治験については臨床研究中核病院等を中心とする中央治験審査委員会にて、また、「臨床研究法」に基づく特定臨床研究では認定臨床研究審査委員会にて中央倫理審査を行うための基盤整備が進められてきました。しかし、観察研究等の介入を伴わない研究(以下、非介入研究)に関しては、倫理指針で一括審査を認めているものの、その基盤整備はされてきませんでした。
そのため、AMEDでは平成30年度より非介入研究の中央倫理審査に向けた基盤整備が進められ、私たちも、本年度、基盤整備に向けた取り組みを行うことになりました。
中央倫理審査の実践においては、倫理審査の委託又は受託に関する手続きの多くを事務局が担うことになるため、その基盤整備において事務局の方のご意見は極めて重要と考えています。そこで、倫理審査委員会事務局の皆様にお集まりいただき、非介入研究の中央倫理審査を関するご意見をお聞かせいただくためのワークショップを企画しました。
当日は、平成30年度に「多機関共同非介入研究における倫理審査集約化に関するガイドライン」(案)を作成した東北大学病院 臨床研究推進センターの先生に同ガイドラインの解説もしていただく予定です。ご多忙とは存じますが、是非ともご参加くださいますようお願い申し上げます。
対象: | 倫理審査の委受託に関心のある倫理審査委員会事務局の方 (委受託経験の有無は問いません。未経験または経験の浅い事務局の方々も歓迎!) |
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日時: | 2019年10月7日(月) 14:00~16:30(受付開始:13:30~) |
会場: | TKP品川カンファレンスセンター バンケットホール4J(品川駅から徒歩1分) |
お申込み〆切: | 2019年9月27日(金) |
アリス・ウェクスラー氏(遺伝病財団理事)と若手研究者との交流研究会を開催します
【概要】
米国遺伝病財団の理事でいらっしゃるアリス・ウェクスラーさんを日本にお招きし、交流研究会を開催いたします。アリスさんは、ハンチントン病(HD)の当事者家族であり、また、歴史家としてHDに関する著作を多く執筆されています。研究会では、米国におけるHDの「発見」を描いた著作The Woman Who Walked in to the Sea: Huntington's and the Making of a Genetic Disease(Yale University Press; 2008)を題材に、お話いただく予定です。また、後半では、難病や遺伝性疾患をフィールドに調査を行っている日本の若手研究者から話題提供を行います。
ディスカッションを通じて、日米の患者会活動や科学コミュニティとの関わりについて、意見交換ができれば幸いです。
なお、報告とディスカッションは英語で行われます。
(※注:患者さん、ご家族、一般の方々が対象の講演会は別日程(9/29(日))で開催されます。ご関心のある方は、こちらをご覧ください)
Young Scholars with Alice Wexler Event
日時: | 2019年9月26日(木) 10時~13時頃 |
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場所: | 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階 公共政策研究分野 セミナー室 (東京都港区白金台4-6-1) [アクセス・キャンパスマップ] |
プログラム (話題提供者): |
司会者:Kaori Muto 武藤 香織 東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授 1)Alice Wexler 米国遺伝病財団 理事 2)Saori Watanabe 渡部 沙織 東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 日本学術振興会特別研究員PD 3)Izen Ri 李 怡然 東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員 |
対象: | 関心のある研究者の方々 |
参加方法: | 以下の「申込みをする」ボタンより事前にご登録ください。 |
主催: | 東京大学医科学研究所公共政策研究分野 |
お問い合わせ: | 東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 E-mail: |
本日第4回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:9月11日13時半~16時頃
発表者1: | 神原容子(東京大学医科学研究公共政策研究分野 学術支援専門職員) |
