2015年度第12回公共政策セミナー

2016/03/02

本日、2015年度、第12回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2016年3月2日(水) 10時00分~12時30分

発表者1: 高嶋佳代(東京大学医科学研究所公共政策研究分野 特任研究員)
タイトル: 眼科疾患における幹細胞臨床研究の倫理的問題

要旨:

新規治療法開発の実施には、その新規性に特有の問題に着目される傾向がある。例えば、iPS細胞の臨床研究においては、細胞の特性から造腫瘍性が一番の検討事項となっている。それゆえ、はじめてヒトに実施した眼科疾患の研究が、iPS細胞臨床研究全体の安全性の検証のステップとしても、大きな役割を担うこととなった。確かに、眼科領域は観察やアプローチが容易であり、致死的疾患ではないことなどの理由で、細胞治療における新規治療法開発での安全性の検証としては妥当な選択かも知れない。しかしながら、その新規性に注目が大きく集まったが故に、眼科疾患への新規治療法開発を行う上で、着目すべき倫理的課題が影を潜めた可能性がある。

そこで今回、文献検索、眼科疾患の患者会での議事録などを元に分析を行い、眼科疾患における幹細胞臨床研究の倫理的問題を検討する。

発表者2: 佐藤桃子(学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程)
タイトル: ターナー症候群と出生前診断

要旨:

2015年4月、NIPTコンソーシアムから、NIPT対象疾患の拡大の要望が日本産科婦人科学会に出された。現在はコンソーシアムが当面拡大はしないと述べているが、日本の出生前診断において対象疾患の拡大が議論されたのは初めてであり、この議論は日本の専門家が出生前診断をどう捉えているかを明らかにする契機だと考えられる。

拡大対象の候補には、臨床的症状は重篤でないものの、不妊の症状を呈することの多い性染色体異常が含まれていた。そこで本発表では、拡大対象の候補となった、女性に多い性染色体異常であるターナー症候群に焦点を当て、その病態と遺伝カウンセリングの現状を紹介し、修士論文に向けた問題意識を明らかにする。