IMSUT
Menu
ホーム
研究室の紹介
メンバー紹介
著作物リスト
大学院進学について
お知らせ
リンク集
研究室へのアクセス
ENGLISH
お問い合わせ
IMSUT ORE
BARRIER FREE
東京大学医科学研究所公共政策研究分野

文字の大きさ フォントサイズを大きく フォントサイズを小さく

ページ | << | 1 | 2 | 3 | >> |  / 全41件 3ページ

ヒト臓器産生を目的としたヒト-動物キメラ作製に関する一般市民の意識調査(試行)についての論文がAsian Bioethics Reviewに掲載されました(楠瀬)

2017/09/25

Asian Bioethics Reviewに下記の論文が掲載されました。

A Preliminary Study Exploring Japanese Public Attitudes Toward the Creation and Utilization of Human-Animal Chimeras: a New Perspective on Animals Containing “Human Material” (ACHM)

Kusunose, M., Inoue, Y., Kamisato, A., Muto, K.

Asian Bioethics Review (2017) https://doi.org/10.1007/s41649-017-0020-1

 

 慢性的に移植用ヒト臓器が不足するなか、iPS細胞等を用いた再生医療研究が進んでいます。その一つに、特定臓器を作製できないよう操作された動物胚に患者自身のiPS細胞を挿入して「ヒトー動物キメラ(ヒトの要素を持つ動物)」を作製し、患者の細胞でできた拒絶反応のない移植用ヒト臓器を産生するという研究が実施されています。

 我々は、2012年2月に、このような「ヒトー動物キメラ(ヒトの要素を持つ動物)」の作製と利用に対する一般市民の意識に関する質的調査を試行的に実施しました。対象は、首都圏在住の一般生活者24名で、20代~30代と40代~50代の男女6名ずつ計4グループに分け、事前に作成されたインタビューガイドに沿って資料を提示しながら、1グループ約2時間のフォーカス・グループ・インタビューを実施しました。インタビュー内容は逐語化され、データを発言毎にカテゴリー化し、分析しました。

 その結果、20代男性のグループを除いたその他のグループでは、医学的発展の重要性は認めつつも、たとえ自分や自分の子どもが移植が必要となったとしても「ヒトー動物キメラ(ヒトの要素を持つ動物)」の作製と利用に反対する態度が認められました。これらの人々は従来の「ヒトの要素を持つ動物」という視点ではなく、「私の要素を持つ動物」や「私の子どもの要素を持つ動物」という視点でヒト-動物キメラを捉え、単なる実験動物ではなく、自分や自分の子どもの細胞をもった特別な存在として位置づけていました。このような視点は先行研究では述べられていなかった視点です。

 本稿の最後では、今回のフォーカス・グループ・インタビューで得られた結果や新たな視点を元に、今後一般市民の理解を得ながらヒト臓器産生を目的としたヒトー動物キメラ作製研究を実施するために必要な事項について述べられています。

 

 

出生コホート研究の参加者調査の結果がHealth Expectations誌に掲載されました(李)

2017/09/22

D2の李怡然です。

Health Expectations誌に、下記の論文が掲載されました。

Izen Ri, Eiko Suda, Zentaro Yamagata, Hiroshi Nitta, and Kaori Muto. “Telling” and assent: Parents’ attitudes towards children’s participation in a birth cohort study. Health Expectations. 2017. DOI:10.1111/hex.12630

現在、世界各国で疫学の観察研究の一種である、出生コホート研究が実施されています。日本でも全国10万人の子どもを胎児期から13年にわたって追跡する「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」という大規模なプロジェクトが2011年から始まっています。
親が代諾して子どもが参加する、出生コホート研究を実施する上での課題として、研究者が成長後に子ども本人から「インフォームド・アセント(informed assent)」(=賛意)を得ること、そして「ディセント(dissent)」(=拒否)の意向を尊重することが重要だと、近年国際的に指摘されています。

ただし、インフォームド・アセントを得る以前に、研究参加に代諾した親から、子どもに研究参加について伝えるプロセス(“telling”「告知」)については、これまで着目されてきませんでした。そこで、「お母さんやお父さんは、いつ・誰と・どのようにお子さんにお話をするのだろうか?」という疑問から出発して、私たちはエコチル調査に子どもを参加させている、母親と父親に対面でのサーベイ調査およびインタビュー調査を実施しました。

結果として、子どもにとっての多様なベネフィットを見出し、研究参加を続けることを直接的・間接的に促す “directive telling”(「指示的告知」)をしたいと考える親が多くいることが分かりました。