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タイトル: | 成人期ダウン症候群において必要とされる情報提供と家族支援のあり方について |
要旨:
ダウン症候群のある方々の平均寿命の延長に伴い、ダウン症候群のある成人に対する健康管理と合併症治療の重要性は増している。成人期のダウン症候群のある方とその家族を対象に開催した「大人のダウン症セミナー」の取り組みと、現在行っている研究内容について報告する。
発表者2: | 永井亜貴子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任助教) |
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タイトル: | がん遺伝子パネル検査に対する患者・市民の態度に関する研究 |
要旨:
がん組織の遺伝子を一括して網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査は、2018年4月より先進医療として実施され、有効性と安全性について検討が行われた。2019年6月からは、がん遺伝子パネル検査の2製品の保険適用が開始され、がんゲノム医療を実施する体制づくりが進められている。こうした状況の下、2018年に実施したがん遺伝子パネル検査に関するインターネット調査の回答者であるがん患者、がん患者の家族、市民を対象として、2019年8月に同検査に関するインターネット調査を行った。本報告では、がん遺伝子パネル検査を取り巻く状況が変化する中で、同検査に対する態度に変化があるかについて検討した結果を報告する。
特任研究員の船橋です。
このたび、「薬理と治療」に臨床試験法に関する以下の論文が掲載されました。
船橋亜希子、井上悠輔
臨床研究の「記録」に関する新しいルール ―臨床研究法をいかに理解し、いかに守るべきか?―
薬理と治療47巻Suppl 1, 37 - 41 (2019)
データ不正事案を背景に成立した臨床研究法は、データの「保存」義務に違反した場合に、50万円以下の罰則を設けています。
そこで、本稿においては、診療・研究に関する記録の保存に関する規制について整理・検討を行いました。
本稿に取り組む中で、改めて、臨床研究法の定義の問題、そもそもの理解の難しさ、それに伴う遵守の難しさを痛感し、そこから、副題をつけました。
倫理指針による規制から、臨床研究法という法律による規制に移行したことは、どのような波及効果を有するでしょうか。
今後の動きにも、引き続き注視する必要があると考えています。
講演会「医療・研究開発に意見を言える患者像を目指して ~欧州の取組みに学ぶ~」を開催します
【概要】
近年、諸外国では、医療・研究開発における患者・市民参画の推進が進められており、日本でも注目が高まっていますが、患者が学ぶ機会を確保することが課題となっています。欧州では、「欧州患者アカデミー」(European Patients' Academy on Therapeutic Innovation(EUPATI))という、医薬品の研究開発に関する患者の知識向上を目的とした教育資材が開発され、多くの卒業生を輩出しています。日本でも、患者が知識や役割を学び、多様な経験を生かしつつ、活動できる環境を整えることが必要です。そこで、欧州での取組みを学ぶため、「欧州患者アカデミー」から専門家をお招きして、講演会を開催することとなりました。ぜひふるってご参加ください。
日時: | 2019年9月7日(土) 14時~16時(開場13時30分) |
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場所: | 東京大学医科学研究所1号館講堂 (東京都港区白金台4-6-1) [医科研アクセスマップ] [医科研キャンパスマップ] |
プログラム: | 1)講演 講師:マシュー・メイさん 欧州患者フォーラム(European Patients' Forum) プログラム・コーディネーター |
2)質疑応答 | |
対象: | 関心のある患者さん、ご家族、一般の方々 |
参加方法: | 参加費無料。以下の「申込みをする」ボタンから事前の参加申込が必要 |
通訳: | 遂次通訳のご用意があります |
主催: | 東京大学医科学研究所公共政策研究分野(AMED「再生医療の実現化ハイウェイ再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究(課題D)」) |
共催: | 患者・市民参画コンソーシアム |
お問い合わせ: | 東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 E-mail: |
アリス・ウェクスラー氏(遺伝病財団理事)講演会を開催します
【概要】
