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東京大学医科学研究所公共政策研究分野

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『社会志林』に「非発症保因者の経験」に関する論文が掲載されました(木矢)

2020/02/19

特任研究員の木矢です。

このたび、『社会志林』に非発症保因者に関する以下の論文が掲載されました。

 

木矢幸孝

非発症保因者の積み重ねてきた経験

――恋愛・結婚・出産の語りをめぐって

『社会志林』第66巻第3号, 195-217.(2019.12)

 

遺伝/ゲノム医療における技術の進展は、確定診断・出生前診断・非発症保因者診断等といった医療技術を可能にし、私たちに遺伝学的リスクを考慮する「生」を歩ませています。今後、人々は遺伝学的リスクとますます向き合うことになると考えられますが、実際に遺伝学的リスクによってどのような課題や問題が浮上するのでしょうか。

これまでの研究では、遺伝学的リスクを有する個人の葛藤や苦悩が主として検討されてきました。ただ、個人の生における一時点の諸問題を取り上げることが多く、遺伝学的リスクに対する問題意識の移り変わりとその帰結が明らかではありませんでした。

そこで本稿では、遺伝学的リスクを有する個人、「非発症保因者」(以下、保因者と略記)に焦点を当て、10代に告知を受けてから30代で結婚するまでの時期における「恋愛・結婚・出産」の観点から保因者一人の経験を詳細に検討しました。

結果、保因者は遺伝学的リスクに悩みながらも試行錯誤し、アイデンティティを再構築していることが分かりました。同時に、遺伝学的リスクに対して結婚や出産を諦める位置から結婚し出産を意識するところまで変化があることが明らかになりました。

本稿では、アイデンティティの再構築や遺伝学的リスクに対する捉え方の変化を詳しく把握することはできましたが、一人の事例の検討にとどまっています。今後はより普遍性のある議論に接続していければと考えています。

 

 

「生命保険経営」誌に論文が掲載されました(飯田、武藤)

2020/01/08

D1の飯田です。

このたび、「生命保険経営」に以下の論文が掲載されました。 

飯田寛、武藤香織
英国の「遺伝学と保険に関するモラトリアム協定」
生命保険経営第88巻第1号、26-41(2020.1)

発症前遺伝学的検査によって将来の発症が予測される人々が生命保険に加入できないもしくは高額の保険料を払うことは差別だとして海外では保険会社での発症前遺伝学的検査の利用を制限しています。一方で日本では今のところこのような規制がありません。

そこで、本稿においては、今後の日本の生命保険での発症前遺伝学的検査の利用に関するの議論の参考にするために、英国の政府と保険業界の取決めという形態での発症前遺伝学的検査結果の利用を制限した議論の経緯について文献調査および英国保険協会へのインタビュー調査をおこないました。英国を対象にした理由は医療制度が国営であり、日本の皆保険制度と似ていることから、生命保険の死亡保障を対象に議論がなされているからです。英国での早い議論の展開や、政府と業界の取決めという形態とした背景、発症前遺伝学的検査の適用を判断する仕組みなどの要点を整理し考察をおこないました。

英国と日本での環境や考え方の違いは考慮しなければなりませんが、今後の日本での議論の活性化の一助になればと考えています。

ご関心のある方はご一報ください。

 

 

「日本遺伝カウンセリング学会誌」にダウン症候群に関する論文が掲載されました(神原)

2019/11/11

学術支援専門職員の神原です。

このたび、日本遺伝カウンセリング学会誌に下記の論文が掲載されました。

 

神原容子、竹内千仙、川目裕、持丸由紀子、佐々木元子、三宅秀彦

「成人期ダウン症候群において必要とされる情報提供と家族支援のあり方」

日本遺伝カウンセリング学会誌、第40巻3号、101-108頁(2019年10月)

 

ダウン症候群のある方々の平均寿命の延長に伴い、ダウン症候群のある成人に対する健康管理と合併症治療の重要性は増しています。

成人期のダウン症候群のある方とその家族を対象に開催した「大人のダウン症セミナー」において、参加者を対象に質問紙調査を行い、情報提供と家族支援のあり方について検討を行いました。

その結果、ダウン症候群のある方の親は、成人後の認知機能と認知症、情緒と行動異常などに高い関心があることが明らかになりました。

このような、セミナーの取り組みは、家族が望むダウン症候群に関する情報提供の役割を果たし、今後の情報提供の場として有用であると考えられました。

 

 

