第93回(2017年1月20日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
内山:
U.S. Public Wary of Biomedical Technologies to ‘Enhance' Human Abilities
2. U.S public opinion on the future use of gene editing
Pew Research Center
July. 2016.
李:
A pilot assessment of parental practices and attitudes regarding risk disclosure and clinical research involving children in Huntington disease families
Dure, L. S., Quaid, K., & Beasley, T. M.
Genetics in Medicine, 10(11): 811–819.2008.
本日、2016年度、第10回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2017年1月11日(水) 13時30分~16時00分
発表者1: | 李怡然(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士課程) |
---|---|
タイトル: | 遺伝性疾患をもつ患者・家族の子へのリスクの告知 |
要旨:
常染色体優性遺伝の遺伝性疾患は、子に50%の確率で遺伝する病気であり、患者・家族はスティグマや遺伝差別の恐れに直面してきた歴史がある。子にリスクの告知=病気について伝えることは、将来の遺伝子検査の受検、就職・結婚・出産など人生のさまざまな選択を行う上での出発点となるが、親は子への告知に困難を抱えるとされている。国外では早期の告知が推奨され、親の告知の選択や、告知を促進/阻害する要因について考察がなされてきた。しかし、親の語り方と、子の受け止め方や行動に与える影響の考察は十分でなく、日本における研究は極めて少ない。本研究は、遺伝性疾患をもつ患者・家族へのインタビュー調査を通して、親の子への告知の態度と語り方、子にとっての受け止め方や作用を明らかにすることで、日本における告知の現状と課題を検討することを目的とする。
発表者2: | 吉田幸恵(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任研究員) |
---|---|
タイトル: | がん患者にとっての臨床試験参加の意味——患者インタビューから |
要旨:
臨床試験は(治験を含む)、新たな医療開発や適応拡大のために実施される行為であり、患者本人のための治療とは異なります。しかしながら、患者(試験参加候補者)は試験を自分のための治療だと思い込んでしまうことが多々あり、それを「治療との誤解」 (therapeutic_misconception)と呼び、この状態は倫理上避けるべきであるとして、試験実施側はこの状態が生じてしまわぬようICの際に丁寧でわかりやすい説明努力をおこなっています。わたしたちは臨床試験関与経験のある患者へのインタビューを実施し、治療の現場で実施される臨床試験において、治療と試験(研究)の区別は困難であり、ICの場は説明に納得し参加するかどうかを判断する場ではなく、あくまで手続きの場として作用しているという実態があることを明らかにしていますが(「臨床薬理」採択済)、このようななか、説明自体理解し、臨床試験の本質を理解してはいるものの、それでも治療として参加を決める患者が多くいることも明らかになりました。今回は特にそのような状態であった、がん患者(13名)の語りから、臨床試験のなかでがん患者が置かれた状況を明らかにするとともに、がん患者にとっての臨床試験参加の意味を考えたいと思います。
2017年2月11日(土・祝)に開催する第2回研究倫理を語る会ですが、おかげさまで、2016年12月13日現在で、323名の方々からお申し込みを頂いております。
お申し込みのあった皆様からのご要望にお応えして、2017年早々に公布が予定される研究倫理指針の改正に関する緊急セミナーを設けることと致しました! その関係で、プログラムを以下のように変更しました。なお、開始時間と終了時間の変更はございません。
ポスター発表の締切は、2016年12月26日となっておりますが、応募数がとても少ない状況です! 各施設での活動やお取り組みのご紹介など、全国から多数の参加者がおみえになりますので、楽しく情報共有してみませんか? 学術発表に限りません。どうぞ気軽にお申し込み下さい!
<プログラム案(2016年12月13日現在>
9:30 | 開会式 |
9:40 | 緊急セミナー『研究倫理指針の改正について』(仮) 於:第1会場 |
10:50 | 特別講演1『医学研究と個人情報保護』(仮) 於:第1会場 演者:米村滋人(東京大学) |
11:50 | 昼食休憩 |
12:50 | ポスター発表 |
13:30 | 特別講演2『研究不正』(仮) 於:第1会場 演者:黒木登志夫(日本学術振興会) |
15:00 | 教育講演『ゲノムってなんだろう~ゲノム編集技術まで』(仮) 於:第1会場 |
15:00 | グループワーク『倫理審査委員会について考える』(仮) 於:第2会場、第3会場 |
16:30 | シンポジウム『倫理審査委員会の未来』(仮) 於:第1会場 |
17:50 | 閉会式 於:第1会場 |
第91回(2016年12月16日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
高嶋:
研究対象者の権利と補償の正義:倫理学的考察
栗原渚・栗原千絵子
臨床評価.44(2):369-180.2016.
