日本保健医療社会学会教育講演の論文が掲載されました(武藤)

2025/03/15

2024年5月に開催された、第50回日本保健医療社会学会大会で教育講演を担当しました。その内容をまとめた論文が公表されました。

武藤香織「弱い立場にある人々とともに進める研究——アイヌ民族や被爆者を対象とした研究からの教訓——」

保健医療社会学論集 35(2): 7-13, 2025.

DOI:  https://doi.org/10.18918/jshms.35.2_7

この教育講演は、大会長である吉田澄恵さんが定めた大会のメインテーマ「『弱い』ままで生きられる社会のために」に頭を悩ませた結果、歴史的不正義によって脆弱な立場に置かれた2つのコミュニティと研究のあり方について考えたことをまとめたものです。ご批判を賜れれば幸いです。

吉田さんの大会長講演のまとめである「弱いままで生きられる社会のために——知の開発と共有へ——」(保健医療社会学論集 35(2): 1-6)は、吉田さんが人生を賭して挑む看護学と、保健医療社会学への愛にあふれた論稿です。ぜひご一緒にお読みください。

 

 

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3月の公共政策セミナー

2025/03/12

2025年3月の公共政策セミナーは、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2025年3月12日(水)13:30~16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:胡錦程学際情報学府 修士課程

タイトル:ワクチン開発の臨床試験とヒトチャレンジ試験に対する意識:日本のDS-5670試験参加者を対象としたアンケート結果

要旨:本発表では、ワクチン臨床試験における健康な被験者の倫理的課題や補償制度について考察します。また、日本の臨床試験参加者を対象としたアンケート調査の結果を紹介し、ワクチン臨床試験やヒトチャレンジ試験に対する意識について議論します。修士論文の方向性について、皆様からご助言をいただけますと幸いです。

指定発言:永井亜貴子(公共政策研究分野 特任研究員)

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毎年恒例・遠足にいってまいりました!(島﨑)

2025/02/23

新領域創成科学研究科D2の島﨑です。

先日、武藤研恒例の年に一度の遠足に行ってまいりました!

今年の舞台はお台場。「日常だけど、非日常」をテーマに、研究室メンバーと一日たっぷり楽しみました。

まず訪れたのは、防災体験学習施設「そなエリア東京」。

ここでは、地震発生からの72時間をどう生き延びるかを学ぶ「東京直下72h TOUR」に参加しました。クイズ形式で進む没入型のツアーで、非常時に備えておくべき知識と準備について、楽しみながら学ぶことができました。

ツアー後は2階の展示フロアへ。備えに関するさまざまな展示を見学しましたが、特に盛り上がったのは「オペレーションルーム」です。ここは災害時に国の対策本部が設置される空間で、そのスケールに圧倒されました。

昼食は有明ガーデンで取り、ゆりかもめに乗って日本科学未来館へ移動。

未来館では企画展「パリ・ノートルダム大聖堂展」にて、タブレットを片手に歴史と芸術の旅へ。建築や装飾、美術品、さらには火災と再建の物語を通して、壮大な美と歴史の重みを体感しました。

お台場という日常的な場所にいながら、まるで異なる時代や場所を巡ったような、充実した一日でした。

最後は、ボルダリングで打ち上げ!

個人的には初挑戦でしたが、研究室の三村さんにコツを教えていただき、ビギナールートを完登することができました。翌日の筋肉痛を上回る達成感があり、大満足の遠足となりました!

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2月の公共政策セミナー

2025/02/12

2025年2月の公共政策セミナーは、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2025年2月12日(水)13:30~16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:三村恭子(公共政策研究分野 学術専門職員)

タイトル:人工物使用の正統化過程をみつめる:産婦人科内診台の開発・使用の歴史から

要旨:日本国内の産婦人科の医療機関には、一般的に「内診台」(産婦人科検診台・診察台)が設置されている。内診台は、受診者を仰向け、開脚の状態に保つ機能をもつもので、様々な診療行為がこの台上で実施されている。

2005年~2008年実施の内診台に関する調査研究(1)より、自動機能がついた椅子型の内診台は、日本に特徴的な医療機器であり、その開発意図には、診療の効率化や、受診女性の羞恥心への配慮が含まれていたことが示された。
本発表では、内診台の開発・使用の歴史をみつめ、どのようにこの人工物が産婦人科医療の中で正統化legitimizeされてきたかを辿りたい。
(1)http://www.meijigakuin.ac.jp/~atsuge/naishindai/index.html

指定発言:渡部沙織(公共政策研究分野 特任研究員)

 

◆報告2

報告者:永井亜貴子(大学院新領域創成科学研究科 特任研究員)