「薬理と治療」に臨床研究法に関する論文が掲載されました(船橋、井上)

2019/09/02

特任研究員の船橋です。

このたび、「薬理と治療」に臨床試験法に関する以下の論文が掲載されました。 

 
船橋亜希子、井上悠輔
臨床研究の「記録」に関する新しいルール
―臨床研究法をいかに理解し、いかに守るべきか?―
薬理と治療47巻Suppl 1, 37 - 41 (2019)
 

データ不正事案を背景に成立した臨床研究法は、データの「保存」義務に違反した場合に、50万円以下の罰則を設けています。

そこで、本稿においては、診療・研究に関する記録の保存に関する規制について整理・検討を行いました。

本稿に取り組む中で、改めて、臨床研究法の定義の問題、そもそもの理解の難しさ、それに伴う遵守の難しさを痛感し、そこから、副題をつけました。

 

倫理指針による規制から、臨床研究法という法律による規制に移行したことは、どのような波及効果を有するでしょうか。

今後の動きにも、引き続き注視する必要があると考えています。

 

 

 

李 怡然さんが日本保健医療社会学会「園田賞」を受賞しました

2019/03/29

 日本保健医療社会学会では、当該年度に発行された機関誌『保健医療社会学論集』に掲載された若手研究者による論文(総説、原著、研究ノート)のうち、著者(共著の場合は筆頭著者と読みかえる)の年齢が35歳未満であるか、また研究歴が10年未満とみなせるものを対象に、学会奨励賞として園田賞を授与しています。

 このたび、『保健医療社会学論集』第29巻1号に掲載された「ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」」(研究ノート)が園田賞に選ばれ、当研究室所属の李 怡然大学院学際情報学府文化・人間情報学コース博士課程3年)が受賞することになりました。授賞式は、2019年5月に開催される、第45回日本保健医療社会学会大会30周年記念大会にて執り行われます。

 本選考に携わって下さった関係者の皆様に心から御礼申し上げます。

李 怡然・武藤 香織
ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」『保健医療社会学論集』29(1): 72-82, 2018.

 (掲載から一年半を経過した時点でJ-STAGEにて公開される予定です)

 

 

 

医学研究の倫理をテーマにした単行本が刊行されました(『医学研究・臨床試験の倫理 わが国の事例に学ぶ』)

2019/02/10

医学研究・臨床試験の倫理 わが国の事例に学ぶ』が日本評論社より刊行されました。編者を井上が担当したほか(国立がん研究センターの一家綱邦さんとの共編)、執筆にも船橋他の研究室関係者、そして月例で開かれている研究倫理研究会のメンバーが多く参加しています。企画から刊行まで3年がけの作業でしたが、奇しくも臨床研究法の施行の年に刊行されることになりました。

この本では、わが国で、医学研究での「被験者保護」「研究倫理」が争点となった、15の出来事を検討しています。海外の出来事や事例が紹介される機会は多いのですが、この日本でこれまでどのような出来事が議論されてきたのか、また単にその事案の問題としてではなく、そこから今日の我々が学ぶべき課題は何か、このような視点からアプローチした類書はありませんでした。

患者を対象とする研究のほか、軍による研究、刑務所や乳児院での研究、最近のものでは産学連携をめぐる事案、研究論文の不正などが登場します。巻末には海外の議論と比較できるよう、整理した年表も付しました。改めて俯瞰すると、「問題」が認識される時代背景にも一定の潮流があり、「人を対象とする研究」を今後どのように検討していくべきか、新たな議論の地平も見えてきました。1月には本書の書評会があり、香川知晶さん(山梨大学)、松原洋子さん(立命館大学)、坂井めぐみさん(同)より貴重なコメントをいただき、議論することができました。刊行に至るまで多くの方々からいただいた助言、激励に感謝申し上げます。読売新聞ヨミドクター、日本臓器保存生物医学会の刊行誌(Organ Biology vol.26 No.1)などに書評が掲載されています。

 

 

PLOS ONE誌に臨床試験・治験参加経験のある患者の意思決定の背景に迫る論文が掲載されました(武藤)

2019/01/31

治験に参加した経験がある患者2,045名を対象とした質問紙調査(株式会社インテージのパネルを利用)と、認定NPO法人ディペックス・ジャパン1が管理する「臨床試験・治験参加者の語りデータベース」2に収載されている語りのデータも併用して分析し、患者が臨床試験・治験3に参加するまでの意思決定の過程を分析した結果が東部標準時2019 年 1 月 29 日午後2時にPLOS Group の科学誌 PLOS ONEの電子版に掲載されました。

