6月の公共政策セミナー

2023/06/14

6月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

 

◆日時: 2023年6月14日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催
◆Web参加方法: 学内の方は、共有カレンダーのURLからご参加下さい。

 
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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:胡 錦程(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程)
タイトル:ポストフェミニズムにおける中国の独身女性が構築する新しい母子関係
要旨:近年、中国では婚姻率の低下と、未婚女性の出産に対する意欲の高まりが注目されている。未婚女性たちは卵子凍結や生殖補助医療を通じて積極的に出産を検討しているものの、伝統的な価値観や法的な保障の不足により、これが容易ではない。本研究では、未婚のまま子供を持つことを選択した中国の女性を対象としている。具体的には、「未来家Family」という家族の多様性や女性の選択肢をサポートするネットコミュニティのメンバーの15人に、半構造化インタビューを行う予定である。これにより、未婚女性たちがどのように出産と育児に関する権利(リプロダクティブ・ライツ)を確保し、新しい母子関係を築いているかを探る。これにより、ポストフェミニズムにおける家族形態の多様性を明らかにし、先行研究で指摘される「構築される母性」による抑圧を超え、ケアの倫理に基づいた母性の積極的な価値を見出すことを目指す。この研究は中国社会における家族の在り方と女性の未婚出産の関連研究に新しい視点を提供し、女性のリプロダクティブ・ライツを支持し、家族の多様性を促進するための政策提言につながる可能性がある。
⇨指定発言:高嶋 佳代(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 博士後期課程)

◆報告2
報告者:
井上 悠輔(公共政策研究分野 准教授)
タイトル:死後脳バンクをめぐる検討
要旨:精神・神経疾患の研究の一環として、疾患・健常の脳が使用される。脳は解剖によって摘出する必要があることから、その入手は研究者にとって必ずしも容易ではなく、国内外で「ブレインバンク」が設置されてきた。死後脳を対象とした研究は、その倫理的、社会的な課題のほか、死者への研究者のアクセスに関する法的な課題にも直面してきた。公的な研究倫理指針において、「死後の研究参加」に関する言及はほとんどなされておらず、古い法文の解釈や慣行、医療者・医療機関への信頼、遺族の理解によって活動は支えられていると言って良い。近年では、本人の(生前の)提供意思の登録制度に注目が集まっているが、その理論的な位置付けや社会発信のあり方には課題も残されている。これらの状況をJBBNプロジェクトを基に紹介しつつ、生前登録制度の参加者調査の進捗にも言及する。
⇨指定発言:佐藤 桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程)