第2回「研究倫理を語る会」講演内容の動画公開

2017/05/23

2017年2月11日に開催しました「第2回研究倫理を語る会」の一部講演内容が、ICR 臨床研究入門で公開されましたのでお知らせいたします。

ご覧いただくにはユーザー登録が必要です。
資料もダウンロードできますので、ご活用いただけましたら幸いです。

◆「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」・・・3月8日公開
講師:厚生労働省 矢野好輝氏
(緊急セミナー「研究倫理指針の改正について」と同様の内容を他会場で収録したもの)
https://www.icrweb.jp/course/view.php?id=303

◆特別講演1:「医学研究と個人情報保護のあり方」・・・3月8日公開
講師:東京大学 米村滋人先生
https://www.icrweb.jp/course/view.php?id=302

◆特別講演2:「研究不正、企業不正の背景を考える」・・・5月23日公開
講師:日本学術振興会 黒木登志夫先生
https://www.icrweb.jp/course/view.php?id=307

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2017年度第1回公共政策セミナー

2017/05/10

本日、2017年度、第1回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年5月10日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 小林智穂子(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士課程)
タイトル: シニアの社会参加阻害要因の把握と促進のための実践研究

要旨:

平成29年度笹川科学研究助成(実践研究部門)として実施予定の研究について計画(案)を報告します。目的と内容は、次の通りです。
団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となり、国民の3人に1人が65歳以上となる2025年(いわゆる、2025年問題)に向けて、様々な高齢社会対策が講じられている。なかでも、退職後のシニアの社会参加活動は、本人の介護予防や、福祉の支え手の充足両方をもたらすものとして注目されている。しかし、特に都心部において現役時代を企業勤務で過ごした人々にとって、退職後地域社会と適応し、役割を見つけて「参加」に至るのは円滑ではないようである。そこで、シニアが社会参加活動を始める際の障壁を特定し、克服しうる準備とは何かを明らかにしたい。本研究では、阻害要因の把握を目的としたヒアリングと、ヒアリング結果を活用した、シニアの社会参加促進を目的とした実践としてのワークショップを行う予定である。

発表者2: 李 怡然(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士課程)
タイトル: 遺伝性疾患のリスクの告知をめぐる現状と課題に関する考察

要旨:

晩発性の遺伝性疾患の発病リスクを子に告知することは、本人が人生の様々な選択をする上で、重要とされている。しかし、遺伝性疾患の患者や家族は、病気に対するスティグマや保険・雇用・婚姻等における差別への恐れなどから、子への告知には困難を伴うとされてきた。近年、ゲノム医療の急速な進展により、これまで難治性とされてきた疾患の治療や研究参加の選択肢が広がり、告知の早期化が促される状況にある。加えて、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラー等の専門家の養成、少子化に伴う家族形態の変容、若年世代がアクセス可能な情報環境の充実といった、当事者をとりまく関係性の変化が著しい時代を迎えつつある。本研究は、こうした医学研究の環境や社会の変化を踏まえて、親にとっての発病リスクの告知の意図や経験、子にとっての受け止め方を問うことで、遺伝性疾患当事者のリスクの告知の現代的な様相と課題を明らかにすることを目的とする。
今回のセミナーでは、博士論文の研究計画構想について、背景の整理とインタビュー調査の計画を中心に報告する。

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【院生室より】東京大学生命科学シンポジウムで発表を行いました

2017/04/30

こんにちは、D2の内山正登です。

4月15日(土)に第17回東京大学生命科学シンポジウムで発表をしてきました。このイベントは2003年から毎年開催されている、学内の多くの研究科・研究所が一同に集まり生命科学に関する研究動向を紹介する一般公開のシンポジウムです。今回は本郷キャンパスの安田講堂での開催となりました。