質問紙調査の結果から、多くの患者は、医療者から臨床試験・治験に関する詳細な情報を受け取る前に、すでに「インフォーマルな意思決定」をしており、短期間のうちに(概ね2~3日間)、誰にも相談せずに参加の決断をしている傾向が明らかになりました。また、語りのデータの分析から、患者の臨床試験への参加にあたっての態度は、①能動的参加(医療者の考えを引き出し、積極的に同調する)、②受動的参加(医療者の提案をそのまま受け入れる)といったタイプに分類され、熟慮のうえで意思決定をしている状況とは言いがたいものでした。また、著者らは、患者が臨床試験・治験への参加判断をするまでに4つの段階を経るのではないかと考えました(臨床試験・治験に関する最初の情報に接する段階、「インフォーマルな意思決定」をする段階、臨床試験・治験に詳しい医療者からの詳細な説明に接する段階、「フォーマルな意思決定」をする段階)。そこで、著者らとしては、臨床試験・治験のインフォームド・コンセント5を担当する医療者は、熟慮するきっかけを促すためのリストの作成、4日以上の熟慮期間の確保に留意すべきではないかと結論づけています。

本研究成果は、国立がん研究センター生命倫理・医事法研究部の 中田 はる佳(なかだ はるか)研究員、群馬パース大学保健科学部の 吉田 幸恵(よしだ さちえ)講師、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの 武藤 香織(むとう かおり)による共著論文です。

※1 認定NPO法人ディペックス・ジャパン

オックスフォード大学で作られているDIPEx(Database of Individual Patient Experiences)をモデルに、日本版の「健康と病いの語り」データベース」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。

※2 臨床試験・治験参加者の語りデータベース

認定NPO法人ディペックス・ジャパンの「健康と病いの語りデータベース」内にある、臨床試験・治験に参加した人、参加できなかった人、参加を断った人など、なんらかの形で臨床試験・治験に関与したことがある40名の語りが収録されたデータベース。その語りの一部はウェブ上で公開されている。

※3 臨床試験・治験

新規の医薬品・医療機器開発や、手術方法等の安全性や有効性を確認するために実施される、健康な人や患者を対象とした臨床研究を臨床試験と呼ぶ。このうち、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づき、医薬品・医療機器等の製造販売承認を得るために実施される臨床試験を治験と呼ぶ。

※4インフォームド・コンセント

臨床試験・治験において、研究対象者が研究内容について十分な説明を受け理解したうえで、その研究参加に関して意思決定する過程のこと。

 

 

Journal of Human Genetics誌にがん遺伝子パネル検査に対する態度に関する論文が掲載されました(永井・李・武藤)

2019/01/11

永井です。Journal of Human Genetics誌にがん遺伝子パネル検査に対する態度に関する論文が掲載されました。

 

Akiko Nagai, Izen Ri & Kaori Muto

Attitudes toward genomic tumor profiling tests in Japan: patients, family members, and the public

Journal of Human Genetics (2019)

https://www.nature.com/articles/s10038-018-0555-3

 

 がんに関連する遺伝子を網羅的に調べるがん遺伝子パネル検査は、医療への応用が急速に進んでいます。日本では、2018年にがんゲノム医療の中核を担うがんゲノム医療中核拠点病院が指定されるなど、がんゲノム医療の推進に向けた体制整備が進められています。海外におけるがん患者を対象とした研究では、がん細胞のプロファイリングへの関心が高く、二次的所見の開示を希望する人が多いけれども、心理的負担や健康保険への影響などの懸念も示されたと報告されています。しかし、日本では、がん遺伝子パネル検査の認知度や同検査に対する態度に関する調査はほとんど行われておらず、がん患者やがん患者の家族が、がん遺伝子パネル検査に対してどのような期待や懸念を持っているかは明らかではありませんでした。そこで、がん患者やがん患者の家族、一般市民を対象として、2018年3月と5~6月にがん遺伝子パネル検査の認知度および同検査に対する態度について調査を行いました。

