2022年度第6回公共政策セミナー

2022/11/09

2022年11月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

日時: 2022年11月9日(水)13:30~16:00
場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

〈報告概要(敬称略・順不同)〉

報告1

報告者: 永井 亜貴子(公共政策研究分野 特任助教)
タイトル: 遺伝情報の取り扱いに対する態度と法規制のニーズ(仮)

要旨:

2019年のがん遺伝子パネル検査の保険適用など、近年、日本国内においてもゲノム医療が普及し始めている。諸外国では、個人の遺伝的な特徴に基づく不適切な取り扱いを法律で規制する国も多いが、日本ではそのような取り扱いを禁止する法律は存在しない。また、国内においては、社会における遺伝的な特徴に基づく差別の実態や、遺伝情報の利用に関する市民の懸念についての調査が少なく、その実態は明らかではない。そのような背景のもと、市民を対象として、2017年および2022年に、遺伝情報の利活用に関するインターネット調査を実施した。
本報告では、遺伝的な特徴に基づく不適切な取り扱いの経験や、遺伝情報の利用に関する懸念等の態度、遺伝情報の取り扱いに関する法規制のニーズについて、5年間の変化も含め報告する。

⇨指定発言:李 怡然(公共政策研究分野 助教)

報告2

報告者: 井上 悠輔(公共政策研究分野 准教授)
タイトル: データ研究の倫理と「グループハーム」の検討(仮)

要旨:

米国の連邦規則45CFR36は、当国の議論のみならず、我が国を含む他国の研究倫理の規範形成において大きな影響を及ぼしてきた。この規則における、許容される研究のあり方をめぐる規定については以前から議論がある。特に、研究の事前審査において「研究から得られる知識の応用による長期的影響の可能性を,その責任の範囲内の研究上の危険の要素として,考慮に入れるべきではない。」(「研究に関する倫理承認の基準」)とされる点である。研究の事前審査の段階で、研究がもたらしうる影響をあまりに広げて検討すると、研究活動自体が大きな制約を受けかねないとの発想が背景にある。一方、この点は、研究結果の影響が参加者個人にとどまらない研究(例:コミュニティ対象研究)、最近では、機械学習を用いたデータ解析の文脈から、批判されている。報告者は、この議論は日本のデータ研究を取り巻く、いくつかのトピックにも通じる点があると考える。本発表は、「グループハーム」をめぐる議論を手がかりに、この問題を振り返り、今後の検討のための論点を整理したい。

⇨指定発言:木矢 幸孝(公共政策研究分野 特任研究員)