もし仮に「指示的」な告知がなされやすいとすると、親が子どもに伝えるのをサポートするとともに、親自身も重要なポイントを確認できる素材を提供することが必要だと示唆されます。また、子どもの拒否の意向も含めて、意見を発信する機会を保障することも、研究者の責務と考えられます。もちろん、実際に親子の間でどんな会話がなされ、お子さんが成長過程の中で、どのような認識をもって育っていくのかは、これからフォローする中で明らかになることです。

最後になりますが、本研究に多くのご協力を賜りました、調査協力者の皆様と、エコチル調査、「エコチルやまなし」(甲信ユニットセンター)の皆様に深く御礼申し上げます。

 

 

「臨床薬理」誌に論文が掲載されました(臨床試験の語りプロジェクト・中田)

2017/09/19

臨床試験・治験の語りプロジェクトでインタビューを担当していた中田です。

先日、本ブログでお知らせした「臨床薬理」誌に受理された論文が掲載されました。

「患者の経験からみる臨床試験への参加判断とインフォームドコンセントの意義」臨床薬理. 48(2)31-39, 2017.

DOI: http://doi.org/10.3999/jscpt.48.31

本プロジェクトの大きな目標は2つでした。

1.臨床試験・治験に関わった方々の経験談を広く共有するために、データベースをつくる。

2.本プロジェクトで集めたインタビューを分析して得られた知見を発信し、今後の臨床試験実施体制の向上につなげる。

多くの患者さん、関係者の皆様のご協力により、1.のデータベースは2016年11月に完成・公開されました。

現在、インタビューにご協力いただいた多くの患者さんのお話を分析し、2.の成果を積み重ねているところです。

引き続き、本プロジェクトからの成果をご報告できるよう、メンバー一同取り組んでいきます!

(文責:中田はる佳)

 

 

 

 

医師組織の在り方について論じた拙稿が掲載されました(神里)

2016/09/16

医療の質・安全学会誌(Vol.11 No.3(2016))に、拙稿「医療の質を確保・向上させるために医師組織はどうあるべきか─医師会と弁護士会の歴史から学ぶこと─」が掲載されました。
2004年に医師会の設立・加入体制の構築経緯を歴史的に考察した論文を発表したのですが※、今回の論文は12年(!)の時を経ての続編となります。
※神里(所)彩子:GHQ占領期における医師会の設立・加入体制の構築経緯,日本医史学雑誌50巻2号:243‐274,2004.

平成25年8月、日本学術会議「医師の専門職自律の在り方に関する検討委員会」が『全員加盟制医師組織による専門職自律の確立-国民に信頼される医療の実現のために-』(以下、日本学術会議報告書)を発表し、その中で法定の全員加盟制医師組織「日本医師機構(仮)」の設立を提言しました。日本学術会議の委員会がこのような提言を出したことは画期的なことと言えます。しかし、法律に基づく全員加盟制の医師組織が設置されれば医療の質は確保・向上するのでしょうか?また、医療の質の確保・向上のためには医師組織はどうあるべきなのでしょうか?
本稿では、この問いへの答えを探るべく、日本学術会議報告書の概要を見た上で、全員加盟制医師組織であったこともある「日本医師会」「医師会」、そして、その比較材料として、医師と同じく高度専門職である弁護士の組織である「日本弁護士会」「弁護士会」の設立・加入体制の概要およびその経緯を検討しました。そして、医師は高度専門職である以上、自律性を備えた全員加盟制の医師組織は必要であるが、加入が義務づけられることになる個々の医師の合意と強い覚悟がなければ適正に機能させることは難しいことを論じました。
どのような医師組織が必要なのか、医療の質と関係することなので、医師のみならず、医療の受け手である私たちも考えていかなければならない問題だと思います。

 

 

出生前診断と国家の関係に関する報告が掲載されました(佐藤)

2016/09/12

2016年8月に刊行された『生物学史研究』No.94に下記の報告が掲載されました。

「出生前診断における国家の役割——羊水検査、母体血清マーカー、NIPTに対する国家の関与の分析」(佐藤)

この報告は、昨年9月に開催された「2015年度生物学史分科会夏の学校」にて発表したものです。
1970年代、1990年代、2010年代にそれぞれ登場した羊水検査、母体血清マーカー検査、NIPT(新型出生前診断)という検査技術に対し、厚生省・厚生労働省の委託研究がどのような視点からアプローチしてきたかを調査、整理しました。

