Research Involvement and Engagement誌に、難病・希少疾患研究のPPIに関する論文が掲載されました(渡部・武藤・永井・木矢)
2026/08/25
特任助教の渡部です。
国際学術誌 Research Involvement and Engagement に、難病・希少疾患研究における患者・市民参画(PPI:Patient and Public Involvement)について、患者・家族を対象に実施したオンライン質問紙調査の論文が掲載されました。
英文タイトル:
Awareness and perceptions of patient and public involvement in rare disease research in Japan: the role of patient advocacy groups and family members
タイトル和訳:
日本の希少疾患研究における患者・市民参画の認知と受け止め方――患者会と家族の役割
著者名:
Saori Watanabe*,#, Kaori Muto*, Akiko Nagai, Hideki Yui, Yukitaka Kiya
(*共同第一著者、#責任著者)
掲載誌: Research Involvement and Engagement
掲載巻・記事番号: Volume 12, Article 125 (2026)
DOI: https://doi.org/10.1186/s40900-026-00955-9
論文URL: https://link.springer.com/article/10.1186/s40900-026-00955-9
東京大学医科学研究所 プレスリリース
「難病・希少疾患研究に、患者と家族はどう参画できるのか――医学研究への『患者・市民参画(PPI)』について、難病・希少疾患の患者・家族212名にオンライン調査――」
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00412.html
近年、医学研究の計画や実施の段階から患者・市民が関与する「患者・市民参画(PPI)」が国際的に広がってきており、日本でも2019年に日本医療研究開発機構(AMED)が「患者・市民参画(PPI)ガイドブック」を公表するなど、研究費や一部の疾患ごとの政策の枠組みに取り入れられてきました。一方、国内の取り組みは主に研究者に向けられたものであり、患者や家族の側がPPIをどのように受け止めているかを直接調べた研究は限られていました。
とりわけ患者数が少ない難病・希少疾患は、診断や治療の改善が研究の進み方に大きく左右される領域です。同時に、患者や家族と研究とをつなぐ役割を患者会(患者アドボカシー団体)が担ってきました。そこで本研究では、難病・希少疾患の患者と家族が、PPIをどの程度知っているか、どのようなメリットと障壁を感じているか、どのような支援を必要としているかを調査しました。
2021年12月から2022年4月にかけて、難病患者・家族の全国的なネットワーク2団体を通じてオンラインによる質問紙調査を実施し、難病・希少疾患の患者本人101名、家族111名の計212名の回答を分析しました。
その結果、調査前から「患者・市民参画」という言葉を知っていた人は29.7%、実際にPPIに関わった経験のある人は20.8%でした。性別、学歴、患者本人か家族か、患者会への参加について検討したところ、PPIの認知と関連していたのは患者会への参加のみでした。ただし、患者会に参加している人でも66.9%はPPIを知らず、患者会や患者コミュニティという経路には、PPIに関する情報や参画の機会を伝えるうえで、さらに活かせる余地があることが示されました。
また、ほぼすべての回答者がPPIに何らかのメリットがあると答え、最も多かったのは「疾患の研究が進展するかもしれない」(84.9%)という期待でした。PPIを進めるために必要な支援としては、「PPIの情報の社会一般への周知」(69.3%)、「患者・家族に対する教育の機会」(68.9%)、「医療機関などでの情報の掲示」(68.9%)が多く挙げられました。
患者本人と家族を比較すると、PPIのメリット、障壁、必要な支援の3つの領域それぞれで、一部の項目に違いがみられました。家族は患者本人に比べて、疾患の研究が進展することや患者・家族の視点がより生かされることをメリットとして挙げる割合が高い一方、医学や研究に関する知識が足りないことを障壁として挙げる割合や、「患者・家族に対する教育の機会」を必要な支援として挙げる割合も高くなっていました。
これらの結果は、難病・希少疾患の患者と家族がPPIに価値を認めていながら、情報やサポートが十分に届いていないことを示唆しています。難病・希少疾患領域でPPIを実質的なものにするためには、PPIを制度上「推進する」と定めるだけでなく、情報提供、学びの機会、患者会や患者コミュニティへの支援を、参画の前提条件として位置づけることが重要です。また、患者本人と家族を一括りにせず、それぞれの立場に応じた参画の機会と支援を用意することも求められます。
*本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)(JP25oa0439006、JP22bm0904002)、厚生労働行政推進調査事業費補助金(26FC2003)、日本学術振興会科学研究費助成事業(JP26K05274)の支援を受けて実施しました。
