【院生室より】高校生の皆さんが、研究室見学に来てくださいました

2019/03/27

こんにちは。早くも年度末を迎えました。

3月27日(水)に、三重県立四日市高等学校の学生のみなさんが、研究室見学にいらしてくださいました。今回は、理化学研究所所属で、当研究室の客員研究員である楠瀬まゆみさんから、再生医療研究とその倫理的課題についてトークをしていただき、iPS細胞(人工多能性幹細胞)のもつ利点、課題点について紹介しました。続いて、「患者さんのヒトiPS細胞を使って、動物の体内で移植用臓器をつくる研究を進めてもよいかどうか?」という模擬事例のテーマで、皆さんにグループ・ディスカッションを体験してもらいました。

なかなか難しいテーマだったかと思いますが、各グループとも、一人ひとりがしっかりと賛成・反対の意見とその理由を述べられ、上手にディスカッションを進行してまとめていました。スタッフもファシリーテーターとしてグループの輪に入ったのですが、意見を促す必要がないぐらい、スムーズに議論が進んだため、レベルの高さに一同感動しきりでした…!

がんや病気の治療、医学研究に興味がある学生さんが多かったと思いますので、私たちの研究室のように、倫理的課題、政策やガバナンスに取り組む分野はなじみが薄かっただろうと思います。それでも、ディスカッションが楽しかった、という感想をいただけて、私たちもとても嬉しく思いました。

明るく元気な高校生のみなさんとお話ができて、フレッシュな気持ちになれた気がします!これからの高校生活と、今後どのような進路に進むか、楽しみにしています。

短い時間でしたが、足を運んでいただき、本当にありがとうございました!

(D3・李怡然)

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2018年度第9回公共政策セミナー

2019/03/13

本日、2018年度、第9回目の公共政策セミナーが開かれました。
ゲストスピーカーの方にもお越しいただきました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2019年3月13日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 高島響子(国立国際医療研究センター メディカルゲノムセンター 上級研究員)
タイトル: 患者遺伝情報の家族への共有に関する医師の義務

要約:

患者は、自らの遺伝情報について知る権利・知らないでいる権利を有しており、医師は、患者の意思の尊重、並びに、守秘義務およびプライバシー保護の責務を負う。他方、患者の遺伝情報はその血縁者と一部共有されるため、患者家族の知りたい/知りたくないという希望と、患者の希望(あるいは患者の希望が不明である状況)との間に不一致が生じる場合がある。医師は、患者家族に患者の遺伝情報を伝える義務を負うか?患者への義務と家族の希望との間にジレンマが生じた場合にどうすればよいのか?本発表では、イギリスとドイツの2つの判例をもとにこれらの課題について検討する。

発表者2: 武藤香織(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 教授)
タイトル: 倫理審査委員会の一般の立場の委員をめぐる検討~患者・市民参画論の体系化を目指して

要約:

倫理審査委員会に非専門家の立場の委員を置くというルールは、米国のIRBの歴史において構築され、広義での研究への患者・市民参画に含まれる。だが、非専門家委員への役割期待は、その歴史のなかで揺らぎ続けてきた。「人を対象とする医学系研究に関する研究倫理指針」では、「一般の立場の委員」の出席は倫理審査委員会の開催要件とされているが、その役割はガイダンスに少し触れられているだけで、実際にどのような役割を果たしているのか不明である。そこで、2018年10月、AMED「研究倫理審査委員会報告システム」に登録されている倫理審査委員会1,408件に調査票を送付し、最も経験年数の長い「一般の立場の委員」1名に調査票を配布する調査を実施した。

本報告では、この調査結果のうち、「一般の立場の委員」の動機や役割認識などを中心に報告するとともに、研究への患者・市民参画をめぐる断片的な議論の体系化に向けた構想も述べたい。本調査は、AMED研究公正高度化モデル開発支援事業「倫理審査の質向上を目的とした倫理審査委員向け教材の開発」(代表:神里彩子)の一環として実施された。

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2018年度第8回公共政策セミナー

2019/02/13

本日、2018年度、第8回目の公共政策セミナーが開かれました。
ゲストスピーカーの方にもお越しいただきました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2019年2月13日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 神原容子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 学術支援専門職員)
タイトル: 遺伝カウンセリングについて

要約:

遺伝カウンセリングの概略と私が行っている遺伝カウンセラーの仕事についてご報告させていただきます。

発表者2: 渡部沙織(東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 日本学術振興会特別研究員PD)
タイトル: ジェネティック・シティズンシップ(遺伝学的市民権)に基づく難病患者研究参画の基盤整備に関する研究

要約:

本研究は、先進諸国で展開してきたジェネティック・シティズンシップ研究のパースペクティブを踏まえ、日本における患者を中心とする研究参画の実相と課題について医療社会学の手法を用いて調査分析する。シティズンシップ・モデルに基づく患者の主体的な研究参画を実現する制度的基盤、政策的含意について、明らかにする事が本研究の総合的な目標である。そのために本研究では、
(1)日本における患者の研究参画の実相に関する聴き取り調査、
(2)患者の研究参画の障壁に関するウェブ・郵送アンケート調査、
(3)アメリカ、欧州の患者レジストリに関する調査、
(4)日本の患者登録・レジストリに関する調査、
これら4つのフェーズの調査を実施する。本日はフェーズ2で実施した患者の研究参画の現状と課題に関するアンケート調査の概況と結果について、分析の経過を報告する。

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医学研究の倫理をテーマにした単行本が刊行されました(『医学研究・臨床試験の倫理 わが国の事例に学ぶ』)

2019/02/10

医学研究・臨床試験の倫理 わが国の事例に学ぶ』が日本評論社より刊行されました。編者を井上が担当したほか(国立がん研究センターの一家綱邦さんとの共編)、執筆にも船橋他の研究室関係者、そして月例で開かれている研究倫理研究会のメンバーが多く参加しています。企画から刊行まで3年がけの作業でしたが、奇しくも臨床研究法の施行の年に刊行されることになりました。

この本では、わが国で、医学研究での「被験者保護」「研究倫理」が争点となった、15の出来事を検討しています。海外の出来事や事例が紹介される機会は多いのですが、この日本でこれまでどのような出来事が議論されてきたのか、また単にその事案の問題としてではなく、そこから今日の我々が学ぶべき課題は何か、このような視点からアプローチした類書はありませんでした。

患者を対象とする研究のほか、軍による研究、刑務所や乳児院での研究、最近のものでは産学連携をめぐる事案、研究論文の不正などが登場します。巻末には海外の議論と比較できるよう、整理した年表も付しました。改めて俯瞰すると、「問題」が認識される時代背景にも一定の潮流があり、「人を対象とする研究」を今後どのように検討していくべきか、新たな議論の地平も見えてきました。1月には本書の書評会があり、香川知晶さん(山梨大学)、松原洋子さん(立命館大学)、坂井めぐみさん(同)より貴重なコメントをいただき、議論することができました。刊行に至るまで多くの方々からいただいた助言、激励に感謝申し上げます。読売新聞ヨミドクター、日本臓器保存生物医学会の刊行誌(Organ Biology vol.26 No.1)などに書評が掲載されています。

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PLOS ONE誌に臨床試験・治験参加経験のある患者の意思決定の背景に迫る論文が掲載されました(武藤)

2019/01/31

治験に参加した経験がある患者2,045名を対象とした質問紙調査(株式会社インテージのパネルを利用)と、認定NPO法人ディペックス・ジャパン※1が管理する「臨床試験・治験参加者の語りデータベース」※2に収載されている語りのデータも併用して分析し、患者が臨床試験・治験※3に参加するまでの意思決定の過程を分析した結果が東部標準時2019年1月29日午後2時にPLOS Groupの科学誌PLOS ONEの電子版に掲載されました。

質問紙調査の結果から、多くの患者は、医療者から臨床試験・治験に関する詳細な情報を受け取る前に、すでに「インフォーマルな意思決定」をしており、短期間のうちに(概ね2~3日間)、誰にも相談せずに参加の決断をしている傾向が明らかになりました。また、語りのデータの分析から、患者の臨床試験への参加にあたっての態度は、①能動的参加(医療者の考えを引き出し、積極的に同調する)、②受動的参加(医療者の提案をそのまま受け入れる)といったタイプに分類され、熟慮のうえで意思決定をしている状況とは言いがたいものでした。また、著者らは、患者が臨床試験・治験への参加判断をするまでに4つの段階を経るのではないかと考えました(臨床試験・治験に関する最初の情報に接する段階、「インフォーマルな意思決定」をする段階、臨床試験・治験に詳しい医療者からの詳細な説明に接する段階、「フォーマルな意思決定」をする段階)。そこで、著者らとしては、臨床試験・治験のインフォームド・コンセント※4を担当する医療者は、熟慮するきっかけを促すためのリストの作成、4日以上の熟慮期間の確保に留意すべきではないかと結論づけています。

