玉井真理子・大谷いづみ編『はじめて出会う生命倫理』(有斐閣アルマ)

2011/03/23

武藤と渡部が一部担当した編著が出版されました。「生命倫理学」入門にお役立て下さい。

玉井真理子・大谷いづみ編『はじめて出会う生命倫理』(有斐閣アルマ)

科学や医療の進歩により、「いのち」をめぐる問題はかつてないほど複雑になっている。「正解」を見つけにくい問いの前で、それでも考えることをやめないために、生命倫理学が蓄積してきた「考えるための道具・すじ道」とは。(amazon.co.jp)

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岩手県・宮城県・福島県・茨城県への救援物資と義援金受入情報(更新)

2011/03/21

1)岩手県への救援物資と義援金

岩手県は停電の影響か、県庁ホームページがダウン気味です。

★個人からの救援物資は、受け入れない。

★企業からの救援物資は、岩手県へ企業自らで輸送手段が確保できる場合のみ、受け入れる。
提供する「物資」「数量」「担当者のお名前」「連絡先」「電話番号・FAX番号」「無償・有償の別」を、次のFAXでのみ受け付ける。FAXの確認後、岩手県から連絡が無い段階での物資輸送は開始しないこと。

【受付窓口・FAX送付先】
 ○有償の場合:岩手県商工労働観光部経営支援課 FAX 019-629-5549
 ○無償(義援物資)の場合:岩手県保健福祉部地域福祉課 FAX 019-629-5429

★義援金

  • ゆうちょ銀行 00100-2-552 岩手県災害義援金募集委員会
  • 岩手銀行県庁支店 普通預金2016634
  • 北日本銀行本店営業部 普通預金7028484

受領証がほしい方は、県庁ホームページから様式をダウンロードして指示に従ってください。

岩手県災害義援金募集委員会事務局
〒020-8570 盛岡市内丸10番1号 岩手県保健福祉部保健福祉企画室
電話:019-629-5408

2)宮城県への救援物資と義援金

★個人からの救援物資は、受け入れない。

★現在、避難所等のための食糧が不足しています。パン・おにぎりなど、手を加えずにすぐに食べられるものの大口(1,000個以上)のご協力を是非お願いいたします。

  • 食品(乾パン,飲料,おにぎり,パックごはん,缶詰,レトルト,カップ麺,菓子,味噌汁等)
    連絡先:食産業振興課 食産業企画班
    電話番号:022-211-2963
  • 生活関連物資(日用品,衣類)
    連絡先:保健福祉総務課 企画調整第二班
    電話番号:022-211-3183(専用ダイヤル)

★寄附金 ・・・・・ 県内の災害復旧及び復興事業の財源として
消防課産業保安班が窓口となります。
電話でのお問い合わせは,022-211-2377となります。

★義援金 ・・・・・ 被災者に対する生活支援として
社会福祉課団体指導班が窓口となります。
電話でのお問い合わせは,022-211-2516となります。

詳しくは、県庁ホームページでご確認を。

3)福島県への救援物資と義援金

★個人からの義援物資は、受け入れない。

★企業等からの義援物資は、大口のお申し出で、一定の数と仕様がそろえられる物資についてのみ、受け入れとのこと。問い合わせは、福島県災害対策本部 物資班 電話024-521-1908まで。

★寄附金(県内の災害復旧及び復興事業)
受付窓口は、生活環境部生活環境総務課(電話:024-521-7669)。 受け入れ方法については、お問い合わせください。
平成23年9月30日(金)まで

★義援金(県内の被災者に対する生活支援)
福島県義援金配分委員会において、県内での公平な配分が決定されます。

  1. ゆうちょ銀行、郵便局 00160-3-533 福島県災害対策本部【窓口振込は手数料無料】
  2. 東邦銀行 県庁支店 普通預金 1411045 福島県災害対策本部【窓口振込は手数料無料】
  3. 福島銀行 本店営業部 普通預金 1247821 福島県災害対策本部【窓口振込は手数料無料】
  4. 大東銀行 福島支店 普通預金 1470102 福島県災害対策本部【窓口振込は手数料無料】

4)茨城県への救援物資と義援金

★復興にかかる義援金
専用の振込口座が、3月22日に開設される予定です!