高島:
Protecting Research Subject Welfare in Preventive Trials for Autosomal Dominant Alzheimer's Disease
Holly Taylor, Ellen Kuwana, Benjamin Wilfond
American Journal of Bioethics.15(4):83-84.
When there are only two can tango: ethical concerns at the juncture of highly novel interventions and precisely targeted research populations
Yarborough Mark
American Journal of Bioethics.15(4):85-86.2016.
Conceptualization and Assessment of Vulnerability in a Complex International Alzheimer's Research Study
Stanley Korenman, Stuart G. Finder, John M. Ringman
American Journal of Bioethics.15(4):87-89.2016.
Barriers and Facilitators to the Consent Process in a Study of Complex Genetic Factors
Anne R. Simpson
American Journal of Bioethics.15(4):89-90.2016.
内山:
Will we control our genetic destinies? - The Red Line
Stephen S.Hall
Scientific American.315(3):54-61.2016.
李:
Engagement with genetic discrimination: concerns and experiences in the context of Huntington disease
Bombard, Y., Penziner, E., Suchowersky, O., Guttman, M., Paulsen, J. S., Bottorff, J. L., Hayden, M.
European Journal of Human Genetics.16(3):279–289.2008.
こんにちは。M2の藤澤空見子です。
寒い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
先日、武藤研では忘年会を開催しました!
が、今年の忘年会はいつもと違います。
なんと、武藤研は今年で設立10周年を迎えるのです!このお祝いも兼ねて、研究プロジェクトなどを通じて普段交流のある外部の方やOB・OGの方も招いて「10周年記念忘年会」ということで当イベントを開催しました。
武藤研では遠足や納会など定期的に研究室メンバーが集まるイベントを行うのですが、今回は外部からゲストがたくさんいらしたこともあり、いつもより規模が大きく、修士論文執筆で最近1人でパソコンに向かっていることが多い私は、人の多さに少し驚いてしまいました!笑
武藤研設立当初から在籍しているスタッフのお話によると、最初は先生、研究員スタッフ、学術専門支援職員が計4名ほどしかいなかったそうです。
私が入学したときは既に20名ほどの規模であったため、このお話を聞いてとても驚きました!
10年という期間の中で、さまざまな研究プロジェクトを通じて徐々に仲間が増えていき、今こうしてたくさんの方に囲まれているのだという先生のお話にも感動しました。
また、忘年会の半ばにはサンタさん(!?)が登場して、10周年をお祝いするメッセージの入った大きなケーキを運んできてくれました!
院生からも、余興としてダンス(!)を披露し、各学生からお祝いのメッセージもお伝えしました。
忘年会に参加する中で、10周年をお祝いする気持ちとともに、知識ゼロ状態で入学した私を丁寧に指導・サポートしてくださった先生方、スタッフの方への感謝と、このような環境のもとで勉強をさせてもらえることへのありがたみを改めて強く感じました。
私が10周年という節目に被る形で研究室に在籍しているのは偶然ではありますが、こうして皆さんと一緒にお祝いできることを非常に嬉しく思いました。
武藤研の、今後の益々の発展をお祈りしています!そしてその発展に少しでも貢献できるよう、論文執筆にがんばって取り組んでいきたいと思います!
