2019年第9回公共政策セミナー

2020/02/12

本日第9回公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2月12日10時~12時半頃

発表者1: 李 怡然(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: 遺伝性腫瘍に関する家族内での情報共有の課題点

要旨:

報告者はこれまで、家族内における遺伝情報に関する「リスク告知」というテーマについて、遺伝性腫瘍を事例に取り組んできた。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)は、予防・治療法といった対処可能性(actionability)の高い代表的な遺伝性腫瘍であり、疾患の早期発見や予防のために、積極的に血縁者と情報を共有することが、医療専門職の学会ガイドライン・指針等で推奨されている。これまでの遺伝性疾患に関する先行研究では、親から子に伝える葛藤や困難に着目することが多かったものの、患者からきょうだいや親世代を含む親族、友人や職場など家族外へ打ち明ける際の課題点は、十分明らかにされていない。本報告では、HBOC患者が、家族らと情報共有を行うことにどのような態度を有しており、相手からの反応によって生じるジレンマにどう向き合っているのか、インタビュー調査の結果を紹介し、情報共有における課題点を検討したい。

発表者2: 井上 悠輔(東京大学医科学研究所 公共政策研究分野 准教授)
タイトル: 非倫理的な研究論文の原稿の取扱いについて

要旨:

2018年の中国での胚ゲノム編集に関する報告は様々な波紋を呼んできた。本発表では、先月号のネイチャー・バイオテクノロジー誌のエディトリアルを素材としつつ、特に発表倫理との関係から検討したい。この試行については、学術的に十分に評価されていないこともあって、様々な憶測を呼んでいる。最近、この研究者らが投稿していた原稿の一部が第三者に流出したことが確認され、新たな論点となっている。プロセスに課題の多かった研究で得られた知識をどのように取り扱うべきか。研究倫理における過去の議論と2015年の拙稿を振り返りつつ、今回の出来事を整理して、その位置づけを図りたい。