(PDF)
- 特定非営利活動法人JCCLS日本臨床検査標準協議会(2010)「遺伝子関連検査に関する日本版ベストプラクティスガイドライン」
- 日本医学会(2011)「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(PDF)
- 一般社団法人 日本衛生検査所協会(2013)「遺伝子関連検査の質保証体制についての見解」
本日、2014年度、第5回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2014年10月1日(水)10時~12時
報告者: | 岩本八束(新領域創成科学研究科・修士課程2年) |
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タイトル: | メディアにおける「バイオバンク」の語られ方-日米の新聞記事比較を通して |
概要:
現代の生命科学・医学研究において、ヒト試料を用いた研究は不可欠であり、ヒト試料の収集・保管・配布を行う「バイオバンク」は重要な役割を担っているが、その認知度は決して高いとは言えず、社会と「バイオバンク」との関係構築は途上にあると言える。関係構築に当たり、マス・メディア、特に新聞は重要な役割を担うと考えられるものの、これまで新聞記事上で「バイオバンク」がどのように扱われてきたのかは明らかにされていない。以上のような背景から、修士課程では新聞記事上において「バイオバンク」がどのような存在として形作られており、どのような問題として取り上げられてきたかを明らかにするべく、メディア言説分析を用いて、日米の新聞記事を比較・検討を行う。今回のセミナーではその進捗状況を報告する。
報告者: | 小林智穂子(学際情報学府・博士課程1年) |
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タイトル: | 従業員参加型社会貢献活動の社会学的研究 |
概要:
セミナーでは、これまでの研究成果と博士課程における研究計画をご報告します。今後の研究の概要は、以下の通りです。企業が自社の従業員のボランティア活動を支援する企業ボランティアプロジェクト(NPO支援を目的としたボランティアプログラム)に着目し、従業員ボランティア本人、および、ステークホルダーの実態調査を行い、現状と課題を抽出する。そのうえで、従業員参加型の社会貢献活動モデルを完成させ、福祉社会・勤労者双方の福祉を実現する条件を考察する。
このたび、日本網膜色素変性症協会(JRPS)とのご縁を頂き、日本で初めてiPS細胞の臨床応用に挑む高橋政代氏(理化学研究所)との対話に立ち会う機会を得ました。
高橋氏は、加齢黄斑変性症を対象とした臨床研究からスタートし、やがて対象を網膜色素変性症(RP)にも拡大し、今から数年後に臨床研究の開始を検討しています。
他方、JRPSの各支部のリーダー向けの研修会を企画する責任を負っていた有松靖温氏は、今からの数年間を、RP患者が臨床研究に備え、研究デザインも工夫するための「猶予期間」であると考え、患者と研究者の直接対話の機会を求めて訪ねてこられました。
そこで、2013年10月30日に開催された、第9回JRPS関東甲信越ブロックリーダー研修会の場を借りて、この対話の機会を実現いたしました。この日の発言録をもとに、読者が追体験できるように再構成したのがこの報告書です。
この報告書冊子の入手をご希望の方は、 までお申し込みください。
PDF版をここからダウンロードしていただくこともできます。
※この報告書作成にあたり、科学技術振興機構科学技術振興機構「再生医療の実現化ハイウェイ」における、「再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究」(課題D)より財政的支援を得ております。ここに御礼申し上げます。
M2の岩本八束です。今年も秋刀魚の美味しい季節がやってまいりました。