(M2・藤澤空見子)
皆さんこんにちは。特任研究員の中田はる佳です。システム癌新次元・武藤計画班の中では、主に、人工知能技術をがん研究・がん診療に活かしていく際の倫理的・法的・社会的課題(ELSI)や政策状況について検討しています。
先日、第37回日本臨床薬理学会学術総会で「人工知能の医療応用における倫理的課題の論点整理―IBM Watsonを例として」と題してポスター発表をしてきました。東京大学医科学研究所では、2015年7月からIBM社のコグニティブコンピューティングシステム・Watsonをがん研究に導入しています。今年の8月にはWatsonを用いた診断に関するニュースが大々的に取り上げられたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。人工知能技術の医療応用に対する期待が高まっている中で、Watsonを一つの例として、倫理的・法的・社会的観点から考えていくべき論点をいくつか提示しました。そして関連する政策・規制の状況について、議論が先行している欧米と比較しながら今後の展開を検討しました。多くの方がポスターに足を止めてくださり、関心の高さを感じました。
人工知能技術の医療応用に関連するELSIに関してはまだまだ論点がありますが、実用化への動きに遅れることなく引き続き検討していきたいと考えています。
本日、2016年度、第9回目の公共政策セミナーが開かれました。
オーストラリアより、特別ゲストをお迎えしてお話を頂きました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2016年11月30日(水) 14時00分~16時00分
発表者: | Nola Ries (School of Law, University of Newcastle, Australia, Associate Professor) |
---|---|
タイトル: | Australia-Japan Emerging Research Leaders Exchange Program |
本日、2016年度、第8回目の公共政策セミナーが開かれました。
今回は、特別ゲストをお迎えしてお話を頂きました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2016年11月25日(金) 14時00分~16時00分
発表者: | 櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学 教授) |
---|---|
タイトル: | 日本人類遺伝学会教育推進委員会と日本遺伝カウンセリング学会遺伝教育委員会が取り組んできたこと |
第90回(2016年11月18日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
楠瀬:
同意撤回後の被験者保護について-企業の立場から
谷岡寛子
薬理と治療.42(4):232-235.2014.
中田:
Railroading at the FDA
Nature Medicine 22:1193.2016.
佐藤:
Aneuploidy screening: a position statement from a committee on behalf of the Board of the International Society for Prenatal Diagnosis
ISPD Position Statement
Prenatal Diagnosis.31:519–522.2011.
「臨床試験・治験の語り」データベース構築プロジェクトでインタビューを担当しておりました、特任研究員の中田です。
先日ご報告しておりました「臨床試験・治験の語り」ウェブサイトが完成し、公開されました!
ぜひこちらからご覧ください。
「臨床試験・治験の語り」データベース構築プロジェクトでインタビューを担当しておりました、特任研究員の中田です。
すっかり時間が経ってしまいましたが、「臨床試験・治験の語り」がいよいよウェブサイトで公開されます!11月15日に皆さんにお披露目できるよう、最終準備を進めているところです。
2012年から日本全国をインタビューして回り、約40名の方々の貴重な経験談を集めることができました。できるだけいろいろなご経験を皆さんに知っていただくために、たくさんのお話から少しずつ切り取ってご紹介しています。当初の予定よりだいぶ時間がかかってしまいましたが、とてもよいものに仕上がったと思っています。
臨床試験・治験ってなに?という方、言葉は聞いたことあるけど実際何するの?という方、ぜひ「臨床試験・治験の語り」をご覧ください。公開先は、認定NPO法人 健康と病いの語りディペックス・ジャパンのウェブサイト(http://www.dipex-j.org/)です(11月7日現在準備中です)。
このウェブサイト公開を記念して2016年12月18日(日)に、シンポジウムを開催します。こちらもぜひ奮ってご参加ください。
インタビューにご協力くださった皆さん、関心を持って支えてくださった皆さん、本当にありがとうございました。あと少しで完成です!
(特任研究員・中田はる佳)
システム癌新次元のニューズレターNo.4に当計画班の紹介が掲載されました。
研究班のウェブサイトで読んでいただけます。
第2回研究倫理を語る会の一部講演内容が、ICR臨床研究入門で公開されました。詳しくはこちらをご覧ください。
