書籍『遺伝性の病いとともに生きるーー球脊髄性筋萎縮症患者と保因者の経験』を刊行しました(木矢)
2026/04/10
このたび、ナカニシヤ出版より『遺伝性の病いとともに生きるーー球脊髄性筋萎縮症患者と保因者の経験』が刊行されました。
本書は、球脊髄性筋萎縮症(きゅうせきずいせいきんいしゅくしょう)という遺伝性疾患の患者および保因者の方々へのインタビュー調査を通じて、遺伝性の病いとともに生きることの経験について描いた一冊になります。
本書の特徴は、遺伝性の病いの経験を「人生の途上」という視点から描き出した点にあります。遺伝性の病いや遺伝学的リスクに関する問題が人生の途上で浮上するとき、人びとは結婚や出産のあり方、家族との関係、自己の生の意味づけを問いなおし、人生を再構築していきます。本書では、その過程における遺伝学的リスクの意味づけ、「遺伝学的責任」の多様なあり方、そしてリスク論的な思考に収まりきらない生のありようを、個別の語りを通して明らかにしています。
人生の途上で自己と遺伝性疾患が結びついた患者や保因者が、自分たちの病いや遺伝学的リスクをどのように受容し、意味づけてきたのか——分析の際に心がけたのは、それぞれの意味づけや判断には、その人なりの固有の論理があるということです。他者からすると一見非合理に見える選択であったとしても、本人の中では一定の論理を持つものとして意味づけられていることを読み手にも伝わるように努めました。
これまで球脊髄性筋萎縮症の患者や保因者の声は、学術的にはほとんど知られていませんでした。本書において取り上げている語りは一部に過ぎません。ただ一部であったとしても、その声を学術的に可視化できたことについては嬉しく思います。ぜひ手に取っていただけますと幸いです。
最後になりましたが、調査にご協力いただいた皆さま、患者会である「SBMAの会」、様々な場でご助言・ご指導いただきました先生方、そして研究仲間に、心より御礼申し上げます。
