1月の公共政策セミナー

2025/01/08

1月の公共政策セミナーは、以下の通り、行われました。

 

◆日時: 2025年1月8日(水)13:30~15:00ごろ

(1報告、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)

◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階

公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

 

 

〈報告概要(敬称略)〉

◆報告1

報告者:武藤 香織公共政策研究分野 教授
タイトル:被爆者・被爆二世を対象としたゲノム解析をめぐるELSI

要旨:2025年は広島と長崎に原子爆弾が投下されて終戦してから80年となる。被爆者健康手帳所持者の平均年齢は85.6歳となり、その人数も計10.7万人と漸減を続けている(2024年3月末現在)。被爆二世(両親又は両親のどちらかが被爆者健康手帳を所持しており、原爆投下後に生まれた人)も高齢期に達しているが、国は、被爆二世に対しては放射線による健康被害を認めておらず、被爆者援護法の対象外としているため、平均年齢や人数は把握されていない。しかし、厚生労働省は、被爆二世の健康不安に応え、健康状況の実態を把握する目的で、2003年より都道府県と広島市、長崎市に委託して被爆二世健康診断事業を実施してきた。

 これまで放射線影響研究所を中心に実施されてきた調査からも、被爆による遺伝的影響は報告されていない。また、被爆二世によって提起されてきた国賠訴訟の判決でも、遺伝的影響による健康被害が証明されていないことを理由とした敗訴が相次いでいる。一方で、被爆二世・三世のなかには、自身や子の結婚や出産に際して遺伝的影響への懸念が払拭されなかったため、遺伝的影響がないことをはっきりさせてほしいという要望もある。
 こうした事情から、放射線影響研究所は、2010年代より本格的なゲノム解析研究の実施を検討してきた。そして、2024年、被爆者・被爆二世を対象とした全ゲノム解析の計画が発表された。しかし、被爆二世、そして裁判所からも、ゲノム解析によって明快な結論が出せるはずとの期待が高まっていることは気がかりである。
 筆者は、放射線影響研究所が主催する日米合同でのELSIの検討の場に2回参加した。その議論を踏まえつつ、被爆者・被爆二世を対象とした全ゲノム解析に伴うELSIの課題を検討したい。

⇨指定発言:村上 文子(大学院学際情報学府 修士課程)