今月9月25日から27日まで、パシフィコ横浜にて第37回日本神経科学大会が行われました。この大会は神経科学(Neuroscience)の学術大会で、医学系の方のみならず、薬学や生命科学、心理学、情報科学など、様々なバックグラウンドの方が参加し、発表を行っていました。非常に魅力的な大会です。
昨年は発表を聴いて回る側でしたが、今年はポスター発表を行う機会を頂く事ができました。人生で初めての学会発表でもあり、小心者の私は、楽しみでありながらも、不安と緊張を抱えてポスターの前に立っておりました。
自分の予想以上に、沢山の方が足を止めてくださり、様々なご示唆を頂くことができました。新たな視点を得ることができたり、自分の研究の甘さを痛感したりと、非常に有意義な学会発表となりました。また、(まだまだ未熟ではありますが)自分の研究に対して自信を持つこともできました。
今回の発表では、私のスケジュール管理の甘さのため、公共政策の先生方にご迷惑をおかけしてしまいました。今回の発表を、楽しかった、で終わらせること無く、今後の研究へと十分に生かしていきます。
(M2・岩本八束)
治療を受けるときに、インフォームド・コンセントという言葉を聞くことがよくあります。判断能力のある患者さんが、治療等を受ける時の判断に必要な情報について、わかりやすい言葉で説明をうけ、理解し納得した上で、治療等についての選択を行うというものです。インフォームド・コンセントは、研究参加においても重要です。しかし、時に専門用語のたくさんでてくる長い研究説明文書だけでは、分かりづらい場合もあります。
そこで私たちは、「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」に参加を考えてくださっている患者さんに、研究についてご説明する際に利用できる説明補助資料を作成しました。作成にあたっては、プロジェクトの先生方や、デザイナーさん達、そして課題Dチームのメンバーにご協力をいただき、どのような情報を載せればよいのか、どうすればわかりやすい説明補助資料になるのか等ご意見をいただきました。そして、出来上がったのがパンフレット「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究へのご案内」です。
このパンフレットには、iPS細胞とはどのような細胞なのか、「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」とはどのような研究なのか、研究参加を考える上で患者さんにご確認いただきたいことや、研究にご参加いただいた場合に患者さんから提供していただいた細胞(試料)や情報をどのように利用させていただき、管理・保管させていただくのかといった情報が、わかりやすくイラストとともに説明されています。(ご案内2へつづく)


パンフレットの作成にあたって、デザイナーさんが新しくキャラクターを作ってくれました!それが、i(アイ)くん、P(ピー)ちゃん、S(エス)くんです。パンフレットでは、この3人のiPSくんたちが、研究の説明をナビゲートしてくれています。iPS細胞をつかった研究についてのお話では、これからもiPSくんたちに登場してもらう予定です。(現在、お子さんへの研究説明についての絵本を作成していて、そちらでもiPSくんたちが大活躍しています!)
また、私たち「再生医療の実現化ハイウェイ」課題Dの活動ロゴもデザイナーさんに作成していただきました。それが「Stem Cell & Ethics」(幹細胞と倫理の意味)のロゴです。丸い外枠はシャーレを、赤い色は培地のイメージからできました。幹細胞研究を行う研究者の先生方を倫理的側面から支援させていただき、患者さんや一般の方々との懸け橋として、縁(円?)の下の力持ちになれたらいいなという思いを込めました。パンフレットのどこかに「Stem Cell & Ethics」のロゴが載っていますが、どこにあるかわかりましたか?


