2020年第6回公共政策セミナー

2020/11/11

本日第6回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:11月11日13時半~16時頃

発表者1: 井上悠輔(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 准教授)
タイトル: 感染症法における「国民の責務」とコロナ禍

要旨:

感染症への政策対応の一環として、市民個々人の果たすべき役割が改めて注目されている。公衆衛生における自助努力と強制との境界はときに曖昧である。また、こうした自発的な努力を求める姿勢は一方でvictim-blaming(被害者非難)につながりやすいとの指摘(Holland S. 2007)は、残念ながら現状にも当てはまっているように思える。この話題提供では、感染症法第4条の「国民の責務」の規定を素材に、我が国の感染症が辿ってきた経緯を、特に感染症法成立前後の制度の比較を軸に検討する。特に留意したいのは、共同体の一員としての個々人にはどのような役割や責任が期待されるのか、という点である。感染症法は、過去の出来事の反省が込められた法律である(少なくともそう謳っている)。一方、当時想定していなかった点、十分に議論できていなかった点も見受けられ、コロナ禍に学ぶものも多くある。罰則の強化をめぐる議論もある中、改めて感染症と市民の役割を考える時間としたい。

発表者2: 永井亜貴子(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任助教)
タイトル: 都道府県におけるCOVID-19に関する情報公表の実態と課題

要旨:

厚生労働省は、2020年2月27日の地方自治体への事務連絡で、COVID-19を含む感染症法上の一類感染症以外の感染症に関わる情報公表について、エボラ出血熱の国内発生を想定して作成された「一類感染症が国内で発生した場合における情報の公表に係る基本方針(以下、基本方針)」を踏まえ、適切な情報公表に努めるよう求めている。日本では、地方自治体が公表した情報や報道により生じたCOVID-19のスティグマが問題となっていると報告されているが(Yoshioka and Maeda,2020)、地方自治体がCOVID-19に関してどのような情報を公表しているかは明らかではない。本報告では、都道府県におけるCOVID-19に関する情報公表の実態について調査した結果を報告し、情報公表における課題について整理・検討を行いたい。