★被災者への義援金
全国的な支援が主な使途だそうで、県内被災者への配分は未定だそうです。

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東北大学病院への支援(更新)

2011/03/18

東北大学病院での支援受け付け状況は以下の通りです。

■問合せ

東北大学病院災害対策本部(支援受付担当)
電話:022-717-7070

■必要な物資等

人的: 医師
物的: (1)保存食(カップ麺、インスタント麺、乾パン等)
(2)水(ペットボトル、500ml、2リットル)
(3)その他飲料(ペットボトル、500ml、2リットル)
(4)粉ミルク
(5)紙おむつ
(6)高齢者用おむつ
(7)下着類(男女、新品)

なお、寄附金についても受け付けておりますので、お問い合わせ下さい。

■送金先

七十七銀行 大学病院前支店
普通預金:5535522
口座名義:東北大学病院震災寄附金

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信濃毎日新聞コラム(8)「幹細胞治療」による被害(武藤)

2011/03/07

◎サイエンスの小径(3月7日掲載)
▽「幹細胞治療」による被害▽武藤香織


幹細胞という言葉をご存じだろうか。人間のあらゆる細胞に分化する可能性を秘めたES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)のような新しい幹細胞が近年知られるようになったが、もともと私たちの体の中にはたくさんの幹細胞がある。たとえば、骨髄にある造血幹細胞。この細胞が分裂、増殖し、赤血球や白血球などの血液成分になる。正常な血液を作れなくなった白血病患者に行われるのが、造血幹細胞移植だ。また、脂肪幹細胞は、乳房再建などに役立っている。

昨年11月、国際的な科学雑誌に、日本のある医療機関で、患者の脂肪を採取して脂肪幹細胞を抽出し、それを再び患者に注射で移植する行為が「幹細胞治療」として行われていることが報じられた。脂肪性幹細胞の抽出は韓国のベンチャー企業に委託しているという。幹細胞を送り込むことで、病気の原因となっている細胞や臓器を再生すると謳われているそうだ。だが、この「幹細胞治療」を受けた韓国人患者は死亡したと記事は伝えている。この例に限らず、「幹細胞治療」による死亡例は、各国で報告されている。

これらの行為は、医師の裁量による保険適用外の自由診療として行われており、直接規制する手段がない。費用も数百万円かかるといわれている。

幹細胞の制御は簡単でなく、未知の部分も多い。このため、国の研究指針では、幹細胞を安全に取り扱うための厳しい基準が定められ、高度な設備が必要とされる。しかし、医療行為には、この基準は適用されていない。

昨年3月、厚生労働省は、幹細胞を患者に投与する医師に、動物実験の結果や国による承認の有無を確認するよう通知を出した。そして、日本再生医療学会は今年1月、幹細胞による治療や臨床試験に臨む患者は、それが国に承認された治療や臨床試験であるかどうかを確かめるよう訴えた。

「幹細胞治療」は、時に新聞広告でも目にする。斡旋業者を通じて、海外の医療機関で機会を待つ患者もいる。他に治療手段がない患者にとっては、最後の希望のように見えることだろう。効果が未確認でも、健康被害の恐れがあっても、財産を取り崩してでも…と気持ちをかきたてられるだろう。被害を防ぐため、国に規制を求めることも必要かもしれないが、患者を支える人たちは、まず、その焦燥感にしっかり寄り添うことが大事なのではないだろうか。

(東大医科学研究所准教授)(了)

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玉腰暁子・武藤香織著『医療現場における調査研究倫理ハンドブック』(医学書院)が出版されました

2011/02/26

このたび、玉腰暁子・武藤香織著『医療現場における調査研究倫理ハンドブック』(医学書院)を上梓しました。
★医学系看護系の学部で、実習や卒業論文や修士論文に携わる方、
★医療機関で働く看護師で看護研究を始める方、
★社会科学系の方で、医療機関・保健行政・患者会などで調査をする方、
に向けて書いています。ぜひお手にとってご覧ください!