今回、ヒト受精胚へのゲノム編集に関する一般市民と患者を対象とした意識調査の結果について、ポスター発表を行いました。マウス受精胚を対象に実験をしている学生の方や、これからゲノム編集をやろうとしている研究者の方々など様々な立場の方に興味を持っていただき、ポスター発表に足を止めていただきました。自分にとっても、このテーマでの発表は初めてだったので、多くの方々とディスカッションできたことは非常に良い経験となりました。

また、理系出身の自分にとっては久しぶりに分子生物学的な手法を用いた様々な最先端の研究に触れることができ、刺激を受けることができました。

参加自由なので、ぜひ生命科学研究に興味がある方は、来年足を運んでみてください。武藤研からの発表も見られるはず!!

(D2・内山正登)

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【院生室より】2017年度オリエンテーション

2017/04/07

みなさん、こんにちは。
桜が満開となりすっかり春らしい陽気ですね。D2になりました、李怡然です。

昨日、公共政策研究分野のオリエンテーションが行われました。

今年度は新入生として、大学院学際情報学府の文化・人間情報学コースにM1飯田さん、菅原さんがご入学されました。
また、特任研究員として船橋さん、学術支援専門職員として2名の方が着任されました。

前半では「教室説明編」として、武藤先生による研究室の設立経緯やこれまでの歩みのお話からはじまり(4月1日でついに10周年を迎えました!)、ゼミなどのイベント、プロジェクトとメンバーの紹介、教室のルールや大学院生活について、各担当者からの説明がありました。

また、後半の「自己紹介編」では、メンバー1人1人が順番にスライドでプロフィールを紹介しました。
毎年恒例で何か一つお題を出されるのですが、今年のテーマは「思い出の中で今でも輝いている曲」「今、心に響く曲」です!
今回は、お題の曲を流してもいい(!)ということで、懐かしい名曲やら、今流行りのドラマの主題歌やら、めいめいが曲にまつわる思い出を語りながら、しんみりと...もしくはノリノリで音楽を聞く、という斬新な自己紹介タイムとなりました。

オリエンテーション後は、これまた恒例の近隣のお店での新歓ランチです。美味しいごはんを食べつつ、自己紹介のつづきとして、趣味や出身地の話題などでさらに盛り上がり、すっかり打ち解けた雰囲気で話に花を咲かせていました。

神里先生が立ち上げられた"姉妹教室"の「生命倫理研究分野(研究倫理支援室)」と合わせて、総勢22名での新年度の始動です。
10年目を迎えた武藤研をこれからも暖かく見守っていただけると幸いです。
今後も、ブログでの情報発信をどうぞお楽しみに!

(D2・李怡然)

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【院生室より】送別会が開かれました

2017/03/30

こんにちは、D1の李怡然です。

あっという間に、年度末を迎えました。

先日、武藤研の送別会が開かれ、卒業されたOB・OGの方も加わり19名が参加しました。
今年度は、修士課程を修了される藤澤さん、佐藤さん、公共政策を離れられる石川さん、中田さんを送り出しました。

途中、サプライズでの記念品のプレゼントや、工夫をこらした演出に、笑いあり涙ありで大変盛り上がりました。
4名のメッセージを聞いていると、これまで一緒に過ごしてきた思い出がよみがえり、言葉が深く胸に沁みました。
どの方も公共政策にとってかけがえのない存在で、名残惜しい気持ちで一杯ですが、それぞれの道を歩んでいってほしいなあと願っています。

私も、気がつけば送り出す側となって3年目…!
4月には、また新たなスタッフの方も加わり、新入生の方々をお迎えすることになります。

フレッシュなメンバーで、気持ちを新たにスタートを切ることを、今から楽しみにしています。

来年度も、武藤研をどうぞよろしくお願いいたします!