 調査の結果から、がん遺伝子パネル検査の認知度は、がん患者・がん患者の家族・一般市民のいずれのグループでも低いけれども、がん患者とがん患者の家族は一般市民よりも同検査のベネフィットを高く認識していることが明らかになりました。がん患者の家族は、がん患者よりもがん遺伝子パネル検査の生殖細胞系列の結果を共有したいと考えている人が多いことがわかりました。がん遺伝子パネル検査の主な検査対象となる進行がんの患者は、心理的な負担から治療選択や生殖細胞系列の結果の共有について意見を述べることが難しい可能性があることから、がん遺伝子パネル検査はアドバンスド・ケア・プランニングと一緒に提示されるべきと考えます。

 2019年度よりがん遺伝子パネル検査は保険適用されることとなり、同検査への関心や態度に影響を与える可能性があります。今後もがん遺伝子パネル検査に対する態度について調査を行い、がんゲノム医療の普及に向けた課題について検討していく必要があると考えています。

 

■プレスリリース文は下記をご覧ください■

がん遺伝子パネル検査に寄せる期待と懸念とは?

-がん患者・一般市民を対象としたインターネット調査の結果より-

http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/files/190212jhg.pdf

 

 

保健医療社会学論集に、ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」について考察した論文が掲載されました(李・武藤)

2018/08/20

D3の李です。

保健医療社会学論集に以下の論文が掲載されました。

李 怡然・武藤 香織
ゲノム医療時代における「知らないでいる権利」
『保健医療社会学論集』29(1): 72-82.

 (掲載から一年半を経過した時点でJ-STAGEにて公開される予定です)

 ヒトゲノム研究や遺伝医療において、被検者は遺伝学的検査を受けて自らの遺伝情報を「知る」ことだけでなく、検査を受けずに「知らないでいる」選択をすることも、尊重されるべきだという規範があります。この「知らないでいる権利(the right not to know)」は、1990年代に米国の遺伝性疾患の患者・家族が主張したことが出発点となり、国際機関や各国のガイドラインに明文化されることで、確立されました。

 しかし、2000年代半ば以降、次世代シーケンサーの登場によるゲノム医学の技術革新を経て、今日の患者や家族をとりまく環境は大きく変化を迎えています。そこで本稿では、技術革新や医療の変化に応じて、「知らないでいる権利」をめぐる議論にどのような変遷が生じたかを整理し、現代的な意義はあるのかを考察するため、文献調査を行いました。

 2010年代を境に、“actionable”(「対処可能」である)、すなわち医学的に確立された予防法や治療法があるということを根拠に、患者や家族が発病リスクを「知る」ことを推奨する流れが強まっていることが分かりました。さらに今日、がん遺伝子パネル検査が臨床実装されることで、遺伝性疾患の家系員に限らず一般のがん患者やその家族も含め、遺伝性疾患の発病リスクを予想外に「知らされる」事態が生じうると予想されます。

 ゲノム医療が日常の診療として普及していくなかで、医療者の規範だけでなく、実際に検査を受けられる患者さんやご家族がどのような態度をもっているかを、合わせて明らかにしていきたいと考えています。

 

 

BMC Medical Ethics誌に家族のデータ共有への倫理的配慮に関する論文が掲載されました(高島・武藤)

2018/06/19

武藤です。客員研究員の高島響子さんが第一著者となって、家族丸ごとのデータ共有への倫理的配慮を検討した論文がBMC Medical Ethics誌に掲載されました!

Kyoko Takashima, Yuichi Maru, Seiichi Mori, Hiroyuki Mano, Tetsuo Noda, Kaori Muto

Ethical concerns on sharing genomic data including patients’ family members

BMC Medical Ethics 2018;19:61
https://doi.org/10.1186/s12910-018-0310-5

 近年、ヒトゲノム解析研究で得られたデータは、研究を加速させるため、できるだけデータ共有を進めることが国内外で強く推奨されています。特に難病やがんの研究では、疾患の原因や特性を探究するため、患者だけでなく、血縁者を中心とした家族の協力も得て解析したデータも一緒に公開することがあります。

 研究者にとって、家族丸ごとのデータの科学的な価値は高い反面、幅広く共有されることにより、個人のみならず家族を識別されるリスクは高まります。また、データ共有は、研究を推進するうえで必要な営みではありますが、一般の人々には余り知られていないのではないでしょうか。

 そこで、本論文では、一般の人々へのアンケート調査結果を手がかりに家族丸ごとのデータ共有に関して、どのような倫理的配慮が求められるかを検討しました。

 なお、この論文の検討過程において、NBDCヒトデータベースには、家族丸ごとのデータ提供があった場合、その利用希望者に対して、「学術目的による利用以外での血縁関係の有無の探索や家系の同定及びそれらを試みる行為を禁止する」というルールの適用を開始して頂きました。

 

 

日本公衆衛生雑誌に、本人通知制度の実態と住民票を用いた予後調査への影響を検討した論文が掲載されました(永井・井上・武藤)

2018/06/15

 特任助教の永井亜貴子です。このたび、日本公衆衛生雑誌に下記の論文が掲載されました。

永井亜貴子、武藤香織、井上悠輔

「本人通知制度の実態と住民票を用いた予後調査への影響の検討」

日本公衆衛生雑誌 2018; 65(5): 223-232.

