遺伝子検査を買おうかどうか迷っている方へのチェックリスト の続報(武藤)

2016/05/26

2016年5月26日追記

本10か条について、日本医師会が本年4月1日に公表された、『かかりつけ医として 知っておきたい遺伝子検査、遺伝学的検査 Q & A 2016』でもご紹介いただきました。余りにも個人活動だったので、お探しいただくのが難しいかと思い、再度アップした次第です。第89回日本産業衛生学会学術集会でも紹介させていただきました。


2015年12月13日追記

日本遺伝子診療学会「遺伝子診断・検査技術推進フォーラム 公開シンポジウム2015」で紹介させていただきました。


2015年6月17日追記

日本医師会学術推進会議の講演で紹介させていただきました。


2014年11月20日記載

2014年10月3日にアップロードした10ヶ条ですが、大変多くの応援をいただきました。本当にありがとうございます。

11月9日、JSTサイエンスアゴラ 2014「身近になった遺伝子検査」で紹介させていただきました。

10月26日に、日本経済新聞にて、「病気の傾向 知って予防 健康管理の助言も」という記事の中でご紹介いただきました。

また、11月9日に開催されたサイエンス・アゴラ2014の「身近になった遺伝子検査 みんなで付き合い方を考える」では、消費者、教育者、メディア、遺伝子検査事業者、行政、研究者等、多様な立場が集まって議論をしましたが、「企業の方にも活用してほしい」という後押しを頂きました。

そこで、調子に乗って第2版を作成しました! 若干文言を修正したり、検査終了後のデータベース利用について追加したりしました。また、今回は、大学院生の小林智穂子さんがかわいいイラストを大急ぎで描いてくれました。

本日の11月20日の日本人類遺伝学会の教育講演で少し披露してみましたが、聴衆の皆様から応援していただいたように思います。

PDF版は、こちらからダウンロードしてください。
テキスト版は、この下にあります。

ご活用いただくとともに、引き続き、ご意見をお待ちしています!


昨今、体質や病気、能力、容姿など、様々な「遺伝子検査」に関する宣伝に触れる機会が増えてきました。しかし、もし購入しようとするときには、いくつか考えて頂きたいことがあります。「購入する」ボタンをクリックする前に、あるいは、医師やエステ等で勧められて「買います!」という前に、セルフチェックしてみてください。

① 診断ではありません
現在、あなたが直接購入できる遺伝子検査は、現在の体調に関する医師の「診断」とは全く違います。あくまでも将来に関する「確率の情報」であって、あなた自身がその病気に将来かかるか/かからないかは、わかりません。

② 会社によって答えはバラバラです
あなたの遺伝情報の並び順は、一生変わりません。しかし、その遺伝情報と、病気や体質との関わりを示す確率の計算式は、遺伝子検査を販売している企業によって大きく異なり、その計算式は企業秘密となっています。もし複数の会社の遺伝子検査を買ったら、異なる確率の結果が返ってくるでしょう。そのつもりでお付き合いを。

③ 研究が進めば、確率は変わります
現在、販売されている遺伝学的検査は、まだまだ研究途上のものも含まれています。研究が進めば進むほど、病気や体質との関わりを示す確率や解釈は、大きく変わっていきます。そのつもりでお付き合いを。

④ 予想外の気持ちになるかもしれません
検査結果を読んで、精神的なショックを受けたり、誤解したりしてしまう可能性があります。申し込む前に思っていたのとは違う、予想外の気持ちや感情がわいてくることもあります。

⑤ 知らないでいる権利の存在を知りましょう
遺伝医療の世界では、遺伝学的検査の結果を「知らないでいる権利」という考え方を大切にしてきました。仮に購入した後であっても、あなたには、届いた情報を開封しない自由があります。知った後は、知らなかった状態には戻れません。でも、まあ、見なかったことにして、棄ててしまうのも自由です!

⑥ 自分で知ろうと決めたなら、医師に頼るのはやめましょう
検査結果を読んでも、よくわからなかったときに、安易に医師に頼ろうと思わないでください。あなたが購入した商品(検査)の提携先医療機関以外の、一般の診療所や病院は、この商品のアフターサービスを求める場所ではありません。もし家族も同じ病気だったなど、遺伝に関して心配な場合には、遺伝の専門外来をあらためて予約するのも手です。

⑦ 血縁者と共有している情報を大切に扱いましょう
あなたの遺伝情報はあなたのものでもあるけれども、あなたと生物学的につながりのある人たちとも共有している大切な情報です。だから、遺伝子検査は、血縁者(あなたが思っている人とは違う人かもしれません)にも影響を与える結果を示します。結果をSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)に晒したりするのは、絶対にやめましょう!

⑧ 強制検査・無断検査はダメ、プレゼントにも不向きです
気になるからといって、家族、交際相手、友達、上司・部下など、あなた以外の人のDNA(を含む身体物質)を無断で入手したり、他の人に遺伝学的検査を受けるよう強制したりしてはいけません。結果を見せるように要求するのもNGです。本人が望んでいるかわからないのに、サプライズとしてプレゼントしないほうがよいでしょう。

⑨ あなたのDNAやゲノムのデータの行方に関心を持ちましょう
検査終了後、あなたのゲノムのデータやアンケートへの回答内容を、データベースに格納し、学術研究や次のビジネスに活用する事業者もあり、そのことはあなたに説明されているはずです。事業者によっては、データベースの活用法に意見を述べる機会が与えられ、「顧客参加型研究」に一役買うことができるかもしれません。でも、同意していても、あなたには、「自分のデータを使ってほしくない」と伝える権利もあります。

⑩ 子どもには、大人になって自分で選べる権利を残しましょう
特に未成年者の遺伝情報は、しっかり保護してあげることが成人の務めです。子ども向けの遺伝子検査や、子どもとの血縁関係を調べる鑑定も、日本では販売されています。しかし、そうした検査や鑑定を受けることが、本当にそのお子さんのためになるのかどうか、単に親の興味や都合が理由ではないのか、よーくよーく考えてください。