2017年度第6回公共政策セミナー

2017/11/08

本日、2017年度、第6回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2017年11月8日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 高島響子(東京大学医科学研究所公共政策研究分野・特任研究員)
タイトル: ゲノム情報の研究利用およびデータ共有に対する国内の一般市民における認識と態度の量的調査結果

要旨:

医学研究や臨床試験で得られたデータを共有する動きが拡大しておりゲノムデータもその例外ではない。その際、患者や社会の利益を担保し、また理解を得ることが、倫理的・社会的な課題として指摘されている。本研究は、日本の一般市民におけるゲノムデータの研究利用やその共有に対する希望と懸念を明らかにし、ゲノム研究及び医療を進める上で必要な対応を検討することを目的とした。

【方法】
2017年2月、居住地域・性・年代を調整した20-69歳の男女44,360名にインターネットを介した無記名自記式調査を実施した。なお先行調査を踏まえ、質問票では「ゲノム」ではなく「遺伝情報」を用いた。

【結果】
10,881名から回答を得た(有効回答率25%、男女比1:1)。回答者の59%が遺伝情報を用いた医学研究を「知っている」または「聞いたことがある」と回答したのに対し、研究で得られた遺伝情報の共有は66%が「全く知らなかった」とした。自身の遺伝情報を研究に「提供したくない」者は18%で残りの約8割は「医学の研究」等、何らかの研究には提供してよいと回答した。後者のうち研究に提供した遺伝情報を他と「共有すべきでない」と回答したのは10%で、90%は共有も認めうるとしたが、初めに提供した研究者の判断で共有してよいと回答した者は13%にとどまり、共有する範囲の選定に自らの関与を希望する者が57%、独立した第三者の審査を求める者が20%に上った。共有範囲として大学等の研究機関に比べて民間企業への共有を認める回答者が少なかったが(17%)、研究機関と民間企業の共同研究の場合には許容度が上がった(52%)。また国内の機関のみ共有を認める者(41%)が国外まで認める者(30%)より多かった。

【結論】
ゲノムデータの研究利用及び共有は一定程度受け容れられているが、共有する機関や場所に対する考えは多様であった。共有範囲やその決定プロセスについてさらに市民・患者の具体的な意見を得る必要がある。

発表者2: 吉田幸恵(東京大学医科学研究所公共政策研究分野・特任研究員)
タイトル: 現状報告及び語り論文第2弾に関して

要旨:

「臨床試験・治験の語り」プロジェクトにおいて出会ったひとりの女性に関する論文の執筆を準備している段階である。
調査協力者の中で、特に「臨床試験に参加した(しようとした)線維筋痛症患者」が「痛み」と向き合う姿に着目し、一名の語りに焦点を当てて考察したい。本報告では、方法論や検討しているインタビューの内容の一部をご紹介する。