2017年度第5回公共政策セミナー

2017/10/11

本日、2017年度、第5回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年10月11日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 洪賢秀(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任助教)
タイトル: 韓国の「ホスピス・緩和医療の利用および終末期患者の延命医療の決定に関する法律」と社会的諸課題

要旨:

近年、韓国では医療機関において死亡するケースが増加している。韓国統計庁によると、1995年では自宅が66%、医療機関が22.8%、その他(道路、産業現場、施設、医療施設に到着時にすでに死亡している場合、など)11.2%となっていたが、2015年には医療機関が74.7%と大半を占めるようになり、自宅で死亡した場合は15.6%、その他は9.7%となっている。このように医療機関で最期を迎えることが増え、延命治療のあり方についての関心が高まっている。

2008年2月には、「セブランス病院事件」が生じ、尊厳ある死のあり方や延命治療のあり方について社会に大きな議論を巻き起こした。ソウルにあるセブランス病院に入院した患者(当時76歳)が、植物状態となったことで、患者の家族は患者本人の治療に対する意思を尊重するために患者が装着していた人工呼吸器を取り外すことを求めて訴訟を提起した。その結果、2009年5月21日、最高裁判所で、疾病の回復を望めない状態においての人工呼吸器による延命行為は、「自然な死」への過剰な介入であるという趣旨の判決が出され、尊厳死をめぐって大きな転換点を迎えることとなった。

このような判決は、長年韓国社会において議論されてきた「自己決定に基づく延命治療」に関する立法化に拍車をかけることになった。2015年12月に、韓国の国会・保健福祉部委員会において7件の法律案が検討され、保健福祉部委員会の代案として国会を通過した(2016.1.8)。

本報告では、2016年に制定された「ホスピス・緩和医療の利用および終末期患者の延命医療の決定に関する法律」の立法化過程や法律の内容を概観し、2017年8月施行(一部2018年2月施行予定)における社会的課題について検討を行う。

発表者2: 楠瀬まゆみ(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: マンスフィールドーPhRMAリサーチ・スカラープログラム参加報告

要旨:

報告者は、マンスフィールド-PhRMAリサーチ・スカラー・プログラムに参加する機会を得て、2017年9月10日から9月22日に米国ワシントンDC、フィラデルフィア、ボストンの政府医療政策部署、シンクタンク、医薬品研究部門、民間製薬会社、大学等を訪問する機会を得た。同プログラムは、米国のトランスレーショナルリサーチ、保健医療政策、医薬品開発、レギュラトリーサイエンスの分野で、それぞれの関係者が新薬開発から製品化に到るまでの過程でどのように連携しているかを含め、米国のトランスレーショナルリサーチや医療エコシステムの実情を広く学ぶ機会を提供することを目的としている。本セミナーでは、2週間の同プログラムへの参加報告を行う。