DOI:10.11236/jph.65.5_223

https://www.jsph.jp/member/docs/magazine/2018/5/65-5_p223.pdf

 日本には学術研究のための生存確認に使用できる死亡統計データベースがないため、コホート研究や疾患登録などで研究対象者の生存に関する情報を収集する場合、住民基本台帳法に基づき、住民票照会が行われています。第三者による住民票の写しの請求については、近年、一部の市町村において住民票の写しや戸籍謄本などを代理人や第三者に交付した場合に,交付の事実を本人に通知する制度(本人通知制度)が導入されていますが、同制度の導入状況は明らかではありませんでした。本稿では、全国の市町村を対象とした調査により本人通知制度の実態を明らかにし、バイオバンク・ジャパン(BBJ)で実施した予後調査の結果とともに分析することで、本人通知制度が学術研究を目的とした住民票の写しの利用に与える影響について検討しました。

 本人通知制度に関する調査の結果から、約3割の市町村が本人通知制度を導入していること、学術研究目的の住民票の写しの交付について、ほとんどの市町村が一定の判断基準を持っておらず、担当者ごとに住民基本台帳事務処理要領をもとに交付可否の判断をしていることが分かりました。本人通知制度の導入とBBJの予後調査で行った住民票の写しの交付請求の可否の結果の間には有意な関連はありませんでしたが、交付不可とした市町村の理由の一部に、本人通知制度の開始に伴う判断基準の見直しが挙げられていました。

 日本では、これまで多くのコホート研究や疾患登録が住民票照会により予後情報を取得し、有用な成果を得てきました。今後も疫学研究や行政情報の利用の意義や成果について、社会に向けて情報発信を行うとともに、学術研究目的の住民票の写しの交付判断に必要な基準を示すなどの市町村を支援する取り組みを行う必要があると考えられます。

 

 

Journal of Human Genetics誌に、ヒト受精胚へのゲノム編集に関する意識調査の論文が掲載されました(内山・武藤)

2018/03/18

D2の内山です。

Journal of Human Geneticsに以下の論文が掲載されました。

Masato Uchiyama, Akiko Nagai, Kaori Muto.

Survey on the perception of germline genome editing among the general public in Japan.

Journal of Human Genetics(2018)

doi: 10.1038/s10038-018-0430-2

https://www.nature.com/articles/s10038-018-0430-2

 ゲノム編集は技術の簡便性や応用性から、生命科学研究や医療分野において様々な応用が考えられている技術です。一方、2015年に中国のチームがヒト受精胚にゲノム編集を行った研究を発表して以降、ヒト受精胚に対するゲノム編集の是非に関する議論が活発となりました。特にこの技術が様々な分野への影響が考えられることから、専門家だけでなく、一般市民も巻き込んだ幅広い議論の必要性が指摘されています。そこで、一般市民がこの技術の利用についてどのように考えているかを明らかにするため、2017年2月~3月に一般市民44,360人と患者6,522人を対象とした意識調査を実施しました。今回の意識調査では、ゲノム編集に関する認知度や技術の理解度、ヒト受精胚への技術の許容性、この技術に関するリスクをどのように認識しているかを調査しました。

 調査の結果、ゲノム編集に関する認知度は低く、技術特性について理解している人は少ないという現状が明らかになりました。また、一般市民・患者ともにヒト受精胚に対するゲノム編集が、遺伝性の疾患の治療目的などで行われることに関して許容する一方で、この技術によるリスクを高く評価していることが明らかになりました。

 今後、ゲノム編集の啓発を進めるともに、一般市民がこの技術のガバナンスに関する議論に参加できるようなしくみについて検討する必要があると考えています。

 

 

 

iPS細胞を世界で初めて人に応用した臨床研究の、審査における議論を分析した論文がRegenerative Medicine誌に掲載されました

2017/12/19

2014年に、iPS細胞を世界で初めて人に応用した臨床研究(First-in-human試験)は、国内外で多くの注目を集めました。この臨床研究は、加齢黄斑変性症の患者さん自身の細胞からiPS細胞を作成し、そのiPS細胞から作成された細胞シートを網膜に移植するという研究でした。