タイトル:双方向バイオバンクプロジェクト研究参加者を対象とした調査の検討

要旨:バイオバンク・ジャパン(BBJ)では、2024年より、BBJ登録者を対象として、2024年より「バイオバンク・ジャパン登録者を対象とした双方向バイオバンクプロジェクト」を開始し、2025年1月より研究参加者の募集を開始した。

同プロジェクトでは、研究対象者がBBJの研究参加から長期間経過していることや、多くが高齢であること、BBJで初めて電磁的方法を用いたインフォームド・コンセント(IC)を行うことなどの課題が想定され、ICのプロセス、ICで用いる資料や機材などついて、患者・市民の視点を取り入れた上で検討・改善し、実際のICで利用を開始した。
本報告では、バイオバンクの参加動機に関する先行研究などを概観し、同プロジェクトの研究参加者が持つBBJおよび同プロジェクトの参加動機や動機に関連する要因を明らかにすること、開発したIC資材の評価を行うことなどを目的として計画している調査について紹介する。

⇨指定発言:河合香織(学際情報学府 博士後期課程)

 

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【院生室より】博士の学位を取得しました(楠瀬)

2025/01/31

D5の楠瀬です。 

東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻医療イノベーションコースにて、昨年9月に無事、博士(科学)の学位を取得することができました。社会人大学生で長期海外出張と重なり、残念ながら修了式に出ることができなかったため、修了したという実感はあまりないのですが、武藤先生、井上先生、神里先生、竹内様をはじめ、研究室の皆さま、院生の皆さま、スタッフの皆さまに支えていただき、ここまで走り切ることできました。心より感謝申し上げます。

博士では、医学研究の中でも特にデータ集約型研究に焦点をあて、研究参加者との研究利益の公平・公正な共有のあり方について取り組みました。一つのテーマをじっくりと考え、さまざまな視点や考え方や分析手法を学ばせていただいたことは、大変貴重な経験でしたし、とても大きな財産となりました。それらを活かして、今後も何らかの形で研究を続けていければと思っております。

5年半、本当にお世話になりました。そして、ありがとうございました。

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親子を対象とした難病のゲノム解析について知ろう! 〜患者・市民参画の実現を目指して〜(3/4開催・ウェビナー)

2025/01/29

親子を対象とした難病のゲノム解析について知ろう!

〜患者・市民参画の実現を目指して〜

遺伝性疾患や先天性疾患のお子さんのゲノム解析では、血縁者であるご両親のゲノムも一緒に解析することが重要だとされています。
親子のゲノム解析を通じて、どんなことがわかるようになるのでしょうか?
難病のゲノム医療の研究者と厚労省難病対策課が、みなさんの疑問・質問にライブでお答えします。

難病の患者さんとご家族、支援者の方々向けに、全ゲノム解析等実行計画や難病のゲノム医療の現状について知っていただくためのオンラインイベントです。
ご関心がある難病の患者さんとご家族、支援者の方はどなたでも参加いただけます。
ぜひお気軽にご参加ください! 

イベント案内ページ: https://genome-250304.peatix.com/

日時: 2025年3月4日(火)19:00〜20:30

開催方法:Zoomウェビナー

対象:難病の患者さん、ご家族、支援者の方はどなたでも参加できます。

参加方法:参加は無料です。下記のURLより事前申し込みをお願いいたします。

*申し込み締切 3/3(月)12:00

https://questant.jp/q/250304-register

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プログラム
1. 開会あいさつ
   国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 理事長特任補佐 水澤 英洋
2. 難病の全ゲノム解析等実行計画とゲノム医療の現状について
   厚生労働省健康・生活衛生局難病対策課
3. お子さんとご両親の難病のゲノム解析について
   国立成育医療研究センター ゲノム医療研究部 部長 要 匡
休憩
4. 参加者の皆様からのQ&A
   参加している研究者が皆様のご質問にお答えします!
     *個別の治療内容や研究参加に関するご質問・ご相談は受け付けられませんのでご了承下さい。
     *ご質問は事前アンケートと当日のQ&A機能で受け付けます。
5. 閉会あいさつ
   東京大学医科学研究所公共政策研究分野

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主催:厚生労働行政推進調査事業補助金(難治性疾患政策研究事業) 「革新的技術を用いた難病の医療提供体制推進に関する研究」(水澤班)
https://www.nanbyo-genome-tkh.org/
イベント運営:東京大学医科学研究所 公共政策研究分野
https://www.pubpoli-imsut.jp/

 

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第18回日本性差医学・医療学会年次大会で発表しました(島﨑)