その結果、委託研究は新しい個別の検査技術には左右されていないこと、一方で遺伝カウンセリングに関する研究は母体血清マーカー検査とNIPTが登場した時期にそれぞれ再開されていたことが分かりました。

修士論文では、特に母体血清マーカー検査とNIPTに関して、検査技術のガバナンスと厚生省・厚生労働省の関係性に着目する予定です。

 

 

『旅立ちのデザイン帖―あなたらしい”終活”のガイドブック』に寄稿しました(武藤)

2016/08/26

 NPO法人ライフデザインセンターによる『旅立ちのデザイン帖―あなたらしい”終活”のガイドブック』(亜紀書房)に寄稿させていただきました。結果的に上田紀行さん、上野千鶴子さん、鎌田 實さん、高橋 卓志さんという錚々たるメンバーに加えられて驚いています。
 寄稿したきっかけは、2010年に長野県にあるNPO法人ライフデザインセンターの「なんでもありの勉強会」で、受けたい医療に関する事前指示書を書くことのメリット・デメリット、事前指示書の運用に関するについて、話題提供したことでした。このたび本が出されることになり、お声がけいただいた次第です。
 時々、病院の職員に向けた臨床倫理の研修をお引き受けすることがあるのですが、常に DNR指示(蘇生処置拒否指示)と胃ろう装着の意思決定が話題にのぼります。生きていくための「終活」について、生活者の視点から様々な情報が掲載された分厚い一冊になっていますので、ぜひご覧ください。



 

 

意識調査の結果がCell Stem Cell誌に掲載されました(井上)

2016/08/20

動物の受精卵に人の細胞を組み込み、体の一部が生まれつき人間由来の細胞で構成される動物を産生する ― 現在、一部の研究者によってこのような手法が検討されています。この技術によって、人の臓器の発達を生体内に近い形で観察できたり、慢性的に不足する移植用の臓器を動物に作ってもらったりすることが可能になるかもしれません。大きな可能性がある一方で、人々がこうした活動についてどのように感じるか、実証的な調査がこれまでほとんどなされてきませんでした。

私たちは一般市民の方、日本再生医療学会の会員の方々の協力を得て、これら両群を比較できる追跡調査を行いました。結果は、人々の間にこの種の活動への慎重論が根強く存在することを示すものでした。こうした姿勢は、一般の方々による再生医療への支持の高さ、研究協力意欲の高さとは大きく異なっていました。また、同じ設問への日本再生医療学会の会員の方々の反応とも対照的な結果でした。

活動がたとえ科学・医療にとって有望なものであるとしても、研究開発の長い道のりをたどるうえで、こうした意識や認識の違いは研究者にとって大きな不安定要因となるはずです。現在、日本では上記の活動に従来課されてきた多くの制限を見直す議論が始まっていますが、制度論とは別に、粘り強く、誠実な情報発信に努めるなど、人々の懸念を特定し、少しでも認識の違いを埋めるための取り組みが科学者コミュニティに一層求められるでしょう。

Inoue Y, Shineha R, Yashiro Y. Current public support for human-animal chimera research in Japan is limited, despite high levels of scientific approval. Cell Stem Cell. 2016;19(2):152-3.
http://www.cell.com/cell-stem-cell/abstract/S1934-5909(16)30206-5

 

 

生殖補助医療における子への真実告知に関する論文が掲載されました(李)

2016/02/25

2016年1月31日に公刊された『保健医療社会学論集』26巻2号に下記の論文が掲載されました。

「配偶子提供で生まれる子への真実告知とインフォームド・アセント―不妊カウンセラーへのインタビューより―」(李怡然・武藤香織)

精子提供や卵子提供などの配偶子提供で生まれる子どもの「出自を知る権利」の保障とともに、その出発点となる真実告知(truth telling=親から子に伝えること)が重要とされてきています。国内では、真実告知は当事者家族の問題として任されてきた傾向がありますが、医療従事者や他の専門職との協働によって、中長期的に支援が可能となるのではないか、という論点で執筆しました。

卒業論文で実施した不妊カウンセラーへのインタビューデータをもとに、子への真実告知についての意識や経験に焦点を当てて再分析した結果を考察しました。
一般的に不妊カウンセラーは親となる不妊当事者カップルの支援を中心に想定されていますが、子の出生後まで想定したカップルの共同意思決定を促し、出生後も真実告知に携わる役割として期待できることが示唆されました。
小児科医療・研究では「インフォームド・アセント」(informed assent)という概念があり、医療者や研究者に対し、子に医療行為を分かりやすく説明した上で了承を得る、という努力義務があります。そこで真実告知においてもこの概念を援用し、治療に関わった医療従事者の協力も得て、親と子のカウンセリングや支援の整備につなげられるのではないか、という提案を述べました。