本研究成果は、国立がん研究センター生命倫理・医事法研究部の中田 はる佳(なかだ はるか)研究員、群馬パース大学保健科学部の吉田 幸恵(よしだ さちえ)講師、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの武藤 香織(むとう かおり)による共著論文です。


※1 認定NPO法人ディペックス・ジャパン
オックスフォード大学で作られているDIPEx(Database of Individual Patient Experiences)をモデルに、日本版の「健康と病いの語り データベース」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。

※2 臨床試験・治験参加者の語りデータベース
認定NPO法人ディペックス・ジャパンの「健康と病いの語りデータベース」内にある、臨床試験・治験に参加した人、参加できなかった人、参加を断った人など、なんらかの形で臨床試験・治験に関与したことがある40名の語りが収録されたデータベース。その語りの一部はウェブ上で公開されている。

※3 臨床試験・治験
新規の医薬品・医療機器開発や、手術方法等の安全性や有効性を確認するために実施される、健康な人や患者を対象とした臨床研究を臨床試験と呼ぶ。このうち、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づき、医薬品・医療機器等の製造販売承認を得るために実施される臨床試験を治験と呼ぶ。

※4 インフォームド・コンセント
臨床試験・治験において、研究対象者が研究内容について十分な説明を受け理解したうえで、その研究参加に関して意思決定する過程のこと。

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Journal of Human Genetics誌にがん遺伝子パネル検査に対する態度に関する論文が掲載されました(永井・李・武藤)

2019/01/11

永井です。Journal of Human Genetics誌にがん遺伝子パネル検査に対する態度に関する論文が掲載されました。

Akiko Nagai, Izen Ri & Kaori Muto
Attitudes toward genomic tumor profiling tests in Japan: patients, family members, and the public
Journal of Human Genetics (2019)
https://www.nature.com/articles/s10038-018-0555-3

がんに関連する遺伝子を網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査は、医療への応用が急速に進んでいます。日本では、2018年にがんゲノム医療の中核を担うがんゲノム医療中核拠点病院が指定されるなど、がんゲノム医療の推進に向けた体制整備が進められています。海外におけるがん患者を対象とした研究では、がん細胞のプロファイリングへの関心が高く、二次的所見の開示を希望する人が多いけれども、心理的負担や健康保険への影響などの懸念も示されたと報告されています。しかし、日本では、がん遺伝子パネル検査の認知度や同検査に対する態度に関する調査はほとんど行われておらず、がん患者やがん患者の家族が、がん遺伝子パネル検査に対してどのような期待や懸念を持っているかは明らかではありませんでした。そこで、がん患者やがん患者の家族、一般市民を対象として、2018年3月と5~6月にがん遺伝子パネル検査の認知度および同検査に対する態度について調査を行いました。

調査の結果から、がん遺伝子パネル検査の認知度は、がん患者・がん患者の家族・一般市民のいずれのグループでも低いけれども、がん患者とがん患者の家族は一般市民よりも同検査のベネフィットを高く認識していることが明らかになりました。がん患者の家族は、がん患者よりもがん遺伝子パネル検査の生殖細胞系列の結果を共有したいと考えている人が多いことがわかりました。がん遺伝子パネル検査の主な検査対象となる進行がんの患者は、心理的な負担から治療選択や生殖細胞系列の結果の共有について意見を述べることが難しい可能性があることから、がん遺伝子パネル検査はアドバンスド・ケア・プランニングと一緒に提示されるべきと考えます。

2019年度よりがん遺伝子パネル検査は保険適用されることとなり、同検査への関心や態度に影響を与える可能性があります。今後もがん遺伝子パネル検査に対する態度について調査を行い、がんゲノム医療の普及に向けた課題について検討していく必要があると考えています。