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『医療現場における調査研究倫理ハンドブック』に寄せて(武藤)

2011/02/26

1997年、まだ学生だった私は、日本疫学会総会のときに開催された「疫学の未来を語る若手の集い」に参加し、疫学研究のインフォームド・コンセントに関する議論を客席から聞いていました。若手研究者自身が倫理のあり方を議論する現場は素晴らしいなあと感銘を受け、壇上にいた中山健夫さん(現在は京都大学大学院教授)に熱いお手紙を送ったことがご縁で、疫学者のコミュニティに関わらせていただくようになりました。

そして、この本の共著者の玉腰暁子さんが旧厚生省研究班長を買って出てくださり、疫学研究のインフォームド・コンセントを考える研究班が発足しました。

全く門外漢だった私ですが、この研究班の兄さん・姉さんたちに温かく受け入れて頂きました。そして、疫学の「いろは」から教えて頂きました。カルチャーショックを受けたり(たぶん与えてしまったりも)しながら議論を続け、その研究班の取り組みから生まれた「疫学研究におけるインフォームド・コンセントに関するガイドライン」は、やがて2002年、文部科学省・厚生労働省の「疫学研究に関する倫理指針」につながっていきました。

あれから、「一昔」相当の時間が経ちました。当時、自称「若手」だった方々は、いまや日本の疫学を背負う重鎮になられました。私も、医学・生物学系の大学院生に研究倫理を講じたり、社会科学系の大学院生と調査研究倫理のゼミをするような責務を担う立場になりました。

この10年間の最大の変化は、国が次々と研究倫理指針づくりに乗り出し、数々の研究倫理指針が生まれたことだと思います。つまり、研究の現場ではなく、審議会で指針をつくるプロセスが当たり前のものになったわけです。自分たちから遠いところでつくられた指針は、研究者にとって愛着がわかない存在かもしれません。

でも、疫学分野の研究者は、行政が動きだす前に、外部の人たちも交えて議論を闘わせることを思いつき、自主的なガイドラインを絞り出しました。専門家集団として素晴らしい取り組みをしたと思いますし、きっと後世でも評価される、はず…。

ぜひ多くの研究者に、国の指針策定や改正を待つだけでなく、自分たちで動いてルールをつくる醍醐味を、味わってほしいと願っています。

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信濃毎日新聞コラム(7)臓器移植と大人の責任(武藤)

2011/01/24

◎サイエンスの小径(信濃毎日新聞2011年1月24日掲載)
▽臓器移植と大人の責任▽武藤香織


昨年7月に臓器移植法が改正されて半年が過ぎた。この改正では、本人が臓器提供を拒否する意思表示をしていなければ、家族の同意で、脳死判定後の臓器提供が可能となった。また、世界でも珍しいルールとして、親子間、配偶者間での優先提供が認められた。そして、15歳未満の子どもからの臓器提供が認められた。

成人間での脳死臓器移植は、2009年は年間7例だったが、この半年間で31例と大幅に増えた。そのほとんどが、本人が意思を明示しておらず、家族によって承諾されたものである。突然の増加に伴って、脳死臓器移植を仲介する日本臓器移植ネットワークの負担も増している。提供者が出た際の記者会見でもあまり多くの情報は出てこない。

親族への優先提供は、この半年間で親子間、配偶者間で各1例が公表された。これまでの脳死臓器移植は、医学的必要性を根拠に公平に配分する原則で運用されてきた。親族への優先提供は、提供者を少しでも増やす目的で導入されたが、脳死臓器移植を家族という私的な領域に閉ざす道も認めたことになる。実の親子と配偶者に限ったのは、臓器提供目的の自殺や養子縁組を防止するためだ。

他方、子どもからの臓器提供は、まだ例がない。新聞報道などからは、脳死の可能性のある子どもはいたものの、悲痛な親に臓器提供の話を切り出す難しさや、虐待死でないことを確認する難しさが、浮き彫りになっている。

臓器移植法の改正による提供機会の広がりは、それぞれが新しい課題を生んでいる。透明性がより重視される反面、プライバシー保護も大切だ。適正な手続き執行の番人として、どこまでマスメディアが情報を求めてよいのかも、今後、問われていくだろう。

