第一回・第二回 生命倫理映画鑑賞会(楠瀬)

2013/01/17

アメリカに留学していた頃、映画を通して生命倫理の諸問題を考えるイベントがあり、参加したことがあります。著名な教授が、ポップコーン持参でやって来られ、鑑賞後は物語を通して投げかけられる問題に、学生と一緒になって様々な視点から議論して下さりました。学生にとっては、楽しみなイベントでもあり、教授と議論できる貴重な場でもありました。

そのような経験から、院生の佐藤さんと昨年から生命倫理に関する映画の鑑賞会を始めました。第一回目は2012年11月29日『終の信託』、第二回目は2013年1月4日『最強のふたり』で、両方とも武藤先生がご一緒下さり、鑑賞後はご飯を食べたり、お茶を飲んだりしつつ、映画の感想を語り合うことができました。

Cinema/Film Educationは、アメリカでは有効な教育手段の一つとして生命倫理分野でも用いられています。最初にご紹介したのは、ペンシルバニア大学生命倫理学修士課程の例ですが、その他にもスタンフォード大学のProgram in Bioethics and Filmでは、生命倫理における映画と教育に関して研究が行われています。また、イギリスのThe Scottish Council on Human Bioethicsのウェブサイト中のBiomedical Ethics Film Libraryには、生命倫理関係の映画リストが掲載されています。これらは全て英語ですが、日本語では熊本大学大学院生命科学研究部浅井篤先生他の、「映画を通して考える生命倫理」授業に関する報告や、『シネマの中の人間と医療―エシックス・シアターへの招待』が参考になると思います。他にも検索して頂くと、生命倫理関係の映画を紹介しているサイトを見つけることができます。

今後もできればこのような映画鑑賞会を継続できればいいなと思っています。

-楠瀬まゆみ


映画紹介

『終の信託』
周防正行監督・脚本、2012/ドラマ、PG-12 指定、144分

ストーリー:
終の信託、それは命の終わりを信ずるものに託すこと
1997年、天音中央病院。折井綾乃(草刈民代)は、患者からの評判も良い、呼吸器内科のエリート医師。しかし、長い間、不倫関係にあった同僚医師の高井(浅野忠信)に捨てられ、失意のあまり自殺未遂騒動を起こしてしまう。そんな綾乃の心の傷を癒したのは重度の喘息を患い入退院を繰り返していた江木秦三(役所広司)の優しさだった。綾乃と江木は心の内を語りあい、医師と患者の枠を超えた深い絆で結ばれる。しかし、江木の病状は悪化していった。自分の死期が迫っていることを自覚した江木は綾乃に懇願する。「信頼できるのは先生だけだ。最期のときは早く楽にしてほしい」と。
2か月後、江木は心肺停止状態に陥る。江木との約束通り延命治療を中止するのか、患者の命がある限り延命の努力を続けるのか…。「愛」と「医療」の狭間に揺れる綾乃は重大な決断を下す!
3年後、その決断が刑事事件に発展する。検察官・塚原(大沢たかお)は綾乃を殺人罪で厳しく追及。綾乃も強い意志でその追及に応える…。
(オフィシャルサイトより抜粋)

『最強のふたり』
エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督・脚本、2011/PG-12 指定、ドラマ、113分

ストーリー:
別世界に住むふたりが、まさかの友となる。事故で首から下が麻痺した大富豪と、彼を介護するスラムの黒人青年。最強のふたりが、無敵の人生に乗り出した。

ひとりは、スラム街出身で無職の黒人青年ドリス。もうひとりは、パリの邸に住む大富豪フィリップ。何もかもが正反対のふたりが、事故で首から下が麻痺したフィリップの介護者選びの面接で出会った。他人の同情にウンザリしていたフィリップは、不採用の証明書でもらえる失業手当が目当てというフザケたドリスを採用する。その日から相入れないふたつの世界の衝突が始まった。クラシックとソウル、高級スーツとスウェット、文学的な会話と下ネタ──だが、ふたりとも偽善を憎み本音で生きる姿勢は同じだった。
互いを受け入れ始めたふたりの毎日は、ワクワクする冒険に変わり、ユーモアに富んだ最強の友情が生まれていく。だが、ふたりが踏み出した新たな人生には、数々の予想もしないハプニングが待っていた──。
人生はこんなにも予測不可能で、こんなにも垣根がなく、こんなにも心が躍り、こんなにも笑えて、涙があふれるー。
(オフィシャルサイトより抜粋)