2021年第5回公共政策セミナー

2021/10/13

本日第5回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:10月13日13時半~16時

発表者1: 李 怡然(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 助教)
タイトル: 認知症関連疾患の超早期予測・予防の倫理的課題を考える

要旨:

認知症・アルツハイマー病をめぐる新たな展開として、症状があらわれる前の超早期に疾患の発症を予見し、予防的に介入することを目指す研究開発が推進されている。脳に限らず多臓器間の全身ネットワーク変容を包括的に解明し、次世代イメージング・センシング技術を利用する、AI・数理モデルを用いたシミュレーションを開発し臨床応用するなど、新規技術を複合的に活用することが計画されている。しかし、疾患の発症前予測・予防的介入は、従来の認知症対策や理念とは異なる方向性をもっており、人を対象に研究を行う上で配慮すべき事項、革新的技術を社会実装する上での諸課題も考えられる。そこで本研究では、関連する既存の文献を整理し、認知症の早期予測・予防の実現を目指す研究開発が人々や社会に与えるインパクトを考慮する上での基礎的な論点を抽出することを試みる。報告では、背景と先行研究を紹介し、この問題を考える端緒をつかみたい。

発表者2: 井上悠輔(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 准教授)
タイトル: パンデミック・ワクチンの展開を規定するもの:OECD諸国間の地域相関研究

要旨:

日本と同様、多くの先進国では、新型コロナウイルス感染症に関する予防接種が、国の主導のもとに展開されている。一時期の極端なワクチン不足の状況からは脱しつつあるものの、その進捗には国によって大きな開きがみられる。予防接種は臓器提供などと同様、個人の意思表明に限界の多い利他活動(Pywell, 2000)であるとされる。WHOは“voluntary”な予防接種の展開を推奨しているものの、ワクチンに関する「自由意思」は、自然発生的・内発的なものというより、各国・地域が置かれた状況によって規定される面も大きいことが考えられる。国の主導のもとに展開されるパンデミック・ワクチンの場合にはその傾向がより顕著になりうる。こうした各国の進捗の相違やその背景を検討する際、地域相関研究(Ecological Study)の手法は有効であると考える。OECD38か国における進捗(2021年5月~10月)に関して、説明変数の候補となり得る項目との相関関係分析/重回帰分析を行い、安定的に関連している項目の特定を試みた。