(D1・李怡然)

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「臨床薬理」誌に論文が受理されました(臨床試験の語りプロジェクト・中田)

2017/03/13

特任研究員の中田です。

「臨床試験・治験の語り」データベース構築プロジェクトでは、昨年11月16日に「臨床試験・治験の語り」データベースを公開しました。これで本プロジェクトチームの大きな目標の一つを達成したところです。

私たちの目標のもう一つは、本プロジェクトで集めたインタビューを分析して得られた知見を発信し、今後の臨床試験実施体制の向上につなげることです。その一歩として、本プロジェクトに関連する論文が「臨床薬理」誌に受理されました。3月中に掲載される見込みです(※)。

本論文では、臨床試験に関わった経験がある患者41名(当時)のインタビュー調査と約12,000名の患者を対象とした意識調査から得られたデータを組み合わせて分析し、患者にとってのインフォームドコンセント(IC)の意義を考察しました。臨床試験のICは、被験候補者である患者が、その臨床試験に関する情報を得て、自律的な参加判断をするためのものとして行われています。しかし、私たちの分析から、患者はICの前に既に「インフォーマルな参加判断」をしており、ICの場ではそれを確定させるための情報収集を行っていたことが示されました。このような参加判断は患者の自由であり否定されるべきものではないのですが、医療従事者も患者も、ICを経てフォーマルな参加判断の場があることを改めて認識する必要があると結論付けました。

引き続き、本プロジェクト関連の論文を各メンバーが執筆中です。ぜひご期待ください!


※論文書誌情報

中田はる佳、吉田幸恵、有田悦子、武藤香織.「患者の経験からみる臨床試験への参加判断とインフォームドコンセントの意義」臨床薬理(掲載予定).

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第96回ジャーナルクラブ記録  

2017/03/03

第96回(2017年3月3日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

神里:

「リスク」と「侵襲」と「Risk」ーリスク概念をめぐる人を対象とする医学系研究に関する倫理指針の課題
松井健志
『生命倫理』26(1): 4-14. 2016.

李:
生命倫理と保険事業―遺伝子情報と保険に関する研究会の活動報告を中心に
佐々木光信
『日本保険医学会誌』101(3): 273-303. 2003.

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第13回公共政策セミナー

2017/03/01

本日、2016年度、第13回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年3月1日(水)13時30分~16時00分

発表者: 武藤香織(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授)
タイトル: 社会における個人遺伝情報利用の実態とゲノムリテラシーに関する調査研究班の経緯について

要旨:

近年、諸外国に大きく遅れをとりつつ、日本ではゲノム医療を実現するための施策作りが本格化している。遺伝学的検査項目の保険収載を増進するための議論や専門人材育成と並んで、遺伝情報の利活用と保護に関する施策の検討が開始された。昨年採択された厚生労働特別研究では、一般市民を対象とした遺伝情報の利活用に関する懸念と被差別実態を明らかにするための調査を実施しているほか、遺伝性疾患や障害の当事者からのヒアリングを試行している。本報告では「遺伝情報に基づく差別」の定義の再検討と、一般市民意識調査結果の速報と課題について報告する。

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第95回ジャーナルクラブ記録

2017/02/17

第95回(2017年2月17日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

神里:
ミトコンドリア置換における「3人の遺伝的親」の問題についての生命倫理学的考察
伊吹友秀
『生命倫理』26(1): 124-133.2016.

内山:
ゲノム編集および生殖系遺伝子改変における倫理的課題
邱仁宗(訳:位田隆一・甲斐克則・横野恵)
『比較法学』50(2): 53-77.2016.

A Scientific Ethical Divide Between China and West
Didi K. Tatlow
The New York Times. June 29, 2015.

National Academy of Sciences and National Academy of Medicine Announce Initiative on Human Gene Editing
Ralph J. Cicerone and Victor J. Dzau
The National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine.
May 18, 2015.

李:
Genes, symptoms, and the “asymptomatic ill”: toward a broader understanding of genetic discrimination
Tino, Plümecke
New Genetics and Society.35(2): 124–148. 2016.