2017年3月8日
第2回研究倫理を語る会は無事に終了いたしました。
当日は降雪などで交通状況に困難があったにもかかわらず、全国から多くの方々に駆けつけていただき、誠にありがとうございました。
そして、開催にあたってご支援いただきました協賛・後援団体の皆様、懐の深い世話人の皆様方に心から御礼申し上げます。
2017年2月13日
参加者が定員に達しましたので、申し込みは締め切らせていただきました。多数のお申し込みをいただきまして、誠にありがとうございました。
満員御礼につき、当日受付は行いませんのでご了承ください。
なお、「研究指針の改正に関する説明会」情報や本会当日の講演の動画配信情報もございます。詳しくはこちらをご覧ください。
日時: | 2017年2月11日(土) 9時30分~18時00分 (受付開始 9時~) |
---|---|
場所: | 東京医科歯科大学 鈴木章夫記念講堂(東京都文京区湯島1-5-45) 交通アクセスはこちら ・JR御茶ノ水駅 下車 ・東京メトロ丸の内線 御茶ノ水駅 ・東京メトロ千代田線 新御茶ノ水駅 |
事前登録制 | |
参加費: | 無料 |
懇親会費: | 4,000円 |
(チラシPDFはこちら)
プログラムを一部変更しました。(2016.12.16付)
(新タイムテーブルPDFはこちら)
■■■ 参加登録 ■■■
定員に達したため、申し込みは締め切りました。
取り上げてほしいことや気になっていることなどありましたら、申込みフォームの「ご意見」欄にご記入ください。会の運営の参考にさせていただきます。
(例)個人情報保護について,研究不正について,倫理審査について 等々
※同一部署から多数お申し込みのあった場合には、状況により人数のご調整をお願いすることもございます。
■■■ ポスター発表募集 ■■■
ポスター演題は締め切りました。
以下に貼付の申込書にご記入の上、メール添付またはFAXでお申し込みください。
※演題登録〆切:2016年12月26日(月) → 2017年1月13日(金)
■受領通知
演題の受領通知は、Eメールにて行います。
演題ご応募後、1週間たっても受領通知が届かない場合は事務局までお問い合わせください。
■演題採否
応募演題の採否は事務局よりEメールにてお知らせします。
(申込書 pdf版はこちら)
(申込書 word版はこちら)
(ポスター発表についてのお願い)
協賛: | 文部科学省 医学系大学倫理委員会連絡会議 全国医学部長病院長会議 日本医師会 日本医療機器産業連合会 日本臨床試験学会 ICR臨床研究入門 オックスフォード大学出版局株式会社 株式会社ビッグバン |
---|---|
後援: | 厚生労働省 公正研究推進協会 日本医学会連合 日本医療研究開発機構 日本製薬工業協会 |
◆◆ 問い合わせ先 ◆◆
第2回 研究倫理を語る会事務局
東京大学医科学研究所 公共政策研究分野内
担当:山西、竹内
TEL. 03-6409-2079
E-mail:
我が国における医学系研究の発展のためには、科学的側面と同時に、倫理的側面の妥当性が十分吟味される必要があります。そのためには、臨床研究および研究倫理審査の支援体制のさらなる充実が不可欠です。また、倫理審査の現場で遭遇する様々な問題の対応には多くの施設で苦慮しているのが現状です。こうした現状は、各施設で研究倫理に携わる人々が一堂に会し、意見交換する機会に恵まれてこなかったことが大きな一因と考えられます。
そのような趣旨から、平成27年12月12日(土)に第1回「研究倫理を語る会」を開催いたしました。設置主体や立場にかかわらず、全国から300名以上が集まり、審査や教育の困りごとを忌憚なく話し合うことができました。研究対象者保護に関する共通基盤を草の根から確立するための、大きな一歩になったと考えております。
そこで、この度、第2回「研究倫理を語る会」を、平成29年2月11日(土祝)に東京医科歯科大学(東京都文京区)にて開催することになりました。手弁当で行き届かない点も多いと思いますが、世話人一同、前回同様、明るく笑いの絶えない会にしたいと考えております。大変お忙しい時期ではございますが、ぜひ万難を排してご参加下さいますよう、お願い申し上げます。
第2回研究倫理を語る会 実行委員会
代 表 武藤 香織 (東京大学)
副代表 田代 志門 (国立がん研究センター)
*--------------------------------*
「研究倫理を語る会」世話人会
吉田 雅幸 (代表・東京医科歯科大学)
武藤 香織 (副代表・東京大学)
飯島 祥彦 (名古屋大学)
板井 孝壱郎(宮崎大学)
市川 家國 (信州大学)
加藤 和人 (大阪大学)
笹栗 俊之 (九州大学)
澁谷 和俊 (東邦大学)
田代 志門 (国立がん研究センター)
森下 典子 (国立病院機構大阪医療センター)
山下 紀子 (国立がん研究センター)
*--------------------------------*
◆◆ 問い合わせ先 ◆◆
第2回 研究倫理を語る会事務局
東京大学医科学研究所 公共政策研究分野内
担当:山西、竹内
E-mail:
TEL. 03-6409-2079
東京大学医科学研究所公共政策研究分野では、認定NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパンと協力し、臨床試験・治験に関する様々な体験をもつ患者・家族を対象にインタビューを進めて参りました。