だが、最も心配なのは、自分で意思表示をする機会の確保である。私が生命倫理学を教える大学生45人に、家族と臓器移植について話し合ったことがあるかどうか聞いてみると、手を挙げたのはわずか3人だった。意思表示カードに意思を書き込むという行為は、親に書いてもらうのも、自分が書くのも気が重いという。医療技術のために、昔は考えなくてもよかったことを考えさせられるようになったのかもしれない。しかし、家族の思いを知る契機ととらえて、逃げ出さずに話題を切り出すのが、大人の新たな責任になったといえるのではないか。

(東大医科学研究所准教授)

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企画展アーティストトークを開催しました

2011/01/14

連休中日の2011年1月9日(日)14:00から、第4回サイエンスアート企画展のアーティストトークが開催されました。
当初全員立ち見の予定でしたが、急遽椅子を10席用意。最終的に16名の方に来場頂きました。

アーティストの池平徹兵さんとブリアンデカナエさんが、バクテリアをテーマとした作品制作をはじめられたきっかけ、バクテリアから受けるインスピレーションなどをお話下さった後、医科研博士課程3年の峯岸ゆり子さんも参加しての対談となりました。

池平さんとカナエさんは、約3年前に(仏)国立農業研究所でバイオフィルムの研究をしているロマン・ブリアンデさんに顕微鏡画像を見せてもらった時に、2人同時にインスピレーションを受け、作品の協同制作をはじめられたそうです。以来、日本とフランスで作品を送り合って、制作を続けられています。
画像を見た時に感じた、「ぞくぞくするけど、もっと見ていたい」という感覚がカナエさんの制作の原点。峯岸さんが、「バクテリアが繁殖する様子がとてもよく表されているのにかわいい」とおっしゃっていたアクセサリーは、この「ぞくぞく感」も表現されているようです。
そして、この「ぞくぞくするけど、もっと見ていたい」という感覚は、実験途中にバクテリアが繁殖することを忌み嫌うサイエンティストも、実は共感するところだそうです。
一方池平さんの原点は、バクテリアに感じた「宇宙」。常々、「私たちの世界がある宇宙は、巨人のように大きな存在の一部なのではないか」という感覚を持たれていたのですが、バクテリアを見た時にそれを思い出したとのこと。また、展示されている大きな作品には「主役」がいません。それはバクテリアが、環境に応じて個性を発揮し、多様性のあるコミュニティーを形成するところからきているとのことです。

お二人はこれからも、バクテリアが環境に応じて進化し続けるように、OFFICE BACTERIAとして進化し続けていきたいとおっしゃっていました。

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ご来場頂いた皆様、大変ありがとうございました。

企画展は30日(日)までです。
足をお運び頂ければ幸いです。
また、お二人の作品は渋谷のギャラリーコンシールでも1月31日(月)までご覧頂けます。

(文責:渡部)

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東京大学医科学研究所主催第4回サイエンスアート企画展

2010/12/20

*** OFFICE BACTERIA 宇宙

バクテリアの宇宙に魅了されたサイエンティストとアーティストによる、
平面と立体のインスタレーション

**************
2011年1月5日(水)-1月30日(日)
アーティストトーク:1月9日(日) 14:00-15:00(予約不要)
*******************

OFFICE BACTERIA

池平徹平 (油絵家)
ブリアンデ カナエ (アクセサリー作家)
ブリアンデ ロマン (生物学者:フランス国立農業研究所所属)
http://www.parco-city.com/officebacteria
********************

場所: 東京大学医科学研究所 近代医科学記念館
(東京都港区白金台4−6−1)
開催時間: 平日10:00-18:00,土日祝10:00-17:00
休館日: 月曜日
入館料: 無料
アクセス: 東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線 白金台駅
2番出口徒歩2分 東大医科研正門入って左手すぐ
問合せ先: 東京大学医科学研究所公共政策研究分野
Tel: 03-6409-2079 Email:

ポスター画像(820KB)

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信濃毎日新聞コラム(6)ゲノム時代の遺伝子検査(武藤)

2010/12/06

サイエンスの小径(2010年12月6日信濃毎日新聞掲載)
▽ゲノム時代の遺伝子検査▽武藤香織


ひとりの人の全遺伝情報(ゲノム)の解読に、何日かかるかご存じだろうか?1990年代頃までは、だいたいの遺伝情報を読み解くのに10年以上かかっていた。だが現在は、最新の機械を24時間動かし続ければ、約4日間で読み終わる。