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【院生室より】遠足に行ってきました!

2017/02/15

こんにちは、M1張有沙です。
雪が降ったり晴れたり、安定しないお天気が続いていますね。
インフルエンザなども流行っているようなので、春に向かって油断してしまう季節ではありますがまだまだ気を引き締めて過ごしましょう。

先日、毎年恒例の遠足に行ってきました!
来年度からの新入生の方も招待し、筑波宇宙センターとCYBERDYNE STUDIOの2つを巡る筑波観光です。

筑波宇宙センターは日本最大の宇宙航空開発施設で、管制室や宇宙飛行士養成エリアを見学できるツアーに参加しました。
宇宙研究の現場や働く方々を間近に感じ、隣接している展示館では宇宙研究の歴史に触れ、非常に刺激的な時間でした。
続いてCYBERDYNE STUDIOでは、ロボットスーツHALの遠隔操作体験を含めたツアーに参加しました。
想像していたよりもずっと進んだ技術をもち、医療現場で活躍しているHALに驚きました。
体験ではスタッフさんに「ニュータイプ」と言われるほどの使い手が現れたり、とてもおもしろかったです。

リフレッシュになる楽しい遠足ではあるのですが、知的好奇心も刺激される有意義な時間を過ごせました。
気が早いですが、今から来年度の遠足も楽しみです。

(M1・張)

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第2回研究倫理を語る会 御礼

2017/02/14

2月11日(土・祝)に第2回研究倫理を語る会を無事に開催することができました。当日は降雪などで交通状況に困難があったにもかかわらず、全国から多くの方々に駆けつけていただき、誠にありがとうございました。そして、開催にあたってご支援いただきました協賛・後援団体の皆様、そして懐の深い世話人の皆様方に心から御礼申し上げる次第です。


参加者に回答をお願いしたアンケートでは、特に倫理審査委員会の事務局の皆様に、当日の雰囲気作りや内容についても喜んでいただいた様子でして、個人的にはとても嬉しく思っております。私どもは、こうした催しを東京で独占するつもりは全くありません! これをきっかけに、それぞれの地域で活発に交流が進んでいくことを願っております。


実行委員会代表 武藤香織

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第94回ジャーナルクラブ記録

2017/02/03

第94回(2017年2月3日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

中田:
Patient Advocacy Organizations, Industry Funding, and Conflicts of Interest
Rose SL, Highland J, Karafa MT, Joffe S.
JAMA Internal Medicine, Jan 17, 2017.

Toward a Healthier Patient Voice: More Independence, Less Industry Funding
Moynihan R, Bero L.
JAMA Internal Medicine, Jan 17, 2017.

李:
What Do We Tell the Children? Contrasting the Disclosure Choices of Two HD Families Regarding Risk Status and Predictive Genetic Testing
Kathryn, Holt
Journal of Genetic Counseling, 15(4): 253-265. 2006.

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【満員御礼:第2回研究倫理を語る会】当日受付は行いません

2017/02/03

このたびは第2回研究倫理を語る会への参加につきまして、たくさんのお問い合わせを頂き、誠にありがとうございました。実行委員会を代表して、心から御礼申し上げます。

大変ありがたいことに、今回の「語る会」には私どもの事前の予想を超える多数の方々からご参加登録を頂きました。そのため、会場の混雑状況や事故の防止も考慮し、定員に達した時点で参加登録を締め切らせていただきました。

しかし、その後も数十件を越える問い合わせを頂いております。

既に参加登録いただいている方々には、こうした事情をご説明し、キャンセルの場合にはお早めにご連絡を頂くようにお願いしたところですが、現時点ではキャンセルのご連絡がございません。
また、当日受付も行わない予定です。

そのため、大変心苦しいのですが、ご参加のご希望を叶えることができないと判断せざるを得なくなりました。ご期待に応えることができず、申し訳ございませんが、どうかご了承くださいませ。

