2017年度第7回公共政策セミナー

2018/01/17

本日、2017年度、第7回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2018年1月17日(水)13時30分~16時00分

発表者1: 高嶋佳代(東京大学医科学研究所・公共政策研究分野・特任研究員)
タイトル: 中央倫理審査体制構築ー英国倫理審査委員会改革の歴史より

要旨:

現在日本の医学研究に関わる審査体制に様々な動きが認められているが、そのひとつとして、地域審査や中央審査体制の構築が想定されている。海外に目を向ければ、施設型の審査委員会を運用してきたアメリカも、2017年のコモンルールの改訂で中央審査が提示されており、中央化は日米の審査委員会改革の一つのキーワードといえよう。

しかしながら、例えば地域委員会を想定している日本の特定認定再生医療等委員会は、設置数や地域委員会としての明確な規定がなく、自施設の審査のみを行う委員会も許容されているなど、結局その立ち位置は委員会によって大きく異なる。

他方、現在は倫理審査に関して中央管理体制をとっている英国は、施設審査委員会の体制から、1990年代以降地域化そして中央化への試行錯誤をすすめ、成果を見せている。現在中央化にむけて舵を切りつつある日本にとって、英国の約30年の経験を日本の状況に即しつつ参考にすることは、今後に予想される問題を想定し、人的負担を含むコストを適切に活用しつつ、効率的で適切な改革をすすめるための一助となる可能性がある。

本発表では、英国を取り上げる理由を明確にした上で、英国での中央化における問題や、それらへの対応について取り上げ、日本の倫理審査の適切化への提案を示したい。

発表者2: 武藤香織(東京大学医科学研究所・公共政策研究分野・教授)
タイトル: 先住民族を対象とする研究の倫理

要旨:

本報告では、現在、取り組んでいる2つのテーマ(遺伝的特徴に基づく差別、研究への患者・市民参画)の現状を簡潔に報告するとともに、これらの研究とも通奏低音をなす「アイヌを対象とする研究の倫理」について取り上げる。

「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(2007)を受けて、日本ではアイヌの人々を含めた「アイヌ政策推進会議」を司令塔とする施策が進んでいるが、アイヌ研究のあり方も課題のひとつである。アイヌ研究には、アイヌの人々の「既存試料」を用いる研究(ゲノム解析を含む)から伝統・習俗、現代のアイヌの暮らしを対象とする研究まで幅広い学問領域がある。従来、アイヌへの説明や発掘への同意確認、成果の還元が欠けていたことへの反省から、北海道アイヌ協会、日本人類学会、日本考古学協会の間では、事前の研究倫理審査を導入する合意がなされている。

だが、日本で先住民族を対象とする研究の倫理は十分議論されてこなかった。本報告では、国の研究倫理指針で欠けている配慮事項、アイヌの人々による研究参画のあり方に関する課題を述べる。