2022年度第1回公共政策セミナー

2022/05/11

2022年度 第1回公共政策セミナー

本日第1回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時: 2022年5月11日(水)13:30~16:00

発表者1: 原田 香菜(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: 英国の生殖補助医療・胚研究に関する制定法とヒト配偶子の位置づけの変遷~Yearworth判決を契機として

要旨:

英国では、ヒトの配偶子および胚を用いた生殖補助医療の実施、研究におけるヒト配偶子・胚の取り扱いについて、Human Fertilisation and Embryology Act 2008 (HFEA 2008と略称)により定められる。わが国でも2020年12月、ようやく生殖補助医療特例法が制定されたが、配偶子・胚の提供等についての行為規範、そして実施情報の保存・管理・開示等に関する仕組みは未整備である。英国HFEA 2008と制度の成り立ち、およびヒト配偶子の法的性質・その保管契約について示した近時の判例をとおして、今後、わが国で生殖補助医療・ヒト胚研究について横断的かつ連続的な法規制を設けることの適否、そして規律のあり方について検討する端緒としたい。

発表者2: 亀山 純子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: 医療AIの研究開発・実践に伴う倫理的・法的・社会的課題に関する研究

要旨:

医療におけるAIブームの中核ともいえるディープラーニングを含むニューラルネットワークの基礎は、人工知能という言葉が生まれる以前に存在していた。1943年には、Waren S. McCullochとWalter J. Pittsによって人工ニューロンが発表されたが、この応用として注目を集め、期待されたのが医療分野であった。第3次AIブームが画像認識分野を中心に始まったことは有名であるが、超高速高精度で自律的に情報処理を可能とするAIは、医師の診断の高速化と精度向上を支援するツールとして期待されている。今後は、これまでの診断のみならず、予防や治療といった側面でのAI活用を推し進める研究開発もさらに規模を拡大していくものと思われる。一方で、AIによる解析においては、患者の個人情報の二次利用にあたって、必要な匿名加工に関して定めた「次世代医療基盤法」への適応も留意した上で慎重に進める必要がある。AI活用が、国民の理解と社会の受け入れを得られるような、より安全で有益なものとして進展されることを望む声も高まっている。今回、日本人市民を対象とした調査研究によって得られた成果を報告する。