アリス・ウェクスラーさんは、HD(ハンチントン病)の当事者家族として国際的に著名であり、歴史家としてHDやご自分のご家族に関する数々の著作を執筆されています。また、アリスさんのお父様が創設された、遺伝病財団(Hereditary Disease Foundation)は、1970年代から基礎研究者への投資を開始し、今日の米国の患者団体のモデルとなりました。このたび、アリスさんを日本にお招きすることになりました。難病の当事者が閉じこもらず、科学や社会と積極的に関わりながら生きること、歴史的にみたHDなどについて、お話をしていただきます。
※ HD(ハンチントン病)は、常染色体優性遺伝の神経変性疾患です。この疾患は、欧米の優生政策において重要な標的となった過去をもつ反面、ヒトゲノム解析研究が開始されたときにはHDの当事者が倫理的法的社会的課題を考えるグループのリーダーとなったり、幹細胞治療研究でもHDを対象とした取組みが早々に実施されるなど、難病の研究開発において様々な経験をしてきました。日本でも指定難病となっています。
日時: | 2019年9月29日(日) 14時~16時(開場13時30分) |
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場所: | 東京大学医科学研究所1号館講堂(東京都港区白金台4-6-1) [医科研アクセスマップ] [医科研キャンパスマップ] |
対象: | 関心のある患者さん、ご家族、一般の方々 |
参加方法: | 参加費無料。以下の「申込みをする」ボタンから事前の参加申込が必要 |
通訳: | 遂次通訳のご用意があります |
主催: | 東京大学医科学研究所公共政策研究分野(AMED「再生医療の実現化ハイウェイ再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究(課題D)」) |
共催: | 日本ハンチントン病ネットワーク |
お問い合わせ: | 東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 E-mail: |
本日、2019年度、第3回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:7月10日(水)13時半~15時頃
発表者: | 李怡然(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員) |
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タイトル: | 家族内における遺伝性がんの「リスク告知」に関する研究 |
要旨:
がんゲノム医療の推進に伴い、疾患の早期発見や予防、治療薬の選択のために、疾患の発病リスクを家族内で情報共有すること(「リスク告知」)が医療者から推奨されるようになっている。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)は、医学的にactionable(対処可能である)とされる代表的な遺伝性がんであり、診断を受けたもしくは疾患の疑いがある患者から血縁者に「リスク告知」を行うことがますます期待されると考えられる。では、患者はどの程度、家族と遺伝学的なリスクや遺伝学的検査に関する情報を共有しようとしているのか。また、伝えるかどうかの選択にはどのような背景や、課題があるのか。
本研究では、上記の問題意識を出発点に、HBOC患者と家族へのインタビュー調査を実施している。本報告では、現在取り組んでいる博士論文の全体の構想を示した上で、これまでに実施した調査の結果の中から、「リスク告知」に関する語りに着目して、報告を行う。
本日、2019年度、第2回目の公共政策セミナーが開かれました。
ゲストスピーカーの方にもお越しいただきました。
内容は以下の通りです。
◆日時:6月12日(水)13時半~16時頃
発表者1: | 船橋亜希子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員) |
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タイトル: | 最先端医療における刑事過失責任を考える |
要旨:
2017年度より「がんゲノム医療」という最先端の医療におけるELSI研究に携わったことを契機に、最先端医療と刑法の接点の模索と検討を繰り返してきた。当該活動における自身の一つの到達点が、伝統的な論点への回帰と再検討の必要性であった。そこで、当該課題に関するこれまでの取り組みと、現在行っている研究内容について、刑事医療過誤に関する研究内容も振り返りながら、報告する。
発表者2: | 中田はる佳(国立がん研究センター 社会と健康研究センター生命倫理・医事法研究部 研究員) |