2025/01/15

D2の島﨑です。

年始に、故郷・熊本で開催された第18回日本性差医学・医療学会学術集会にて、発表の機会をいただきました。

演題は「性差医学における性的マイノリティの視点:医療の多様性と包摂性の再考」です。

大学院への進学を志した当初から関心をもっていた「性的マイノリティと医療」のテーマについて、修士論文に続き、博士課程でもこうして発表という形で取り組めたことに、改めて深い思いを感じています。

近年、研究においても「参加者の多様性」が重視されるようになっていますが、医学の領域でも同様に包摂の視点が求められており、もちろんの性の多様性もここに含まれます。

なかでも性差医学は、性にまつわる違いや課題に正面から向き合ってきた学問領域であり、国際的にもLGBTQ+を含む多様な性のあり方に着目した研究が進んでいます。

本発表では、そうした国際的な動向を踏まえつつ、これまでに蓄積されてきた研究、日本国内の現状、そして日本において今後なぜこの視点が必要なのかについて、お話しさせていただきました。

発表後には、現場で多様なケースに向き合っておられる臨床医の方々と情報交換をさせていただき、日々の実践に根ざした視点や、啓発活動の重要性について改めて考える機会となりました。

また今回の発表は、母校・熊本大学で大変お世話になった先生とのご縁からご招待いただいたものであり、このような形で学びを深める機会をいただけたことに、心から感謝申し上げます。

帰省を兼ねた学会参加となりましたが、私自身にとってとても充実した年末年始となりました。

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1月の公共政策セミナー

2025/01/08

1月の公共政策セミナーは、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2025年1月8日(水)13:30~15:00ごろ

(1報告、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

 

〈報告概要(敬称略)〉

◆報告1

報告者:武藤 香織公共政策研究分野 教授
タイトル:被爆者・被爆二世を対象としたゲノム解析をめぐるELSI

要旨:2025年は広島と長崎に原子爆弾が投下されて終戦してから80年となる。被爆者健康手帳所持者の平均年齢は85.6歳となり、その人数も計10.7万人と漸減を続けている(2024年3月末現在)。被爆二世(両親又は両親のどちらかが被爆者健康手帳を所持しており、原爆投下後に生まれた人)も高齢期に達しているが、国は、被爆二世に対しては放射線による健康被害を認めておらず、被爆者援護法の対象外としているため、平均年齢や人数は把握されていない。しかし、厚生労働省は、被爆二世の健康不安に応え、健康状況の実態を把握する目的で、2003年より都道府県と広島市、長崎市に委託して被爆二世健康診断事業を実施してきた。

 これまで放射線影響研究所を中心に実施されてきた調査からも、被爆による遺伝的影響は報告されていない。また、被爆二世によって提起されてきた国賠訴訟の判決でも、遺伝的影響による健康被害が証明されていないことを理由とした敗訴が相次いでいる。一方で、被爆二世・三世のなかには、自身や子の結婚や出産に際して遺伝的影響への懸念が払拭されなかったため、遺伝的影響がないことをはっきりさせてほしいという要望もある。
 こうした事情から、放射線影響研究所は、2010年代より本格的なゲノム解析研究の実施を検討してきた。そして、2024年、被爆者・被爆二世を対象とした全ゲノム解析の計画が発表された。しかし、被爆二世、そして裁判所からも、ゲノム解析によって明快な結論が出せるはずとの期待が高まっていることは気がかりである。
 筆者は、放射線影響研究所が主催する日米合同でのELSIの検討の場に2回参加した。その議論を踏まえつつ、被爆者・被爆二世を対象とした全ゲノム解析に伴うELSIの課題を検討したい。

⇨指定発言:村上 文子(大学院学際情報学府 修士課程)

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「遺伝子医学50号 特集『ELSI・PPI最前線』」が出版されました(武藤)

2024/12/20

季刊誌「遺伝子医学」50号 特集『ELSI・PPI最前線』が株式会社メディカルドゥより出版されました。この特集はELSIのS(社会的課題)に焦点を当て、ゲノム医療・研究をめぐる広報と報道、患者・市民の参画、ゲノム研究における公正・包摂・多様性という3つのテーマを取り上げています。

この特集の基盤は、AMEDゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム「ゲノム医療・研究推進社会に向けた試料・情報の利活用とPPI施策に関する研究開発」という事業です。本特集は、研究代表者の吉田雅幸さん(東京医科歯科大学教授)、長神風二さん(東北大学教授)と一緒に企画しました。この特集を後押しして下さった編集委員の方々に御礼申し上げます。 