■プレスリリース文は下記をご覧ください■
がん遺伝子パネル検査に寄せる期待と懸念とは?
-がん患者・一般市民を対象としたインターネット調査の結果より-
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/files/190212jhg.pdf

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2018年度第7回公共政策セミナー

2019/01/09

本日、2018年度、第7回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2019年1月9日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 内山正登(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: ヒト生殖細胞系列へのゲノム編集に関する啓発プログラムの開発に関する研究 -これまでの研究のまとめと今後の課題-

要約:

博士課程の3年間、受精卵を中心としたヒト生殖細胞系列へのゲノム編集に関する啓発プログラムの開発に向けて取り組んできた。本研究では、一般市民を対象とした意識調査、フォーカス・グループ・インタビュー、日本科学未来館との啓発プログラムの試行版の作成などを取り組みを行った。

今回は3年間の研究活動の総括として、これまでの一連の研究内容を整理するとともに、現在取り組んでいる2018年に実施した意識調査に関する論文の進捗状況について報告する。また、博士課程予備審査会で今後の課題として指摘された”ヒト受精胚”の取扱に関する議論の整理に関する進捗状況を報告する。

また、今後ヒト受精胚への一般市民の認識を明らかにするため、フォーカス・グループ・インタビューを再び実施する予定である。このフォーカス・グループ・インタビューの計画について紹介するとともに、今後の研究の進め方について報告する。

発表者2: 李怡然(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士後期課程)
タイトル: 遺伝性疾患の患者の「リスクの医学」をめぐる経験と認識

要約:

網羅的なゲノム解析技術を利用したゲノム学が発展し、ゲノム情報をもとに診断や治療選択を目指すゲノム医療が国際的に推進されている。ゲノム医学/医療は、リスクの管理と疾病予防を重視する「リスクの医学」の一形態と考えられる。特に有効な治療・予防法の存在する(「対処可能な」)遺伝性疾患のリスクを、患者・家族が早期に知ることを推奨する動きが強まっている。このような背景の中で、国内の遺伝性疾患の患者は、どのような経緯で遺伝学的検査を受検し、発病リスクに向き合うかについては、十分明らかにされていない。そこで、本研究では、対処可能な遺伝性疾患の代表例とされる遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の患者へインタビュー調査を実施した。本報告では、患者の受診経験や、遺伝学的検査を受検する過程に焦点を当てて、報告を行う。

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第5回「ヒトゲノム研究倫理を考える会」 – 新しいゲノム医療の中で何が必要か –(1/16)

2018/12/19

2018年度第5回「ヒトゲノム研究倫理を考える会」
– 新しいゲノム医療の中で何が必要か –

日時: 2019年1月16日(水)14:00-17:00 (開場13:30)
会場: 東京大学医学研究所1号館講堂(東京都港区白金台4-6-1)
対象: 大学・研究機関の倫理審査関係者、研究者など
定員: 100名
参加費: 無料
主催: 文部科学省科学研究費新学術領域「先進ゲノム支援」ゲノム科学と社会ユニット(GSユニット)
協力: 東京大学ゲノム医科学研究機構

◆事前申し込みが必要です
https://www.genomics-society.jp/news/event/post-20190116.php/

プログラム

14:00-14:10 「開会の挨拶」
東京大学医科学研究所 武藤 香織
14:10-14:30 「保険診療として行われるがん遺伝子パネル検査」
国立がん研究センター 河野 隆志
14:30-14:50 「がん遺伝子パネル検査:研究から診療への移行・混在に伴う倫理的課題」
東京大学医科学研究所 武藤 香織
14:50-15:10 「患者からみる今後の課題と対策」
(一社)ゲノム医療当事者団体連合会 太宰 牧子
15:10-15:30 「生命保険とゲノム医療」
(一社)生命保険協会 契約サービス委員会 浦中 麻由良
15:30-15:50 「総合的な政策のあり方」
参議院議員 薬師寺 みちよ
(休憩 10分)
16:00-16:10 指定発言
大阪大学大学院医学系研究科 加藤 和人
質疑・総合討論

◆問合せ:

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2018年度第6回公共政策セミナー

2018/11/21

本日、2018年度、第6回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2018年11月21日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 飯田 寛(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程)
タイトル: 発症前検査の影響―生命保険

要約:

修士論文で取り組んでいる研究(発症前検査の影響‐生命保険)の背景・目的・方法・調査内容・中間報告について発表する。発症前検査の進展・普及が生命保険に影響することとしてアットリスクの状態の方及び血縁者が保険に入れないという遺伝差別の問題、アットリスクの加入者が将来のリスクを告知しないで加入する逆選択の問題が挙げられる。各国が発症前検査の生命保険の利用について規制をつくっているが、日本では規制が存在せず、保険業界の議論も進んでいない。そこで、遅れてしまった日本で議論を進めるためには、海外の参考になる事例を明らかにすることとステークホルダーたる日本の生命保険業界・会社員の発症前検査に関する知識・考えなどの現状を明らかにするこが必要と考える。このことを研究の目的とする。海外の事例として英国のモラトリアム協定制定までの経緯について文献調査を実施、日本の現状把握については生保研修会参加者に対する事前アンケート調査を実施した。前回の公共政策セミナーの発表後に英国保険協会のヒアリングと日本の生命保険社員へのヒアリングを実施したので、その結果も加えて報告する。

発表者2: 永井 亜貴子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任助教)
タイトル: がん遺伝子パネル検査に対する患者・市民の態度

要約:

がん組織の遺伝子を一括して網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査は、がんの治療方針の決定において有用とされ、医療への応用が急速に進んでいる。日本では、2018年2月に「がんゲノム医療中核拠点病院」が指定され、4月にがん遺伝子パネル検査が先進医療として承認されるなど、がんゲノム医療の推進に向けた体制整備が進められている。海外では、がん患者を対象とした調査がいくつか報告されているが、日本のがん患者や市民のがん遺伝子パネル検査に対する態度は明らかではない。
こうした背景の下、がん患者およびがん患者の家族と市民を対象として、がん遺伝子パネル検査に関するインターネット調査を実施した。本報告では、特に、がん遺伝子パネル検査の認知度や同検査に関する期待や懸念などに関する結果について紹介します。

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第4回研究倫理を語る会(2/10)in 名古屋!

2018/11/10

第4回研究倫理を語る会のサイトがオープンしました。
次回は名古屋です。お早めにお申込下さい!

日時: 平成31年(2019年)2月9日(土)
場所: 名古屋大学医学部(名古屋市昭和区)
参加費: 5000円(事前4000円)

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2018年度第5回公共政策セミナー

2018/10/31

本日、2018年度、第5回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2018年10月31日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 小林智穂子(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士後期課程)
タイトル: 公共の福祉におけるプロボノ活用の領域

要旨:

最近関わっている事業事例と近況のご報告をいたします。

発表者2: 船橋亜希子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: ドイツ遺伝子診断法について

要旨:

現在検討中のドイツ遺伝子診断法について、その成立過程と現在の規制内容を中心にご報告させていただきます。

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【院生室より】日本人類遺伝学会に参加してきました

2018/10/15

10月11日(木)から13日(土)にパシフィコ横浜で開催された「日本人類遺伝学会」に参加してきました。これが私の初の日本での学会参加です。

武藤先生はシンポジウムの座長を務めるとともに演者としても3度も登壇され八面六臂のご活躍でした。11日の口演では永井さん、内山さん、李さんが発表。前日の予演の効果もあって三人とも堂々とスムーズに発表されていました。素晴らしい☆

私は12日にポスター発表。会の指示通り朝の8時にポスターを貼りに行くも他の人は誰も貼っておらず・・・。前回のイギリスの学会では誰にも興味を持っていただけなかったので期待していなかったのですが、昼に覗きに行くと熱心に読んでくださっている方がいらっしゃいました!思い切って声をかけて説明させていただくと、次々と人が集まって活発な質疑応答になりました。本チャンの17時45分からの発表の際にも多くの人に集まっていただき活発な議論ができました。医療従事者の方々が患者さんとともに生命保険の不透明な取扱いに不安と不満を持っていらっしゃることがよく分かりました。また、自分の研究の価値について常々悩んでおりましたが、皆さんに関心を持っていただき評価いただきましたので、研究の世間への貢献の可能性を感じモチベーションが上がったしだいです。ポスターについては説明させていただくと理解していただけましたが、他のポスターと比較すると用語の解説もなく、内容も要点がまとまっておらず、分かり難いものでした。反省です。

今回の学会で多くの知識と知己を得たように思います。

(M2 飯田寛)