研究倫理の側面からもこの臨床研究についてはいくつか分析が行われていましたが、実際にどのような議論を経て臨床研究が開始されたかについての分析は行われていませんでした。そこで我々のチームでは、当時(再生医療安全確保法施行前)のヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針に準拠して審査が行われた、施設倫理審査委員会とヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会、厚生科学審議会科学技術部会の審査委員会のそれぞれの議事録を入手し、全体の議論の分析を行いました。その上で、今後、再生医療研究分野におけるFirst-in-human試験の審査を行う上で必要な示唆をまとめました。

本稿は、特に再生医療分野に焦点を絞った議論となっていますが、一般的な薬剤開発のようにFirst-in-human試験を健常人対象で実施することなく、直接患者対象で実施するような臨床研究でも同じように着目すべき論点だといえます。

最後になりますが、議事録をご提供下さった各機関のご担当の方々に心より御礼申し上げます。

Kayo Takashima, Yusuke Inoue, Shimon Tashiro & Kaori Muto. Lessons for reviewing clinical trials using induced pluripotent stem cells: examining the case of a first-in-human trial for age-related macular degeneration. Regenerative Medicine .2017 (Ahead of print)

https://www.futuremedicine.com/doi/10.2217/rme-2017-0130

 

 

 

 

ヒト臓器産生を目的としたヒト-動物キメラ作製に関する一般市民の意識調査(試行)についての論文がAsian Bioethics Reviewに掲載されました(楠瀬)

2017/09/25

Asian Bioethics Reviewに下記の論文が掲載されました。

A Preliminary Study Exploring Japanese Public Attitudes Toward the Creation and Utilization of Human-Animal Chimeras: a New Perspective on Animals Containing “Human Material” (ACHM)

Kusunose, M., Inoue, Y., Kamisato, A., Muto, K.

Asian Bioethics Review (2017) https://doi.org/10.1007/s41649-017-0020-1

 

 慢性的に移植用ヒト臓器が不足するなか、iPS細胞等を用いた再生医療研究が進んでいます。その一つに、特定臓器を作製できないよう操作された動物胚に患者自身のiPS細胞を挿入して「ヒトー動物キメラ(ヒトの要素を持つ動物)」を作製し、患者の細胞でできた拒絶反応のない移植用ヒト臓器を産生するという研究が実施されています。

 我々は、2012年2月に、このような「ヒトー動物キメラ(ヒトの要素を持つ動物)」の作製と利用に対する一般市民の意識に関する質的調査を試行的に実施しました。対象は、首都圏在住の一般生活者24名で、20代~30代と40代~50代の男女6名ずつ計4グループに分け、事前に作成されたインタビューガイドに沿って資料を提示しながら、1グループ約2時間のフォーカス・グループ・インタビューを実施しました。インタビュー内容は逐語化され、データを発言毎にカテゴリー化し、分析しました。

 その結果、20代男性のグループを除いたその他のグループでは、医学的発展の重要性は認めつつも、たとえ自分や自分の子どもが移植が必要となったとしても「ヒトー動物キメラ(ヒトの要素を持つ動物)」の作製と利用に反対する態度が認められました。これらの人々は従来の「ヒトの要素を持つ動物」という視点ではなく、「私の要素を持つ動物」や「私の子どもの要素を持つ動物」という視点でヒト-動物キメラを捉え、単なる実験動物ではなく、自分や自分の子どもの細胞をもった特別な存在として位置づけていました。このような視点は先行研究では述べられていなかった視点です。

 本稿の最後では、今回のフォーカス・グループ・インタビューで得られた結果や新たな視点を元に、今後一般市民の理解を得ながらヒト臓器産生を目的としたヒトー動物キメラ作製研究を実施するために必要な事項について述べられています。

 

 

出生コホート研究の参加者調査の結果がHealth Expectations誌に掲載されました(李)

2017/09/22

D2の李怡然です。

Health Expectations誌に、下記の論文が掲載されました。

Izen Ri, Eiko Suda, Zentaro Yamagata, Hiroshi Nitta, and Kaori Muto. “Telling” and assent: Parents’ attitudes towards children’s participation in a birth cohort study. Health Expectations. 2017. DOI:10.1111/hex.12630