当研究室の大学院生として関連研究に取り組んだ楠瀬まゆみさんが「ヒトゲノム研究におけるベネフィットシェアリング再考」を、佐藤桃子さんが「データの多様性確保をめぐる国際的な議論の動向」をはじめ、この分野に詳しい方々に最新のトピックを寄稿して頂きました。 私自身は、森幸子さん(全国膠原病友の会代表理事)、天野慎介さん(全国がん患者団体連合会理事長)とともに、「ゲノム・遺伝に関する差別をめぐるがん・難病当事者の経験から」を寄稿しました。ぜひご一読ください。(武藤香織)

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12月の公共政策セミナー

2024/12/11

2024年12月の公共政策セミナーは、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2024年12月11日(水)13:30~15:00ごろ

(1報告、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

◆報告1

報告者:李 怡然公共政策研究分野 准教授
タイトル:配偶子バンクのグローバルな展開と家族形成を考える

要旨:ドナーによる配偶子(精子・卵子)提供は、日本では婚姻関係にある男女の不妊治療の一環として医療行為として行われてきた。それに対し、諸外国では民間または公的な大規模な配偶子バンクの運営により、国境を超えたグローバルな配偶子提供が実施され、ヘテロセクシュアルのカップルに限定しない家族形成に開かれるとともに、倫理的・法制度的側面での課題も指摘される。日本ではこれまで配偶子バンクは構築されてこなかったが、近年は海外の配偶子バンクの利用やSNS等を介した個人間の提供も広がりを見せつつある。本報告では、北欧・米国を中心に配偶子バンクの状況やその諸課題を整理するとともに、今般成立が見込まれる「特定生殖補助医療法案」が、日本の今後の生殖補助医療の利用と家族形成を与えうる影響を考えたい。

⇨指定発言:三村 恭子(公共政策研究分野 学術専門職員)

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日本生命倫理学会で発表しました(島﨑)

2024/12/01

D2の島﨑です。

昨日開催された第36回日本生命倫理学会年次大会にて、口頭発表の機会をいただきました。

演題は「胎児超音波検査のインフォームド・コンセント:経産婦へのグループインタビューより」です。博士研究の一環として取り組んでいる、出生前検査としての胎児超音波検査に関する調査結果をもとに、現状や課題について発表しました。

ありがたいことに、今回は若手発表奨励賞の候補にも選出いただき、他の3名の候補者の方々とともに務めさせていただきました。

日本では、妊婦健診の一環としてエコーが広く定着していますが、それに加えて「胎児の形態異常の有無を知るための検査」として超音波検査を経験する女性たちがいます。実施したインタビューからは、彼女たちが妊娠や出産にまつわる様々な不安への対処として検査を希望していること、一方でそうした検査におけるインフォームド・コンセントは、他の出生前遺伝学的検査に比べて形骸化しがちで、十分とは言いがたい現状もあることが見えてきました。

今後は、出生前検査全体に共通する課題と、超音波検査に特有の課題とを整理しながら、女性たちをどう支えていくべきか、そのあり方を再考していきたいと考えています。

セッションでは、他の候補者の方々の発表も非常に刺激的で、多くの学びと交流が得られる貴重な時間となりました。

同世代の研究者の方々との出会いにも大きな刺激を受け、今後の博士研究にも一層力を注いでいきたいと思います。

 

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11月の公共政策セミナー

2024/11/13

2024年10月の公共政策セミナーは、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2024年11月13日(水)13:30~16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:河田 純一(公共政策研究分野 特任研究員)

タイトル:双方向バイオバンクプロジェクトにおけるPPI活動の報告

要旨:バイオバンク・ジャパン(BBJ)は、研究参加者とBBJの間で、相互に情報をやりとりするオンライン上のプラットフォームを構築し、運用する「バイオバンク・ジャパン登録者を対象とした双方向バイオバンクプロジェクト」を開始した。本計画では、ICプロセスにおいても医療機関でのタブレットを用いたICなど、電磁的な仕組みを取り入れている。しかし、対象者の年齢層が高いこと、BBJに登録してから本研究へのリクルートまでの期間が長いことが課題となった。このため、ICプロセスやそこで用いる資材の作成過程に、患者・市民の視点を取り入れ、よりよいICとすることを主な目的とした患者・市民参画(PPI)の取り組みを導入した。本報告では、BBJでの新たなIC取得&ICFに関するPPI活動の実施プロセスについて、その成果と課題を検討し報告する。

⇨指定発言:胡 錦程(学際情報学府 修士課程)

 

◆報告2

報告者:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)