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【院生室より】イギリス医療社会学会(BSA)に参加してきました

2018/09/26

9月12日~14日にグラスゴー・カレドニアン大学で開催されたイギリス医療社会学会(BSA)に参加してきました。これが私の国内外含めて初めての学会参加です(初めての学会が海外なんて素敵過ぎます)。

緊張とワクワクが入り混じる中でこれも初めてのポスター発表を経験してきました。初日の口頭発表が終わった後の皆ワインも飲みながらのポスター発表セッションだったこともあるのか、ほとんどの人がポスターの前を素通り・・・。興味を持ってくれた人に説明して、名刺を10名の方には渡そうと意気込んでいたのに撃沈。思い切って一人の方に強引に話しかけて、簡単な説明をさせてもらうにとどまってしまいました。ほろ苦いポスター発表デビューです。次回からはもっとインパクトのあるポスター作りと積極的な話しかけを行わないといけない、と一人反省いたしました。

口頭発表には3日間で合計22のセッションを聴講いたしました。様々な研究の対象とその国の仕組み等からなる研究の背景、手法、そして結論の導き方から考察の内容、全体の発表の構成など大変に参考になり、新たな知見を得ることができました。ただ、ヒアリング出来ずに理解できなかった点もありましたし、ほとんど質問が出来ませんでしたので、英語能力の向上が課題であると強く認識いたしました。英語に磨きをかけて機会があれば次は英語での口頭発表に是非ともチャレンジしたいと思っています。

(M2 飯田寛)

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シンポジウム「先端医療におけるイノベーションとレギュレーションの共進化」(2018年10月12日 13:00~17:30)

2018/09/23

シンポジウム「先端医療におけるイノベーションとレギュレーションの共進化」

新領域創成科学研究科の主催で開催されます。教授武藤香織と准教授井上悠輔が登壇します。

入場無料です。

期日: 平成30年10月12日(金)13:00~17:30(開場12:30
場所: 東京大学医科学研究所 講堂(1号館1階)
東京都港区白金台4-6-1
URL: http://www.bioip-lab.org/sympo/index.html
参加申込み: 要事前申込(定員100名)
参加ご希望の方はシンポジウム専用ページの「参加登録フォーム」からお申込みください。
定員に達し次第締め切らせていただきます。
お問い合わせ先: 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 専攻連携室
TEL:03-6409-5406 

 

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2018年度第4回公共政策セミナー

2018/09/19

本日、2018年度、第4回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2018年9月19日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 内山正登(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: ヒト受精卵へのゲノム編集に関する啓発プログラムの実施に向けて

要旨:

ヒト受精卵へのゲノム編集の利用に関する議論は、専門家だけでなく一般市民も巻き込んだ幅広い議論の必要性が指摘されている。このような先端科学技術の利用の是非に関する議論への一般市民の参加には、科学技術の理解だけでなく、この技術が社会に与える影響まで考え、意思決定することのできる機会としての啓発プログラムを開発する必要性があると考えている。そこで、2018年5月に一般市民を対象として、ゲノム編集に関する認知度や理解度、さらに啓発プログラムの内容に関する意識調査を行った。さらに、一般市民のゲノム編集に関する態度を決定する要因を明らかにするため、この技術を享受する可能性がある若年層を対象としたフォーカス・グループ・インタビューを実施した。今回は、2年間の意識調査の比較の結果、および一般市民の啓発プログラムへの態度について報告する。

発表者2: 李怡然(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 博士後期課程)
タイトル: 遺伝性疾患のリスク告知のモデル化の試み

要旨:

遺伝性疾患の患者・血縁者が、家族内で遺伝学的リスクに関する情報を共有することは、伝える相手にとっての遺伝学的検査の受検の選択、疾患の早期発見や予防行動、人生の様々な選択のためにも重要とされ、医療者から推奨される傾向が強まっている。この家族内での情報共有のフローを、本研究では「リスク告知」という概念で示す。
リスク告知に関して、主に海外を中心に調査が行われ、伝える側の意思決定や告知の方法、伝えられる血縁者側の受け止め方など、複数の局面に焦点が当てられてきたものの、体系的な研究枠組みが示されていない。そこで、本研究では、先行研究の知見を整理するとともに、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)の患者・家族を対象とするインタビュー調査のデータをもとに、リスク告知のプロセスを俯瞰するモデル図を提示することを試みる。
本報告では、執筆中の論文の内容の一部について紹介する。

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保健医療社会学論集に、ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」について考察した論文が掲載されました(李・武藤)

2018/08/20

D3の李です。

保健医療社会学論集に以下の論文が掲載されました。

李 怡然・武藤 香織
ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」
『保健医療社会学論集』29(1): 72-82.