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タイトル: | 未承認薬へのアクセス方法に関する日米比較 |
要旨:
保険診療によるがん遺伝子パネル検査の導入や、人工知能技術による治療法選択の拡大により、患者が未承認薬の利用を検討する機会が増加することが見込まれる。未承認薬の利用方法として、日本では2016年から拡大治験と患者申出療養制度が導入されている。一方、米国では、従来からあったFDAのExpanded access programに加えて、いわゆるRight-to-try法が導入され、2018年5月末には連邦法が成立している。本報告では、日米の未承認薬利用制度を概観した上で、患者団体のウェブサイト調査の結果を紹介し、未承認薬利用に関する情報の普及について検討する。
厚生労働省より、「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」について、各都道府県の関係主管部局宛に通知が発出されました(社援発0603第1号、社援保発0603第2号、障障発0603第1号、老振発0603第1号)。これは武藤が分担研究者として参加した、平成30年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業) 「医療現場における成年後見制度への理解及び病院が身元保証人に求める役割等の実態把握に関する研究」班(研究代表者 山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座 山縣 然太朗教授)の研究班の成果の一部です。
様々な方々の調査協力を得て、成年後見人できること、身元保証人(ビジネス)に頼らなくてもできることを整理し、成年後見人制度をはじめとする諸制度との調整も経てまとめられたものです。このガイドラインのご紹介ご批判もかねた事例検討会など、ぜひ多職種での対話の機会を増やしてくださいませ! ぜひご覧下さい。
4月20日に平成最後の「第19回東京大学 生命科学シンポジウム」に参加し、ポスター発表の機会をいただきました。
武藤研からは、大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士後期課程1年の高嶋佳代さんが「幹細胞治療研究に関する報道とソーシャルメディアの影響に関する一考察」について発表されました。また、同じく同課程の楠瀬まゆみが「研究領域における情報銀行(情報利用信用銀行)システムの影響と便益・利益の検討」について発表しました。文系のポスターは、武藤研の2名だけだったようでアウェイ感もありましたが、休日にもかかわらず武藤研から北林さんが応援に来てくださり、大変心強かったです。
異なる領域の方々が多かったですが、足を止めてポスターを見てくださり、質問やコメントを沢山いただきました。今後の研究につながるような示唆もいただき、大変貴重な機会となりました!
(D1-楠瀬まゆみ)
公共政策研究分野では、以下の2つの大学院における修士(博士前期)・博士のそれぞれについて入学・進学を受け入れています。
出願にご関心のある方は、事前にご連絡をお願いしております。研究計画書(書式自由)とともに 宛てにお送り下さい。
なお、出願にあたっては、大学院主催の説明会にもご参加下さい。
1.新領域創成科学研究科
メディカル情報生命専攻 医療イノベーションコース
担当教員:武藤、井上
https://www.cbms.k.u-tokyo.ac.jp/lab/muto.html(ラボ情報)
https://www.cbms.k.u-tokyo.ac.jp/admission/schedule.html(入試)
2019年6月1日(土)入試説明会(ラボ紹介 10:25-12:40 Meet the Professor 12:40-13:00)には、井上が参加します。オープンラボは開催しません。
2.情報学環・学際情報学府
文化・人間情報学コース
担当教員:武藤
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/faculty/muto_kaori(ラボ情報)
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/admissions(入試)
2019年6月8日(土)10:00-12:00 文化人間情報学コース入試説明会には、武藤が参加予定です。
2019年6月8日(土)13:30-16:30 2020年度東京大学大学院学際情報学府入試説明会でのブース展示は行いません。
名古屋国際会議場で開催された第92回日本産業衛生学会に参加してきました。
