2015年度第9回公共政策セミナー

2016/01/20

本日、2015年度、第9回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

◆日時:2016年1月20日(水) 10時00分~12時30分

発表者1: 須田英子 (国立環境研究所・子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)コアセンター・特別研究員)
タイトル: 「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」概要と倫理的諸課題

概要:

環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」は、全国15か所の調査地域にて約10万人の参加児を追跡調査する出生コホート研究である。エコチル調査では、一般集団の子どもを調査対象とすること、胎児期に妊娠中の母親の代諾によって調査に参加いただくことなどを背景とした倫理的・法的・社会的課題が存在する。これらへの対応における配慮事項が、出生後13歳になるまでの追跡期間における参加児の心身の成長にともない変化していくことも大きな課題である。また、環境化学物質の健康影響を中心に据えた環境省による調査であることを背景として、従来国内で行われてきた医学研究やゲノム研究と異なる側面を持っていることも特徴であり、これに関連した倫理的課題も存在する。発表では、エコチル調査の概要と現状、これまでに経験した倫理的課題の一部を紹介する。また、昨年度より開始した参加者/参加児とのパートナーシップ構築へ向けた基礎調査について、進捗状況を報告する。

発表者2: 李怡然 (大学院学際情報学府 文化・人間情報学コース 修士課程2年)
タイトル: 出生コホート研究における親から子への「告知」―インフォームド・アセントを手がかりに

概要:

近年、子を胎児期から成長後の長期にわたって追跡する出生コホート研究が世界的に実施されており、日本においても10万人を対象とする全国規模のプロジェクト「エコチル調査」が現在進行中である。未成年の研究参加者を保護するために、親の代諾だけでなく子本人の意思確認を行うべきだとされるようになり、研究者に対し、子から「インフォームド・アセント」(informed_assent)を得る努力義務が定められるようになってきている。出生コホート研究においても、成長後に子本人の意思確認を行うことが重要な検討事項とされているが、誰が、どのように子に伝えるかについては先行研究で十分に検討されていない状況にある。そこで、本研究ではインフォームド・アセントの出発点として、親が子に対し研究参加について伝える過程=「告知」(telling)があると想定し、エコチル調査に参加する親への質的調査を通して、子への告知に対する態度や希望を明らかにした。今回の発表内容は、1月下旬に予定されている学際情報学府修士論文口述審査のドラフトをもとにしている。