なお、「研究指針の改正に関する説明会」開催が全国11箇所で開催されることが発表されました。詳しくは、以下のURLをご覧のうえ、お申し込み下さい。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000149642.html

また、皆様のご要望に応えるため、以下のプログラムのご講演部分については、講演者のご厚意により、当日の動画を録画したうえで、本会の協賛団体である、ICR 臨床研究入門で公開していただくことになりました。
https://www.icrweb.jp/

◆特別講演1:「医学研究と個人情報保護のあり方―認識のズレをどう乗り越えるか」(講師:米村滋人先生)

◆特別講演2:「研究不正、企業不正の背景を考える」(講師:黒木登志夫先生)

さらに、緊急セミナー「研究倫理指針の改正について」についても、厚生労働省の矢野課長補佐のご厚意により、同様の内容をあらためて録画し、ICR 臨床研究入門で公開していただく予定です。公開の日程が決まりましたら、ご連絡を差し上げますので、どうか宜しくお願い申し上げます。

またの機会にお目にかかれますことを念じております。
皆様のご健康とご多幸を祈念しております。

第2回研究倫理を語る会
実行委員会
代表 武藤 香織
(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野)

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第12回公共政策セミナー

2017/02/01

本日、2016年度、第12回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年2月1日(水)13時00分~16時30分

発表者1: 内山正登(大学院新領域創成科学研究科 博士後期課程1年)
タイトル: ヒト受精胚へのゲノム編集に関する国際的議論の現状と意識調査に向けた取り組み

要旨:

ゲノム編集は、技術の簡便性や応用性から生命科学研究や医療において多くの可能性が考えられる技術である。その一方で、2015年に中国のチームがヒト受精胚へのゲノム編集を行った研究を発表して以降、ヒト受精胚に対するゲノム編集の是非に関する議論が活発になった。2015年12月に米国でヒトゲノム編集国際サミット(International Summit on Human Gene Editing)が開催され、世界各国の生命科学者や医療者、生命倫理学者によってゲノム編集の是非について議論され、最終的に声明(On Human Gene Editing : International Summit Statement)がまとめられた。このような国際的な議論を受け、2016年4月に内閣府総合科学技術・イノベーション会議生命倫理専門調査会は、日本におけるヒト受精胚へのゲノム編集の取り扱いに関して、「ヒト受精胚へのゲノム編集技術を用いる研究について(中間まとめ)」を発表した。この中間まとめの中では、基礎研究におけるヒト受精胚へのゲノム編集について容認される場合があるとした一方、臨床利用することについては容認しないとしている。また、今後も様々な立場の人が議論に参加し、社会的な議論を重ねる必要性が述べられている。本発表では、ゲノム編集技術の開発以降のヒト受精胚へのゲノム編集技術を用いる研究に関する国際的な議論と日本国内での議論について整理する。また、ゲノム編集に関する社会的な議論を活性化するために日本科学未来館と共同で開発したゲノム編集に関するワークショップについて報告するとともに、高校生を対象にワークショップを実施した際に、高校生がゲノム編集に対してどのような意見を持っているのかを調べた結果を報告する。また、今後検討しているゲノム編集に関する一般市民の意識調査に関して説明する。

発表者2: 洪賢秀(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任助教)
タイトル: 韓国社会におけるDTC遺伝子検査サービスに関する規制の変化とその諸課題

要旨:

韓国では、遺伝子検査*を実施する機関は、「生命倫理および安全に関する法律(以下、「生命倫理安全法」とする)」に基づき、保健福祉部長官に申告をしなければならない(法第49条第1項)。また、人胚または胎児を対象とした遺伝子検査や科学的根拠が不確実で検査対象者を誤導する恐れのある遺伝子検査は、制限もしくは禁止(法第50条第1項、施行令第20条)され、世界でも厳しいルールが適用された。このような遺伝子検査に関する規制は、遺伝子検査解析技術の進展に伴い見直しをすることを前提となっていた。実際、生命倫理安全法施行後に、医療機関側と非医療機関側の両方から遺伝子検査の規制の矛盾について指摘されるようになり、規制の見直しに向けての議論が行われた。2015年12月に、生命倫理安全法改正が行われ、疾患リスクの予測を目的として遺伝子検査サービス(DTC検査)の一部を企業が実施することが可能となった。本報告では、生命倫理安全法改正の前後における遺伝子検査の規制をめぐる議論に着目し、論点となっていた①遺伝子検査の医療行為の是非、②遺伝子検査の結果返却、③遺伝カウンセリングの体制などが、改正法のなかでどのように位置づけられたのか、また積み残されて課題とは何かについて考察する。
*本報告における「遺伝子検査」とは、「生命倫理安全法」第2条の定義による「人体由来物から遺伝情報を得る行為で、個人識別または疾病の予防・診断・治療等のために行う検査」を指す。

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【院生室より】HBOCコンソーシアム学術総会に参加してきました

2017/01/25

こんにちは、D1の李怡然です。

1月21日(土)22日(日)に札幌医科大学で開催された「第5回日本HBOCコンソーシアム学術総会」に参加してきました。
HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)というと、聞き慣れない言葉かもしれませんが、米ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんの名前を出せばぴんとくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。彼女は2013年に乳がんリスク低減のための切除手術(RRM)を受けたことを公表し、さらに2年後の2015年にはリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)も行ったことを公表して、日本においても話題になりました。

日本HBOCコンソーシアムは、2012年に発足、様々な職種の専門家が参画して医療システム作りや、HBOC家系の全国的な登録データベースの構築、医療者や一般市民向けの啓発活動等を行う団体です。今回は初めて東京を離れて、札幌での総会開催となり、私もさらさらの白い雪が積もった、冬の北海道に足を踏み入れました。

私も、アンジーさんのおかげでHBOCについてぼんやりとは知っていましたが、最新の遺伝子解析技術、国際的なゲノムデータ共有の機運、新たに期待されるPARP阻害薬の開発状況と展望など、今まで知らなかった近年の動向について勉強になりました。
また、「RRSOと女性医学」と題されたシンポジウムでは、どのような条件で・何歳で実施するかの判断から、遺伝カウンセリングの整備、手術後の症状への対応など、多くの課題点が挙げられました。武藤先生からは、生命倫理の観点から、患者個人だけでなく家族・血縁者にも関わるという意思決定プロセスの特徴や、「女性性」を失うことの恐怖や人生の価値観を理由に手術を拒否する人もいる以上、選択した/しなかった方の経験をともに集めることが重要だ、というジェンダーや身体観に関わる論点が提示されました。
当事者会であるNPO法人「Clavis Arcus(クラヴィスアルクス)」の方々とお話する機会もあり、まだまだ知られているとは言えないHBOCの啓発や支援に向けて、積極的に活動されている様子を知ることができました。

乳がん卵巣がんに限らず、そして少ないながらも男性であってもがんを発症する可能性があることなど、知られていない面も多いと思います。遺伝子検査やリスク低減のための予防策が選択できるようになってきていると同時に、ひとりひとりの生き方の選択、子どもを含む家族との関係など、考えさせられる点が多くありました。

東京に帰ってきてからも、風が吹いて冷え込む日が続きます。
みなさんも、どうぞ体調にお気をつけて!