タイトル:患者・市民参画(PPI)によるELSIの検討〜①難病の全ゲノム解析へのPPI・②医療・福祉アーカイブズとPAB〜

要旨:本報告では、研究への患者・市民参画(PPI)の実践を通じて得られたELSIの示唆について、2つの事例について共有したい。

①厚生労働省が推進する「全ゲノム解析等実行計画」では、これまでにない規模で難病とがんの患者・家族の全ゲノム解析を実施し、データベースを構築し、創薬や診断技術等の研究開発に活用することを目指している。また、事業の推進に際して生じるELSI(倫理的法的社会的課題)への対応と患者・市民参画(PPI)の実装を事業計画に明文化し、2025年度の事業実施組織の設立に向けて様々な取り組みが行われてきた。報告者らは難病の全ゲノム解析とゲノム医療の推進に際して、ICF(説明同意文書)と倫理的課題の検討のプロセスで、2022年より難病の患者・家族協力を得てPPIの実践を行なってきた。これまでのPPI活動を通じて明らかになった難病の全ゲノム解析の倫理的配慮の課題を報告する。
②過去のヘルスケア施策に関する倫理的課題の検証において、医療・福祉に関する資料の保管と利活用をめぐる課題はその進展の大きな障壁となってきた。過去に医療機関や福祉施設等が作成した資料や記録の保管と利活用については、公文書管理の枠組みを除いては日本では明確なルールの体系が存在せず、法令や指針が定める保管期限を過ぎた資料や記録は破棄されたり散逸していく現状がある。患者・市民にとって家族や祖先の情報が含まれる可能性があるアーカイブズをどのように公共的に利活用していくべきかについて、患者・市民アドバイザリーボード(PAB)を通じて患者・家族・当事者の視点を取り入れながら倫理的課題を焦点化していく試みを試行的に行っており、本報告ではこれまでの取り組みの背景と経過について報告する。
⇨指定発言:武藤 香織(公共政策研究分野 教授)

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アーカイブ動画公開:10/14「シャロン・テリーが語る 研究への患者参画の歩みとこれから」

2024/10/21

2024年10月14日(祝・月)に開催いたしました「シャロン・テリーが語る 研究への患者参画の歩みとこれから」では、急遽の告知にも関わらず多くの患者・市民の方々にご参加を頂きまして誠にありがとうございました。

イベント告知ページ:https://peatix.com/event/4145620/view

当日は100名近い方々がライブでウェビナーに参加して下さいました。シャロンさんからは1990代から現在に至るご自身の患者参画の取り組みの歩みと、現在取り組んでいるプロジェクトのお話に加えて、日本の患者・家族コミュニティの方々への励ましの言葉もありました。後半は、参加登録された方々から事前に頂いたご質問にシャロンさんが応答しました。

参加者の方からアーカイブ配信のご希望があった事に加えて、ぜひ患者・市民参画(PPI)にご関心のある方々にご視聴頂ければと、当日のウェビナーの動画をアーカイブ配信する事にいたしました。

下記のリンクより、ご視聴頂けます。

なおこの動画のご視聴が可能な期限は、11月末日までとさせて頂きます。

https://vimeo.com/user139607714/sharon

 

(特任研究員 渡部)

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10月の公共政策セミナー

2024/10/09

2024年10月の公共政策セミナーは、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2024年10月9日(水)13:30~16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:松山 涼子(新領域創成科学研究科 博士後期課程)
タイトル:(仮)子どもを対象とした患者・市民参画についての文献調査

要旨:患者・市民参画(Patient and Public Involvement: PPI)は、研究参加者の権利保護と適切な研究の推進において、研究倫理の観点から重要な役割を果たす。これまでは主に成人を対象に実施されてきたが、国連の「子どもの権利条約」に基づき、子どもを対象としたPPIの実践を推進する動きも進展している。また、PPIは主に臨床研究で行われることが多いが、本研究では観察研究および出生コホート研究に焦点を当てて調査を実施した。本報告では、博士論文に向けた文献調査の暫定結果を紹介する。

指定発言:李 怡然(公共政策研究分野 准教授)

 

◆報告2

報告者:武藤 香織(公共政策研究分野 教授)

タイトル:最近の取り組みから頭を冷やして考える

要旨:当研究室で進めている取り組みや個人として関わっている研究活動について、少し頭を整理して共有する時間としたい。

(後日、更新予定)

⇨指定発言:河田 純一(公共政策研究分野 特任研究員)

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【院生室より】松波めぐみ先生のご講演とご著書の合評会を開催しました

2024/10/08

2024年9月25日の院生ゼミにて、大阪公立大学の松波めぐみ先生(Xアカウント:@kochu_karu_ko)より、障害の社会モデルについてのご講演をいただきました。