このたび、40名分の体験談の一部が『臨床試験・治験の語り』ウェブページとして公開されました。そこで、このウェブページの公開を記念して、シンポジウムを開催します。
第1部では、実際の語りの一部をご覧頂きながら、臨床試験・治験を取り巻く現状と課題を、語り手として参加された方々も交えて共有します。
また、第2部では、これらの語りを、患者・医療者・製薬企業がどのように生かすことができるかを語り合います。
日時: | 2016年12月18日(日) 13時30分~17時(受付開始13時) |
---|---|
会場: | 東京大学情報学環・福武ホール 福武ラーニングシアター(東京都文京区本郷7-3-1) ◆交通アクセスはこちら 都営大江戸線 本郷三丁目駅より徒歩7分 東京メトロ丸ノ内線 本郷三丁目駅より徒歩8分 東京メトロ南北線 東大前駅より徒歩10分 |
定員: | 150名(事前申し込みが必要です) |
対象: | 一般の方、臨床試験関係者、医療関係者、教育関係者等 |
参加費: | 無料 |
主催: | 「臨床試験・治験の語りデータベース構築プロジェクト」 |
協力: | 認定NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン |
◆◆ プログラム ◆◆
開会のごあいさつ:武藤香織(東京大学)
「健康と病いの語り」ウェブサイトについて:
佐藤(佐久間)りか(認定NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン)
【第1部】
- 「臨床試験に参加した人の語りから」
中田はる佳(東京大学) - 「臨床試験に参加しなかった/できなかった人の語りから」
吉田幸恵(東京大学) - 指定発言: 実際にご協力いただいた語り手の皆さん数名から
【第2部 シンポジウム「語りの活用に向けて】
- 「臨床試験参加者の語りを、医療人教育にどう活かすか
有田悦子(北里大学) - パネルディスカッション
神山和彦(日本製薬工業協会)
楊河宏章(徳島大学病院)
山口育子(認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML)
閉会のごあいさつ:
別府宏圀(認定NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン)
◆◆ 申込み方法 ◆◆
①お名前(フリガナ)
②ご住所
③当日の緊急連絡先電話番号
④お立場(例:患者、学生など)
をご記入の上、メールまたはFAXでお申し込みください。
メール: FAX. 03-6409-2080
*----------------------*
問い合せ先:
東京大学医科学研究所 公共政策研究分野
担当:吉田、中田
FAX. 03-6409-2080
E-mail:
こんにちは。M2の藤澤空見子です。
暦上ではもう冬ですね。日が経つにつれ風が冷たくなり、冬の訪れを感じます。
11月5日(土)~6日(日)に北海道大学札幌キャンパスにて開催された、科学技術社会論学会に参加してきました。
去年は聴講のみでしたが、今回は「遺伝カウンセリングにおける科学的知識の位置付け−−非侵襲的遺伝学的検査を中心に−−」というタイトルで口頭発表をさせていただきました。
今回の報告内容は、心理支援という要素も入っている遺伝カウンセリングの中で、認定遺伝カウンセラーは科学的知識をどのように位置付けているのかを、認定遺伝カウンセラーを対象としたアンケート調査・インタビュー調査を通じて明らかにする、というものです。
科学技術社会論や科学社会学の分野では、従来、科学・技術の「社会的な」利用に関する意思決定において科学的知識の絶対性が信じられてきましたが、近年その絶対性が覆されつつあります。
今回の発表では、科学・技術の「個人的な」利用に関する意思決定においても、科学的知識の絶対性は存在しないのではないか、ということを具体的なデータと共に示すとともに、心理支援と科学的知識は分けがたく、むしろ「科学的知識は心理支援に包括される」という構造として認定遺伝カウンセラーに認識されていることを明らかにしました。
会場では、遺伝カウンセリングの実態に関する質問をいくつかいただき、調査の中で聞いた具体的なエピソードを紹介しながら回答しました。
発表では時間の関係もありあまりエピソードを細かく紹介しなかったのですが、具体的な事例を示す重要性を実感し、修士論文の中では事例紹介をしながら論じていくべきだと反省しました。
今後に活きる気付きを得ることができ、とても有意義な体験となりました。また、一部の聴衆の方からポジティブなコメントをいただけて、とても嬉しかったです。
発表の他には、福島県いわき市の復興に関するセッションで防災教育や異なる学問分野の協働についての発表を聞いたり、人工知能をテーマにしたワークショップに参加したりしました。
武藤研究室からは、私の他に、井上悠輔先生・吉田幸恵さんが「ゲノム医療と人工知能の研究開発段階における諸問題」というタイトルで、また学生の佐藤桃子さんが「出生前遺伝学的検査のガバナンスの変遷」というタイトルで口頭発表を行いました。
私は今回が初めての口頭発表でとても緊張したのですが、なんとか無事に終えることができ、ほっとしています。笑
今後は修士論文完成に向けてより本格的に取り組んでいきますが、どんどん寒くなるので体調に気をつけながら執筆していきたいと思います!