この技術革新のおかげで、研究の手法も変わってきた。特定の遺伝子を一生懸命探していた時代と違い、今では全遺伝情報を相手に網羅的に違いを見つけていく。理化学研究所の鎌谷直之さんは「一本釣りから、大きな網で大量の魚を一気に捕まえるトロール漁法に変わったようなもの」と表現している。
こうした研究の成果として、遺伝子検査はぐっと身近な存在になってきた。これまで遺伝的背景による影響が不確かだった病気も、一定の遺伝的背景に生活習慣の影響が加わると、病気になるリスクが高まる可能性が指摘されている。また、薬の量や飲み方も、その人の遺伝的背景に合わせて変えたほうが効果的な場合があることもわかってきた。

一方、インターネット上などで、「遺伝子検査サービス」が一般向けに広告、宣伝されるようにもなった。イギリスではニコチン依存に関する遺伝子検査が、アメリカでは胎児の性別を判断する遺伝子検査が、大きく宣伝されて議論となった。科学者を中心に「まだ研究段階のものであり、検査として販売されるべきではない」として、規制を求める声がある。日本人類遺伝学会も去る10月、「一般市民を対象とした遺伝子検査に関する見解」を公表して警鐘を鳴らし、消費者にも慎重な対応を求めている。だが、「別に科学的に正しくなくてもいい」「占いのように楽しみたい」という消費者の声もある。

私が学生だった頃、遺伝子検査は、先天異常や遺伝性疾患の患者さんと家族のための限られたものだった。将来、自分は病気になるのか、子どもに病気の遺伝子が引き継がれる可能性があるのか、悩む家族は多い。そんな人たちのために、信大医学部付属病院は、日本でいち早く1996年に遺伝子診療部を設け、臨床心理士や専門看護師も加わってカウンセリングを行っている。

遺伝子検査が身近になれば、誰もが、他人と同じではないことがわかってくるだろう。そうすれば、遺伝に関する悩みを抱え込まずに済むようになるだろうか。それとも、誰もが遺伝的な「異常」に悩む社会になるのだろうか。

(東大医科学研究所准教授)

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日本生命倫理学会誌『生命倫理』に論文掲載(神里・武藤)

2010/11/25

日本生命倫理学会誌『生命倫理』Vol20 No.1(2010年9月)に拙稿「「研究倫理コンサルテーション」の現状と今後の課題‐東京大学医科学研究所研究倫理支援室の経験より‐」が掲載されました。
本稿では、医科学研究所研究倫理支援室における「研究倫理コンサルテーション」業務を紹介すると同時に、米国での「研究倫理コンサルテーション」の状況を参考にしながらその概念や位置付けについて考察しました。ご覧いただければ幸いです。

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教室のニュースレター(第1号)刊行!

2010/11/09

教室のニュースレター(PubPoli Voice No.1)が完成しました。私たちは日々様々な活動に取り組んでいます。しかし、こうした教室の素顔に触れていただく機会がなかなかないことも実情です。今後も一定の期間毎に作成し、教室の行事や、メンバーの活動状況についてご報告する場にしていく予定です。ご笑覧いただければ幸いです。

ダウンロード:965KB】

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「代理懐胎に関する諸外国の現状調査報告書」(2007年)全文掲載

2010/10/28

平成18年度厚生労働省緊急対策事業として実施した、「代理懐胎に関する諸外国の現状調査報告書」(2007年)のPDFファイルを下記リンクよりダウンロードしていただけます。

「目次、調査概要(第1章)」 (PDF:17,814KB)
「各論(第2章~7章)」 (PDF:15,553KB)

・この調査報告は2007年3月に終了したものですが、閲覧のご要望が多いため掲載いたします。
・2009年12月2日付けでお伝えした代理出産に関する論文(Semba et al, Bioethics 24(7): 348–357, 2010)はこの報告書がもとになっております。

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IJJS 'Social context of Medicine in Japan' オンライン公開(武藤)

2010/10/28

日本社会学会の英文誌であるInternational Journal of Japanese Sociology 第19号の特集“Social context of Medicine in Japan”の編集と執筆を担当しました。

