7月の公共政策セミナー
2026/07/08
2026年7月の公共政策セミナーは、以下の通り、行われました。
◆日時: 2026年7月8日(水)13:30~
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催
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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
報告1
報告者:松山涼子(新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: 出生コホート研究に参加する子どもの長期的な研究参加の在り方に関する検討
要旨:胎児期から成人期までを追跡し、子どもの成長・発達と環境要因との関連を明らかにする出生コホート研究は、世界各国で実施されている。一方、子どもを対象とすること、観察研究であること、長期にわたり試料・情報を収集・利用することなどの特徴から、出生コホート研究には特有の倫理的課題が存在する。本研究は、出生コホート研究において生じる倫理的課題とその対応を明らかにし、それらを踏まえて倫理ガイドライン策定に向けた示唆を得ることを目的とする。
本研究では、全国規模の出生コホート研究に従事する研究スタッフを対象に半構造化インタビューを実施し、再帰的主題分析を用いて分析した。
スタッフは、研究参加を中止したいと申し出た参加者に対し、困りごとを聞き取り、参加負担を軽減する方法を提案しながら参加継続を支援していた。一方で、そのような働きかけが参加者の自律性や子どもの意思決定を損なう可能性について葛藤を抱いていた。また、学童期検査は子ども本人へ研究内容を説明する重要な機会と認識される一方、その説明が主体的な意思決定の支援となるのか、それとも「言い聞かせ」となるのかについても葛藤が語られた。さらに、子どもの成長に伴い研究参加の主体が親から子どもへ移行する中で、参加児にとっての研究参加の意義や、参加児による参画のあり方が模索されていた。
以上より、出生コホート研究では、参加主体の移行に伴い、研究継続の支援と参加者の自律性の尊重を両立する研究運営が求められることが示唆された。また、参加児によるPPIEは、研究参加者の視点を研究運営へ反映することに加え、参加児が自らを研究参加者として認識し、研究参加の意義を見いだす過程を支える研究運営として位置づけられる可能性がある。
⇨指定発言:木矢幸孝(医科学研究所公共政策研究分野 助教)
報告2
報告者:武藤香織(医科学研究所公共政策研究分野 教授)
タイトル:研究結果を平易にまとめた概要の公表・説明をめぐる倫理的配慮
要旨:「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」では、研究責任者に対して、期待する結果が得られなかった場合も含め、研究結果の論文等での公表義務を課しており、特定の限られた者しか閲覧等ができないような方法は適切ではないとされている(第6の6及びガイダンス)。また、同指針では、研究参加者に個別の結果を説明する場合の留意点として、旧「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に由来する「研究により得られた結果等の説明」(第10)が定められているが、研究結果を平易にまとめた概要の取扱いについて言及されていない。研究結果を平易にまとめた概要の例としては、学術論文のプレスリリース、疫学コホート研究等でみられる研究参加者向けのお知らせ、臨床試験・治験での「レイサマリー」などが挙げられ、それぞれ異なる系譜と倫理的基盤を有している。ただし、当該研究の参加者が読む可能性を想定した場合には、配慮すべき点が異なるが、その考え方は明確化されていない。本報告では、研究結果を平易にまとめた概要の公表・説明をめぐって留意すべき点を試行的に論じる。
⇨指定発言:渡部沙織(医科学研究所公共政策研究分野 特任助教)