現在、世界各国で疫学の観察研究の一種である、出生コホート研究が実施されています。日本でも全国10万人の子どもを胎児期から13年にわたって追跡する「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」という大規模なプロジェクトが2011年から始まっています。
親が代諾して子どもが参加する、出生コホート研究を実施する上での課題として、研究者が成長後に子ども本人から「インフォームド・アセント(informed assent)」(=賛意)を得ること、そして「ディセント(dissent)」(=拒否)の意向を尊重することが重要だと、近年国際的に指摘されています。

ただし、インフォームド・アセントを得る以前に、研究参加に代諾した親から、子どもに研究参加について伝えるプロセス(“telling”「告知」)については、これまで着目されてきませんでした。そこで、「お母さんやお父さんは、いつ・誰と・どのようにお子さんにお話をするのだろうか?」という疑問から出発して、私たちはエコチル調査に子どもを参加させている、母親と父親に対面でのサーベイ調査およびインタビュー調査を実施しました。

結果として、子どもにとっての多様なベネフィットを見出し、研究参加を続けることを直接的・間接的に促す “directive telling”(「指示的告知」)をしたいと考える親が多くいることが分かりました。

もし仮に「指示的」な告知がなされやすいとすると、親が子どもに伝えるのをサポートするとともに、親自身も重要なポイントを確認できる素材を提供することが必要だと示唆されます。また、子どもの拒否の意向も含めて、意見を発信する機会を保障することも、研究者の責務と考えられます。もちろん、実際に親子の間でどんな会話がなされ、お子さんが成長過程の中で、どのような認識をもって育っていくのかは、これからフォローする中で明らかになることです。

最後になりますが、本研究に多くのご協力を賜りました、調査協力者の皆様と、エコチル調査、「エコチルやまなし」(甲信ユニットセンター)の皆様に深く御礼申し上げます。

 

 

「臨床薬理」誌に論文が掲載されました(臨床試験の語りプロジェクト・中田)

2017/09/19

臨床試験・治験の語りプロジェクトでインタビューを担当していた中田です。

先日、本ブログでお知らせした「臨床薬理」誌に受理された論文が掲載されました。

「患者の経験からみる臨床試験への参加判断とインフォームドコンセントの意義」臨床薬理. 48(2)31-39, 2017.

DOI: http://doi.org/10.3999/jscpt.48.31

本プロジェクトの大きな目標は2つでした。

1.臨床試験・治験に関わった方々の経験談を広く共有するために、データベースをつくる。

2.本プロジェクトで集めたインタビューを分析して得られた知見を発信し、今後の臨床試験実施体制の向上につなげる。

多くの患者さん、関係者の皆様のご協力により、1.のデータベースは2016年11月に完成・公開されました。

現在、インタビューにご協力いただいた多くの患者さんのお話を分析し、2.の成果を積み重ねているところです。

引き続き、本プロジェクトからの成果をご報告できるよう、メンバー一同取り組んでいきます!

(文責:中田はる佳)

 

 

 

 

医師組織の在り方について論じた拙稿が掲載されました(神里)

2016/09/16

医療の質・安全学会誌(Vol.11 No.3(2016))に、拙稿「医療の質を確保・向上させるために医師組織はどうあるべきか─医師会と弁護士会の歴史から学ぶこと─」が掲載されました。
2004年に医師会の設立・加入体制の構築経緯を歴史的に考察した論文を発表したのですが※、今回の論文は12年(!)の時を経ての続編となります。
※神里(所)彩子:GHQ占領期における医師会の設立・加入体制の構築経緯,日本医史学雑誌50巻2号:243‐274,2004.

平成25年8月、日本学術会議「医師の専門職自律の在り方に関する検討委員会」が『全員加盟制医師組織による専門職自律の確立-国民に信頼される医療の実現のために-』(以下、日本学術会議報告書)を発表し、その中で法定の全員加盟制医師組織「日本医師機構(仮)」の設立を提言しました。日本学術会議の委員会がこのような提言を出したことは画期的なことと言えます。しかし、法律に基づく全員加盟制の医師組織が設置されれば医療の質は確保・向上するのでしょうか?また、医療の質の確保・向上のためには医師組織はどうあるべきなのでしょうか?
本稿では、この問いへの答えを探るべく、日本学術会議報告書の概要を見た上で、全員加盟制医師組織であったこともある「日本医師会」「医師会」、そして、その比較材料として、医師と同じく高度専門職である弁護士の組織である「日本弁護士会」「弁護士会」の設立・加入体制の概要およびその経緯を検討しました。そして、医師は高度専門職である以上、自律性を備えた全員加盟制の医師組織は必要であるが、加入が義務づけられることになる個々の医師の合意と強い覚悟がなければ適正に機能させることは難しいことを論じました。
どのような医師組織が必要なのか、医療の質と関係することなので、医師のみならず、医療の受け手である私たちも考えていかなければならない問題だと思います。

