11月の公共政策セミナー

2025/11/05

2025年11月の公共政策セミナーは、以下の通り、行われます。

◆日時: 2025年11月12日(水)13:30-16:00ごろ

(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

◆Web参加方法:公共政策メンバーの方は、共有カレンダーのURLからご参加下さい。

※所外の方は、お手数ですがご参加都度、開催当日昼12時までに渡部までご連絡下さい。セミナー開始までに参加用URLと当日の資料ファイルをお送りします。

 

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉

◆報告1

報告者:村上 文子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 修士課程)

タイトル:医療に係る意思決定支援とは何か:政策における議論を中心に

要旨:増加する身寄りのない高齢者が抱える生活課題等への対応は急務となっており、そのニーズに応じる「高齢者等終身サポート事業者」(以下、事業者)は全国で推定400社を超えている。生活の様々な場面での意思決定支援の施策がすすんでいるが、医療に係る意思決定だけは国としての施策になっていない。2024年に内閣官房および8府省庁が合同で公表した「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」では、事業者に医療に係る意思決定支援への関与が認められるなど、高齢者の意思決定支援において事業者の存在が頼りにされはじめている。

本発表では、高齢者の医療に係る意思決定支援について、事業者の関与が認められるにいたるまでの、成年後見制度と臨床倫理の分野における議論の変遷を読み解く。なお、本発表は、発表者が現在執筆中の修士論文における第一研究の一部である。

指定発言:河田 純一(公共政策研究分野 特任研究員)

 

◆報告2

報告者:島﨑 美空 (大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士後期課程)

タイトル:出生前検査としての超音波検査の現状と倫理的課題:女性を対象としたミックスド・メソッド研究

要旨:超音波検査は低侵襲の検査で、産科領域においては妊娠経過や胎児発育の確認のために使用されている。近年では、超音波検査機器の精度向上により、詳細に胎児の形態を観察することが可能になったことで出生前検査としても提供されている。しかし、その提供の現状や倫理的課題は国内において十分に議論されていない。そこで本研究は、ミックスド・メソッドを用いて出生前検査としての超音波検査(FUSE: Fetal Ultrasound Screening Examination)の経験を解明し、FUSE経験者の視点から倫理的課題を検討することを目的に調査を実施した。ウェブ調査(N=1,236)とインタビュー調査(N=29)を実施した結果、胎児の様子を見て確認できるポジティブな体験を伴う検査であることや、受検することで不安に対処できた感覚が肯定的に評価される一方で、受検することによって惹起される心理的負担や葛藤、生命倫理の自律尊重原則に反する情報提供、意思決定支援の実情があることが見えてきた。本発表では、予備審査を経て執筆の方向性を修正中である博士論文の途中経過を報告する。

指定発言:西 千尋(公共政策研究分野 特任研究員)