この特集では、人を対象とする研究(田代志門)、人工授精(白井千晶)、安楽死・尊厳死(大谷いずみ)、生体肝移植(武藤香織)を取り上げています。オンラインで公開されましたので、ぜひご覧下さい。


IJJS Volume 19, Issue 1
Special issue: Social context of Medicine in Japan

Introduction (pages 2–3)
Kaori Muto (武藤香織)

Unintended Consequences of “Soft” Regulations: The Social Control of Human Biomedical Research in Japan (pages 4–17)
Shimon Tashiro (田代志門)

Reproductive Technologies and Parent–Child Relationships: Japan's Past and Present Examined through the Lens of Donor Insemination (pages 18–34)
Chiaki Shirai (白井千晶)

Organ Transplantation as a Family Issue: Living Liver Donors in Japan (pages 35–48)
Kaori Muto (武藤香織)

“Good Manner of Dying” as a Normative Concept: “Autocide,”“Granny Dumping” and Discussions on Euthanasia/Death with Dignity in Japan (pages 49–63)
Izumi Otani (大谷いづみ)

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信濃毎日新聞コラム(5)臨床研究進めるために(武藤)

2010/10/25

サイエンスの小径(2010年10月25日信濃毎日新聞掲載)
▽臨床研究進めるために▽武藤香織


日本人の2人に1人が、がんになる時代。さらに有効な予防法や治療法の確立が期待されている。そして、新しい治療法の確立のために欠かせないのが、安全性や有効性を確かめるための臨床試験である。現在、人の免疫の働きを強化して、がん細胞の表面にある蛋白質を目印にがん細胞を攻撃させる、がんペプチドワクチン療法の臨床試験が全国的に行われている。

私の勤務先の附属病院で行われた、進行性膵臓がんに対するがんペプチドワクチン療法の臨床試験に問題があったと指摘する記事が、先日、全国紙に載った。批判の柱は「臨床試験の被験者に起きた消化管出血について、他の施設にもその事実を伝えるべきだったのに、しなかった」という点だ。

臨床試験の期間中に生じた、あらゆる好ましくない医療上の出来事を有害事象と呼ぶ。臨床試験で入院中に風邪をひいて入院期間が延びても、「重篤な有害事象」と扱われる。薬剤と体調不良の関係を分析することは難しい。だが、関係している可能性が高まれば、臨床試験をすぐに中止するのも原則だ。

この事例の場合、出血の原因はペプチドにあったというだけの根拠はなく、膵臓がんの進行に伴うものと考えられた。臨床試験は単独で実施したため、他施設に直接通知はしていないが、研究会や論文では報告している。記事には基本的な事実関係の誤りや誤解を招く表現もあり、反論の記者会見が行われた。

だが、取り上げられた患者さんやご家族、全国のがん患者さんたちから見たとき、当事者不在の冷たいやりとりに見えなかっただろうか。実際、患者さんやご家族から、「がんペプチドワクチンを投与すると出血するのか」という問い合わせも相次ぎ、波紋の大きさがうかがえた。

後日、がん患者団体41団体が「がん臨床研究の適切な推進に関する声明文」を出した。明確な根拠とオープンな議論に基づいて研究予算が拡充されること、尊い意思を持って臨床試験に参画する被験者保護のほか、「臨床試験に伴う有害事象などの報道に関しては、がん患者も含む一般国民の視点を考え、事実をわかりやすく伝える冷静な報道を求めます」と要望した。これに反対する声はあるまい。

患者にとって大切な情報と、主治医や臨床試験担当医師が必要とする情報、そしてジャーナリズムが報道する価値があると判断する情報には、それぞれ距離がある。それを前提にコミュニケーションを継続する努力を忘れないようにしたい。

(東大医科学研究所准教授)

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大学院情報学環・学際情報学府創立10周年記念シンポ(11/12 15:00-18:00)

2010/10/20

大学院情報学環・学際情報学府創立10周年記念シンポジウム「智慧の環・学びの府――情報知の熱帯雨林の10年――」

日時:2010年11月12日 15:00-18:00
会場:東京大学本郷キャンパス福武ホール内 福武ラーニングシアター

もうすぐ申し込みが始まります。
ちなみに、懇親会では、武藤が司会します。

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信濃毎日新聞コラム(4)屋久島 山を下る「荷物」(武藤)

