2016年度第6回公共政策セミナー

2016/10/05

本日、2016年度、第6回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2016年10月5日(水) 13時00分~16時00分

発表者1: 中田はる佳(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: マンスフィールド-PhRMA研究者プログラム 2016参加報告

要旨:

モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団は、日本の医薬品開発に携わる研究者を対象として、米国におけるトランスレーショナルリサーチ、保健医療政策、医薬品研究開発、レギュラトリーサイエンスの分野で学ぶ「マンスフィールド-PhRMA研究者プログラム」を提供している。今回、9月11日から23日の2週間、本プログラムに参加してきたのでその内容を報告する。

発表者2: 高嶋佳代(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: 患者・市民主導の医学研究がもたらす倫理的課題

要旨:

本報告の目的は、研究者主導の医学研究に対して、患者や市民が研究参加者として参加もしくは参画するのではなく、研究のある局面を患者や市民が主導するという研究へのアプローチに関して、概念整理を行った上で、それぞれの倫理的課題を明らかにすることである。
この数十年にわたり、当事者のニーズに即した医学研究を促進することの重要性が、特に欧米において政策面もしくは患者会などから着目されてきた。このような流れのなかで、研究に関わる当事者のニーズを検討するために、研究者主導研究に研究対象者として参加する立場であった患者や市民に対して、研究のあらゆる過程に参画することが促進されてきている。本報告で着目するのは、さらなる別の動きとして、患者や市民が医学研究に必要なリソースの確保や研究計画の立案、研究の実施など、研究のさまざまな局面の一部または複数部分を主導するというアプローチについてである。支援団体からの研究資金支援などは従来から行われてはいたものの、近年このようなアプローチが注目されるようになってきた背景として、クラウドソーシングやソーシャルネットワーク、プラットフォームといったITツールの普及の影響が大きいと考えられている。くわえて、研究に興味を持つ市民に対して研究支援を行うボランティア組織や、スマートフォン等を活用した研究が促進されている中で、本アプローチは広く普及していく可能性を秘めているといえよう。
しかしながら、このようなアプローチに関する倫理面での先行研究は、これらのアプローチを事例として紹介しつつも、十分に概念整理がなされないまま倫理的課題を検討するにとどまっている。
そこで本報告では、まず患者・市民主導の医学研究がもたらす倫理的課題を明らかにするために、これらのアプローチが3つに区別できることを示す。すなわち、資金調達を担うものと、研究参加者のリクルートを担うもの、そして研究計画の立案や実施などを担うものである。さらに、従来の研究者主導の医学研究とは異なる倫理的課題が、それぞれの区分によって異なる論点で示されることを提示する。