(D1・李怡然)

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第11回公共政策セミナー

2017/01/25

本日、2016年度、第11回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年1月25日(水)14時00分~16時30分

発表者1: 佐藤桃子(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程)
タイトル: 修士論文口頭試問予演

要旨:

出生前遺伝学的検査は多くの生命倫理学上の問題を提起してきたが、指摘された問題が検査の実施にどのように反映されてきたかを問う、ガバナンス分析の視点は不足してきた。本研究では、1990年代に登場した母体血清マーカー検査と、2010年代に登場したNIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)を事例に、検査を国内でどのように実施するかを決めたガバナンスの構築過程を追い、行政や関連学会が何を目指した検査実施体制を作ってきたかという変遷を明らかにした。本発表は、2月に予定されている学際情報学府修士論文の口述審査のドラフトを元にしている。

発表者2: 藤澤空見子(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程)
タイトル: 修士論文口頭試問予演

要旨:

科学/技術は、その発展とともに社会の様々な領域で活用されるようになった。科学技術社会論の領域では、科学/技術の歴史的背景や専門知の特性をふまえ、種々の科学/技術の利用に関する意思決定について議論を重ねてきた。しかし、科学/技術を個人が利用する際の意思決定に関する議論はあまり蓄積されておらず、また、医療という話題もあまり取りあげられてこなかった。そこで本研究では、医療の中でも出生前遺伝学的検査に着目し、医療者からの情報提供や心理支援を通じて来談者が意思決定を行う遺伝カウンセリングを題材として取りあげる。本邦は遺伝カウンセリング提供体制の基盤構築を目指す段階にあり、本研究の第一の目的は今日の遺伝カウンセリング提供体制を明らかにすることにある。そして第二の目的は、遺伝カウンセリングを専門家(医療者)と非専門家(一般市民)がコミュニケーションを行う場として捉え、かつ遺伝カウンセリング担当者である認定遺伝カウンセラーを専門家と捉え、認定遺伝カウンセラーが遺伝カウンセリングの中で科学的知識をどのように位置付けているのかを明らかにすることである。

本研究では、周産期医療に携わる認定遺伝カウンセラーを対象に質問紙調査とインタビュー調査を行った。調査からは、今日の遺伝カウンセリングは施設により異なる体制で提供されていること、そして、認定遺伝カウンセラーは科学的知識をクライエントの意思決定のための一要素でしかないと見なしており、クライエントに必ずしも科学的知識の理解を求めていないことが明らかとなった。同時に、遺伝カウンセリングの要素として語られる情報提供と心理支援は実際は分けがたく、むしろ科学的知識の提供は心理支援に内包されうるということも示唆された。

本研究を通じて、質のばらつきという今日の遺伝カウンセリング提供体制が抱える課題が具体的な現場の声とともにわかったことを踏まえ、今後は全国的な調査を通じて遺伝カウンセリング提供の実態を把握することが望まれる。そして、クライエントに向き合う時間の確保のために一定の時間枠を設けることを規定することも1つの対策として考えられる。また、科学技術社会論においては、科学的知識は絶対性な位置付けから科学/技術の社会的受容意識を構成する1要素にしかすぎないという位置付けへと大きく認識が転換してきたという歴史的背景があり、今回の調査からわかった科学的知識を意思決定の材料として見なす認定遺伝カウンセラーの姿勢は、今日科学技術社会論で指摘される内容と通じていた。

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第93回ジャーナルクラブ記録

2017/01/20

第93回(2017年1月20日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

内山:
U.S. Public Wary of Biomedical Technologies to ‘Enhance' Human Abilities
2. U.S public opinion on the future use of gene editing

Pew Research Center
July. 2016.

李:
A pilot assessment of parental practices and attitudes regarding risk disclosure and clinical research involving children in Huntington disease families
Dure, L. S., Quaid, K., & Beasley, T. M.
Genetics in Medicine, 10(11): 811–819.2008.

