遺伝子検査を買おうかどうか迷っている方へのチェックリスト Ver.1.1(武藤)

2014/10/03

昨今、体質や病気、能力、容姿など、様々な「遺伝子検査」に関する宣伝に触れる機会が増えてきました。しかし、もし購入しようとするときには、いくつか考えて頂きたいことがあります。2012年に、経済産業省から、「こんな検査を受けようとしている貴方に」というパンフレットも出されていますので、ご参照ください。

私は、遺伝子検査による倫理的法的社会的な問題について研究をしてきましたが、このパンフレットとは別の表現で、ぜひ一度、考えて頂きたいと思うこと・10か条を書きます。「購入する」ボタンをクリックする前に、あるいは、医師やエステ等で勧められて「買います!」という前に、セルフチェックしてみてください。

※色々な方のご意見を聞いてバージョンアップしようと思っていますので、ぜひお聞かせ下さい!(10月6日追記)
※Ver.1.1=ご意見を頂き、小見出しをいれました。(10月7日追記)

  1. 診断ではありません
    現在、あなたが直接購入できる遺伝子検査は、現在の体調に関する医師の「診断」とは全く違います。あくまでも将来に関する「確率の情報」であって、あなた自身がその病気に将来かかるか/かからないかは、わかりません。
  2. 会社によって答えはバラバラです
    あなたの遺伝情報の並び順は、一生変わりません。しかし、その遺伝情報と、病気や体質との関わりを示す確率の計算式は、遺伝子検査を販売している企業によって大きく異なり、その計算式は企業秘密となっています。もし複数の会社の遺伝子検査を買ったら、異なる確率の結果が返ってくるでしょう。そのつもりでお付き合いを。
  3. 研究が進めば、確率は変わります
    現在、販売されている遺伝学的検査は、まだまだ研究途上のものも含まれています。研究が進めば進むほど、病気や体質との関わりを示す確率や解釈は、大きく変わっていきます。そのつもりでお付き合いを。
  4. 予想外の気持ちになるかもしれません
    検査結果を読んで、精神的なショックを受けたり、誤解したりしてしまう可能性があります。申し込む前に思っていたのとは違う、予想外の気持ちや感情がわいてくることもあります。
  5. 知らないでいる権利の存在を知りましょう
    だから、遺伝医療の世界では、遺伝学的検査の結果を「知らないでいる権利」という考え方を大切にしてきました。もし仮に購入してしまった後であっても、あなたには、届いた情報を開封しない自由があります。
  6. 知った後は戻れません
    何でもそうですが、知った後は、知らなかった状態には戻れません。でも、まあ、見なかったことにして、棄ててしまうのも自由です!
  7. 自分で知ろうと決めたなら、医師に頼るのはやめましょう
    検査結果を読んでも、よくわからなかったときに、安易に医師に頼ろうと思わないでください。あなたが購入した商品(検査)の提携先医療機関以外の、一般の診療所や病院は、この商品のアフターサービスを求める場所ではありません。
  8. 血縁者と共有している情報を大切に扱いましょう
    あなたの遺伝情報はあなたのものでもあるけれども、あなたと生物学的につながりのある人たちとも共有している大切な情報です。だから、遺伝子検査は、血縁者(あなたが思っている人とは違う人かもしれません)にも影響を与える結果を示します。SNSに晒したりするのは、絶対にやめましょう!
  9. 強制検査・無断検査はダメ、プレゼントにも不向きです
    気になるからといって、家族、交際相手、友達、上司・部下など、あなた以外の人のDNA(を含む身体物質)を無断で入手したり、他者に遺伝学的検査を受けるよう強制したりしてはいけません。結果を見せるように要求するのもNG。本人が望んでいるかわからないのに、サプライズとしてプレゼントしないほうがよいでしょう。
  10. 子どもには、大人になって自分で選べる権利を残しましょう
    特に未成年者の遺伝情報は、しっかり保護してあげることが成人の務めです。子ども向けの遺伝子検査や、子どもとの血縁関係を調べる鑑定も、日本では販売されています。しかし、そうした検査や鑑定を受けることが、本当にそのお子さんのためになるのかどうか、単に親の興味や都合が理由ではないのか、よーくよーく考えてください。