(掲載から一年半を経過した時点でJ-STAGEにて公開される予定です)


ヒトゲノム研究や遺伝医療において、被検者は遺伝学的検査を受けて自らの遺伝情報を「知る」ことだけでなく、検査を受けずに「知らないでいる」選択をすることも、尊重されるべきだという規範があります。この「知らないでいる権利(the right not to know)」は、1990年代に米国の遺伝性疾患の患者・家族が主張したことが出発点となり、国際機関や各国のガイドラインに明文化されることで、確立されました。

しかし、2000年代半ば以降、次世代シーケンサーの登場によるゲノム医学の技術革新を経て、今日の患者や家族をとりまく環境は大きく変化を迎えています。そこで本稿では、技術革新や医療の変化に応じて、「知らないでいる権利」をめぐる議論にどのような変遷が生じたかを整理し、現代的な意義はあるのかを考察するため、文献調査を行いました。

2010年代を境に、“actionable”(「対処可能」である)、すなわち医学的に確立された予防法や治療法があるということを根拠に、患者や家族が発病リスクを「知る」ことを推奨する流れが強まっていることが分かりました。さらに今日、がん遺伝子パネル検査が臨床実装されることで、遺伝性疾患の家系員に限らず一般のがん患者やその家族も含め、遺伝性疾患の発病リスクを予想外に「知らされる」事態が生じうると予想されます。

ゲノム医療が日常の診療として普及していくなかで、医療者の規範だけでなく、実際に検査を受けられる患者さんやご家族がどのような態度をもっているかを、合わせて明らかにしていきたいと考えています。

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【院生室より】中学・高校生の皆さんが研究室訪問に来ました

2018/08/01

こんにちは。8月に入り猛暑の日が続き、冷たいものが常に恋しいですね。

8月1日(水)に、宮崎第一中学高等学校の生徒の皆さんが、研究室訪問に来てくださいました!はじめに、特任研究員の高嶋さんから再生医療や幹細胞研究の歴史、私たち公共政策研究分野が取り組んでいる、倫理的課題について考えるプロジェクトの紹介がありました。皆さん、とても真剣にうなずき、メモをとりながら、集中して聞いてくれました。

続いて、ヒトiPS細胞で作成した「人工の配偶子」でヒトを作製することを認めてよいのか?というテーマで、2つのグループに分かれてグループディスカッションを体験してもらいました。学術支援職員の藤澤さん、私がそれぞれファシリテーターとして混ざりました。
一人ひとりがしっかりと自分の意見を述べ、鋭い点を突いたコメントもあり、私たちもびっくりしました。今回は短い時間で、なかなか難しいテーマだったと思いますが、「医療、医学研究の倫理的な課題に取り組む分野もあるんだ」「研究者、患者や一般市民がともに対話して考える場もあるのか」と知ってもらう機会になってもらえたらなと思います。(ファシリテーションをうまく進めていくのも、難しいなとあらためて実感した二人です。)

将来が楽しみな中学・高校生の皆さんと交流でき、私たちも楽しかったです。

宮崎第一中学高等学校の皆さん、はるばる暑い中、お越しいただき、ありがとうございました!

(D3・李怡然)

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【院生室より】納会が開かれました&修士論文中間発表会が行われました

2018/07/27

7月11日(水)に前期納会が白金台のBe Terraceで行われました。都会のど真ん中のビルの2階のオープンテラスでなんとバーベキュー。焼き担当は汗をかきかき火の前で格闘しながら、美味しいお肉に海の幸に野菜を皆でいただきました。また、スパークリングワインが飲み放題(何本空けたんでしょうか?)でアルコールも皆を陽気にさせたようです。心配された雨も降らず、宴会は楽しく幕を閉じました。

