2013年度第6回公共政策セミナー 「人間の尊厳の生物学主義的解釈と個人の尊厳」

2013/12/25

本日、2013年度、第6回目の公共政策セミナーが開かれました。
内容は以下の通りです。

日時: 12月25日(水)10時~12時
報告者: 丸 祐一(公共政策研究分野特任助教)
タイトル: 「人間の尊厳の生物学主義的解釈と個人の尊厳」

概要:

臨床研究に関する倫理指針が平成20年に改正された折、前文の一部が変更された。「被験者の個人の尊厳及び人権を守る」という文言が、「被験者の人間の尊厳及び人権を守る」という文言に変わったのである。臨床研究における被験者保護は、通常、研究に参加する具体的な被験者が可能な限り不利益を受けないようにすることを目的としているが、改正後の「人間の尊厳」をそのような意味として解釈することはただちには難しい。というのも、「人間の尊厳」という言葉は、「類」としての人間性の尊厳を指すものとしても解釈できるからである。人の生殖細胞系列に介入する遺伝子治療及びその研究や、ドイツにおける「胎児判決」において問題とされるのはこの意味での「人間の尊厳」であり、個人を超えた「類」としての人間の尊厳を根拠にして、国家や個人による科学技術の行使を制限しようとする際に使われている。ここにおいて、例えば憲法学では、個人の尊厳と人間の尊厳(生命の尊厳)との対立が論じられているところである。歴史的に見れば、人間の尊厳を人の生命の尊厳に結びつける考え方は比較的新しい考え方である。本シンポジウムでは、この新しい考え方を人間の尊厳の生物学主義的解釈と位置づけ、具体的な個人の尊厳を尊重することとといかなる関係を持ちうるのかを検討する。法学・法哲学の文脈でこれまで語られてきた法における尊厳の語られ方について振り返り、あまりに多義的になったことから「空虚」ともいわれつつある本概念について改めて整理する。