公共政策研究分野では、iPS細胞等の幹細胞を用いた研究の臨床応用を目指した「再生医療実現化ネットワーク事業」の一部を担っています。同事業は、「iPS細胞研究中核拠点」、「疾患・組織別実用化研究拠点(拠点A・拠点B)」、「技術開発個別課題」、「再生医療の実現化ハイウェイ」、「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」の5つの研究課題に大きく分けられます。その中で私たちは、「再生医療の実現化ハイウェイ」課題Dとして関わっています。
「再生医療の実現化ハイウェイ」の課題Aでは1~3年目までに、課題Bでは5~7年目までに臨床研究に到達することを目指して、体性幹細胞、iPS細胞、ES細胞を用いた研究が行われています。課題Cでは「再生医療の早期実現化と国際展開に向けた研究支援」が、そして、課題Dでは「再生医療の実現化に向けた研究開発における倫理上の問題に関する調査・検討・支援」を行っています。(より詳しい情報は、科学技術振興機構の「再生医療実現化ネットワーク事業」のホームページをご覧ください。)
本事業では、産官学の協力のもと、少しでも早く患者さんに再生医療を提供するための研究が行われています。しかし、これらの研究は、患者さんや、研究を後押ししてくれる一般の人々の協力なしには成り立ちません。課題Dでは、中立的立場から研究者や研究機関を支援し、研究者と患者さんや、一般の方々の架け橋となることを目指して活動しています。具体的には、国で定められた倫理指針に則って研究が進められるよう、また、被験者(研究参加者)保護が十分に図られるよう研究倫理コンサルテーションを提供したり、倫理審査等の研修や教育の機会を提供するほか、国内外の研究者と交流を図り医科学研究における様々な倫理的課題について研究を行っています。また昨年からは、研究者と患者会の方々との意見交換の機会の提供も行っています。今後も、再生医療の研究に関わる倫理的・法的・社会的課題に取組み、再生医療の実現化に向けて活動していく予定です。
第50回(2014年09月05日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
李:
「特集:臨床研究の倫理的課題―最近の動向・論点・展望~小児を対象とする臨床研究で追加的に求められる倫理的配慮」
松井健志
『医薬ジャーナル』50(8):69-73 2014
藤澤:
「第5章 米国および英語圏のバイオエシックス」「第6章 独語圏の生命倫理」
香川知晶(第5章)、松田純(第6章)
『シリーズ生命倫理学 第1巻 生命倫理学の基本構図』、今井道夫 森下直貴 責任編集、2012
本日、2014年度、第4回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2014年9月3日(水)10時~12時
報告者: | 高島響子 |
---|---|
タイトル: | 脳画像研究における偶発的所見への対処法 ―政策の提言および導入後の実態調査― |
M1の藤澤空見子です。真夏の天気が一変して、涼しい日が続いていますね。
先日、院生向けに臨時ゼミ「インタビューゼミ」が開かれました。
これは、研究などで今後インタビューを行う院生向けに、インタビューを行う際の準備や手順、留意点などを武藤先生が教えてくださる、という内容でした。
8月はじめと終わり頃の2回シリーズで開催し、ゼミの中ではインタビュー体験や、学生が考えてきたインタビュー案を全員で吟味するなど、充実した内容でした。
インタビュー体験では、まず「相手に話を聞く」ことを練習するため、お互いに「昨日の夜から今日研究室に来るまでの流れ」を聞きました。
インタビュアー(インタビューをした側)が相手方の話した内容を全体に向けて発表したのですが、話し手の意図とずれた内容をインタビュアーが説明するという場面もありました。
インタビュアーには「話の内容を変えた」という意図はなかったのですが、それでもこういったずれが生じてしまうことがあるのだなと驚きました。
恥ずかしながら、こういった相手方への確認という作業が重要だというイメージはあまり持っていなかったのですが、インタビューの分析に取りかかる前に相手方の意図を確認することを忘れてはいけないと痛感しました。
学生の考えてきたインタビュー案を全体で吟味する場面では、先生や他の学生の意見を聞くことで「なるほど」と感じることも多く、様々な視点を学ぶことができました。
このような特別な機会を設定してくださった武藤先生や、院生の皆さんに感謝しています。
ぜひ、研究に活かしたいです。
夏期休暇中で大学院の授業はまだしばらくお休みですが、引き続き勉強に力を入れていきたいです!
(M1・藤澤空見子)
まだまだ暑い毎日が続いています。みなさまいかがお過ごしでしょうか?
