2019年第7回公共政策セミナー

2019/12/11

本日第7回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:12月11日10時~12時半頃

発表者1: 楠瀬まゆみ(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻博士後期課程)
タイトル: 研究におけるベネフィットシェアリングに関する倫理的議論に関する検討

要旨:

研究倫理の文脈においてベネフィット・シェアリング(benefitsharing)の議論がなされ始めたのは比較的新しく、議論が十分になされていない
分野の一つである。従来、研究におけるヒト試料・情報の提供に関しては利他主義に基づいた無償提供が前提とされている。しかし、企業等のなかには、それら無償で得た情報を販売することによって利益を得ている場合もある。Schroeder(2006)は、ベネフィット・シェアリングを、交換の正義を達成するためにヒト遺伝資源提供者にその資源利用に由来する利益や利潤の一部を提供する行為と定義する。さらにAnderson & Schroeder(2013)は、ベネフィット・シェアリングの背後にある哲学的原則として、科学技術の研究や発展に貢献した人々は、その利益を共有するべき(oughtto)であると述べ、科学的進歩の貢献者と利益を共有しない場合の搾取の可能性について指摘している。そこで本発表においては、研究におけるベネフィット・シェアリングに関する基礎的文献からベネフィットシェアリングに関する根本をなす倫理的議論を概観する。

発表者2: 河合香織(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程)
タイトル: 遺伝的特徴における結婚差別とは何か

要旨:

遺伝的特徴に基づく差別とは、科学的に解析あるいは検査されたゲノムの状態をも含む、遺伝的特徴に基づくあらゆる区別、排除、制限、又は優先である(厚生労働科学特別研究, 2017)。その中でも結婚をめぐって生じうる差別とは何かについて、修士論文として調査する。差別の形成にあたって、遺伝カウンセリング等の専門知を提供する遺伝医療の専門家の規範や差別意識が当事者の意識に反映する場合も少なくないと予想する。専門家を対象に、差別に関する教育歴、自身が形成した規範と臨床実践、クライアントからの相談内容と対応の事例など、質問紙調査とインタビュー調査を行うことにより、遺伝的特徴に基づく差別に関する知の蓄積に貢献したい。