2016年度第7回公共政策セミナー

2016/11/01

本日、2016年度、第7回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2016年11月1日(火) 14時30分~16時00分

発表者1: 藤澤空見子(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程)
タイトル: 遺伝カウンセリングにおける科学的知識の位置づけ-非侵襲的出生前遺伝学的検査を中心に-

要旨:

遺伝カウンセリングは情報提供と心理支援をもとに、クライエントの意思決定を支援していくプロセスである。このプロセスの中で、情報提供(特に遺伝学などに関する科学的知識)はどのような位置付けにあるのだろうか。

この疑問を明らかにするため、本邦の認定遺伝カウンセラーを対象にweb上のアンケート調査と半構造化面接を行った。その結果、遺伝カウンセリングの目的は「その人なりの理解」をもとに意思決定を行うことであり、提供する情報量の凸凹や情報の完全な理解はあまり重要視されていないことがわかった。あくまでも判断材料としての情報提供であり、情報提供は心理支援の中に包括されるという位置付けで認識されていた。また、この位置付けに関する認識は、調査の中で明らかになった、遺伝カウンセリング提供体制の施設ごとのばらつきとも関わりがあることが示唆された。さらに、心理支援に包括される情報提供という構図は、特に電話対応においてその特徴が見いだされる可能性があることもわかった。

遺伝カウンセリングにおいて、提供する情報の完全な理解や納得に至ることがゴールではなく、判断材料としてクライエントに扱ってもらうことが情報提供側の意図するところであった。その先の意思決定はクライエントの多様な価値判断に委ねられ、過程に応じて情報の補填や心理支援が行われる。認定遺伝カウンセラーはクライエントに寄り添い、彼らの意思決定のときにそばにいる存在であるが、また一方で、網羅的に情報の整理や確認ができるクライエントにとって効率的な存在でもあると言えるだろう。

発表者2: 佐藤桃子(大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程)
タイトル: 出生前遺伝学的検査のガバナンスの変遷

要旨:

胎児の染色体異常の一部を出生前に検出する出生前遺伝学的検査の技術は、より母体への負担を減らし、精度を上げる方向で技術革新がなされてきた一方で、倫理的問題も提起してきた。倫理的問題に対応した規制と実践が試みられてきたが、1990年代に登場した母体血清マーカー検査と、2010年代に登場した非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)では、ガバナンスのあり方が大きく異なる。
本研究では、母体血清マーカー検査とNIPTのガバナンスのにおける、専門家の視点を検討する。具体的には、それぞれの検査を規制している見解や指針の議事録を中心に国内外の文献を検討し、産婦人科医を中心とする専門家が果たしてきた役割や、検査技術への期待・懸念などを明らかにすることで、今後の技術のガバナンスに知見を提供する。