出生前診断の倫理観の歴史に関する論文が掲載されました(佐藤)

2016/02/22

2016年1月に公刊された『哲学・科学史論叢』第18号に下記の論文が掲載されました。

「羊水検査に対する産婦人科医の倫理的見解:1969年9月から1978年3月の言説分析」(佐藤桃子)

この論文は昨年提出した卒業論文を下敷きに、「羊水検査が導入された1970年代、検査を実施していた産婦人科医たちは検査を倫理的にどのように捉えていたのか?」という問題意識で執筆したものです。

現在、出生前診断の受診や選択的中絶の倫理的問題は、検査の対象者であれば、遺伝カウンセリングなどで担保された両親の自己決定によって決められるとされています。ですが、その「自己決定」がどのような文脈で生まれたかについては、最初の出生前診断である羊水検査まで遡ってみる必要があります。
そこで、主要な産婦人科系ジャーナル3誌から羊水検査の倫理的側面を指摘した論文を抜き出し、言説分析の形で検討を試みました。
その結果、患者が権利運動で「自己決定」を求めてきたアメリカなどと異なり、日本では、羊水検査の実施に対して起きた批判に応答する形で医師たちが「自己決定」を提唱したことを述べました。

短い研究生活のほとんどを占める期間で追ってきたテーマです。今後は、未来の出生前診断に目を向けて研究を進めて行きたいと思っております。