7月の公共政策セミナー

2023/07/12

7月の公共政策セミナーは以下のように行われました。

◆日時: 2023年7月12日(水)13:30~16:00ごろ
(1報告につき、報告30min+指定発言5min+ディスカッション)
◆場所: 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター3階
公共政策研究分野 セミナー室/Zoom併用開催

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〈報告概要(敬称略・順不同)〉
◆報告1
報告者:高嶋 佳代(
大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士後期課程
タイトル:患者対象の革新的First in human試験における倫理的課題の探索
要旨:人を対象として臨床試験のなかでも、とりわけ既存の治療法とは大きく異なる革新的な技術を用いる治療法を初めて人に応用するFirst in Human (FIH)試験の場合、その治療法の侵襲性や性質などを考慮し、患者を対象とした試験が行われる。このような試験では、治療が必要な状態である患者に対して、試験に伴う不確実性や未知のリスクへの懸念も高い安全性試験を行うことになる。したがって研究対象者となる患者に対するリスク・ベネフィットと、社会的価値とのバランスをどのように検討すべきかについては、理論と経験をもとに慎重に考究する必要があると言えよう。本博士研究では、iPS細胞を世界で初めて人に応用した試験の審査に関する議事録分析と、試験に関連したメンバーや参加した患者を対象としたインタビュー調査をもとに、検討を行っている。本報告では、本研究の構成や分析手法、並びに進捗を報告する。
⇨指定発言:松山 涼子(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻修士課程)

◆報告2
報告者:渡部 沙織(公共政策研究分野 特任研究員)

タイトル:希少疾患のELSI課題に関する各ステークホルダーを対象とした質的調査
要旨:希少疾患を対象とする研究開発においては、患者人口の希少性がもたらす研究実施の困難さや開発の経済的市場性の低さ、患者や家族の社会的脆弱性、遺伝性疾患等に対するスティグマ、プライバシーへの繊細な配慮の必要性など、他の疾患にはみられない複雑な倫理的な課題が生じうる。国際的な希少研究のコンソーシアムであるIRDiRCで組織されたワーキンググループでは、各国が公募研究で取り組むべき希少疾患領域のELSI課題を、5つのカテゴリに分類している(Hartman et al. 2020)。本研究ではIRDiRCの分類を基にしながら、日本での具体的な課題について患者や関係者がどのような認識や概念を有しているかを探索的に検証するため、患者・家族、研究者、医療者、医薬品開発企業等、各ステークホルダーに半構造化インタビュー調査を実施した。本報告では、特に医薬品開発企業の希少疾患開発担当者のインタビューを中心に分析の結果と得られた示唆について報告する。
⇨指定発言:北林 アキ(大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻博士後期課程