『生命倫理』に「研究に先立つ協議と自由意思による同意」に関する論文が掲載されました(佐藤)

2023/11/27

博士課程の佐藤です。『生命倫理』に「研究に先立つ協議と自由意思による同意(Free, Prior, and Informed Consent: FPIC)」に関する論文が掲載されました。

佐藤桃子、井上悠輔、武藤香織「FPIC(研究の開始に先立つ協議と自由意思による同意)概念の検討—アイヌ民族研究の倫理指針案を手がかりに—」『生命倫理』33号、2023年

現在、北海道アイヌ協会・日本人類学会・日本考古学協会・日本文化人類学会は「アイヌ民族に関する研究倫理指針」を策定中です。2020年12月に公表されたこの指針の案には、日本の研究ガイドラインで初めてFPICという概念が導入されているため、この概念の背景と日本に導入することの意義・課題を検討しました。

FPICは、元々は先住民族の土地やエネルギーの開発問題から生まれた概念です。国連を中心とした議論により、先住民族に関わる資源開発では事前に先住民族と協議することが求められるようになったのと同時期に、ヒトDNAの研究でもゲノムデータだけを搾取するような研究が問題視されたことから、ゲノム研究においてもFPICが言及されるようになってきました。FPICの理念を組み込んだ研究倫理ガバナンスの実践はカナダや台湾でも見られます。

この概念が日本に導入されると、日本で初めて研究倫理において個人に対するインフォームド・コンセントの枠組みを超えて、アイヌ民族の集団的な研究参画の権利が尊重されることになります。一方で、元々は先住民族の自治権から生まれたFPICが、研究参画の協議という形で実践されていくことになるため、ガイドラインの完成後も継続したモニタリングが必要と考えます。

この論文はまだデータベースに掲載されていないため、ご興味のある方はお問い合わせください。