もちろん、これは現段階での展望であって、実際にどのような支援の形が可能となるのかは、これからの探求課題だなと思っています。
そして、「親から子にどう伝えるか」という課題は、生殖補助医療に限らず、養子縁組、出生コホート研究、遺伝性疾患...など家族にまつわる多くのテーマに関わってきます。修士論文では、出生コホート研究における告知をテーマとし、その過程で、生殖補助医療と似ている点も異なる点もあることが分かり、インフォームド・アセントという本稿で核となる論点に気付くことができました。どの問題も、当事者や家族の思いもさまざまあるだけに、簡単に「伝える/伝えない」だけでは片付けられないと思います。今回の考察をもとに、これからも考えを深めていきたいと考えています。

最後になりますが、この場を借りてインタビューにご協力下さったカウンセラーの皆様に、改めまして厚く御礼申し上げます。

 

 

出生前診断の倫理観の歴史に関する論文が掲載されました(佐藤)

2016/02/22

2016年1月に公刊された『哲学・科学史論叢』第18号に下記の論文が掲載されました。

「羊水検査に対する産婦人科医の倫理的見解 : 1969年9月から1978年3月の言説分析」(佐藤桃子)

この論文は昨年提出した卒業論文を下敷きに、「羊水検査が導入された1970年代、検査を実施していた産婦人科医たちは検査を倫理的にどのように捉えていたのか?」という問題意識で執筆したものです。

現在、出生前診断の受診や選択的中絶の倫理的問題は、検査の対象者であれば、遺伝カウンセリングなどで担保された両親の自己決定によって決められるとされています。ですが、その「自己決定」がどのような文脈で生まれたかについては、最初の出生前診断である羊水検査まで遡ってみる必要があります。
そこで、主要な産婦人科系ジャーナル3誌から羊水検査の倫理的側面を指摘した論文を抜き出し、言説分析の形で検討を試みました。
その結果、患者が権利運動で「自己決定」を求めてきたアメリカなどと異なり、日本では、羊水検査の実施に対して起きた批判に応答する形で医師たちが「自己決定」を提唱したことを述べました。

短い研究生活のほとんどを占める期間で追ってきたテーマです。今後は、未来の出生前診断に目を向けて研究を進めて行きたいと思っております。

 

 

「英国における倫理審査委員会の標準業務手順書」(翻訳版) (高嶋(佳))

2015/12/11

※ 12月12日に開催されました、第1回「研究倫理を語る会」のAndrew JT George先生がご講演のなかで本SOP日本語版ご紹介くださいました。

 近年、日本の臨床研究活性化に向けて様々な動きがある一方で、臨床研究に関する問題事案が発覚したことにより、規制や体制整備についての検討が行われていますが、なかでも被験者保護のための倫理審査委員会の役割は非常に重要と考えられています。
 そのような中で、本研究班メンバー(田代)が臨床研究における欧米諸国の制度に関する調査に関与し、英国(イングランド)の倫理審査委員会の標準化と質の均一化への取り組みが、日本における倫理審査委員会の改革に参考になるのではないかと持ち帰った事から、本英国研究倫理政策研究班が立ち上がりました。(研究班設立に関しては、本誌の4〜8頁をご参照下さい)
 英国における倫理審査委員会に関するガイダンスとしては「研究ガバナンス体制」と「研究倫理委員会ガバナンス協定」、そして標準業務手順書(SOP)の3つが運用の柱として存在します。その中で、日本の倫理審査委員会体制の改革にとっても、実務を担っている方にも役立てて頂けるものをということで、英国RECの実務には欠かせない本SOPの翻訳を行う事になりました。

