9月の公共政策セミナー

2024/09/11

2024年9月の公共政策セミナーが、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2024年9月11日(水)13:30~16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:楠瀬 まゆみ(新領域創成科学研究科 博士後期課程)
タイトル:医学研究での利益共有に関する倫理的・法的・社会的課題―データ集約型研究を手掛かりに

要旨:人を対象とする医学系研究においては、研究参加者や研究参加コミュニティへの利益の共有や提供は、研究への不当な誘引や被験者保護の観点から控えられる傾向にある。他方、国際的に実施される医学系研究で、特に開発途上国において実施される研究では、利益共有の問題は中心的な議論の一つであった。

 博士課程では、先行して議論の蓄積がある「先進国による開発途上国における研究」や「国際的なヒトゲノム研究」等での「利益共有(benefit sharing)」の概念を参考にし、非侵襲・非介入の低リスクのデータ集約型研究を手掛かりに、「先進国で実施される先進国の人々を対象とする医学系研究」における研究参加者や研究参加コミュニティとの利益共有の実践に向け、以下の問題を明らかにすることに取り組んだ。

 1) 先進国で実施される医学系研究における利益共有とは何か。共有されるべき利益とは何か。
 2) 市民は、研究機関や企業が、研究開発のためにデータを提供した研究参加者と、何らかの利益の共有を行うべきであると考えているのか。また、どのような利益の共有を期待しているのか。
 3)日本の人を対象とする医学系研究において、研究参加者や研究参加コミュニティとの研究利益の共有を始めるには、どのようにすれば良いか。
 本発表では、博士論文の概要について報告を行いたい。

指定発言:松山 涼子(新領域創成科学研究科 博士後期課程)

 

◆報告2

報告者:島﨑 美空(新領域創成科学研究科 博士後期課程)

タイトル:出生前検査である胎児超音波検査に関する経験:経産婦へのFGIより

要旨:日本では、妊婦健診において定期的に提供される通常超音波検査とは別に、出生前検査として提供される胎児超音波検査がある。日本産科婦人科学会•日本産科婦人科学会医会が2023年に改訂した「産婦人科診療ガイドライン産科編」では、胎児超音波検査は特定の先天性遺伝性疾患の非確定検査であるとともに、形態異常の確定検査でもあると記載されている。これまで、同じく先天性遺伝性疾患の非確定検査であるNIPTを中心に、検査の倫理的課題が議論され、その課題に配慮した情報提供やIC、意思決定支援のあり方が示されてきた。これを参考にしながらも、胎児超音波検査については、確定検査の側面や、治療につながると言った性質があり、その特性を考慮した検査のあり方を検討する必要がある。そのためには、まず胎児超音波検査前から診断後の一連の流れの中で、どのような経験がされ、課題があるのかを妊婦、医療従事者の双方の視点から理解することが必要である。本発表では、昨年度末に行った経産婦へのFGIの結果と、発表者の博士論文の構想を共有する。

⇨指定発言:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)