社会モデルの考え方は、社会によってつくり出された「障害」等のバリアに気づき、さまざまな人が平等に生きられる社会へ変えていくために非常に重要なものです。

ご自身の実体験を交えながら、背景の説明や用語の解説といった基礎的なことから丁寧にお話をしていただき、質疑応答も活発に行われました。

翌9月26日には、松波先生のご著書『「社会モデルで考える」ためのレッスンー障害者差別解消法と合理的配慮の理解と活用のために』(生活書院)の合評会を、

東大先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎研究室と合同で開催しました。

最初に松波先生より、ご著書にかける思いや苦悩、執筆中の様々な出来事、編集の裏話などを披露していただきました。

コメンテーターの熊谷先生は「自分が18歳の時に出会いたかった本」と評し、血の通ったエピソードが豊富に掲載されていることの価値、松波先生の自己開示が言及されていることの重要性などについてお話がありました。

武藤先生からは「イノベーションを押し進める側が当たり前に知っておかなければならないのが社会モデル」であるとのコメントがあり、悲願の合評会開催に対する感謝が述べられました。

社会モデルの考え方が必要なのは、障害に対してだけではありません。

私もご著書を繰り返し読んで、考え方を深めていきたいと感じました。

松波先生、2日間にわたり貴重な機会を頂戴し、ありがとうございました。

(文責・学際情報学府M1 村上)

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PLOS Digital Health誌に 医療AIの報告ガイドラインと倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に関する論文が掲載されました(亀山・井上)

2024/10/07

2024年3月まで当研究室で勤務されていた、亀山純子さん(筑波大学人文社会系哲学・思想学分野)と井上悠輔さん(京都大学大学院医学研究科)が取り組まれてきた、医療AIの報告ガイドラインと倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に関する論文が9月19日にPLOS Digital Healthに掲載されました。亀山さんが寄せて下さったメッセージを掲載します。論文とあわせてご覧下さい。

Junko Kameyama, Satoshi Kodera, Yusuke Inoue

Ethical, legal, and social issues (ELSI) and reporting guidelines of AI research in healthcare. PLOS Digital Health    September 19, 2024

本研究は、東京大学医学部附属病院の小寺聡医師との共同研究です。

この論文では、「社会や患者との連携に関するガイドライン作成者の取り組み」と「ガイドラインの限界と研究者の主体的な取り組みの必要性」の、大きく2つの論点を抽出しました。それらを考察し、今後も医療AIが人々に支えられて発展していくためには、報告ガイドラインの継続的な見直しが不可欠となること。また、次のステップとして、ガイドライン間の調和を図り、報告ガイドラインを臨床面におけるAIの実践に関する議論と結びつけることが重要であると結論づけています。

ここへ至るには、研究に携わる他の皆さんと同様に、見たこともない難解な専門用語群を調べ、長短様々な形式で書かれている論文の内容の整理に頭を悩ませ、ヒントになりそうな関連文献を日々漁りました。とりわけ、ガイドラインの開発者との専門的立場の違いから、自身の解釈方法の妥当性と整合性をはかることが最大の難関であったかもしれません。そういった作業の中で、医療AIをとりまく研究開発の速度と複雑性に、現在のAI研究開発に向けたガイドライン・ガイダンスは、必ずしも追いついてはいない。ということを強く感じました。このことを実感できたことは、次の取り組みに向けて大きな学びの1つであったと考えています。

執筆から実に1年以上の月日を要しました。諦めかけ、その度に井上先生に助けていただきました。研究の成果を論文にて公刊することができ、本当によかったです。本当にありがとうございました。(文責・亀山)

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シャロン・テリーが語る 研究への患者参画の歩みとこれから(10/14祝・月)ウェビナー/トークイベント

2024/10/01

患者・市民参画研究会#11
シャロン・テリーさんの来日にあわせて、10/14(月・祝)に、患者・家族や市民の方々向けにウェビナー/トークイベントを開催する事になりました。逐次日本語通訳ありです。下記のURLより、お申し込みください。皆様のご参加をお待ちしております!