2010/09/21

サイエンスの小径(2010年9月21日信濃毎日新聞掲載)
▽屋久島 山を下る「荷物」▽武藤香織


先日、初めて屋久島を訪れた。8キロに及ぶ長いトロッコ道を歩き、花崗岩の山道を登り、世代交代を繰り返して悠久のときを生きている屋久杉を目にした。大粒の雨や霧で包まれる森の中、日ごろの鍛錬が足りない私にとって、決して安楽な登山路ではなかったが、ヤクシカやヤクザルにも励まされて歩みを進めた。

もうすぐ縄文杉にたどり着くという場所で小休止をして、湧水で喉をうるおしていたとき、山の上から黒いビニール袋にくるまれた荷物を背負った男性が下りてきた。慎重な足取りから、相当な重さの荷物だと分かる。その荷物からはジャボジャボという音が聞こえた。同行していた山岳ガイドは男性に「お疲れさま」と声をかけ、「何キロあるの?」と尋ねた。男性は「50キロくらいかな。あと4人くらい降りてくるからよろしくね」と返事をし、山を下りて行った。その荷物の中身は、山小屋のトイレから回収されたし尿であった。

登山者が年々増加する中で、し尿の処理は、どこでも課題となっている。処理方法には、焼却炉で焼却する方法、電気で空気を送ってし尿を分解する方法、微生物製剤を加えて空気を送り込んで分解する方法、ヘリコプターで移送する方法などがある。長野県内の山小屋でも、国の補助を受けて施設を整備し、し尿の処理に取り組んでいることはよく知られている。

屋久島町では、し尿の全量搬出を目指し、国の雇用創出のための基金を利用して、年間10万人以上の登山者が残す約2万リットルのし尿を人力で搬出している。登山路にはバイオトイレもあるが、し尿をオガクズと一緒に攪拌して堆肥にするには、電力が欠かせないため、山小屋近くのトイレでは設置できていない。2009(平成21)年度からは、登山者が自分のし尿を持ち帰る携帯トイレの普及にも取り組んでいる。しかし、主力は、依然として人力での搬出だ。私が山小屋に泊まった翌朝も、作業者の方々は再び搬出に訪れ、10キロの荷物でへばっていた私をひょいひょいと追い抜いていった。

この出会いは、同行した友と私にとって、屋久島最大の思い出となった。登山者の多くは、自分のし尿が人の背中に乗って下山している現実を知らないだろう。せめて登山者が作業者の方々に道を自然と譲れるように、おそろいのユニホームを寄付したいと思った。

(東大医科学研究所准教授)

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信濃毎日新聞コラム(3)医薬品開発 日本の役割は(武藤)

2010/08/02

「サイエンスの小径」(2010年8月2日信濃毎日新聞掲載)
▽医薬品開発 日本の役割は▽武藤香織


近年、新薬や新しい治療法を開発するための臨床試験を国際的に共同で実施する傾向が強まっている。その理由は、共同で臨床試験をすれば、各国での新薬の販売開始時期がそろうことになり、同じ病気の患者なのに国によって薬が入手できないという問題の解消につながるからだ。また、ある国が単独で臨床試験をするよりも、遺伝的な背景が似た人々が住む周辺国の間で協力し合えば、各国で必要な被験者数を少なくすることができるので、臨床試験にかかる時間の短縮も期待される。実際に国際共同臨床試験の数は、韓国が871件、台湾が772件、日本が708件で、東アジアでは韓国と台湾が熱心なこともわかる。

だが、臨床試験で最も大切なのは、被験者に負担が少ない形で科学的に有益なデータを得ることである。そのためには、研究計画が科学的にしっかりしているかどうか、倫理的に問題がないかどうかを審査する態勢が重要になってくる。臨床試験の計画を審査する制度は、これまで先進国を中心に整備され、日本でも1990年代から整えられてきた。はたして東アジアではどうなのか。それを調べるために、韓国と台湾へ出張してきた。