みなさんも風邪に気をつけてくださいね。
(M2・藤澤空見子)
今年最初の大雪の中、北海道大学で開催された科学技術社会論学会で、口頭発表を行いました。テーマは最近何かとはやりの「人工知能」です。
「人工知能」という言葉は決して新しい言葉ではありません。人に代わって複雑で困難な問題や状況に自動的に対応できるシステムの可能性は、これまでも語られてきました。現在は、コンピュータおよび関連技術の発展に支えられ、歴史的には3回目の技術革新の時代にあるといわれています。一方、こうしたシステムが人のコントロールを離れて、場合によっては人に危害を加えることがあってはいけません。制度論・学術的にも、何をもって「人工知能」といい、どこにどのような線を引くのか、これ自体も難問です。
このセッションは会計業務、棋士、医療など、人が主に動かしてきたそれぞれの専門的な領域において、「人工知能」がどう語られているのか、また近い将来直面する課題としてどのようなものが考えられるか、多面的に検討することを目的としていました。
私のテーマは、人の体のゲノムデータを踏まえた解析・診断の場面での諸問題です。ゲノムデータは人では処理しきれないほどの量・種類に及んでおり、こうした情報を解析し、医師の診断を支援する機能には多くの期待があります。こうした機能が健全に展開されるよう、付随する倫理的、法的な問題にはどのようなものが考えられるか、整理する作業が必要です。例えば、こうした装置をどう検証し、誰が用いるべきか。これらのシステムの構築・発展に必要な医療情報をどう確保するのかという点も、個人情報保護との関係で問われてくるでしょう。
私は、昨年の生命倫理学会でも、技術転用のあり方をめぐって、アメリカの軍事開発におけるautonomous weapons(自律型兵器)に関する口頭発表を行い、責任の所在や、機械が置き換わってよい範囲をめぐる議論を紹介しました。科学技術のいい部分を引き出し、またこれをしっかり使いこなして、よりよい生活・生き方へと導くような展開を期待したいですね。1月からは「人工知能の医療応用」という観点で、日本医師会での検討が始まる予定です。
(井上)
本日、2016年度、第7回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2016年11月1日(火) 14時30分~16時00分
発表者1: | 藤澤空見子(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程) |
---|---|
タイトル: | 遺伝カウンセリングにおける科学的知識の位置づけ-非侵襲的出生前遺伝学的検査を中心に- |
要旨:
遺伝カウンセリングは情報提供と心理支援をもとに、クライエントの意思決定を支援していくプロセスである。このプロセスの中で、情報提供(特に遺伝学などに関する科学的知識)はどのような位置付けにあるのだろうか。
この疑問を明らかにするため、本邦の認定遺伝カウンセラーを対象にweb上のアンケート調査と半構造化面接を行った。その結果、遺伝カウンセリングの目的は「その人なりの理解」をもとに意思決定を行うことであり、提供する情報量の凸凹や情報の完全な理解はあまり重要視されていないことがわかった。あくまでも判断材料としての情報提供であり、情報提供は心理支援の中に包括されるという位置付けで認識されていた。また、この位置付けに関する認識は、調査の中で明らかになった、遺伝カウンセリング提供体制の施設ごとのばらつきとも関わりがあることが示唆された。さらに、心理支援に包括される情報提供という構図は、特に電話対応においてその特徴が見いだされる可能性があることもわかった。
遺伝カウンセリングにおいて、提供する情報の完全な理解や納得に至ることがゴールではなく、判断材料としてクライエントに扱ってもらうことが情報提供側の意図するところであった。その先の意思決定はクライエントの多様な価値判断に委ねられ、過程に応じて情報の補填や心理支援が行われる。認定遺伝カウンセラーはクライエントに寄り添い、彼らの意思決定のときにそばにいる存在であるが、また一方で、網羅的に情報の整理や確認ができるクライエントにとって効率的な存在でもあると言えるだろう。
発表者2: | 佐藤桃子(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程) |
---|---|
タイトル: | 出生前遺伝学的検査のガバナンスの変遷 |
要旨:
胎児の染色体異常の一部を出生前に検出する出生前遺伝学的検査の技術は、より母体への負担を減らし、精度を上げる方向で技術革新がなされてきた一方で、倫理的問題も提起してきた。倫理的問題に対応した規制と実践が試みられてきたが、1990年代に登場した母体血清マーカー検査と、2010年代に登場した非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)では、ガバナンスのあり方が大きく異なる。
本研究では、母体血清マーカー検査とNIPTのガバナンスのにおける、専門家の視点を検討する。具体的には、それぞれの検査を規制している見解や指針の議事録を中心に国内外の文献を検討し、産婦人科医を中心とする専門家が果たしてきた役割や、検査技術への期待・懸念などを明らかにすることで、今後の技術のガバナンスに知見を提供する。
第89回(2016年10月21日)
本日は、以下の文献が紹介されました。
中田:
Program good ethics into artificial intelligence
Jim Davies
Nature News & Comment.19th,October,2016.
