【院生室より】BSA Medical Sociology Annual Conferenceに参加してきました

2016/09/24

すっかり秋の気配が深まり、果物の美味しい季節になりました。
食欲と睡魔との闘いに日々苦戦する、D1の李怡然です。

9月7日から9日にイギリス、バーミンガムのアストン大学にて開催されたBritish Sociological Association(BSA) Medical Sociology Study Group 48th Annual Conference 2016に参加してきました!
イギリス社会学会の中には40を超える部会がありますが、その中でも医療社会学部会は最大の規模を誇り活発的に活動をしているグループの一つだそうです。

今回私は修士論文で行った出生コホート研究に参加する母親と父親へのインタビュー調査について、8日のEthics(倫理)のセッションにて以下のタイトルで発表を行いました。

Izen Ri, Eiko Suda, Kaori Muto
“How Parents Try ‘telling’ Child Participants about Research Participation: A Case Study of a National Birth Cohort Study in Japan”

親は子どもに、出生コホート研究に参加していることについて、誰と、何を/どのように伝えるつもりがあるのか、語り方のパターンやその背景となる親の参加認識に着目して分析した報告です。

イギリスは1940年代と古くより政府による出生コホート研究のプロジェクトが幾度も行われてきた国ということもあり、BSAで発表するのはよい機会でした。

英語で口頭発表するのは初めての経験でしたので、事前に予演の機会や発表のアドバイスなど皆さんからサポートをいだきました。現地では共著者の客員研究員・須田さんからの助けをいただきました。緊張で一杯でしたが、気持ちを落ち着かせるためにイングリッシュ・ティーを飲みつつ発表に臨みました。

実際に参加してみると、英語がなかなか聞き取れず冷や汗をかき・・・質問に十分に返答できなかったな、もっとここの部分を伝えたかったな、と歯がゆい思いもしました。それでも、論文を読んでお会いしたいと思っていた先生からコメントをいただき、関連するテーマで発表されていた別の報告者とも交流することができ、とても貴重な経験になったと思います。

ほかにも「健康と病いの経験」、「ライフコース」、「市民と健康」、「スクリーニングと診断」と題されたセッションをはじめとして多くのプログラムがあったのですが、想像以上に多様なテーマで研究が展開されていることを知りました。たとえば認知症、乳がんや慢性疲労症候群の患者さんと家族の語りの分析は興味深かったですし、一般市民/患者の医療・研究への参画、公衆衛生やヘルスケア制度に関する課題など、日本の医療社会学ではあまり多く聞かないようなテーマは新鮮で勉強になったと思います。

今回の学会参加を通して、海外へ向けて研究を発信する上での課題が見えてきました。たとえば日本語でインタビューしたものを訳したときに微妙なニュアンスをどう伝えるか、親子関係のあり方など文脈の違いに注意すること。と同時に、そうした違いはあれど共通する探求課題が多いことも実感しました。とても刺激になる経験でしたので、ぜひ今後に生かしていきたいと思います。

学会期間中は大学の寮に泊まったのですが、キャンパスが広く(初日はさっそく迷子に)芝生が青々と茂っていました。また、現代的な建築があるかと思えば、古い教会や建物がすぐ隣に並ぶような不思議な街並みで、街歩きも楽しかったです。

(D1・李怡然)