この学会は主に産業医で構成されるものであり、私は主に労働者の両立支援(労働者が病気にかかっても継続して働くことを支援すること)をトピックとした口演、シンポジウム等を聴講しました。労働者からの視点では労働者の生き方の尊重及び収入の確保、事業者の視点では労働者の高齢化対応及び労働力の確保の点から両立支援の取組みは重要だと考えられています。特に65歳までにがんにかかる労働者は男女とも15%であり、そのうち30%が退職している実態の改善が求められています。厚労省が推進している対策としては、がん検診の啓発、会社全体が正しく知る、がんになっても働き続ける環境をつくる、というものです。産業医は労働者の相談の窓口として役割が期待されていますが、メンタル不調に関する窓口として産業医は認知されているものの、両立支援としての認知はまだ低いことが実態のようです。また、産業医は主治医の意見を参考に両立支援を講じますが、主治医は就業よりも治療優先で、産業医の存在を知らず、双方向のコミュニケーションがまだ構築されていないことが実態のようです。その他、子育支援の出来ている企業は両立支援も進んでいるといったような発表や不妊治療と就業の両立の困難さに関する発表などもありました。当学会に参加したことで、両立支援の実態とその中での産業医の役割とその課題の概要を把握することができたと思います。
私としては産業医が参照する健康情報にゲノム情報が加わった場合に、労働者のプライバシーを保護して、産業医がゲノム情報をもとにどのように発症前の労働者に寄り添い、発症後の両立支援を準備するのか、発症後にどのように両立支援をするのかに関心があります。引き続き、当学会の情報を含めて研究を進めていきたいと考えています。
学会に参加させていただきありがとうございました。
(D1 飯田寛)
本日、2019年度第1回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2019年5月8日(水)13時30分~16時00分
発表者1: | 木矢 幸孝(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野特任研究員) |
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タイトル: | 身体変化への抵抗の意味 |
要約:
神経疾患の多くは難治性で、いまだ治療法の確立には至っていない。本報告が取り上げる球脊髄性筋萎縮症(以下、SBMA)も、そのような疾患の一つである。SBMAとは筋力低下や筋萎縮を主症状とする疾患である。ただ、近年の研究成果によって、SBMAに関する疾患修飾療法が世界に先駆けて薬事承認され、ロボットスーツHALは医療機器として承認され普及されつつある。確かにこれらは根治治療ではないが、SBMA患者の多くはそれらを利用している。しかし、上記以外の薬を服用する患者や運動療法として推奨されていない「筋トレ」をする患者も存在する。なぜ彼らはそのような行為をするのか。このような背景・問題意識のもと、本報告はSBMA患者の語りを通して、身体変化への抵抗の意味を考察する。その結果、彼らの行為は決して非合理的なことではなく、むしろSBMA患者全体に通底する問題から引き起こされた行為であることを示す。
発表者2: | 武藤 香織(東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授) |
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タイトル: | 「身元保証」がない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン(案)について |
概要:
近年、身寄りがなく、意思決定が困難な状態にある人の入転院や医療に関して、医療機関が各自の方法で身元保証を求める動きがある。このことは医師の応召義務違反への懸念、成年後見制度の濫用、家族機能の代行として身元保証を業とする団体の登場と規制の要否などの議論につながっている。2017~18年度にかけて、厚生労働省の研究班に参加し、医療機関への質問紙調査及びヒアリングを行った。その結果をもとに、今般、「身元保証」がない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン(案)が策定された。本報告では研究班の活動内容とガイドライン概要を報告する。
※5月13日更新
入試の説明会のシーズンが近づいてまいりました。恒例の公共政策研究分野主催の説明会を今年も実施します。
★大学院につきまして
この公共政策研究分野は、以下の2つの大学院における修士(博士前期)・博士のそれぞれについて入学・進学を受け入れています。これらの大学院全体の説明会も参考いただいたうえで、この「研究室説明会」では、特にこの分野にご関心がある方を対象として、入試や進学後の日々について情報提供させていただきます。進学をご検討の方には、ぜひ足を運んでいただき、進路決定の参考にしてください。
1.新領域創成科学研究科
メディカル情報生命専攻 医療イノベーションコース
