本人の意思の確認が困難な試料の取扱いに関する事例調査(井上)

2014/01/02

Journal of Medical Ethics誌に下記の論文が掲載されました。

Tsujimura-Ito T, Inoue Y, Yoshida KI. Organ retention and communication of research use following medico-legal autopsy: a pilot survey of university forensic medicine departments in Japan, J Med Ethics, in press(doi:10.1136/medethics-2012-101151).

この調査は、当事者の意思を確認することが困難な試料、いわゆる“legacy samples”の取扱いをテーマにしています。我々は、日本全国の法医学関係教室を対象として、法的な要件に基づく遺体試料の二次利用について質問紙調査を行いました。調査には約6割(48施設)が回答に協力して下さいました。調査の結果、回答施設の約4割が、保管試料についての遺族からの問い合わせを経験していることがわかりました。研究者の発意に基づく研究利用について、約2割の施設が遺族への情報提供を進めている一方、約7割がこうした情報提供について消極的であったり、方針について結論に達していないと回答しました。今日、公衆衛生事業や医療の文脈で採取された試料の転用をめぐる判例が海外で再び注目されていますが、日本を舞台とした本調査は、本人の意思を確認できない「遺留試料」を事例とした点に特徴があり、配慮すべき利益・懸念の認定と均衡のあり方を今後の課題として結んでいます。本調査の速報版はJME誌のウェブサイトからアクセスできます。またこの論文についてのコメントが、井上が在外研究で滞在しているウプサラ大学の研究室のサイトでも紹介されました。