5月の公共政策セミナーは以下のように行われました。
◆日時: 2023年5月10日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催
◆Web参加方法: 学内の方は、共有カレンダーのURLからご参加下さい。
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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:北尾 仁広(公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル:臨床試験等における重篤な有害事象等の法的正当化をめぐる課題
要旨:治験・臨床試験(以下、「臨床試験等」)には、望ましくない副次的結果(被害者の死亡その他の重篤な有害事象等)が生じるリスクが常に随伴する。このこと自体は自明なことではあるが、この自明なリスクが現実化した場合、実験者の行為を(刑)法的に正当化するにはいくつかの困難を克服しなければならない。具体的には未必の故意に基づく故意殺人罪や、リスクの存在を認識しながら敢行したことに伴う傷害致死罪などの成立を否定するだけの明白で確固とした論拠が求められる。最も頻繁に用いられる論拠として、「インフォームド・コンセント」や「患者の同意」といった、患者側の了解が挙げられる。しかし、刑法202条(嘱託・承諾殺人)や、危険運転において好意同乗者に死傷結果が生じた場合も運転者は刑法上免責されないという支配的見解を念頭に置くと、患者側の了解それ自体を直接の論拠と見てよいか疑わしさが残る。そこで本報告では、1)「患者の同意」の法的性格を簡単に整理したうえで、2)特にいわゆる「危険引受け」の観点から臨床試験等における患者の自己決定それ自体を「優越的利益」として具体化する必要性を示す。
⇨指定発言:井上 悠輔(公共政策研究分野 准教授)
◆報告2
報告者:島﨑 美空(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士後期課程)
タイトル:日本のゲイの人々の子をもつ意識及び生殖補助医療に対する態度
要旨:我が国において、性的マイノリティの家族形成、特に子をもつことを保障する法律や体制は十分でなく、また性的マイノリティ当事者の見解が社会政策に反映されているかは不明である。さらに性的マイノリティの家族形成については欧米諸国や台湾で調査の実施例があるが、国内では特にゲイの人々を対象とした研究はない。そこで、未だ明らかでない日本のゲイの人々の子をもつ意識及び生殖補助医療技術 (ART: Assisted Reproductive Technology)利用に対する態度を調査した。そして当事者の意識を可視化し、どのような因子がゲイの人々の子をもつ意識に影響を及ぼしているのかを日本の社会的背景から検討することを目的とした。日本在住のゲイの人々10 名を対象として、調査参加者の子をもつ意識及び ART 利用に対する態度を明らかにするために半構造化インタビューを実施しその語りを、子をもつ願望、子をもつ意図、ART利用に対する態度の3つのトピックに分類し、それぞれについてMayringの質的内容分析を用いて分析した。なおこの研究は発表者の修士研究であり、今回のセミナーではこのインタビュー調査の結果を報告するとともに、博士研究への展望を発表する。
⇨指定発言:胡 錦程(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程)