担当教員:武藤、井上
https://www.cbms.k.u-tokyo.ac.jp/lab/muto.html(ラボ情報)
https://www.cbms.k.u-tokyo.ac.jp/admission/schedule.html(入試)
2.情報学環・学際情報学府
文化・人間情報学コース
担当教員:武藤
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/faculty/muto_kaori(ラボ情報)
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/admissions(入試)
★研究室説明会の日時・場所は以下のとおりです。
日時: | 2019年5月25日(土)11時開始(14時ごろ終了予定) |
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場所: | 公共政策研究分野研究室(白金台キャンパス) 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター・3階 |
参加をご希望の方には事前登録をお願いしています。参加をご希望・予定の方はお名前とご所属、当日の緊急連絡先について下記までご連絡ください。
(事前登録)
★当日の内容は以下のとおりです。
- 研究室の紹介
- 学生生活/研究関心の紹介
① ゲノム編集はどこまで認められるのか:一般市民の意識調査(仮)
② 家族内における遺伝性疾患の「リスク告知」の調査について(仮) - 入試制度の解説、各研究科の入試経験談の紹介
- 質疑、進路相談
★教員との個別の面談を希望される方
当日に面談を希望する方は事前にお知らせください。後日改めての面談も受け付けています。
先日、表参道の隠れ房というお店にて武藤研の2018年度の送別会が行われました。送別される方は高嶋佳代さん、内山さん、李さん、飯田の四名。しかし、高嶋さんはご栄転が決まっているも同時に新領域創成科学研究科の博士課程入学ということで武藤研にも残り、内山さん、李さんは博士課程単位取得満期退学するも内山さんは客員研究員、李さんは特任研究員として武藤研に引き続き残り、飯田は修士号取得するも新領域創成科学研究科の博士課程進学し武藤研に残るということで、特に送別というわけではなく、どちらかというと壮行する会となったんだと思います(従ってお別れの涙も無しです)。
高嶋さんには皆から置時計と武藤先生からニコライバーグマンのフラワーボックスが授与されました。私、飯田も皆さんよりオーディオテクニカのイヤホンを頂きました(イヤ、ホンとうにありがとうございます)。また、内山さん、李さん、飯田から研究室にIMSUTマーク入りの掛け時計を進呈させていただきました。また、高嶋さんより市田商店の「京の天然ばすそると」を参加者は頂きました。
OGの皆さんも参加され、美味しい食事に飲み放題のアルコール類もあり、盛況な会となりました。ただ、席の移動が難しく、全員とはお話しできなかったのは残念です・・・。
こんな素敵な会を設定していただいた、幹事の永井さん、李さん(送別される側なのに・・・?)、本当にありがとうございました。新年度も皆さん、宜しくお願いいたします。
(M2 飯田寛)
こんにちは。早くも年度末を迎えました。
3月27日(水)に、三重県立四日市高等学校の学生のみなさんが、研究室見学にいらしてくださいました。今回は、理化学研究所所属で、当研究室の客員研究員である楠瀬まゆみさんから、再生医療研究とその倫理的課題についてトークをしていただき、iPS細胞(人工多能性幹細胞)のもつ利点、課題点について紹介しました。続いて、「患者さんのヒトiPS細胞を使って、動物の体内で移植用臓器をつくる研究を進めてもよいかどうか?」という模擬事例のテーマで、皆さんにグループ・ディスカッションを体験してもらいました。
なかなか難しいテーマだったかと思いますが、各グループとも、一人ひとりがしっかりと賛成・反対の意見とその理由を述べられ、上手にディスカッションを進行してまとめていました。スタッフもファシリーテーターとしてグループの輪に入ったのですが、意見を促す必要がないぐらい、スムーズに議論が進んだため、レベルの高さに一同感動しきりでした…!
がんや病気の治療、医学研究に興味がある学生さんが多かったと思いますので、私たちの研究室のように、倫理的課題、政策やガバナンスに取り組む分野はなじみが薄かっただろうと思います。それでも、ディスカッションが楽しかった、という感想をいただけて、私たちもとても嬉しく思いました。
明るく元気な高校生のみなさんとお話ができて、フレッシュな気持ちになれた気がします!これからの高校生活と、今後どのような進路に進むか、楽しみにしています。
短い時間でしたが、足を運んでいただき、本当にありがとうございました!
