臨床試験・治験の語りの「難しさ」(臨床試験の語りプロジェクト・吉田)

2014/02/15

東京では2週連続の大雪でした。
みなさまのお住まいの地域はいかがでしたか?
わたしの自宅は玄関前に雪が大量に積もり、ドアが開かなくなりました。
はじめまして、特任研究員の吉田です。

この研究室でわたしは「臨床試験・治験の語りデータベースプロジェクト」のインタビューを担当しています。
このプロジェクトの詳細につきましてはこちらを御覧ください。

ある病いとともに生活している人から、その生活のなかで臨床試験・治験に参加したというたったひとつの事項について語っていただくのですが、これがなかなか難しいのです。
語り手となる参加者さんからは「病いの経験」は語ることができるものの、「臨床試験・治験に参加した経験」は何をどうやって語っていいものかわからない、といったご意見をよく聞きます。
「臨床試験・治験に参加した経験」は特に特別なものでなく、日常生活の延長線上にあるもので、それを他者に伝えることが何かに役に立つのだろうか、という疑問が起こるのです。

「そもそも何から話せばいいのか…」と悩む参加者さんが多くおられるようで、インタビュー協力者の募集にはなかなか苦戦しております。
わたしは「何を話せばいいのかわからない」という参加者さんの話にも興味を持っています。「なぜ、臨床試験・治験の経験の語りは語りにくいのか/語るに足らないと思ってしまうのか」。社会学出身のわたしとしては、この状態に大変関心をもち、「臨床試験・治験の語りの困難さ」に注目した報告を今年度2回させていただきました。

  • 第13回CRCと臨床試験のあり方を考える会議in舞浜
    「臨床試験参加者の語りデータベース構築の取り組み――なぜ臨床試験の語りは「困難」なのか」9月15日(土)、16日(日)@東京ベイ舞浜ホテルクラブリゾート(吉田、中田、別府、有田、武藤)
  • 第86回日本社会学会
    「臨床試験の語りの「役割」と「困難」―「臨床試験参加者の語りデータベース構築」の取り組みから」10月12日(土)、13日(日)@慶應義塾大学(吉田、武藤)

このプロジェクトは、語りの分析を通じて、臨床試験・治験を取り巻く倫理的問題を明らかにし、被験者保護の質向上を目指すことを目的としていますが、お話を聞くなかでその人がどのように病いと向き合ってきたのかといった背景も見えてきます。インタビューを重ねるたびに、理屈では片付かない「どうしようもなさ」みたいなものをひしひしと感じます。その「どうしようもなさ」が垣間見える「臨床試験・治験の語り」は当初の目的以上の「臨床試験・治験周囲のリアル」が見えてくる、最先端な試みなのかも…と思っています。

まったくまとまりがなくなってしまいましたが、臨床試験・治験に参加したことがある患者さんをまだまだ募集しています(唐突!)。
是非、お話聞かせてください。進捗状況についてはまたこちらでご報告させていただきます。

[文責:吉田幸恵]