 本SOPの翻訳作業を開始した当初は半年程度での完成を目指しましたが、英国の規制等を踏まえての内容や訳語の検討と再検討を繰り返し、更に全体の校閲作業に数ヶ月を要した事で、気がつけば完成までに約1年半の時間が経過し、幾度となく検討を重ねた訳語リストは300を超えました。
 そして、そうこうしている中で、英国では2015年1月に本SOPの改訂版が公開されており、その改訂版を手にしたときには、2014年に英国の保健研究機構 (HRA) に訪問した際に、「残念ながら、もうすぐ改訂版がでるよ」といたわるような微笑みとともに告げられた時の事が思い出されました。その改訂版(6.1版)では、欧州の臨床研究に関する規制の変化やHRAの業務内容の変更に伴う改訂、その他ITシステムの変更や業務整理、以前からの検討事項等に伴う改訂が行われています。ご興味のある方は、あとがきに示したHRAのHPのリンクをご参照下さい。
 研究班で最後の最後まで確認作業を行いましたが、もし誤訳やミスなどお気づきの点がありましたら、下記メールアドレスか、研究班のメンバーにご指摘頂けますと幸いです。そして、この翻訳版が倫理審査委員会の実務において、そして今後の日本の倫理審査委員会の改革に少しでもお役に立つことがある事を、研究班一同心より願っております。

 数に限りはございますが、冊子体を送付することができます。ご希望の方は、pubpoli@ims.u-tokyo.ac.jpまでお申し込みください。
PDF版をここからダウンロードしていただくこともできます。
※「英国における倫理審査委員会の標準業務手順書」作成にあたり、文部科学省科学技術試験研究委託事業「次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム」より財政的支援を得ております。ここに御礼申し上げます。

 

 

神里 彩子・武藤 香織 編集 『医学・生命科学の研究倫理ハンドブック』(東京大学出版会)を上梓しました(神里)

2015/10/21

 近年、度重なる研究不正の発覚を通して「研究倫理」が社会的に注目されています。
 そして、研究不正の再発防止策として研究倫理教育の重要性が叫ばれ、研究倫理に関する研修やe-learning等の受講が公的研究費申請条件にもなりました。
 一昔前は、「面倒臭い、研究を妨げるもの」として研究者から嫌われ者だった研究倫理。それが、ここ1~2年で急に株を上げ、今や研究者が異口同音に「大切!重要!」と言っています。
 でも、なぜ大切であり、重要なのでしょうか?
 「科研費申請に必要だから....」、心の中でそうつぶやく研究者は残念ながら多い気がします。
 何のために研究倫理を学ぶ必要があるのか、この点への理解がなければ研修や講義はただただつまらない時間になってしまいます。

 公共政策研究分野では、研究倫理に関する研究を進めるとともに、さまざまな大学や研究機関での講義、また、研究者への研修にも数多く携わってきました。特に東京大学大学院創成科学研究科においては、科目「研究倫理・医療倫理」を毎年担当させていただき、未来の医学・生命科学を担う学生に話をする機会を得てきました。
 そうした中、医学・生命科学研究分野の学生や若手研究者が「研究倫理」に対してマイナスなイメージを抱くことなく、「研究倫理」と仲良く付いながら研究できるように導くことがとても大切であると気づきました。仲良くお付き合いするには、まず相手のことを知らなければなりません。そこで、「研究倫理」に関する基本的な知識と感覚を学生や若手研究者に身につけてもらえる教科書を作りたい、そんな思いで作ったのが本書です。

 本書は3部構成になっています。第1部「人を対象とする医学・生命科学研究に関する倫理の基礎知識」では、研究倫理が誕生した歴史や、研究に人体試料を用いる場合の倫理的取り扱い、研究対象者(被験者)からのインフォームド・コンセントの取得方法、また、日本における人を対象とした研究の倫理的ルールの枠組みなど、研究倫理の「いろは」について解説しました。
 第2部「研究領域特有の倫理」は、応用編として、ゲノム医学研究や調査研究、臨床試験、幹細胞研究、脳神経科学研究といったそれぞれの研究領域に固有の倫理的配慮事項について、また、動物実験における倫理を紹介しています。
 そして、第3部「研究者としての倫理」では、実験が終了した後に研究者がとるべき行動や適正な研究発表、研究活動の信頼性を得るための行動など、研究者として行うべき倫理的行動について学べるようにしました。
 また、それぞれのレクチャーには、関連する事柄をコラムとして入れています。

 「研究倫理はなぜ重要なのか?」、このハンドブックを読んでいただければ、きっと答えが見つかるはずです。全編口語体にしていますので、手軽に読んでいただけると思います。
 また、研究者以外の方にも、研究倫理とはどういうものかを知るのにお役立ていただければ幸いです。

 東京大学出版会の住田様の多大なるご支援・ご助言がなければ、本書の誕生はあり得ませんでした。この場を借りて厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました!

