科学技術社会論学会で発表しました(井上)

2016/11/06

今年最初の大雪の中、北海道大学で開催された科学技術社会論学会で、口頭発表を行いました。テーマは最近何かとはやりの「人工知能」です。

「人工知能」という言葉は決して新しい言葉ではありません。人に代わって複雑で困難な問題や状況に自動的に対応できるシステムの可能性は、これまでも語られてきました。現在は、コンピュータおよび関連技術の発展に支えられ、歴史的には3回目の技術革新の時代にあるといわれています。一方、こうしたシステムが人のコントロールを離れて、場合によっては人に危害を加えることがあってはいけません。制度論・学術的にも、何をもって「人工知能」といい、どこにどのような線を引くのか、これ自体も難問です。

このセッションは会計業務、棋士、医療など、人が主に動かしてきたそれぞれの専門的な領域において、「人工知能」がどう語られているのか、また近い将来直面する課題としてどのようなものが考えられるか、多面的に検討することを目的としていました。

私のテーマは、人の体のゲノムデータを踏まえた解析・診断の場面での諸問題です。ゲノムデータは人では処理しきれないほどの量・種類に及んでおり、こうした情報を解析し、医師の診断を支援する機能には多くの期待があります。こうした機能が健全に展開されるよう、付随する倫理的、法的な問題にはどのようなものが考えられるか、整理する作業が必要です。例えば、こうした装置をどう検証し、誰が用いるべきか。これらのシステムの構築・発展に必要な医療情報をどう確保するのかという点も、個人情報保護との関係で問われてくるでしょう。

私は、昨年の生命倫理学会でも、技術転用のあり方をめぐって、アメリカの軍事開発におけるautonomous weapons(自律型兵器)に関する口頭発表を行い、責任の所在や、機械が置き換わってよい範囲をめぐる議論を紹介しました。科学技術のいい部分を引き出し、またこれをしっかり使いこなして、よりよい生活・生き方へと導くような展開を期待したいですね。1月からは「人工知能の医療応用」という観点で、日本医師会での検討が始まる予定です。

(井上)