内山:
Genome editing: an ethical review.Section 3 Moral perspective
Nuffield Council on Bioethics
September,2016.
李:
Unravelling fears of genetic discrimination: an exploratory study of Dutch HCM families in an era of genetic non-discrimination acts
Geelen, E., Horstman, K., Marcelis, C. L., Doevendans, P. A., & Hoyweghen, I. Van.
European Journal of Human Genetics.20(10):1018–1023.2012.
藤澤:
Identification of Genetic Counseling Service Delivery Models in Practice: A Report from the NSGC Service Delivery Model Task Force
Stephanie A. Cohen, Monica L. Marvin, Bronson D. Riley, Hetal S. Vig, Julie A. Rousseau and Shanna L. Gustafson
Journal of Genetic Counseling.22(4):411-21.2013.
佐藤:
Triple Marker Screening in Native Japanese Women
Takekazu Onda, Michihiro Kitagawa et al.
Prenatal Diagnosis.16(8):713–717.1996.
こんにちは。D1の李怡然です。
あっという間に10月も半ば、一気に涼しくなりましたね。
10月8日(土)9日(日)に九州大学伊都キャンパスにて開催された第89回日本社会学会大会の「家族」部会にて、“親から子への「告知」-出生コホート研究に参加する親の認識と語り方の考察”というタイトルで報告を行いました。
年に一度、全国から社会学者が集まる一大イベントで、二年前に神戸大学にて開催された大会に次いで2回目の参加となりました。はじめての発表に不安と緊張で震えていた、当時の思いが蘇りました。
養子縁組や生殖補助医療において、子どもの「出自を知る権利」行使の出発点として重要視されてきた「告知(telling)」という概念を、子どもを対象とする医学研究という新たな領域に応用して考察する、というのが本報告の趣旨でした。今回は、出生コホート研究に子どもを参加させている母親・父親を対象に実施した調査の中でも、何を・どう伝えるつもりなのか、という「語り方」のパターンにしぼって考察をし、これまでに検討されてきた「告知」と比べてどのような違いがあるのか、意義や展望についてまとめました。
聴衆の方から、いくつかご指摘や質問をいただき、今後さらに考えを詰めなければいけない点に気付かされました。日頃のゼミでは、何度も皆さんに研究構想を聞いていただいているので、言葉の説明がぼんやりしていても、なんとなく通じてしまうことがあります。はじめて聞く人にもわかりやすく伝える訓練をする上でも、外部で発表することは大事だなと実感しました。対象や方法論はばらばらでも、「家族」という切り口で研究をされている他の報告者との交流を深められたことも、貴重な機会でした。
ほかにも、「精神・保健・医療」などの部会を覗きに行き、患者・家族の語りの分析、健康/病気・障害に関する社会学的な考察について、バラエティーに富んだ発表を楽しみました。
来月には学際情報学府の「博士コロキウム」(博士論文の執筆に向けて先生方の前で、研究構想や進捗について報告をする場)が待ち受けています。
今回の発表は、それに向けて今一度、問題設定や課題を見つめ直す上でも、よいタイミングだったと思います。
気がつけば、今年もあと2ヶ月弱!?宿題はまだまだたくさん、早く片付けなくては。
(D1・李怡然)