結論からいえば、韓国も台湾もこの数年間で急速に制度を整えたことがわかった。そして、どちらも世界の医薬品開発の中心であるアメリカの制度をそっくり輸入したと言ってもいい。組織の呼び方、会議の運営の仕方まで、アメリカ式だった。韓国も台湾も、明確な戦略として、国際共同臨床試験へ積極的に被験者を出して貢献し、少しでも安く医薬品を供給する道筋をつくろうと考えている。

私の中でどこかうっすらと期待していた、日本の存在感は全然なかった。だが、韓国でも台湾でも、「何をするにせよ、日本はアジアの中でお手本です。我々は、まずアメリカと日本がどうなっているかを調べて、いいところだけを取っているんです」と声をかけられた。唖然とする私に気を使ってくれたのだろう。

夏、日本の多くの人たちが第二次世界大戦の傷跡と向き合って過ごすことだろう。私もその一人であり、日本がかつて植民地支配していた韓国と台湾のさらなる発展と平和をあらためて願っている。それと同時にこの夏は、グローバルな医薬品開発における日本の果たすべき役割を見つめなおしているところだ。

(東大医学研究所准教授)

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信濃毎日新聞コラム(2)臓器提供者の保護を(武藤)

2010/06/21

「サイエンスの小径」(2010年6月21日信濃毎日新聞掲載)
▽臓器提供者の保護を▽武藤香織


今年5月に開かれた世界保健機関(WHO)の総会で、「人の細胞、組織、臓器移植に関する指導指針」が採択された。この指針には、患者ではない、健康な人の体にメスを入れ、その臓器の一部を取り去って、患者に移植する行為、つまり生体臓器移植に適用される原則がいくつか盛り込まれている。たとえば、臓器提供者の選定は、監視の上、慎重に検討すること、臓器提供に伴う危険、利益など全ての情報を与えられたうえで、自発的な提供の意思確認をすること、未成年者は臓器提供者になってはいけないこと、臓器提供後の長期的なケア体制を確立することなどである。

日本は、生体臓器移植に依存しているため、この指針の考え方が及ぼす影響は大きい。1970年代から始まった腎臓移植は、年間1000件前後の実施があり、増加傾向にあるが、生きている提供者に頼っている割合、つまり生体依存率は、82.5%(2008年)である。また、年間400件以上実施されている肝臓移植も、生体依存率は平均して95%を超えている。要するに、腎臓移植も肝臓移植も、生きている提供者がいなければ、日本では成り立たない状況にあるのだ。

幸いなことに、臓器移植医療に対する社会的な信頼を獲得したいという移植医たちの思いもあり、今回WHOの指針に盛り込まれた内容の多くは、日本移植学会や厚生労働省のガイドラインをもとに、自主的に守られてきたと言ってよい。

だが、日本の肝臓移植に大きく貢献してきた、生きている臓器提供者の基本的な保護のあり方については、臓器移植法のなかに全く記載がない。昨年、同法が改正されたときにも、15歳未満の脳死判定された子どもからの臓器提供や、脳死後の臓器提供先として親族を優先する意思表示ができることなど、脳死臓器移植を推進するための改正に追われてしまった。

私は2005年に、日本で肝臓を提供してきた人たちに調査をする機会があった。家族が一丸となって患者(被提供者)を救えた喜びを味わった人。患者であった家族が提供後に亡くなり、親族内での居場所を失ってしまった人。術後の痛みや合併症が予想外に大変だった人。臓器提供のための長期入院で失業してしまった人。たくさんの肝臓提供体験を聞くことができた。その背景には、詳しい検査の結果、肝臓提供を断念せざるを得なかった人、肝臓提供を拒否して苦しんだ人もいただろう。臓器移植にかかわることになった人たちに敬意を払い、大切にする社会になってほしいと願う。

(東大医科学研究所准教授)

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学際情報学府「学環・学府めぐり」(6月12日)出展について【訂正】

2010/06/05

平成23年度学際情報学府修士課程の募集要項の配布が始まりました。6月12日(土)には、入試説明会が予定されていますが、残念ながら、武藤は海外出張のため、「学環・学府めぐり」には出展できません。学際情報学府への進学にご関心のある方は、お気軽にご連絡下さい。

→出張がとりやめとなりましたので、出展できることになりました!(6月10日訂正)

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