7月26日(木)に修士論文中間発表会が行われました。修士課程2年の院生が自分の研究の進捗を確認するステップとして指導教員、副指導教員、陪席の3名の教授と修士課程1年の学生の前で研究の中間発表をすることが義務づけられている会です。5分の準備、15分の発表、10分の質疑応答で構成されます。菅原さんと私飯田が緊張の30分を体験してきました。武藤先生をはじめ武藤研の皆様から色々とアドバイスを得て事前に準備を重ねましたので、何とか無事に発表を終えることが出来たと思います。皆様ありがとうございました。また、先生方からの質問から自分の研究の足りない点を確認でき、私にとって有意義な発表会でした。修士課程1年の学生は興味のあるテーマを選んで発表会に参加するので、もしかしたら聞いてくれる学生はゼロってことを心配しましたが、菅原さんの回も私の回も11~12名の学生が集まってくださりました。彼らに意義のある発表や質疑応答が出来たことを祈ります。

M2 飯田 寛

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2018年度第3回公共政策セミナー

2018/07/11

本日、2018年度、第3回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2018年7月11日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 飯田寛(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程)
タイトル: 発症前検査の影響-生命保険

要旨:

修士論文中間発表会を控えて現在取り組んでいる研究(発症前検査の影響‐生命保険)の背景・目的・方法・調査内容・考察・研究の限界について報告する。発症前検査の進展・普及が生命保険に影響することとしてアットリスクの状態の方及び血縁者が保険に入れないという遺伝差別の問題、アットリスクの加入者が将来のリスクを告知しないで加入する逆選択の問題が挙げられる。各国が発症前検査の生命保険の利用について規制をつくっているが、日本では規制が存在せず、保険業界の議論も進んでいない。そこで、遅れてしまった日本で議論を進めるためには、海外の参考になる事例を明らかにすることとステークホルダーたる日本の生命保険業界・会社員の発症前検査に関する知識・考えなどの現状を明らかにするこが必要と考える。このことを研究の目的とする。海外の事例として英国のモラトリアム協定制定までの経緯について文献調査を実施。日本の現状把握については生保研修会参加者に対する事前アンケート調査を実施。調査結果とそこから得られる考察と今後の予定について報告する。

発表者2: 菅原風我(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程)
タイトル: iPS細胞研究をめぐる難病患者たちの「政治」

要旨:

本報告は、主に二つの内容について報告する。
まず、2000年代初頭から注目を集めた医療人類学・社会学の議論である「生物学的市民権」に関する文献調査の結果について報告する。報告の後半では、この概念を踏まえて、本邦におけるiPS細胞研究をめぐる難病の患者の積極的な参加や参画を捉えなおし、修士論文の今後の研究計画についてお話しする。

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BMC Medical Ethics誌に家族のデータ共有への倫理的配慮に関する論文が掲載されました(高島・武藤)

2018/06/19

武藤です。客員研究員の高島響子さんが第一著者となって、家族丸ごとのデータ共有への倫理的配慮を検討した論文がBMC Medical Ethics誌に掲載されました!

Kyoko Takashima, Yuichi Maru, Seiichi Mori, Hiroyuki Mano, Tetsuo Noda, Kaori Muto
Ethical concerns on sharing genomic data including patients' family members
BMC Medical Ethics 2018;19:61
https://doi.org/10.1186/s12910-018-0310-5

近年、ヒトゲノム解析研究で得られたデータは、研究を加速させるため、できるだけデータ共有を進めることが国内外で強く推奨されています。特に難病やがんの研究では、疾患の原因や特性を探究するため、患者だけでなく、血縁者を中心とした家族の協力も得て解析したデータも一緒に公開することがあります。

研究者にとって、家族丸ごとのデータの科学的な価値は高い反面、幅広く共有されることにより、個人のみならず家族を識別されるリスクは高まります。また、データ共有は、研究を推進するうえで必要な営みではありますが、一般の人々には余り知られていないのではないでしょうか。

そこで、本論文では、一般の人々へのアンケート調査結果を手がかりに家族丸ごとのデータ共有に関して、どのような倫理的配慮が求められるかを検討しました。

なお、この論文の検討過程において、NBDCヒトデータベースには、家族丸ごとのデータ提供があった場合、その利用希望者に対して、「学術目的による利用以外での血縁関係の有無の探索や家系の同定及びそれらを試みる行為を禁止する」というルールの適用を開始して頂きました。

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