(D3・李怡然)
本日、2018年度、第9回目の公共政策セミナーが開かれました。
ゲストスピーカーの方にもお越しいただきました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2019年3月13日(水)13時30分~16時00分
発表者1: | 高島響子(国立国際医療研究センター メディカルゲノムセンター 上級研究員) |
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タイトル: | 患者遺伝情報の家族への共有に関する医師の義務 |
要約:
患者は、自らの遺伝情報について知る権利・知らないでいる権利を有しており、医師は、患者の意思の尊重、並びに、守秘義務およびプライバシー保護の責務を負う。他方、患者の遺伝情報はその血縁者と一部共有されるため、患者家族の知りたい/知りたくないという希望と、患者の希望(あるいは患者の希望が不明である状況)との間に不一致が生じる場合がある。医師は、患者家族に患者の遺伝情報を伝える義務を負うか?患者への義務と家族の希望との間にジレンマが生じた場合にどうすればよいのか?本発表では、イギリスとドイツの2つの判例をもとにこれらの課題について検討する。
発表者2: | 武藤香織(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授) |
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タイトル: | 倫理審査委員会の一般の立場の委員をめぐる検討~患者・市民参画論の体系化を目指して |
要約:
倫理審査委員会に非専門家の立場の委員を置くというルールは、米国のIRBの歴史において構築され、広義での研究への患者・市民参画に含まれる。だが、非専門家委員への役割期待は、その歴史のなかで揺らぎ続けてきた。「人を対象とする医学系研究に関する研究倫理指針」では、「一般の立場の委員」の出席は倫理審査委員会の開催要件とされているが、その役割はガイダンスに少し触れられているだけで、実際にどのような役割を果たしているのか不明である。そこで、2018年10月、AMED「研究倫理審査委員会報告システム」に登録されている倫理審査委員会1,408件に調査票を送付し、最も経験年数の長い「一般の立場の委員」1名に調査票を配布する調査を実施した。
本報告では、この調査結果のうち、「一般の立場の委員」の動機や役割認識などを中心に報告するとともに、研究への患者・市民参画をめぐる断片的な議論の体系化に向けた構想も述べたい。本調査は、AMED研究公正高度化モデル開発支援事業「倫理審査の質向上を目的とした倫理審査委員向け教材の開発」(代表:神里彩子)の一環として実施された。
本日、2018年度、第8回目の公共政策セミナーが開かれました。
ゲストスピーカーの方にもお越しいただきました。
内容は以下の通りです。
◆日時:2019年2月13日(水)13時30分~16時00分
発表者1: | 神原容子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 学術支援専門職員) |
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タイトル: | 遺伝カウンセリングについて |
要約:
遺伝カウンセリングの概略と私が行っている遺伝カウンセラーの仕事についてご報告させていただきます。
発表者2: | 渡部沙織(東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 日本学術振興会特別研究員PD) |
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タイトル: | ジェネティック・シティズンシップ(遺伝学的市民権)に基づく難病患者研究参画の基盤整備に関する研究 |
要約:
本研究は、先進諸国で展開してきたジェネティック・シティズンシップ研究のパースペクティブを踏まえ、日本における患者を中心とする研究参画の実相と課題について医療社会学の手法を用いて調査分析する。シティズンシップ・モデルに基づく患者の主体的な研究参画を実現する制度的基盤、政策的含意について、明らかにする事が本研究の総合的な目標である。そのために本研究では、
(1)日本における患者の研究参画の実相に関する聴き取り調査、
(2)患者の研究参画の障壁に関するウェブ・郵送アンケート調査、
(3)アメリカ、欧州の患者レジストリに関する調査、
(4)日本の患者登録・レジストリに関する調査、
これら4つのフェーズの調査を実施する。本日はフェーズ2で実施した患者の研究参画の現状と課題に関するアンケート調査の概況と結果について、分析の経過を報告する。