 

 

再生医療実現化ハイウェイ・プロジェクトで行ったインフォームド・コンセント研修等についての論文が掲載されました。(楠瀬)

2015/08/18

South African Journal of Bioethics and Law に、下記の論文が掲載されました。

M Kusunose, F Nagamura, K Muto. Informed Consent in Clinical Trials Using Stem Cells: Suggestions and Points of Attention from Informed Consent Training Workshops in Japan. S Afr J BL 2015;8(2 Suppl 1):49-54. DOI:7196/SAJBL.8016

 2014年に世界に先駆けてiPS細胞を用いた臨床研究が実施され、再生医療への期待が高まっています。そのような中、患者さんに研究への参加をお考えいただくにあたって、リスクや利益等を含め研究について判断に必要な情報を提供し、治療との誤解を避け正しい理解のもと、自発的に参加を決めていただくというインフォームド・コンセント(IC)のプロセスの重要性は、被験者保護の観点からも高く認識されているところです。しかし、実際にどのように説明すればよいか、研究参加候補者の理解度や自発性をどのように図ればよいかといった実践的なICスキルを習得する場はそれほど多くありません。そこで我々は、2014年2回にわたりアメリカより講師を招いて、再生医療実現ハイウェイプロジェクトで研究におけるICに関与している方々を対象にし、役者に被験者候補者を演てもらってICを行うという、ロール・プレイ方式のIC研修を実施しました。
 本稿では、研修内容について報告するとともに研修から得られたICを行う上での留意点や、同じく2014に開催された患者会の皆さんとのワークショップの報告書から得られた、患者さんが研究参加にあたって知りたいと思う情報について検討し、ICを行う側のスキルの養成と教育の重要性について述べています。
 また本IC研修で用いられた研究の説明同意文書、患者情報提供書等については、テキスト化、ビデオ教材化の作業を開始しており、再生医療の文脈を超えてIC教育に利用できるようにしたいと考えています。

 

 

「研究参加者への結果の返却に関して」記録集ができました!(高嶋・吉田)

2014/11/05

研究参加者に対して、どのような結果を返却するべきかという問題に関して、研究領域毎に様々な議論がなされています。そこで、2014年3月5日に、CITI Japanプロジェクトの協力により、結果の返却に関して主要な論者の一人であるEllen Clayton氏をお迎えし、日本の若手ELSI研究者との対話型集会を開催いたしました。
この機会に、研究領域毎に閉じた議論をしてきた研究結果の返却をめぐる議論を、一度、「横串」にしてみるというのが、今回のコンセプトでした。Clayton氏の講演の後に、脳科学、ヒトゲノム解析研究、幹細胞治療研究という3つの異なる研究領域における論点を、日本の若手ELSI研究者から提示してもらい、フロアからのディスカッションも大変盛り上がりました。本記録集は、この集会のエッセンスをまとめたものです。

この記録集冊子の入手をご希望の方は、pubpoli@ims.u-tokyo.ac.jpまでお申し込みください。

PDF版をこちらからダウンロードできます。

※ この記録集作成にあたり、科学技術振興機構科学技術振興機構「再生医療の実現化ハイウェイ」における、「再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究」(課題D)より財政的支援を得ております。ここに御礼申し上げます。

 

 

「共につくる臨床研究~患者と研究者の対話から」報告書ができました(武藤)

2014/09/28

 このたび、日本網膜色素変性症協会(JRPS)とのご縁を頂き、日本で初めてiPS細胞の臨床応用に挑む高橋政代氏(理化学研究所)との対話に立ち会う機会を得ました。
 高橋氏は、加齢黄斑変性症を対象とした臨床研究からスタートし、やがて対象を網膜色素変性症(RP)にも拡大し、今から数年後に臨床研究の開始を検討しています。
 他方、JRPSの各支部のリーダー向けの研修会を企画する責任を負っていた有松靖温氏は、今からの数年間を、RP患者が臨床研究に備え、研究デザインも工夫するための「猶予期間」であると考え、患者と研究者の直接対話の機会を求めて訪ねてこられました。
 そこで、2013年10月30日に開催された、第9 回JRPS 関東甲信越ブロックリーダー研修会の場を借りて、この対話の機会を実現いたしました。この日の発言録をもとに、読者が追体験できるように再構成したのがこの報告書です。