イベント告知ページはこちら:https://peatix.com/event/4145620/view
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シャロン・テリーが語る 研究への患者参画の歩みとこれから

トークイベントホスト:武藤 香織(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 教授)
日時:2024年10月14日(祝・月)18:30〜19:45ごろ
開催方法:Zoom ウェビナー、逐次日本語通訳あり
対象:患者・家族の方、患者・市民参画(PPI)に関心がある市民の方、どなたでも無料でご参加頂けます
申し込みフォーム:以下のURLからお申し込み下さい(10/14 正午〆切)

https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_u4-BCX0eRKuVMNz0W5vN7w

*当日、申し込みフォームにお寄せ頂いたご質問の中からピックアップしてシャロンさんにご回答頂きます

〜シャロン・テリーさんの紹介〜
患者・家族の研究への参画に関わる関係者にとって、シャロン・テリーさんは象徴的な存在です。1994年に自身の2人の子どもが遺伝性疾患である弾性線維性仮性黄色腫(PXE)と診断されたことをきっかけに、PXEインターナショナルを創設し、研究者や当局と協力しながらPXEの研究開発を推進してきました。

また、Genetic Alliance など1990年代〜現在まで希少疾患や遺伝性疾患のペイシェント・エンゲージメント(患者参画)を国際的に牽引してきた様々な患者・家族擁護団体に関わり、2008年に米国で制定された遺伝子差別禁止法(GINA)のアドボカシーを行った Coalition for Genetic Fairness の議長や、米国医学アカデミーの委員など挙げきれないほど数多くの活動を患者家族の立場から果たしてきました。

今回、シャロン・テリーさんが国際会議のために来日されるのを機に、患者家族や市民の方々向けのトークイベント(ウェビナー)を開催する事になりました。シャロン・テリーさんのこれまでの経験と、患者参画のこれからについて語って頂きます。短い時間ではありますが、大変貴重な機会ですのでぜひご参加下さい!

主催:東京大学医科学研究所 公共政策研究分野

共催:厚生労働行政推進調査事業費補助金(難治性疾患政策研究事業)革新的技術を用いた難病の医療提供体制推進に関する研究、AMEDゲノム医療実現バイオバンク利活用プログラム「ゲノム医療・研究への患者・市民参画(PPI)推進およびリテラシー向上のための基盤整備」

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Regenerative Therapy誌に、ヒト胚の14日を超える体外培養に関する体外受精・顕微授精経験者の態度に関する論文が掲載されました(木矢・渡部・武藤)

2024/09/24

特任研究員の木矢です。Regenerative Therapy誌に、ヒト胚の14日を超える体外培養に関する体外受精・顕微授精経験者の態度に関する論文が公開されました。

Yukitaka Kiya, Saori Watanabe, Kana Harada, Hideki Yui, Yoshimi Yashiro, Kaori Muto.
Attitudes of patients with IVF/ICSI toward human embryo in vitro culture beyond 14 days.
Regenerative Therapy. 2024. 26: 831-836. 
https://doi.org/10.1016/j.reth.2024.09.005

東大医科研からプレスリリースを出しましたので、論文とあわせてご覧下さい。

2021年5月、国際幹細胞学会(ISSCR)は「幹細胞研究・臨床応用に関するガイドライン」を改訂しました。この改訂により、ヒト胚の受精後14日以降もしくは原始線条の形成以降の体外培養を禁止する、いわゆる「14日ルール」は禁止項目から外されました。ISSCRはルールを緩和する場合、社会からの広い支持を求めていますが、研究用のヒト胚の提供を依頼されうる体外受精・顕微授精経験者が14日ルールの延長をどのように考えているのかは明らかではありませんでした。加えて、近年胚モデルを用いた医学研究も進展していますが、胚モデルに関する態度についても明らかにする必要性がありました。そこで、体外受精・顕微授精経験者を対象に、ヒト胚の14日を超える体外培養と胚モデルの研究利用をどのように評価しているのか、その理由を含めて明らかにしました。

体外受精・顕微授精経験者はヒト胚の14日を超える体外培養について全体的に肯定的に評価する傾向があり、その評価には6つの理由があることを明らかにしました。反対に、否定的な評価には2つの理由があることを示しました。

胚モデルの研究利用について、調査協力者の約7割が肯定的に評価していました。しかし、肯定的な評価をしている人の中でも、胚モデルに対する倫理的な抵抗感や胚モデルを用いた研究結果に対する不信感も語られており、肯定的な評価を下すからといって懸念がないわけではないことが示唆されました。

体外受精・顕微授精経験者はヒト胚の提供者になりうるだけでなく、再生医療や幹細胞研究の恩恵を受ける人びとでもあります。再生医療や幹細胞研究に関する「対話」において、体外受精・顕微授精経験者の関与も必要です。政府および科学コミュニティに対して、「対話」の前に医学研究についての十分な知識を提供する必要があること、胚モデルに対する抵抗感や不信感など多様な意見に耳を傾ける必要があること、体外受精・顕微授精経験者の心理的な安全を確保することが必要であること、体外受精・顕微授精経験者の肯定的な意見のみに基づいて14日ルールを早急に延長することは避けなければならないことを指摘しました。(文責・木矢)