『医学研究・臨床試験の倫理 わが国の事例に学ぶ』が日本評論社より刊行されました。編者を井上が担当したほか(国立がん研究センターの一家綱邦さんとの共編)、執筆にも船橋他の研究室関係者、そして月例で開かれている研究倫理研究会のメンバーが多く参加しています。企画から刊行まで3年がけの作業でしたが、奇しくも臨床研究法の施行の年に刊行されることになりました。
この本では、わが国で、医学研究での「被験者保護」「研究倫理」が争点となった、15の出来事を検討しています。海外の出来事や事例が紹介される機会は多いのですが、この日本でこれまでどのような出来事が議論されてきたのか、また単にその事案の問題としてではなく、そこから今日の我々が学ぶべき課題は何か、このような視点からアプローチした類書はありませんでした。
患者を対象とする研究のほか、軍による研究、刑務所や乳児院での研究、最近のものでは産学連携をめぐる事案、研究論文の不正などが登場します。巻末には海外の議論と比較できるよう、整理した年表も付しました。改めて俯瞰すると、「問題」が認識される時代背景にも一定の潮流があり、「人を対象とする研究」を今後どのように検討していくべきか、新たな議論の地平も見えてきました。1月には本書の書評会があり、香川知晶さん(山梨大学)、松原洋子さん(立命館大学)、坂井めぐみさん(同)より貴重なコメントをいただき、議論することができました。刊行に至るまで多くの方々からいただいた助言、激励に感謝申し上げます。読売新聞ヨミドクター、日本臓器保存生物医学会の刊行誌(Organ Biology vol.26 No.1)などに書評が掲載されています。
治験に参加した経験がある患者2,045名を対象とした質問紙調査(株式会社インテージのパネルを利用)と、認定NPO法人ディペックス・ジャパン※1が管理する「臨床試験・治験参加者の語りデータベース」※2に収載されている語りのデータも併用して分析し、患者が臨床試験・治験※3に参加するまでの意思決定の過程を分析した結果が東部標準時2019年1月29日午後2時にPLOS Groupの科学誌PLOS ONEの電子版に掲載されました。
質問紙調査の結果から、多くの患者は、医療者から臨床試験・治験に関する詳細な情報を受け取る前に、すでに「インフォーマルな意思決定」をしており、短期間のうちに(概ね2~3日間)、誰にも相談せずに参加の決断をしている傾向が明らかになりました。また、語りのデータの分析から、患者の臨床試験への参加にあたっての態度は、①能動的参加(医療者の考えを引き出し、積極的に同調する)、②受動的参加(医療者の提案をそのまま受け入れる)といったタイプに分類され、熟慮のうえで意思決定をしている状況とは言いがたいものでした。また、著者らは、患者が臨床試験・治験への参加判断をするまでに4つの段階を経るのではないかと考えました(臨床試験・治験に関する最初の情報に接する段階、「インフォーマルな意思決定」をする段階、臨床試験・治験に詳しい医療者からの詳細な説明に接する段階、「フォーマルな意思決定」をする段階)。そこで、著者らとしては、臨床試験・治験のインフォームド・コンセント※4を担当する医療者は、熟慮するきっかけを促すためのリストの作成、4日以上の熟慮期間の確保に留意すべきではないかと結論づけています。
本研究成果は、国立がん研究センター生命倫理・医事法研究部の中田 はる佳(なかだ はるか)研究員、群馬パース大学保健科学部の吉田 幸恵(よしだ さちえ)講師、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの武藤 香織(むとう かおり)による共著論文です。
※1 認定NPO法人ディペックス・ジャパン
オックスフォード大学で作られているDIPEx(Database of Individual Patient Experiences)をモデルに、日本版の「健康と病いの語り データベース」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。
※2 臨床試験・治験参加者の語りデータベース
認定NPO法人ディペックス・ジャパンの「健康と病いの語りデータベース」内にある、臨床試験・治験に参加した人、参加できなかった人、参加を断った人など、なんらかの形で臨床試験・治験に関与したことがある40名の語りが収録されたデータベース。その語りの一部はウェブ上で公開されている。
※3 臨床試験・治験
新規の医薬品・医療機器開発や、手術方法等の安全性や有効性を確認するために実施される、健康な人や患者を対象とした臨床研究を臨床試験と呼ぶ。このうち、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づき、医薬品・医療機器等の製造販売承認を得るために実施される臨床試験を治験と呼ぶ。
※4 インフォームド・コンセント
臨床試験・治験において、研究対象者が研究内容について十分な説明を受け理解したうえで、その研究参加に関して意思決定する過程のこと。