2020年第7回公共政策セミナー

2020/12/02

本日第7回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:12月2日13時半~16時頃

発表者1: 張 有沙(東京大学大学院学際情報学府文化・人間情報学コース修士課程修士課程)
タイトル: 日韓における新型コロナウイルス感染拡大対策アプリの社会的位置づけ:感染拡大防止とプライバシーリスクのバランスをめぐって

要旨:

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、スマートフォンアプリを活用する対策が世界各国で進められている。日本・韓国はともに、最初の大規模な感染拡大(第1波)の制御後、それまでの封じ込め対策から緩和対策への方向転換において、国による感染拡大対策アプリの導入がなされた。導入から5カ月が経過した現在、日本ではその有効性に疑問が呈されている。対して韓国は、アプリを含めた様々な政策によって感染者制御に成功した国として評価されている。日本と韓国のアプリは、その設計において「プライバシー保護」の観点から明確な違いがみられる。プライバシー保護への最大限の配慮をうたうCOCOAに対して、韓国のアプリは個人の同意を要しない追跡・特定・監視を可能にした。果たして、感染拡大防止のために、市民のプライバシーリスクをどこまで受容できるのだろうか。日本は2021年の東京オリンピック開催を目指し、更に市民の生活に踏み込んだ対策の検討が進められている。先んじて市民のプライバシー保護よりも感染拡大防止を優先させてきた韓国との比較を通じて、スマートフォンアプリを用いた日本の感染防止策のあり方を検討したい。本報告では、日本・韓国市民を対象とした質問紙調査を前に行った、両国のプリ導入の経緯、感染症対策法におけるプライバシー保護・人権保護の取り扱い、ITC政策実績の比較を共有する。

発表者2: 須田 拓実(東京大学大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻修士課程)
タイトル: 医療における「通訳」の役割と音声翻訳ツールへの期待・懸念

要旨:

外国人医療における課題の一つに「言語」がある。医療者/医療機関は可能な限り多言語対応を行いつつ、より外国人患者の医療アクセスを認めるべきとする議論があったが、一方で医療者の負担が大きくなる等の課題が指摘されてきた。そのような中、音声翻訳アプリ・デバイスへの期待が高まり、医療現場での利用を想定したツールの開発・普及が推進されてきた。しかし、通訳倫理の中での「医療通訳者(人間)の役割」に関する議論を踏まえた、今後の医療通訳者と音声翻訳ツールそれぞれの在り方の検討は進んでいない。本報告では、医療通訳者の役割や音声翻訳ツールへの期待・懸念について、医師を対象に実施した調査の結果を共有し、音声翻訳ツールの主たるユーザーである医師が外国人患者対応で認識している課題やニーズを検討する。