2021年第2回公共政策セミナー

2021/06/09

本日第2回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:6月9日13時半~16時

発表者1: 飯田 寛(大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程)
タイトル: 労働分野でのゲノム情報の取扱いをめぐる諸課題に関する研究-対象とするゲノム情報とは何か-

要旨:

諸外国では、遺伝的特徴に基づく差別を防止するという観点からゲノム情報を保険や労働で利用することは、米国での遺伝情報差別禁止法(GINA)(2008)のほか、近年ではカナダでの遺伝情報差別禁止法(2017)、中国での人類遺伝資源管理条例(2019)などのように原則として禁止している国がある。一方、日本では法規制は存在しない。今後、ゲノム医療が普及することにより、遺伝学的検査の結果などのゲノム情報が労働者自身や労働者の主治医等から産業医あるいは健康保険組合に提供される機会が増加する可能性があるが、事業者と産業医、健康組合がどのような問題意識を持っているか、ゲノム情報の利用実態などは明らかでない。今回の発表では、アドバイザーより指摘のあった当研究にあたってのゲノム情報は何を対象とするのかの問いに対し、ゲノム情報例外主義とその批判の先行文献から対象とするゲノム情報を紐解いてみたい。

発表者2: 佐藤桃子(大学院学際情報学府文化・人間情報学コース 博士後期課程)
タイトル: 科学研究の成果発表における「人種」という用語の使用

要旨:

第二次世界大戦以降、優生思想への反省から、raceという概念は科学的基盤を持つヒトの区分ではなく、文化的・社会的構築物であるという考え方が広まった。一方、疫学や遺伝学は、集団ごとの特徴に着目することによって、遺伝的要因・環境的要因と疾患の関連性を明らかにしてきた。その集団を指す際も、1950年代頃から、populationやethnicityといった用語が使用されるようになっている。しかし、日本においてはraceという用語および、ヒト集団を指すpopulationが、いずれも「人種」という用語にまとめて翻訳される事例が現在においてもしばしば見受けられる。これは新聞記事などだけでなく、大学や研究機関のプレスリリースにおいても同様である。

本発表では、日本語の「人種」も科学的文脈では可能な限り使用せず、言い換えていくべきではないかという問題意識に基づき、国外および国内の経緯と現状に関する先行研究を紹介する。その上で、日本の遺伝関連学会における「人種」およびその代替と考えられる用語の使用についてサーベイを行う研究計画について発表を行いたい。