 この報告書冊子の入手をご希望の方は、pubpoli@ims.u-tokyo.ac.jpまでお申し込みください。

 PDF版をここからダウンロードしていただくこともできます。

※ この報告書作成にあたり、科学技術振興機構科学技術振興機構「再生医療の実現化ハイウェイ」における、「再生医療研究における倫理的課題の解決に関する研究」(課題D)より財政的支援を得ております。ここに御礼申し上げます。

 

 

シンポジウム「日本のゲノムコホート研究とバイオバンクの倫理的課題―信頼と責任を考える」の記録集ができました(洪 賢秀)

2014/08/16

 2014年3月28日(金)に開催されました「オーダーメイド医療の実現プログラム」シンポジウム「日本のゲノムコホート研究とバイオバンクの倫理的課題―信頼と責任を考える」の記録集ができましたのでご案内申し上げます。

 本シンポジウムの開催に当たっては、同プログラムの「社会との接点ワーキング・グループ」のメンバーが中心となり準備をしてまいりました。日本を代表するゲノムコホートと、バイオバンク事業が抱えている倫理的諸問題やその対応など共通の課題を見出せたことは、今後のバイオバンク・ジャパンでの倫理支援を考えるうえで、大変勉強になりました。シンポジウムの課題について、議論が十分に尽くされていなかったところもありますが、約200名の方々に参加していただき、貴重なご意見を賜ることができました。深く感謝申し上げます。
 本シンポジウムでいただきましたご意見や諸課題を今後の議論につなげ、社会的議論として発展させていけることを願いながら、記録集としてまとめました。至らないところが多々あるかと存じますが、何卒ご指導のほど、宜しくお願い申し上げます。

「日本のゲノムコホート研究とバイオバンクの倫理的課題―信頼と責任を考える」の記録集のPDFファイルをここからダウンロードしていただけます(ファイルサイズは、6.93MBです)。

 なお、一部の図に不鮮明なところがございますことをご了承ください。数に限りはございますが、冊子体の送付をすることができます。ご希望の方は、下記までお問い合わせ下さい。

【お問い合わせ先】
東京大学医科学研究所 公共政策研究分野
担当 吉村
E-Mail:ppinfo@ims.u-tokyo.ac.jp

 

 

 

科学技術社会論からみた次世代シークエンサーの意味を問う論文が社会技術研究論集に掲載されました(荒内)

2014/04/15

次世代シークエンサー技術は、その解析速度が主に注目されていますが、この機器を研究室で制御し、適切に運用することについて、十分な議論がありません。この論文では、巨大科学をめぐる議論を参考に、次世代シークエンサーが研究環境に与える影響と、巨大化するゲノム科学について検討しました。

ゲノム解析技術の進展と課題-巨大化する医学・生命科学分野の技術

荒内貴子, 井上悠輔, 礒部太一, 武藤香織. 社会技術研究論集11: 138-148, 2014.

 

 

本人の意思の確認が困難な試料の取扱いに関する事例調査(井上)

2014/01/02

Journal of Medical Ethics誌に下記の論文が掲載されました。
Tsujimura-Ito T, Inoue Y, Yoshida KI. Organ retention and communication of research use following medico-legal autopsy: a pilot survey of university forensic medicine departments in Japan, J Med Ethics, in press(doi:10.1136/medethics-2012-101151).

この調査は、当事者の意思を確認することが困難な試料、いわゆる“legacy samples”の取扱いをテーマにしています。我々は、日本全国の法医学関係教室を対象として、法的な要件に基づく遺体試料の二次利用について質問紙調査を行いました。調査には約6割(48施設)が回答に協力して下さいました。調査の結果、回答施設の約4割が、保管試料についての遺族からの問い合わせを経験していることがわかりました。研究者の発意に基づく研究利用について、約2割の施設が遺族への情報提供を進めている一方、約7割がこうした情報提供について消極的であったり、方針について結論に達していないと回答しました。今日、公衆衛生事業や医療の文脈で採取された試料の転用をめぐる判例が海外で再び注目されていますが、日本を舞台とした本調査は、本人の意思を確認できない「遺留試料」を事例とした点に特徴があり、配慮すべき利益・懸念の認定と均衡のあり方を今後の課題として結んでいます。本調査の速報版はJME誌のウェブサイトからアクセスできます。またこの論文についてのコメントが、井上が在外研究で滞在しているウプサラ大学の研究室のサイトでも紹介されました。

 

 

「BMIについての倫理的・社会的問題の概要」に関する論文が掲載されました(礒部)

2013/11/19

2013年10月12日に公刊された『医学のあゆみ』247巻2号に下記の論文が掲載されました。

「BMIについての倫理的・社会的問題の概要:脳神経倫理学における議論から」(礒部太一・佐倉統)