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9月の公共政策セミナー

2024/09/11

2024年9月の公共政策セミナーが、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2024年9月11日(水)13:30~16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:楠瀬 まゆみ(新領域創成科学研究科 博士後期課程)
タイトル:医学研究での利益共有に関する倫理的・法的・社会的課題―データ集約型研究を手掛かりに

要旨:人を対象とする医学系研究においては、研究参加者や研究参加コミュニティへの利益の共有や提供は、研究への不当な誘引や被験者保護の観点から控えられる傾向にある。他方、国際的に実施される医学系研究で、特に開発途上国において実施される研究では、利益共有の問題は中心的な議論の一つであった。

 博士課程では、先行して議論の蓄積がある「先進国による開発途上国における研究」や「国際的なヒトゲノム研究」等での「利益共有(benefit sharing)」の概念を参考にし、非侵襲・非介入の低リスクのデータ集約型研究を手掛かりに、「先進国で実施される先進国の人々を対象とする医学系研究」における研究参加者や研究参加コミュニティとの利益共有の実践に向け、以下の問題を明らかにすることに取り組んだ。

 1) 先進国で実施される医学系研究における利益共有とは何か。共有されるべき利益とは何か。
 2) 市民は、研究機関や企業が、研究開発のためにデータを提供した研究参加者と、何らかの利益の共有を行うべきであると考えているのか。また、どのような利益の共有を期待しているのか。
 3)日本の人を対象とする医学系研究において、研究参加者や研究参加コミュニティとの研究利益の共有を始めるには、どのようにすれば良いか。
 本発表では、博士論文の概要について報告を行いたい。

指定発言:松山 涼子(新領域創成科学研究科 博士後期課程)

 

◆報告2

報告者:島﨑 美空(新領域創成科学研究科 博士後期課程)

タイトル:出生前検査である胎児超音波検査に関する経験:経産婦へのFGIより

要旨:日本では、妊婦健診において定期的に提供される通常超音波検査とは別に、出生前検査として提供される胎児超音波検査がある。日本産科婦人科学会•日本産科婦人科学会医会が2023年に改訂した「産婦人科診療ガイドライン産科編」では、胎児超音波検査は特定の先天性遺伝性疾患の非確定検査であるとともに、形態異常の確定検査でもあると記載されている。これまで、同じく先天性遺伝性疾患の非確定検査であるNIPTを中心に、検査の倫理的課題が議論され、その課題に配慮した情報提供やIC、意思決定支援のあり方が示されてきた。これを参考にしながらも、胎児超音波検査については、確定検査の側面や、治療につながると言った性質があり、その特性を考慮した検査のあり方を検討する必要がある。そのためには、まず胎児超音波検査前から診断後の一連の流れの中で、どのような経験がされ、課題があるのかを妊婦、医療従事者の双方の視点から理解することが必要である。本発表では、昨年度末に行った経産婦へのFGIの結果と、発表者の博士論文の構想を共有する。

⇨指定発言:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)

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Asian Bioethics Reviewに「ゲノム研究データの多様性」に関する論文が掲載されました(佐藤・武藤)

2024/08/19

博士課程の佐藤です。Asian Bioethics Reviewに、ゲノム研究のデータの多様性に関する論文が掲載されました。

Sato, M., Muto, K., Momozawa, Y, and Joly Y. (Not So) Lost in Translation: Considering the GA4GH Diversity in Datasets Policy in the Japanese Context. Asian Bioethics Review (2024). https://doi.org/10.1007/s41649-024-00305-5

近年、ゲノム情報を利用した病気の診断や治療を誰でも受けられるよう、その基盤になるゲノム研究の対象者も一部の人に偏らせずに、様々な人々に参加してもらおう、という動きがあります。

これに対し、ゲノムデータ利用の国際的な枠組みを作っているGA4GH (Global Alliance for Genomics and Health) という団体が、それぞれの科学者がどのようにこの動きを実践していけばよいか、というガイドを発表しました。

この論文は、そのガイドが、日本でどのように適用できるかということを検討したものです。もちろんGA4GHが想定する「様々な人々」と日本社会の「様々な人々」は、重なる部分も当てはまらない部分もありますが、日本でも社会的な背景を踏まえて検討し続けることが重要だと考えます。

本研究はGA4GHのガイド策定に関わったカナダMcGill大学のYann Joly先生との共同研究です。昨年のカナダ滞在の成果を出せて嬉しく思っております。

なお、この論文はオープンアクセスでどなたでも閲覧できます。こちらからご確認ください。

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