 

 

出生前診断と国家の関係に関する報告が掲載されました(佐藤)

2016/09/12

2016年8月に刊行された『生物学史研究』No.94に下記の報告が掲載されました。

「出生前診断における国家の役割——羊水検査、母体血清マーカー、NIPTに対する国家の関与の分析」(佐藤)

この報告は、昨年9月に開催された「2015年度生物学史分科会夏の学校」にて発表したものです。
1970年代、1990年代、2010年代にそれぞれ登場した羊水検査、母体血清マーカー検査、NIPT(新型出生前診断)という検査技術に対し、厚生省・厚生労働省の委託研究がどのような視点からアプローチしてきたかを調査、整理しました。

その結果、委託研究は新しい個別の検査技術には左右されていないこと、一方で遺伝カウンセリングに関する研究は母体血清マーカー検査とNIPTが登場した時期にそれぞれ再開されていたことが分かりました。

修士論文では、特に母体血清マーカー検査とNIPTに関して、検査技術のガバナンスと厚生省・厚生労働省の関係性に着目する予定です。

 

 

『旅立ちのデザイン帖―あなたらしい”終活”のガイドブック』に寄稿しました(武藤)

2016/08/26

 NPO法人ライフデザインセンターによる『旅立ちのデザイン帖―あなたらしい”終活”のガイドブック』(亜紀書房)に寄稿させていただきました。結果的に上田紀行さん、上野千鶴子さん、鎌田 實さん、高橋 卓志さんという錚々たるメンバーに加えられて驚いています。
 寄稿したきっかけは、2010年に長野県にあるNPO法人ライフデザインセンターの「なんでもありの勉強会」で、受けたい医療に関する事前指示書を書くことのメリット・デメリット、事前指示書の運用に関するについて、話題提供したことでした。このたび本が出されることになり、お声がけいただいた次第です。
 時々、病院の職員に向けた臨床倫理の研修をお引き受けすることがあるのですが、常に DNR指示(蘇生処置拒否指示)と胃ろう装着の意思決定が話題にのぼります。生きていくための「終活」について、生活者の視点から様々な情報が掲載された分厚い一冊になっていますので、ぜひご覧ください。



 

 

意識調査の結果がCell Stem Cell誌に掲載されました(井上)

2016/08/20

動物の受精卵に人の細胞を組み込み、体の一部が生まれつき人間由来の細胞で構成される動物を産生する ― 現在、一部の研究者によってこのような手法が検討されています。この技術によって、人の臓器の発達を生体内に近い形で観察できたり、慢性的に不足する移植用の臓器を動物に作ってもらったりすることが可能になるかもしれません。大きな可能性がある一方で、人々がこうした活動についてどのように感じるか、実証的な調査がこれまでほとんどなされてきませんでした。

私たちは一般市民の方、日本再生医療学会の会員の方々の協力を得て、これら両群を比較できる追跡調査を行いました。結果は、人々の間にこの種の活動への慎重論が根強く存在することを示すものでした。こうした姿勢は、一般の方々による再生医療への支持の高さ、研究協力意欲の高さとは大きく異なっていました。また、同じ設問への日本再生医療学会の会員の方々の反応とも対照的な結果でした。

活動がたとえ科学・医療にとって有望なものであるとしても、研究開発の長い道のりをたどるうえで、こうした意識や認識の違いは研究者にとって大きな不安定要因となるはずです。現在、日本では上記の活動に従来課されてきた多くの制限を見直す議論が始まっていますが、制度論とは別に、粘り強く、誠実な情報発信に努めるなど、人々の懸念を特定し、少しでも認識の違いを埋めるための取り組みが科学者コミュニティに一層求められるでしょう。

Inoue Y, Shineha R, Yashiro Y. Current public support for human-animal chimera research in Japan is limited, despite high levels of scientific approval. Cell Stem Cell. 2016;19(2):152-3.
http://www.cell.com/cell-stem-cell/abstract/S1934-5909(16)30206-5

 

 
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