論文概要
ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)に関わる倫理的・社会的問題について、脳神経倫理学の議論を中心に紹介する。最初に、脳神経倫理学とはどのようなものであるかの概要を説明した上で、脳神経倫理学において議論されている諸点を中心に、BMIに関わる具体的な倫理的・社会的問題を提起し、最後にそれらに対応していくことが脳神経科学研究のコミュニティにおいてどのような役割と意義があるのかを述べる。

 

 

「生命科学研究における成果発表」に関する論文が掲載されました(神里)

2013/10/30

このたび、日本生命倫理学会誌『生命倫理』に下記の拙稿が掲載されました。

神里彩子「生命科学研究における成果発表の意義とその規制の許容性についての一考察-2011~2012年H5N1型インフルエンザウイルス研究論文問題を題材として」生命倫理通巻24号、105-114頁(2013年9月)

2012年上半期、H5N1型インフルエンザウイルスがフェレット間において伝播可能であることを報告する論文2本がNature誌とScience誌に掲載されました。これら2本の論文の掲載については、アメリカ保健福祉省が研究方法の詳細について論文から削除すること等を勧告したため、科学界のみならず社会的な議論を巻き起こしました。2本の論文のうちの1本が日本人研究者チームによるものであったので、記憶されている方も多いと思います。
最終的に両論文は全文公開という形で掲載されるに至りましたが、その議論の過程を見てみると、「デュアル・ユース」「テロ対策」という面からの議論ばかりで、「生命科学研究における成果発表の意義や価値」からの検討が全くなされていないことに気がつきます。この点に疑問を感じて執筆したのが本稿です。
本稿では、まず、上記2本のH5N1型インフルエンザウイルス研究論文の発表を巡る議論を振り返りながら、そこから見えた問題点を整理しました。その上で、生命科学研究における成果発表には、「科学研究の自由」、「表現の自由」、「科学者の責務」、「生命科学研究の意義」から導き出される意義・価値が内在していることを明らかにし、そこから、その規制はこれらの意義・価値を上回る必要性がなければならないことを論じています。
生命科学研究の成果「発表」に関する規制についての議論は世界的に見ても蓄積されておらず、「どのような場合に規制が認められるのか」、「誰が・どこが規制するべきか」、「どのような規制方法が妥当か」等についての本格的な議論はなされていないように思います。荒削りではありますが、本稿を第一歩とし、今後もこの点に関する研究を進めて行きたいと思っています。

 

 

多施設共同疫学研究における中央事務局業務のまとめ論文が出ました(武藤)

2013/10/15

 このたび、北海道大学公衆衛生学分野の玉腰暁子先生と共著で、ものすごーく地味な論文が出ました。果たして、多施設共同疫学研究の事務局って何をしているところなのか、そして何をしないと機能しないのか、について検討した論文です。日本公衆衛生学会誌は、以下のサイトから全文を読んで頂くことができます。

 「多施設共同疫学研究における中央事務局業務―実態の類型化と今後の標準化にむけて」
  玉腰暁子・武藤香織 日本公衆衛生学会誌 60(10):631-638, 2013.

 掲題の疫学研究だけではなく、医学研究の多くはプロジェクト化・大型化が進んでいます。結果として、研究代表者の所属機関が中央事務局業務を担っているというのが現状です。
 しかし、様々な意思決定を迫られるプロジェクト立ち上げ時に研究者間のトラブルが少なくて済むかどうか、そのプロジェクトが成功するかどうかは、中央事務局が内外情勢に目配りをしたうえで機能できるかどうかにかかっている部分が大変大きいと思います。そのノウハウは全く蓄積されていません。円滑に進んでも褒められることはないし、何かトラブルがあっても飲み会でおしまいにしちゃう、だから「どういう中央事務局が理想なのか」ということもよくわかっていない状態です。
 そのような問題意識からスタートした本論文では、日本の6つの大型疫学研究を取り上げて、その中央事務局がどんな作業をしているのかをリストアップするという、「え、それだけ!?」という内容です。ですが、「え、それだけ!?」ということも、これまで中央事務局を担う人たちの中だけで共有され、知識化してこなかったということです。
 幅広い読者に興味を持ってもらえる論文ではありませんが、研究プロジェクトのマネジメント経験がある人には、「そうそう!」「あるある!」と、涙して読んでもらえるのではないかと、願っております。

 

 
読み込み中