こんにちは、特任研究員の吉田です。
わたしが携わっている「臨床試験・治験の語りプロジェクト」ですが、まだまだ鋭意続行中です。
最近は関東以外の方のお話を聞く機会が増えてきました。
このプロジェクトでは、様々な種類の臨床試験・治験、様々な年代の方、様々な地域の方のお話を聞くことを目的としていますので、首都圏以外の方からのご協力お申し出も募集しております。
「臨床試験・治験の話と言われても…何を話せばいいのか…」と躊躇(?)されている方も是非ご連絡ください。
あなたのご経験を、わたしたちがこれからの臨床試験・治験の「正しい」あり方に反映させていきたいと思っています。
写真:先日お話を伺うために行った大分にて。大分空港のターンテーブルでは海老が回ってくるようです。
2014年3月28日(金)に開催されました「オーダーメイド医療の実現プログラム」シンポジウム「日本のゲノムコホート研究とバイオバンクの倫理的課題―信頼と責任を考える」の記録集ができましたのでご案内申し上げます。
本シンポジウムの開催に当たっては、同プログラムの「社会との接点ワーキング・グループ」のメンバーが中心となり準備をしてまいりました。日本を代表するゲノムコホートと、バイオバンク事業が抱えている倫理的諸問題やその対応など共通の課題を見出せたことは、今後のバイオバンク・ジャパンでの倫理支援を考えるうえで、大変勉強になりました。シンポジウムの課題について、議論が十分に尽くされていなかったところもありますが、約200名の方々に参加していただき、貴重なご意見を賜ることができました。深く感謝申し上げます。
本シンポジウムでいただきましたご意見や諸課題を今後の議論につなげ、社会的議論として発展させていけることを願いながら、記録集としてまとめました。至らないところが多々あるかと存じますが、何卒ご指導のほど、宜しくお願い申し上げます。
「日本のゲノムコホート研究とバイオバンクの倫理的課題―信頼と責任を考える」の記録集のPDFファイルをここからダウンロードしていただけます(ファイルサイズは、6.93MBです)。
なお、一部の図に不鮮明なところがございますことをご了承ください。数に限りはございますが、冊子体の送付をすることができます。ご希望の方は、下記までお問い合わせ下さい。
【お問い合わせ先】
東京大学医科学研究所 公共政策研究分野
担当 吉村
E-Mail:
D3の中田はる佳です。そろそろお盆休みに入られる方も多いでしょうか。
私のここ数年の研究テーマ「医療機器と倫理」がひとつ形になりました。勤務先である国立循環器病研究センターで、医薬ジャーナルに「医療機器臨床試験に関する倫理的課題~体内植込み型医療機器を中心に~」という論稿を寄せる機会をいただき、その掲載誌が先日刊行されました。内容は、補助人工心臓の治験事例から、体内植込み型医療機器に顕著に見られる倫理的課題を考察したものです。学会発表だけでなく、文章として研究成果を残していくことで、頭の中も整理されていくような感じがします。あれも書きたかったのになぁということもいくつかあり、次の論文にもつながる作業でした。
この号では、当研究室の他のメンバー3名も論稿を寄せています。武藤先生(「臨床試験への患者・市民参画(patient and public involvement:PPI)とは何か」)、井上先生(「世界医師会ヘルシンキ宣言と2013年のフォルタレザ改訂」)、特任研究員・高島さん(「臨床研究における偶発的所見に関する倫理的課題」)です。ぜひご覧ください。
(D3・中田はる佳)
猛暑お見舞い申し上げます。D3の中田はる佳です。
昨年、まったく同じ書き出しで暑気払いの記事を書いたことを思い出しました。
今年は暑いですね、という会話もすでに定番の季節の挨拶になりつつあります。
7月も終わりということで、先日、上半期の納会が開かれました。教室員の9割以上が出席し、大変にぎやかな会になりました。「上半期は皆さんお疲れさまでした。8月は英気を養ってください」という武藤先生の言葉とともに乾杯し、思い思いの話に花を咲かせました。研究室にいるときには聞けない話が聞けたり、普段と違う顔が見えたりと、とても楽しかったです。
上半期納会の直前には、博士論文の進捗報告や今後の方針の打合せをしていました。
夏を楽しみにしつつ、博士論文のことを考えつつ、有意義な一日でした。
(D3・中田はる佳)