【院生室より】日本産業衛生学会に参加してきました

2019/05/26

名古屋国際会議場で開催された第92回日本産業衛生学会に参加してきました。

この学会は主に産業医で構成されるものであり、私は主に労働者の両立支援(労働者が病気にかかっても継続して働くことを支援すること)をトピックとした口演、シンポジウム等を聴講しました。労働者からの視点では労働者の生き方の尊重及び収入の確保、事業者の視点では労働者の高齢化対応及び労働力の確保の点から両立支援の取組みは重要だと考えられています。特に65歳までにがんにかかる労働者は男女とも15%であり、そのうち30%が退職している実態の改善が求められています。厚労省が推進している対策としては、がん検診の啓発、会社全体が正しく知る、がんになっても働き続ける環境をつくる、というものです。産業医は労働者の相談の窓口として役割が期待されていますが、メンタル不調に関する窓口として産業医は認知されているものの、両立支援としての認知はまだ低いことが実態のようです。また、産業医は主治医の意見を参考に両立支援を講じますが、主治医は就業よりも治療優先で、産業医の存在を知らず、双方向のコミュニケーションがまだ構築されていないことが実態のようです。その他、子育支援の出来ている企業は両立支援も進んでいるといったような発表や不妊治療と就業の両立の困難さに関する発表などもありました。当学会に参加したことで、両立支援の実態とその中での産業医の役割とその課題の概要を把握することができたと思います。

私としては産業医が参照する健康情報にゲノム情報が加わった場合に、労働者のプライバシーを保護して、産業医がゲノム情報をもとにどのように発症前の労働者に寄り添い、発症後の両立支援を準備するのか、発症後にどのように両立支援をするのかに関心があります。引き続き、当学会の情報を含めて研究を進めていきたいと考えています。

学会に参加させていただきありがとうございました。

(D1 飯田寛)