2021年度第10回公共政策セミナー

2022/03/09

本日第10回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:3月9日13時半~16時00分頃

発表者1: 高嶋 佳代(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: 患者対象のFirst in human(FIH)試験における倫理的課題の探索-リスクベネフィットの比較衡量に関する検討-

要旨:

治療法の臨床応用には、人を対象とした臨床試験が必要となる。とりわけ、前臨床試験後に安全性検証を主目的として人で初めて実施される、いわゆるFirst in human試験(FIH試験)には不確実性や未知のリスクへの懸念が考えられ、そのリスクベネフィットの衡量はより複雑性を増すと考えられる。FIH試験のリスクべネフィットへの倫理的側面に関しては、主に抗がん剤等のFIH試験を対象に議論が行われてきたが、研究参加者や研究者等さまざまな立場からの意見をもとにした検討は、十分になされているとは言えない。そこで本研究では、FIH試験の実施に関する多面的で総合的なリスクベネフィット衡量のあり方を検討し、今後のFIH試験の計画立案や倫理審査への一助とすることを目的として、iPS細胞を世界で初めて用いたFIH試験に焦点を当て、研究に関与した様々な立場の当事者にインタビュー調査を実施している。本報告では、主に対象とする臨床試験の背景を示した上で、インタビュー調査の進捗について報告する。

発表者2: 飯田 寛(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: オーストラリアでの生命保険における遺伝学的検査結果の取扱い-変更の背景・経緯と自主規制の内容-

要旨:

遺伝情報はその固有性、不変性、親族共有性、将来予見性などから特別な情報であるとする遺伝情報例外主義から諸外国では遺伝情報の取扱いを制限する動きがみられる。特に生命保険は注目された分野であり、遺伝学的検査結果をもとに危険選択をすることで、生命保険の加入できない、もしくは保険料が高くなることは差別であるとしてその使用を法律等で禁止する動きがある。一方で、生命保険会社の視点では、情報を入手できなければ、逆選択として保険数理に影響があるとの反論がある。諸外国が生命保険会社での遺伝学的検査結果の使用を禁止する中で、オーストラリアはこれまで加入者に遺伝学的検査結果の告知を義務付け入手していた。しかし、2019年に期限付きで一定の保険金額については遺伝学的検査結果を入手しないとする業界の自主規制を制定した。このオーストラリアの生命保険会社の遺伝学的検査結果の取扱いの変更の背景と経緯および英国のモラトリアムと比較した自主規制の内容について報告する。