2017年度第4回公共政策セミナー

2017/09/06

本日、2017年度、第4回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年9月6日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 永井亜貴子(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任助教)
タイトル: 遺伝子検査に利用に対する態度およびゲノムリテラシーに関連する因子の検討

要旨:

近年のゲノム解析技術の進歩により、個人のゲノム情報をもとに、疾患の診断、治療、予防を行うゲノム医療は、今後、さらに市民に身近なものとなると考えられます。2016年10月にゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォースがとりまとめた「ゲノム医療等の実現・発展のための具体的方策について(意見とりまとめ)」では、ゲノム情報の取扱いに係る実態把握や、国民がゲノム情報の提供に対し懸念する事項等の調査等を踏まえて、ゲノム医療等の推進のために必要な社会環境の整備に係る取組を進める必要があるとされました。また、社会環境の整備にあたっては、国民のゲノムリテラシーの醸成が重要であり、国民のゲノムに関する知識の現状も踏まえた具体的な取組が必要であるとされました。こうした背景の下、昨年度、厚労特研武藤班では、市民を対象として遺伝情報の取り扱いや遺伝学的特徴に基づく差別等に関するインターネット調査を実施しました。本報告では、特に、遺伝子検査を始めとする遺伝情報の利用に関する態度やゲノムリテラシーに関連する因子について解析した結果について紹介します。

発表者2: 井上悠輔(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 准教授)
タイトル: 研究倫理に関する日本の歴史事案の検討

要旨:

科研費の活動の一環として一昨年から検討している、医学研究の歴史事案の検討に関する進捗を報告する。医学研究の倫理をめぐる議論は、過去の様々な不祥事に関する問題意識とそれへの対応の中で磨かれ、発展してきた。しかし、日本では、このテーマを検討する際に、反省し学ぶべき事案の多くを海外のものに頼ってきた(ニュルンベルク裁判、タスキギー事件など)。問題意識が先行する他国の過去の出来事を検討する段階にも一定の意義があったが、こうした「素材」の輸入・依存の段階を終え、研究環境や制度背景の面で多くの連続性をもつ、日本の過去の事例を改めて見つめ直し、これに学ぶ段階に進むべきだろう。日本でもこれまで実に多くの問題事案が生じてきたのであり、こうした過去の事案に関する知識を共有することは、それ自体の学問的な意義に加え、今後の教育や制度のあり方を検討するうえでも重要と考える。15の問題事例を選定したうえで、これらをどうまとめ、活用するか。現在の検討の状況を紹介する。