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第10回公共政策セミナー

2017/01/11

本日、2016年度、第10回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年1月11日(水) 13時30分~16時00分

発表者1: 李怡然(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士課程)
タイトル: 遺伝性疾患をもつ患者・家族の子へのリスクの告知

要旨:

常染色体優性遺伝の遺伝性疾患は、子に50%の確率で遺伝する病気であり、患者・家族はスティグマや遺伝差別の恐れに直面してきた歴史がある。子にリスクの告知=病気について伝えることは、将来の遺伝子検査の受検、就職・結婚・出産など人生のさまざまな選択を行う上での出発点となるが、親は子への告知に困難を抱えるとされている。国外では早期の告知が推奨され、親の告知の選択や、告知を促進/阻害する要因について考察がなされてきた。しかし、親の語り方と、子の受け止め方や行動に与える影響の考察は十分でなく、日本における研究は極めて少ない。本研究は、遺伝性疾患をもつ患者・家族へのインタビュー調査を通して、親の子への告知の態度と語り方、子にとっての受け止め方や作用を明らかにすることで、日本における告知の現状と課題を検討することを目的とする。

発表者2: 吉田幸恵(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: がん患者にとっての臨床試験参加の意味——患者インタビューから

要旨:

臨床試験は(治験を含む)、新たな医療開発や適応拡大のために実施される行為であり、患者本人のための治療とは異なります。しかしながら、患者(試験参加候補者)は試験を自分のための治療だと思い込んでしまうことが多々あり、それを「治療との誤解」 (therapeutic_misconception)と呼び、この状態は倫理上避けるべきであるとして、試験実施側はこの状態が生じてしまわぬようICの際に丁寧でわかりやすい説明努力をおこなっています。わたしたちは臨床試験関与経験のある患者へのインタビューを実施し、治療の現場で実施される臨床試験において、治療と試験(研究)の区別は困難であり、ICの場は説明に納得し参加するかどうかを判断する場ではなく、あくまで手続きの場として作用しているという実態があることを明らかにしていますが(「臨床薬理」採択済)、このようななか、説明自体理解し、臨床試験の本質を理解してはいるものの、それでも治療として参加を決める患者が多くいることも明らかになりました。今回は特にそのような状態であった、がん患者(13名)の語りから、臨床試験のなかでがん患者が置かれた状況を明らかにするとともに、がん患者にとっての臨床試験参加の意味を考えたいと思います。

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第92回ジャーナルクラブ記録

2017/01/06

第92回(2017年1月6日)

本日は、以下の文献が紹介されました。

神里:
卵子探しています―世界の不妊・生殖医療現場を訪ねて
宮下洋一
2015年3月.小学館.

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第2回 研究倫理を語る会 プログラムの一部変更について

2016/12/16

2017年2月11日(土・祝)に開催する第2回研究倫理を語る会ですが、おかげさまで、2016年12月13日現在で、323名の方々からお申し込みを頂いております。
お申し込みのあった皆様からのご要望にお応えして、2017年早々に公布が予定される研究倫理指針の改正に関する緊急セミナーを設けることと致しました! その関係で、プログラムを以下のように変更しました。なお、開始時間と終了時間の変更はございません。

ポスター発表の締切は、2016年12月26日となっておりますが、応募数がとても少ない状況です! 各施設での活動やお取り組みのご紹介など、全国から多数の参加者がおみえになりますので、楽しく情報共有してみませんか? 学術発表に限りません。どうぞ気軽にお申し込み下さい!

<プログラム案(2016年12月13日現在>

9:30 開会式
9:40 緊急セミナー『研究倫理指針の改正について』(仮) 於:第1会場
10:50 特別講演1『医学研究と個人情報保護』(仮) 於:第1会場
演者:米村滋人(東京大学)
11:50 昼食休憩
12:50 ポスター発表
13:30 特別講演2『研究不正』(仮) 於:第1会場
演者:黒木登志夫(日本学術振興会)
15:00 教育講演『ゲノムってなんだろう~ゲノム編集技術まで』(仮) 於:第1会場
15:00 グループワーク『倫理審査委員会について考える』(仮) 於:第2会場、第3会場
16:30 シンポジウム『倫理審査委員会の未来』(仮) 於:第1会場
17:50 閉会式 於:第1会場

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