医師組織の在り方について論じた拙稿が掲載されました(神里)

2016/09/16

医療の質・安全学会誌(Vol.11 No.3(2016))に、拙稿「医療の質を確保・向上させるために医師組織はどうあるべきか─医師会と弁護士会の歴史から学ぶこと─」が掲載されました。
2004年に医師会の設立・加入体制の構築経緯を歴史的に考察した論文を発表したのですが※、今回の論文は12年(!)の時を経ての続編となります。
※神里(所)彩子:GHQ占領期における医師会の設立・加入体制の構築経緯,日本医史学雑誌50巻2号:243‐274,2004.

平成25年8月、日本学術会議「医師の専門職自律の在り方に関する検討委員会」が『全員加盟制医師組織による専門職自律の確立-国民に信頼される医療の実現のために-』(以下、日本学術会議報告書)を発表し、その中で法定の全員加盟制医師組織「日本医師機構(仮)」の設立を提言しました。日本学術会議の委員会がこのような提言を出したことは画期的なことと言えます。しかし、法律に基づく全員加盟制の医師組織が設置されれば医療の質は確保・向上するのでしょうか?また、医療の質の確保・向上のためには医師組織はどうあるべきなのでしょうか?
本稿では、この問いへの答えを探るべく、日本学術会議報告書の概要を見た上で、全員加盟制医師組織であったこともある「日本医師会」「医師会」、そして、その比較材料として、医師と同じく高度専門職である弁護士の組織である「日本弁護士会」「弁護士会」の設立・加入体制の概要およびその経緯を検討しました。そして、医師は高度専門職である以上、自律性を備えた全員加盟制の医師組織は必要であるが、加入が義務づけられることになる個々の医師の合意と強い覚悟がなければ適正に機能させることは難しいことを論じました。
どのような医師組織が必要なのか、医療の質と関係することなので、医師のみならず、医療の受け手である私たちも考えていかなければならない問題だと思います。